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プリテンダー千雨

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桜通りの吸血鬼編
  第三話


マクダウェルに色々と教えられた日の翌日。私はマクダウェルに干渉する事は無かった。あいつの件については、どうせ魔法使いが勝手に解決してくれるだろうしな。そのせいか、これといった大きな出来事は起きなかった。
そして、ついに昼休みの時間になった。さて、飯にするか・・・そう思って食堂へ向かう途中、壁新聞を見て思わず固まってしまった。その内容は・・・


『幽霊ジェット、撮影に成功!

皆さんは“幽霊ジェット”と言う都市伝説を知っているだろうか?数ヶ月前から麻帆良学園都市で目撃されている謎の黒い戦闘機だ。突如、森の中から飛び立ったかと思えば、森の中へ着地し姿を消すのである。
この度、我々麻帆良学園新聞部は航空部の協力を得て撮影に乗り出した。出没する時間帯、地域に飛行しついに幽霊ジェットを発見する。だが、対象がジェット機なのに対し、こちらはレシプロ機(プロペラ機)だったので直ぐに引き離れてしまった。しかし、その姿を撮影する事には見事成功したのである。』


新聞に記事とともに掲載されている写真。そこに写っていたのは多少ぼやけているものの、私のビークルモードに間違い無かった。
そう言えば、この前飛行訓練(と言う名の空の散歩)をしてた時に航空部の飛行機と遭遇した事があったな。ちゃんと飛行機部が飛んでる時間を避けていたのに現れたからあの時はびっくりしたけど、直ぐにぶっちぎった。多分、あの時に撮られたんだろうな。

「あれえ?珍しいね千雨ちゃん。うちの新聞をそんな熟読してくれるなんて。」

私が壁新聞をボーッと眺めていると、クラスメイトで新聞部の“朝倉和美”が声をかけてきた。

「なあ、朝倉。この記事って・・・」

「あ、これ?私が書いたんだけどさ、凄いでしょ?写真も私が撮ったんだよ。」

お前かああああああああ!!!
くそっ、これじゃあ暫く飛行訓練は控えた方がいいな。

「あれ?千雨ちゃん、どうかしたの?」

「べ、別に何でもねえよ。」

「そう?まあいいや。それよりさ、聞いてよ。私航空部のエース“シャーロット・イェーガー”さんの飛行機に乗せてもらってこの写真撮ったんだけどさ、シャーロットさんったら『私より早く飛ぶ奴を許す訳にはいかない』みたいな事言っちゃってさ、リベンジする気満々なんだよね。」

「はあ!?」

しかも航空部にまで目をつけられたのかよ!?

「いや、でもさ。プロペラ機じゃジェット機にはかなわないんじゃねえか?」

「それがシャーロットさんったら、『性能差はテクニックで埋める』みたいな事言っちゃってるんだよね。」

なんつう執念だよ。こりゃ飛行訓練の前には毎回航空部のパソコンをハッキングして予定をチェックしないとな。





さらに翌日の朝。登校中、私は先生の肩に何かが乗っているのを見た。身体は細長く、白い毛で覆われている。ありゃイタチか何かか?まさか、先生は魔法少女ならぬ魔法少年だからマスコットを用意したとかか?まあ、私にはどうでもいい事だけどな。



そして放課後。学校の帰りに一人で歩く絡繰を見つけた。マクダウェルが側に居ないのは珍しいな。とりあえず、声を掛けてみるか。魔法使いに関わる積もりは無いけど、あいつはまあ私の同類みたいなモンだし、仲良くしておいてもバチは当たらないか。

