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IS 〈インフィニット・ストラトス〉~可能性の翼~

作者:龍使い
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第一章『セシリア・オルコット』
  第四話『訓練開始』

「昨日はすまなかった、修夜!」
次の日の朝、朝食を食べ終えた俺は、自分の部屋の前で箒と鉢合わせし、そのまま向こうが頭を下げてきた。
「……箒、流石に声がでかい…」
多分、昨日の説教の事なんだろうけど、流石に声がでかい。
周りの女子たちが、何事かと見てますから。遠くでなんかひそひそ話してますから。
勘弁してください、マジで……。
「あ、いやその……す、すまない…」
「はぁ、まぁいいけどよ」
そう言って、俺は手に持っていた木刀と竹刀を箒に手渡す。
「次同じ事したら、没収じゃすまないからな。その辺きっちり覚えておけよ」
「ああ、わかってる」
俺の言葉に小さく頷きながら、箒は木刀と竹刀を受け取る。
「しかし、お前も変わらないな。武術の事になると生真面目で、それでいて普段はどこ吹く風と言った感じで……」
「早々変わるもんでもねぇよ。お前や一夏が変わってないのと同じでな」
「ふふ、そうだな」
箒はそう言って、笑みを浮かべる。
「それにしても、随分と早いな。
 ノックしても返事がなかったから、まだ寝ていると思っていたが……」
「日課をこなしてからすぐに、食堂で飯食ってきたからな」
「ああ、なるほどな……」
俺の言葉に放棄は納得が言ったかのように頷いている。
日課と言うのは、俺が幼い頃から続けている武術の修練。これをやっておかないと、どうも寝覚めが悪いんだよな。
「そういうお前こそ、一夏はどうした?」
「今は部屋で着替えているから、すぐに出てくるだろ」
「そうかい。んじゃ、また後でな、箒」
そう言って、俺は部屋に入っていった。

――――

「……んで、結局どうするんだ、一夏?」
「何がだ?」
時が移り、現在は昼休み。俺は、一夏や箒と共に昼食をとっている。
この間色々とあったんだが……まぁ説明も面倒なので割愛する。
「何がじゃなくて、来週の勝負の件だ。
 幾ら専用機が来るからって、このまま何もしないでいたら負けるぞ?」
「それはそうなんだけどさ……」
焼き鯖の身をほぐし、口に入れながら一夏は答える。
一夏と俺は、それぞれの理由で専用機を使う事になっているが、如何せん一夏は俺ほどISに触れてはいない。
俺はといえば、師匠の伝で何故かあるIS企業のテストパイロットに選ばれているから、ある程度の操縦経験は得ている。
「お前や箒に教わりつつってのは、駄目か?」
「可能っちゃ可能だが、俺だって練習するから模擬戦形式になるぞ?」
「箒は?」
「出来なくはないな。ただ、本当に基礎的なことだけになるかもしれないが……」
「それでもいい、頼む! こういうこと頼めるの、修夜たちだけなんだ!」
そう言って、俺と箒に向かって手を合わせる一夏。確かに、入学直後の現状じゃ、知り合いである俺たちにしかこういうことを頼めないだろうな……色々な意味で。
それに、男が一度言った事を撤回するのは気が引けるだろうし、勝ちたいと思っているのだろう。
まぁ、その点は俺も一緒で、勝負と言うからには勝ちに行きたい。
だからこそ、こいつが必死に頼む気持ちはわからんでもないのだ。
「どうするよ、箒? 俺としては一夏にも勝って欲しいから問題はないが……」
「私も、そこまで言われては断れないな」
表情を変えずに箒は言うが、俺は気づいている。一夏に頼られて、嬉しそうな表情になるのを必死に抑えているのを。
まったく、だったらストレートに告白すれば良いものを……ほんと、何で一夏の事に対しては、ここまで素直じゃないのやら……。
「ただ、教える前に一度、剣道場で二人の実力を見せて欲しい」
「……何でだ?」
箒の言葉に、一夏は問う。
「ISの練習にそのまま行ってもいいのだが、久しぶりにお前たちと勝負したくてな。
 問題がなければ、今日の放課後に仕合って欲しいのだが……」
「俺は問題ない。一夏は?」
「まぁ、そういう理由なら……」
俺の言葉に、一夏は歯切れの悪い返答をする。
ああ、そう言えばこいつ、中学時代はバイトで忙しくて剣を握ってなかったんだっけか……。
後でそのことが問題にならなければいいが……っと、俺はそう思いつつ、飯を口の中に放り込んでいった。

