| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

IS 〈インフィニット・ストラトス〉~可能性の翼~

作者:龍使い
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第一章『セシリア・オルコット』
   第一話『クラスの9割8分が女子生徒』

俺の名は真行寺修夜(しんぎょうじ しゅうや)。3月18日生まれの16歳で、血液型はB型。
特技は子供の頃から鍛えてる武術全般で、座右の銘は『人間万事塞翁が馬』。
……え? なんでこんな自己紹介をしてるのかって……?
それはまぁ、その……。
(何というかこれは想像以上に辛いよな……)
早い話、俺ともう一人の男子生徒以外のクラスメイトが、全員女子だと言う状況が予想以上にきついので、現実逃避していました。
うん、予測はしていた。だけど、実際の経験と予測は大違いな事この上ないのは、どんな状況でも一緒だ……。
周囲からは好奇の目……。正直な所、苦行ですかと言いたくなるくらい居た堪れない。
それは、俺の隣にいる男子生徒――織斑一夏(おりむら いちか)も同じだろう。妙に落ち着きが無いのが見て取れる。
……とかなんとか考えてると、自己紹介が始まった。
それと同時に、織斑が横目で俺に視線を送ってくる。 恐らく、どうしたら良いかってのを聞いてるんだろうが……。
(……悪い、気合で何とかしろ)
と言う視線しか返せないのが現状である。
何やら非難めいた視線を感じるが、仕方ない。 俺もこういう状況は慣れてないんだからさ……。
そんな視線のやり取りをしているうちに、織斑の順番が回ってきた。
「え、えーっと……織斑一夏です」
結局、良い案もなにも思いつかなかったらしく、無難に始める織斑。
しかし、その後が続かない。
恐らく、周りの女子の『他には!? ねぇ!? 他には!?』と言う視線のせいで、切羽詰ってるんだろう。
「……以上です」

――ズコーー!!

その後の発言に、女子の約半数がずっこけた。期待外しにも程があると言いたいくらいに。
副担任の山田真耶(やまだ まや)先生も、なんか涙目だし。
まぁ、気持ちはわかるな……。 どっちのかって? 両方に決まってます。
そんな周囲の状況に半ば呆れていると……。

――パアンッ!

何者かに織斑の頭が勢い良く叩かれた。うん、すっげぇ良い音だ……。
織斑は織斑で、叩かれた頭を抑えながら後ろを見る。
「げぇっ、関羽!?」

――パアンッ!

「誰が三国志の英傑か、馬鹿者」
いや、その容赦の無さはそう思われても仕方な(ギロリッ)……なんか視線感じたので黙っておこう。
「もう会議はよろしいんですか? 織斑先生」
「ああ、クラスの挨拶を押し付けてすまないな山田君」
「い、いえ、私副担任ですから…」
なんか、織斑先生が来た途端、山田先生のテンションがさっきより上がってる気がするな。 しかもなんか熱っぽい視線向けてるし。
ああいうタイプが趣味なのか、あの先生は? 命知らずな(ギロッ!)……何でもありません。
「さて諸君、私が担任の織斑千冬(おりむら ちふゆ)だ。これから一年間でお前たちを使い物にするのが私の仕事だ。
 だから私の言う事はよく聞き、よく理解しろ。私の仕事は若干15歳を16歳までに鍛え、使えるようにする事だ。
 別に逆らっても良いが、私の言う事だけは聞け、いいな」
……やっぱ関羽雲長の生まれ変わりなんじゃないのか、この人?
だがしかし、そんな俺の考えとは別に、クラスの雰囲気が変わっていくのを感じる。
……とりあえず、耳栓して、頭抑えて蹲ってる織斑の耳塞いどくか。

『キャ――――!!』

(っぉぅ――!?)
想像以上の大歓声に、思わず驚いてしまう。
掛け値なしにソニックブームでも発生するんじゃないかってくらいの大音量。
耳栓してこれとは……兵器転用できるんじゃないか、もはや……。
「千冬様! 本物の千冬様よ!!」
「ずっとファンでした!!」
「私、お姉さまに憧れてこの学園に入学したんです! 北九州から!!」
いや、何処だっていいだろ、そんなの。
「千冬様にご指導していただけるなんて、幸せです!」
「私、お姉さまの為なら死ねます!!」
お前ら、マジで落ち着け……これ以上騒がれると俺と織斑の鼓膜が死ぬから、冗談抜きで。
「……よくもまあ、毎年こんな馬鹿者共が集まるものだ。私のクラスにだけ集中させてるのか?」
それは無いと思うけどなぁ……常識的に考えて。
そして、彼女の態度に再び沸く黄色い歓声。
うん、君達ほんと落ち着いて。俺より先に織斑の鼓膜が死に掛けてるから。
……とか思ってても仕方ない。 初日からあまりこういう事したくないんだけど……。

――パンパンパンッ!

