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必死なのだ

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第四章

「それでお金のことは俺に任せて下さい」
「そうしていいか」
「はい、それでなのですが」
 大石は慌ただしい社内を見回した、そして言うことは。
「現地の社員の人達は」
「まだ社内にいる」
「そうですね」
 耳を澄ませばわかった、現地のその言葉とこの国の人の独特の匂いもしてくる、そうしたものを感じればだった。
「まだ」
「逃げてもらう機会がな」
「今にしましょう」
 即座にだった、赤穂は大石に進言した。
「今とりあえずの給与を口座に振り込んで、です」
「今日までの給与か」
「はい、退職金もです」
 そうした手続きをしてだというのだ。
「経理担当の社員にすぐに命じて下さい」
「わかった、君はだ」
 丁度他の社員と共に慌ただしく動いていた三十位の女の社員に言った。
「経理に専念してくれ」
「わかりました」
 その社員もすぐに応えた。
「では今していることは」
「そうだな、それは」
「岡本君がいいです」
 赤穂は大石にすぐにこの社員の名前を出した。
「彼も経理をしていますね」
「そうだが」
「経理は現地の社員のことは真部さんに任せて」
 その女子社員の名前を出してだった。
「その荷物とかは岡本君にやってもらいましょう」
「そういえば彼は整理整頓が得意だったな」
「それに引越し会社でアルバイトもしていました」
 赤穂が彼を推す理由はこのこともあった。
「ですから」
「わかった、それではな」
 大石も赤穂の言葉に頷いた、そうして経理の役割分担が出来た。 
 赤穂は営業のスタッフ、彼等で作業をしているそれを見てまた大石に言った。
「営業は今は総務の下に入ってもらいましょう」
「彼等だけではなくか」
「はい、ものを収めるにはです」
 それにはというのだ。
「やっぱり総務ですから」
「ではか」
「総務には営業や事務の処理のコントロールもしてもらいます」
「では君もだな」
「はい、お金を送り次第です」
 銀行に行って帰ってすぐにだというのだ。
「そちらの方に入らせてもらいます」
「わかった、それではな」
「では行って来ます」
 赤穂は大石に告げてすぐに金を持って銀行に向かった、そして振り込んでからすぐに支社に戻ったがその手には。
 無数のインスタントラーメンの袋があった、大石はそれを見て言った。
「若しかして」
「食事です」
 まさにそれだというのだ。
「晩御飯はどうしていますか、今は」
「適当に皆で外に行ってね」
 食べていると、大石は答えた。
「そうしているけれど」
「それよりもここで作って食べた方がいいです」
「インスタントラーメンを茹ででかい」
「そうしましょう、鍋を沸騰させて入れるだけです」 
 それで済むからというのだ。
「あとパンとかも買ってきましたので」
「用意がいいね」
「食べないと身がもちません」
 当然のことだが時として忘れられることでもある。
「ですから夜にはです」
「食べてか」
「あと、もう時間がないですから」
 今度はインスタントコーヒーの瓶を出して来た、それを大石に見せて言うのだ。 
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