――――

結論、やはり問題になりました。
「どうしてここまで弱くなってるんだ、一夏!?」
「いや、受験勉強で忙しかったし、三年間は帰宅部で、家計を助けるためにバイトしてたし……」
箒に一本負けした一夏が、正座で説教されていた。……本当に一夏の事になると感情を抑えられないよな、こいつ。
「……修夜はどうだ?」
「一々言わなくてもわかってるだろ……」
俺も帰宅部だが、俺にゃあの師匠がいる。正直な話、そこいらの道場よりよほど濃厚な鍛錬積んでるわ。
「……そうか。とりあえず一夏、お前を鍛え直す! これでは、IS以前の問題だ!」
箒が一夏を睨みながらそう宣言する。
まぁ、その点に関しちゃ俺も少なからず同意だ。鈍った身体では、知識としてISを動かしても身体がついていけない。
少しでも鈍った身体を鍛えておかなければ、幾ら専用機があっても、ワンサイドゲームで負ける可能性がある。
「これから試合まで毎日、放課後三時間、私が稽古を付けてやる! いいな!?」
「はい、異議あり。流石にそれだと問題があるぞ、箒?」
なんとなく予測してた展開になりそうだったので、俺は異議を唱える。
「……理由(わけ)は何だ?」
「確かに一夏は事情があるとはいえ、身体が鈍っているのは事実だ。だから、鍛え直す事に反対はない。
 けど、冷静に思い返せ。こいつはISの事を教えて欲しいといってるんだ、そのことを学ぶ時間を作るのも筋じゃないのか?」
「だが、一夏もお前も今はISを持っていないはずだ」
俺の言葉に、箒は反論する。
確かに俺と一夏は専用機を与えられるが、現時点では所持していないのも事実。故に、そう反論したのだろうが……。
「そこは訓練機の使用許可を貰えばいいだけの話だ。
 ここはIS学園、訓練するための量産型ISの打鉄(うちがね)やラファール・リヴァイヴが配備されていてもなんら不思議じゃないだろ?
 俺や一夏だったら、恐らくデータ収集の目的で申請もすんなり通るだろうしな」
俺もまた、正論で反論する。幾らISを所持していないとはいっても、訓練の方法なら幾らでもある。
ましてや、訓練が出来なくても知識としてある程度覚えておくことも可能だ。そうすれば、不測の事態になっても、ある程度の応用が出来る。
「それに、一夏だって自分が弱くなってる自覚はある。そうだろ?」
「ああ……こんなんじゃ、何かに勝つなんて無理だ……」
一夏はそう言って、拳を握り締めている。
自分が想像している以上に弱くなっている事に情けなくなったのだろうな……。
「箒、お前の言い分はわかるつもりだ。けど、俺は……来週の試合に勝ちたい。
 だから、恥を忍んで頼む! 剣道だけじゃなく、ISの事も教えてくれ!」
「一夏……」
一夏の土下座に、箒は戸惑いを隠せないでいる。
「男が軽々しく……とか言うなよ?
 本当に強くなりたい奴は、恥を捨ててでも何かを成そうとする……それは男女の差なんて関係ないんだからな」
そう言って、俺はギャラリーの女子を一部を睨む。一夏が弱い事に落胆しているようだが、そんなのは向こうの勝手な考えだ。
俺の視線に気づいたのだろう。落胆していた女子たちがこそこそと道場から離れていく。
これでよく『男が女より強いのは大昔のこと』等と言えたものだな……まったく。
「とりあえず、基礎知識の方は山田先生に頼んで、時間があるときに補講してもらえばいい。
 それ以外の時間は、ISの基礎訓練や剣道の時間に割り当てて行く……それで良いだろ、箒?」
「……ああ、そうだな」
俺の言葉に、箒は少し考えた後にそう答える。
「なら、それで決定だ。とりあえず、今日は基礎訓練をして体力を少しでも向上させる。
 んで、明日以降の計画は俺のほうで山田先生と相談して決めておくよ」
「わかった」
「頼んだ、修夜」
そう言って、俺たちは基礎訓練を開始した。

――――

「……修夜」
「ん?」
訓練終了後、剣道場の外で箒を待っている俺に一夏が声をかける。
「さっきは、ありがとうな。助け舟出してもらって……」
「気にすんな。昔からそうだったろ?」
「……そうだな」
俺の言葉に、一夏は笑いながら答える。俺と一夏は、昔からこういう関係だ。
箒の事で何かあれば、何時も俺や一夏のどっちかが彼女を止める。彼女が引っ越すまでの間、その関係はずっと続いていた。
その中には千冬さんや白夜師匠達も入っていて、充実した日々の一つだ。
そんな日々を過ごしたからこそ、今があると言っても過言じゃない。
俺はそんなことを思いつつ、一夏に対して言葉を紡ぐ。
「けど、せっかくみんなの前でああ言ったんだ。試合当日、無様に負けるんじゃねぇぞ?」
「そういうお前もな、修夜」
「言ってろ」
そう言い合って、俺と一夏は互いの拳を合わせて、笑いあった。

――それからの一週間、俺と一夏の、試合に向けて特訓が開始された。
 
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