騒がしいクラスに向けて、三回手を大きく叩く。
同時に、何事かと視線を向けるクラスメイトと先生達。
「はいはい、騒ぐのは結構だけど今はSHRの最中だって忘れてないか?
 嬉しくてはしゃぎたい気持ちは分かるけど、もう少し学生としての本分を考えようぜ」
苦笑いを浮かべて周囲を見ながら、言葉を続ける。
「これから先、織斑先生と接する機会なんて幾らでもあるんだし、今ここでその元気を使い果たしたら後が持たないぞ?
 それと山田先生も、教員だったらしっかりしてください。事態の収拾を勤めるのも、教師の資質ですよ?」
勿論、呆然としている山田先生への注意も忘れない。
「あ、えっ……す、すみません……」
彼女もまた、我を取り戻したものの、少し落ち込み気味になってしまう。
「いえ、こちらも少し言い過ぎました。
 とりあえず、俺からはそんなところです。 出過ぎた真似をしてすみませんでした、織斑先生」
「いや、気にするな。
 それにしても、相変わらず生真面目だな……『修夜』」
「あなた程じゃないですよ、『ふゆ姉』……じゃなくて、織斑先生」
そう言って、俺は再びクラスの皆に視線を向ける。
「さて、ついでだから自己紹介するな。知ってる人もいると思うけど、俺の名は真行寺修夜。
 世界で二番目にISを動かした男って言われてるが、んな肩書きなんて関係ない、ただの男子生徒だ。
 それと、今の会話で何人か気付いてると思うけど、そこの一夏と織斑先生は姉弟で、俺はその古い知り合いだ。
 こんな奴だけどまぁ、よろしくな」

――――

「はぁ~……」
SHRが終わり、一時限目が終わった後の休み時間。 俺は椅子にもたれかかっている。
理由は単純、SHRでの出来事を振り返ったからだ。
(……幾ら場を収めるためとはいえ、いきなり目立つ様な事したもんだよなぁ…)
だが、ああでもしないと騒ぎだけでSHRが終わるのは目に見えてたし、一夏の奴もきつそうだったからな。
仕方ないと言えば仕方ないんだが……。
「修夜」
「お~、一夏。
 さっきは悪かったな、自己紹介時に助け舟だせなくて」
「いや、別に気にしてないけどさ……。
 それより、一緒のクラスでよかったよ。俺一人だったら、とてもじゃないけど、耐えられない……」
「……まぁ、うん。気持ちはわかる」
俺も一人だけだったら、多分地平線の果てまで逃げてたかもしれないし……。
「それより、あいつに挨拶してないんだろ? 一緒に行こうぜ」
「ああ、そうだな」
俺の言葉に一夏も頷いて、目的の人物の元に向かう。
そこにいたのは……。
「久しぶり、箒」
「一夏、それに修夜か」
篠ノ乃箒(しののの ほうき)、一夏が昔通っていた剣道道場の娘で、俺と一夏の幼馴染み。
昔も今も変わらぬその雰囲気に少しだけ笑みが零れてしまう。
「……なんだ?」
「いや、昔とぜんっぜん変わらないなと思ってな。
 なぁ、一夏?」
「ああ、六年ぶりだけど、一目で箒だって分かったしな」
「そ、そうか……」
なんか少し照れてるな。まぁ、一夏がいるからなんだろうけど。
「そ、それはそうと、白夜さんはどうしてるんだ?」
「師匠は相変わらずの気侭旅だよ。
 時々連絡が入るから、生きてるとは思うけどさ」
「……相変わらず気紛れなんだな、あの人は…」
俺と箒の会話に、一夏が半ば呆れ気味に呟く。
「仕方ないさ、それが師匠なんだから」
俺の育ての親にして武術の師匠、夜都衣白夜(やとい びゃくや)
こと武術においては千冬さんですら敵わないほどの達人であり、ISすら凌ぐ世界最強の実力を持つとさえ言われてる。
言われているというのは、試していないからだが、あの千冬さんが「ISに乗っていようとも戦いたくない」とさえ言うほどなのだから、おして知るべしと言う感じだ。
ほんと、いったい何処にアレだけの力があるのか、弟子の俺が知りたいわ……。
っと、そう言えば……。
「ああ、そういえばさ」
「……? 何だ?」
「去年の剣道大会、優勝したんだってな。おめでとさん」
「な、なんで知ってるんだ!?」
俺の賛辞に、箒が顔を真っ赤にして驚く。
「何でって……師匠が報告してきたんだよ。
 後、一夏から後日聞いてたくらいだ」
「白夜さんが来てたのか!?」
「みたいだぜ。暫く後に、俺も白夜さんから試合に関して色々聞かされたから、間違いないと思う」
隣で一夏も頷きながら言う。
「……~っ!!」
その言葉に、箒は顔を真っ赤にしながら、口をパクパクさせている。
恐らく、師匠が俺達に自分の試合内容を語っているのを想像したのだろう。
「諦めろ、うちの師匠が気に入った人物に関するイベントを見逃す筈は無いんだから……。
 気にすると、疲れるだけだぞ?」
苦笑交じりにそう言って、箒を落ち着かせる。
「……分かってはいたが、あの人は本当に神出鬼没だな……」
溜息混じりに言う箒に、俺は……。
「それが師匠なんだ、追々慣れてくれ……」
苦笑いを浮かべて、そう紡ぐのが精一杯だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