「よお、絡繰。一人でどうしたんだ?いつもはマクダウェルと一緒なのにさ。」

「こんにちは、長谷川さん。マスターはさっき学園長に一人で呼び出されました。」

「なるほど、ついにバレた訳か。ま、せいぜいこってりと絞られりゃいいさ。」

「いいえ。確かに忠告はされるでしょうが、こってり絞られるなどと言う事は無いでしょう。」

「はあ?そりゃ何でだ?」

「魔法使いは基本的に身内に甘い。と言う事もありますが、学園長はマスターをネギ先生が成長するための踏み台にする積もりなのです。」

「そう言や、先生の父親はなんか結構な有名人とか言ってたな。」

「はい。ネギ先生の父親であるナギ・スプリングフィールドの名を知らない魔法使いはおそらく居ません。彼はそれほどの魔法使いだったのです。」

「それで、600年も生きた吸血鬼なんて強者のぶつけて父親の名に恥じないよう成長させるって訳か。有名人の息子って言うのも大変だな。」

その点、私の父さんは天文台の一職員だから気楽だな・・・いや、待てよ。地球ではそうでも、セイバートロン星では有名人だったって事は無いよな。プリテンダーって言うのは珍しい種族って言う話だし。

「どうかしましたか、長谷川さん?」

すると、考え込む私の様子を見て絡繰が聞いてきた。

「いや、別に何でも無いって。」

「そうですか。」

にしても、絡繰の奴ってホント無表情だな。父さんやフェニックスさん達はもっと感情豊かなのに。何で同じロボットでもこうも違うんだ?

「私の顔に何かついてますか?」

おっと。つい絡繰の奴を凝視しちまったな。

「いや、別に何でもねえよ・・・そうだ!これからお前に着いて行ってもいいか?」

「構いませんが、何故?」

「ちょっと、私らトランスフォーマーとお前の違いを確かめてみたくなってさ。」

「そうですか。では、着いて来て下さい。」




《三人称Side》

会話を終えてその場から立ち去る千雨と茶々丸。その近くの茂みから二人を覗き込む者達が居た。千雨と茶々丸の担任教師にして魔法使い見習い“ネギ・スプリングフィールド”、二人のクラスメイトの“神楽坂明日奈”、そしてネギの肩に乗った白いオコジョ“アルベール・カモミール”通称カモだ。

「くそっ、あそこで茶々丸って奴の方が一人になればチャンスだったのに!」

ネギの肩に乗ったカモが悔しそうに言う。口をきいた事から分かるが、彼はタダのオコジョではない。“オコジョ妖精”と言う妖精の一種で今はネギの使い魔、要するに魔法少女で言うマスコットをやっている。

「そうだとしても、ここじゃ人目についちゃうよ!」

すると、ネギがカモに抗議した。

「仕方ねえ。このまま張り付いてあいつがひと気の無い所で一人になるのを待とうぜ!!」

そして、カモのこの言葉とともに彼らは移動を開始した。





《エヴァSide》

ジジイに呼び出された私は予想通り桜通りの件について釘を刺された。まあ、ジジイを含めた麻帆良の魔法使いどもは私を坊やの成長の踏み台にしようとしているから、坊やを襲った件についてはあまり言われなかったがな。

「話はそれで終わりか?もう帰るぞ。」

ジジイの小言も終わった事だし、私はその場で立ち上がり学園長室から出て行こうとする。

「待ちたまえ、エヴァ。」

すると、ジジイは私を呼び止めた。ふん、“予想通り”だな。

「ジジイ、まだ何かあるのか?くだらない話だったら帰るぞ。」

「まあ、もう一度座って落ち着け。」

ジジイがそう言ってきたので私は再び学園長室にあるソファーに座った。

「エヴァ、確か一昨日君の家に客人が来たな。」

やはりその話か。

「ああ、確かにそうだ。だが、それがどうした?」

「別にワシとしては誰がお前さんの家に来ようが構わん。と言いたい所じゃが、“彼”は少し問題があったな。」

「長谷川小鷹の事か?」

「そうじゃ。」

長谷川千雨の父親、長谷川小鷹は麻帆良の魔法使い達に要注意人物としてマークされている。娘を苦しめてきた物の正体を探るために色々とやって来たからだ。

「彼には魔法の事を話したのかね?」

「ああ、話したさ。」

「そうか・・・って何じゃと!?」

ふっ、私があまりにも正直に答えたからうろたえているな。実に見ものだ。

「・・・じゃが、お前さんなりの考えがあっての事なのだろうな。」

「ああ。奴が麻帆良について色々と探っていたのは“娘を苦しめる元凶”を探すためだ。」

「何じゃと?」

私は長谷川親子から聞いた話をジジイに話した。だが、トランスフォーマー関係の事は話さず、長谷川親子は認識阻害が効かない体質の人間と言う事にしておいた。その方が面白いからな。

