プリテンダー千雨
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修学旅行編
第八話
修学旅行当日。私は3-Aのメンバーと共に新幹線で京都へと向かっていた。私は班のメンバーのいいんちょ達とは喋らずに音楽を聞いている。
「やあ、千雨サン。」
「もっとはしゃが無いんですか?」
すると、そこへ麻帆良の頭脳と呼ばれる天才二人“超鈴音”と“葉加瀬聡美”が話しかけてきた。
「何だよ、私に何か用か?」
「実は前から一度千雨サンとはお話してみかったネ。」
「お話?」
確か、こいつらは絡繰を作った連中だったな。って事は・・・
「千雨サン。今度ちょっとだけ身体調べさせてもらってもいいカ?」
「やっぱりか!!!」
どうせんな事だと思ったよ!!
「別に悪用とかはしませんよ。せいぜい茶々丸のパワーアップとかに使うくらいです。」
葉加瀬、それは悪用じゃ無いと言えるのか?
「とりあえず、私の一存じゃ無理だ。父さんやランダーさん達と相談しないと・・・」
「むう。確かに、純血のトランスフォーマーのデータも欲しいネ。」
よし、こいつは私の中で・・・いや、サイバトロンにとっての要注意人物って事にしよう。
「まあまあ、そんな警戒しないで下さいよ。ほら、これでも食べて下さい。」
すると、葉加瀬が菓子の箱を差し出してきた。私はそれを警戒しながら開く。すると・・・
「ゲコッ!」
中からカエルが出て来た。
「・・・随分とナメた真似してくれんじゃねえか。」
私は思いっきり葉加瀬を睨みつける。すると、葉加瀬は慌てて弁解し始めた。
「いやいや!私じゃありませんよ!!」
「じゃあ、何で・・・」
そして、私が葉加瀬に詰め寄ろうとしたその時だった。
「きゃあああああああああ!!カエルぅううううううう!!!」
新幹線の車内に悲鳴が響き渡った。
「な、何だ!?」
辺りを見渡すと、なんとさっきと同じように菓子の箱や袋はもちろん、水筒の中といった車内のあちこちからカエルが湧き出ていたのだ。
「なんじゃこりゃ!?」
その現実離れした光景に一瞬固まってしまったが、直ぐにこれが魔法関係だと言う事が分かった。
「なあ、超、葉加瀬。これってやっぱり魔法関係か?」
とりあえず、私は近くに居てなおかつ関係者である超と葉加瀬に聞いた。
「多分、これは“関西呪術協会”の妨害ネ。」
「関西呪術協会?何だそりゃ?」
「関東魔術協会が魔法使いの組織なら、関西呪術協会は呪術師、いわゆる陰陽師の組織ヨ。」
「その陰陽師の組織が何でうちの修学旅行の妨害をすんだよ。」
「陰陽師からすれば魔法使いは外国から入ってきた余所者ネ。だから魔法使いが担任をやってるうちのクラスを狙った訳ヨ。」
「なるほど。」
丁度ネギ先生は外国人でもあるしな。そう考えていると、超が意味深な発言をした。
「まあ、それだけじゃないけどネ。」
「は?そりゃどう言う意味だ?」
「それは後のお楽しみヨ。」
そう言って超は葉加瀬と一緒にカエルの捕獲の手伝いに行ってしまった。その時、私の目の前を何かが通過した。
「今のはツバメか?」
一瞬だったのでよくわからなかったが、多分間違いないと思う。
「待って下さーい!!!」
すると、それを先生が追いかけて行った。そう言えば、ツバメが何かをクチバシにくわえていたような・・・まあ、私には関係無いか。
京都に着いた後、私たちは清水寺に来た。
「さてと。」
私はそこで一つの端末を取り出す。
「千雨サン。それは何ダイ?」
「何かの探知機のようですが。」
すると、それを超と葉加瀬が目ざとく見つけて聞いてきた。まあ、隠す理由も無いし話してもいいか。
「デストロン探知機だよ。京都にデストロンが居るみたいだからな。」
「なるほど。それで、デストロンを見つけたらやっつけるのカ?」
「いや、なるべく刺激しないようにする。」
「どうしてですか?」
「白昼堂々戦う訳にはいかないし、もし向こうがベテランだったら、新米の私じゃ太刀打ち出来ないだろ。」
そして、私は早速探知機のスイッチを入れた。
「げっ、反応ありかよ。」
探知機はここからそう離れていない場所に一つのデストロン反応を示していた。すると、超が探知機のモニターを覗き込んできて場所を分析する。
「この位置は多分駐車場ネ。」
「って事は、今は車かバイクに変形してるって事か・・・」
《秀太Side》
俺、剛秀太は修学旅行で京都に来ていた。まず来たのは有名な清水寺だ。千雨達も初日はここに来るって言ってたけど、女子校と男子校は時間を少しずらしているので残念ながら会えなかった。そして、これから駐車場でバスに乗って次の場所に向かう所なんだけど・・・
「おい秀太!こっち来いよ!!」
クラスメイトの一人が呼んできた。
「どうしたんだよ。」
