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ソードアート・オンライン ―亜流の剣士―

作者:チトヒ
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Episode3 武士と貴族




俺達が今、活動の拠点としているのは15層の主街区《マルース》。この層はどうやら懐かしの田舎的なものをイメージして構成されているらしく、そこかしこに畑やら田んぼやらが配置されている。更にフィールドのあちこちに点在しているNPCの家も茅葺きだったりでそれこそ《ザ・日本の田園風景》である。東京に住んでいて、それもマンション暮らしだった俺にはあまり馴染みのない景色だが、そういえばばあちゃん家の辺りがこんな感じだったなーとしみじみしてみたり。

そして、アカリの言った《おイモ掘り》はこの層で受けられるクエストの一つだ。正式名は《農家のお手伝い》と言うのだが、フィールドのとある畑で鍬を持って腰を叩いている老夫婦に声を掛け手伝いをする、名前そのもののクエストである。夫婦を手伝いちょっとばっかり広い畑の芋を掘り、合間に芋を狙ってやって来るモンスターを追っ払うというのが概要。受けたが最後、日が暮れるまでクエストが終わらないものの昼飯におばあちゃん手製のオニギリが出て来たりおやつに角砂糖が出て来たり中々に楽しい。だが拘束時間がネックなのか、はたまた俺達が基本入り浸っているからなのか他にこれを受けているものを残念ながら見かけたことがない。


とまぁ説明が長くなったものの、要するにこのクエストを完遂するとお礼として芋、正式名《マルースポテト》…と申し訳程度の経験値が貰えるのだ。だから、たまの息抜きとしてならいいものの料理人を目指しているわけでもない俺達が通いつめるクエストではない。

今なお、前線に戻れないかなぁ…と頭の片隅でなんとなく考えてしまう俺としては15層だろうともっと効率のいいクエストを受けまくるorメインの狩場をもう2、3層上げたいところであるが、アカリが老夫婦にえらく可愛がってもらったこともあり懐いてしまいどちらも叶いそうにない。

だから、いつか「せっかく来てくれたのに今は芋の季節じゃないんだよ…」とおじいちゃんが言ってくれる日が来ることを祈って今はアカリに付き合い続けているのだ。


…アカリを老夫婦に預けて自分だけレベリングに行く、というのは考えないではないがそうした場合戦闘がどうせ手に付かない自分が想像出来過ぎるので却下。

で、今日も今日とていつものように街のメインストリートを抜けて圏外に出て少し行ったところにいる老夫婦に会いに行く、はずだったのだが。

向かいから歩いて来る二人組の一人とバッチリ目が会った。

「あれ?もしかして君は…」

そういって立ち止まり、俺の顔を見て首を捻るプレイヤーの和造りな顔に俺はガッツリ見覚えがあった。げっ…、と漏れそうになった声を飲み込んだのも束の間、首を捻ったプレイヤーの連れの、プライドの高そうな方が俺を一瞥して鼻を鳴らし、言い放った。

「なんだ、あの時のヘタレじゃないか」


 
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