「この事は他の魔法使いどもにも教えておいた方がいいぞ。あの甘ちゃんどもに良かれと思ってやった事が人を苦しめる事があると言う事を教えてやれ。」

「分かった。じゃが、何故彼らはお前さんが認識阻害について知っていると思って接触してきたんじゃ?」

「前に坊やとやり合った所を見られた。」

もちろん嘘だ。

「そうじゃったか。では、もう帰って良いぞ。」

「ああ、そうさせてもらう。」

そして、私はジジイの部屋を後にした。





《千雨Side》

絡繰の日常を観察させてもらったが、どうやらこいつの思考回路はどちらかと言えばサイバトロンに近いらしい。
風船が木に引っかかってしまった子供が居れば背中と足裏のブースターで飛んで取ってあげたり、歩道橋を渡ろうとしている婆さんをおぶったり、川に流されていた子猫を助けたりした。それに、小さな子供達にも人気があるようだ。

「なんか、街の人気者だなお前って。」

さっき助けた子猫をだいている絡繰に私は話しかけた。

「みたいですね。ですが、私は当然の事をしているだけですのに何故でしょうか?」

その当然の事が以外と難しいんだよ。

「で、次は何処に行くんだ?」

「教会の裏です。」

「教会の裏?何でそんな所に?」

「着いて来れば分かります。」



教会の裏に着くと、絡繰は子猫を地面に下ろした。すると、その周りに大量の猫達が集まって来る。そして、絡繰は持っていたビニール袋からキャットフードの缶詰めを取り出し、それを開けて中身を猫達に振舞った。

「へえ、お前って毎日こんな事してんのか?」

「いけませんか?」

「いや、むしろいい事だと思うぜ。」

「そうですか。」

「じゃあ。邪魔しちゃ悪いから、私はここで失礼させてもらうよ。」

「はい。では、また明日。」




《茶々丸Side》

千雨さんが立ち去った後、私の背後にネギ先生と明日奈さん、それに白いオコジョが現れました。

「油断しました。でもお相手はします。」

そう言うって私は頭に着いているネジを外します。

「茶々丸さん、僕を狙うのは止めていただけませんか?」


申し訳なさそうにネギ先生が言います。彼としては自分の生徒を傷つけるのは本意ではないからでしょうね。

「申し訳ありません。私にとってマスターの命令は絶対ですので。」

「仕方ないです」

すると、ネギは杖を構えて呪文をとなえました。

「契約執行10秒間!!!ネギの従者『神楽坂明日奈』!!」

それによりアスナさんの身体がオーラのような物で包まれました。どうやら、彼女はネギ先生と仮契約したようですね。オコジョ妖精は仮契約の魔法陣を展開出来る能力を持っていますし。このオーラはおそらく身体能力の強化用の魔法でしょう。
と、私が分析している間に彼女は懐に飛び込んで来て拳や蹴りの連撃を加えてきました。

(はやい!)

とても素人とは思えない動きですね。そのせいで防戦一方です。

「魔法の射手・連弾・光の11矢!!」

すると、ネギ先生が私の横に回り込んで魔法を放ってきました。軌道分析・・・回避不可ですね。

「すいません、マスター、千雨さん、もし私が動かなくなったら猫達をお願いします・・・」




《千雨Side》

やれやれ、まさかあそこに居た猫の一匹が勝手に着いて来ちまうとはな。でも何でだ?半分とはいえ私が絡繰と同じロボットだからか?動物ってのは人間に分からない事も分かるって言うし。まあ、私の部屋にはパソコンが一杯あるし、毛が入ったらダメだからペットを飼うのは無理だしな。これから返しに行く所だ。
そして、教会の裏まで戻って来た訳だが・・・何で絡繰が神楽坂と戦ってんだ?しかも何だ、神楽坂が纏ってるオーラみたいなのは?