「聞いて驚け!なんと駐車場にカウンタックが止まってるんだ!!」
「マジで!?」
カウンタック。それは言わずと知れたスーパーカーで、かつて日本で巻き起こったスーパーカーブームの火付け役だ。
「ほらこっちこっち!」
級友に連れられ、俺は駐車場の一角にやって来た。既に何人かのクラスメイトと先生まで来ている。そう言えば、うちの担任ってスーパーカーマニアだったな。
それはさて置き、俺も並んで皆と同じ場所に視線を向けた。すると、確かにそこにはカウンタックが止まっていた。車体の色は白で、ボンネットの一部のみがオレンジ色になっている。カウンタックと言えば真っ先に赤色をイメージするけど、これはこれで恰好いい。とりあえず、俺も皆に混じって写真を撮る事にした。
《?Side》
ったく。どいつもこいつも俺を珍獣を見るみたいな目で見やがって。これだから人間って奴は・・・まあいい。“あの女”に協力すりゃ膨大なエネルギーが手に入るんだ。そうなりゃ、お前らは・・・
皆殺しだ。
《千雨Side》
清水寺の観光は一言で言えば最悪だった。何故ならこの時も新幹線の車内と同じく妨害があったからだ。
まず、恋占いの石の間にカエルがぎっしり詰まった落とし穴が仕掛けられていた。私は恋占いをやらなかったから何とも無かったが、参加したいいんちょと佐々木が被害にあった。
その次は音羽の滝に酒が流されていた。もっとも、私たちが皆年頃の中学生だと言う事を考慮してか“縁結び”の滝にのみ流していたので、無難に学問を選んだ私は何とも無かった。だが、それで良かったと言う訳では無かった。何故なら私たち無事だった生徒は酔いつぶれたクラスメイト達を運ぶ役割をやらされたからである。さらに、生徒指導の“鬼の新田”に飲酒がバレないようにしながら運ばなければいけなかったので心労までプラスされた。そのせいで駐車場に居るデストロンの様子を見に行く事は出来なかった。だが、苦難はそれで終わらず旅館に到着した後も同じように酔いつぶれたクラスメイトを部屋まで運ばなければならなかったので、もうクタクタだ。
「なのに・・・何で近くにデストロン反応があるんだよ!!!」
しかも旅館からの距離は結構近いし、こりゃ完全に様子を見に行かなきゃなんねえじゃねえか。くそっ!これから温泉に入ろうと思ってたのに!!!でも放っておいたら何をするかわからないし、やっぱり様子を見に行くしか無いか・・・
旅館の外へ行く途中、ロビーで先生と神楽坂に会った。何故か一緒に桜咲も居る。
「あ、千雨さん!ちょっといいですか?」
「ん?別に急いではいないけど、何だ?」
「実は、手伝ってもらいたい事があるんです。」
「手伝い?」
「はい。」
話によれば先生は修学旅行のついでにある任務を任されているそうだ。それは関東魔法協会と関西呪術協会の間に和平を結ぶための親書を届ける事。だから和平反対派は昼間に数々の妨害をしてきたらしい。その割には意味の分からないのばっかりだったけどな。
だが、連中の狙いは親書だけでは無く、学園長の孫の近衛も含まれていた。確かに、関東のトップの孫娘なら人質としては十分過ぎる人材だな。
「で、桜咲。ここに居るって事は、やっぱお前も魔法関係者だったのか?」
「はい。このかお嬢様の護衛を任されております。」
「近衛の護衛?その割にはあまり一緒に居る所を見た事が無いぞ。」
「わ、私がお嬢様に近付くなど!そんな恐れ多い事です!!私は影からお嬢様を守る事が出来ればそれで・・・」
何言ってんだこいつ。それじゃ護衛が成り立たないだろ。
「でもまあ、お前も関係者って事は私の正体も知ってんだろ。」
「はい。」
まあ、この前父さんが学園長と同盟を結んだって言ってたから当然か。
「それで、長谷川さんにもお嬢様を守るのを手伝ってもらいたいのですが。」
やっぱそうきたか。でもな・・・
「悪いけど、今は先生達を手伝え無いな。」
「ええ!?どうしてよ千雨ちゃん!!」
私が断ると、神楽坂が文句を言ってきた。
「先生達に魔法使いとしての役目があるように、私にはサイバトロンとしての役目があるんだよ。」
「どう言う意味よ。」
「旅館の近くにデストロンが居るんだ。」
私がそう答えると、先生達は驚愕する。すると、先生が慌てながら確認してきた。
「デ、デストロンって確か悪いロボット達でしたよね!」
「ああ、そうだ。」
「それ大丈夫なの!?」
「神楽坂。大丈夫かどうかはこれから見に行くんだよ。探知機じゃ居場所しか分からないからな。」
「あ、そっか。」
「と言う訳で、私はこのまま行くから、近衛の方は頼んだ。」
「分かりました。千雨も気を付けて下さい。」
「ああ、分かってるよ。」
そして先生達に見送られ、私は旅館を出たのだった。
続く
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