「魔法の射手・連弾・光の11矢!!」

すると、いつの間にか絡繰の横に先生が現れて光の矢みたいなのを絡繰に向けて発射した。あの軌道は・・・不味い!絡繰に直撃する!!

「すいません、マスター、千雨さん、もし私が動かなくなったら猫達をお願いします・・・」

何言ってんだよ絡繰!諦めんじゃねえ!!!

「スーツオン!!!」

私はバトルスーツを纏うと、直ぐに飛び出した。




《ネギSide》

アスナさんが茶々丸さんと戦っている間に横に回り込む事に成功した僕は光の魔法の射手を発射した。このタイミングなら必ず当たると思う・・・けど。

「すいません、マスター、千雨さん、もし私が動かなくなったら猫達をお願いします・・・」

やっぱりダメだ!茶々丸さんはこんないい人…じゃなくてロボットなのに傷つけるなんて出来ないよ!直ぐに僕は魔法の射手の軌道を変えようとする。でも・・・

「うおおおおおおおおお!!!」

その前に手足に装甲をつけて顔をバイザーで覆った女の人が飛び出してきて、その両手から伸ばした光の剣で魔法の射手を全て弾いた。

「大丈夫か!!」

女の人は振り返って茶々丸さんに話しかける。すると、茶々丸さんは驚いた様子で言った。

「どうして、助けてくれたんですか?」

「は?そりゃまあ、お前がいい奴だからだし、それにその“ロボット仲間”だからな。」

それに答える女の人・・・ってロボット仲間!?って事はこの人も茶々丸さんと同じでロボットなの!?

「てめえ!何モンでえ!!」

すると、カモ君が女の人に向かって叫んだ。

「何だあのイタチ、喋ったぞ!?」

それを聞いた女の人は驚いた様子だ。すると、茶々丸さんが女の人に説明する。

「あれはオコジョ妖精と言うモノです。おそらく、ネギ先生に私を襲うよう提案したのは彼でしょう。」

「なるほど、てめえが元凶か。」

それを聞いた女の人はカモ君の方に顔を向けた。バイザーで分からないけど、多分カモ君の事を睨みつけているんだと思う。そして、さらに女の人は僕とアスナさんの方を見て言った。

「こいつにそそのかされた先生も先生だ。つーか、神楽坂も何してんだよ。」

え?この人僕達の事を知っているの?

「ちょっと!何で私達の事を知ってんのよ!!」

すると、僕の代わりにアスナさんが疑問を投げかけた。

「そ、そりゃ・・・」

女の人は口ごもる。まさか・・・

「あの、もしかして僕の生徒じゃありませんか?」

僕がそう聞くと女の人はギクリと反応した。やっぱり。

「誰なんですか?」

「う、うるせえ!言う訳ねえだろ!!」

誰なのか確かめようと聞くと、女の人は怒って銃をこっちに向けてきた。って、何処から出したのそれ!?

「待って下さい。」

その時、なんと茶々丸さんが女の人を止めた。

「何で止めるんだよ、絡繰!」

「これは元々私とマスター、そしてネギ先生の問題です。あまり干渉しないで下さい。」

「でもよ・・・」

「ですが、今回の件は感謝しています。また後でお礼をさせて下さい。」

「・・・分かったよ。」

そして、女の人は納得したのか背中の翼を使って飛び去って行った。

「ではネギ先生、アスナさん。私も失礼させて頂きます。」

茶々丸さんも帰って行った。そして、この場には僕達だけが残されたのだった。



続く

 
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