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流星のロックマン STARDUST BEGINS

作者:Arcadia
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星屑の覚醒
  7 悪意の起動

 
前書き
最近、休日も模試尽くしで、受験までの日付を数えるとセンターまで残り117日だそうですw
でも今回の模試はまぁまぁ良かったので、少しやる気が出てきました! 

 
10月26日土曜日。

「なぁ?ロックマン?何だか最近、心が痛いな」
「そうだね。こっちに来てから、みんなに避けられてる気がするものね」

『光熱斗』は遅めの朝食を食べながら、自分のPETに向かって話し掛けた。
話している相手は自分のネットナビである『ロックマン.EXE』だ。
これまで2人で幾つもの電脳犯罪に立ち向かい、デンサンシティの平和を守ってきた2人でもため息をつかねばならぬ状態だった。
現在、父親であり科学者の『光祐一朗』の仕事のために再び才葉シティへと暫くの間、舞い戻ることとなっていた。
才葉シティはデンサンシティと同じくらいに発展した街だ。
最新のテクノロジーによって生活が支えられ、人々は有意義な生活を送ることの出来る素晴らしい街だ。
デンサンシティも本来ならば、これが正しい姿だった。
だが何故か才葉シティはデンサンシティと違い平和だった。

「それにオレも平和ぼけしてるだよな」

熱斗は既に約2ヶ月間、才葉シティで生活しているが、それによって久しぶりに平和というものを享受していた。
だが困ったことに才葉学園の中等部ではデンサンシティからやってきたという自己紹介だけで、皆から恐れられるのだった。
もちろん『新垣コジロー』や『大森明日太』のような前に一度だけ転校していた時の友人達は温かく歓迎してくれた。
だが他のクラスにいた生徒たちには熱斗を恐れ、近づきもしないのだった。

「...ねぇ?熱斗くん?昨日...僕、夢を見たんだ」
「え?...夢を?」

ため息をコーヒーを飲み、再びため息をついた熱斗にロックマンは話し掛けた。
熱斗からしてみれば、これは驚愕するしか無い話だった。
ロックマンは普通のネットナビではない。
幼くして心臓病『H・B・D』でこの世を去った双子の兄『光彩斗』の遺伝子データ、そして記憶を引き継いた初めてネットナビとして蘇生した人間だった。
そのため他のネットナビからすれば、異常存在(アノマリー)であるのは間違いないが、夢を見るということは異常だった。

「夢で凄く胸が痛かった....。まるで友達を失った時の痛みだ。心が痛くて、復讐心で心がいっぱいになってしまった。前にダークチップを使っちゃった時みたいに」
「...そうか...友達を失うことがどんなに辛いことか、オレたちは知ってるからな...。『アイリス』みたいに自分の身を挺してまで世界を守った誇るべき人も...やっぱりいなくなると悲しい」
「どうしてこんな夢を見たんだか分からない。きっとパパに調べてもらっても原因は分からないと思う。でもきっとこれは熱斗くんへのメッセージだと思う」
「?」
「いくら怒りに駆られたって、友達を裏切るようなことをしちゃいけない。みんなに無視されても避けられても、怒りに自分を飲まれてはいけないんだって」

熱斗はロックマンの言い分がよく分かった。
ふとピンクのYシャツと薄いラベンダー色のスカートに甘音色の長い髪の人形のように可愛らしい少女の姿が脳裏に浮かぶ。
正直、そんな才葉学園の生徒たちの一部に怒りを覚えかけていたのは事実だ。
そこでもし、彼らを裏切ったり、陥れるようなことをすれば、二度とその人間と関係をもつことは難しい。
まして分かり合い、友達になることも出来やしないのだ。

「ありがとう...彩斗兄さん」

熱斗は久しぶりにロックマンを兄と呼んだ。













 




男は目を覚ました。
ふかふかのベッドから起き、枕元の縁無しの眼鏡を掛けると、ゆっくりと洗面所へと向かう。
ここはデンサンシティのホテルだ。
デンサンシティのビジネス街に建ち並ぶビジネスホテル。
お洒落な内装の一人部屋。
いつもの朝の日課を済ませ、ハンガーに掛けておいたスーツに着替える。
昨日、いや今日の朝まで商談、そして取引を行っていた。
結果として昼が過ぎているというのに、睡眠時間は6時間。
成長期の子供では無いがもう少し睡眠時間は欲しい。
しかし今は已む得ない。
この街で1つの実験を行うためには、街中に武器をバラ撒く必要がある。
男は『Valkyrie』のセールスマンだった。
Valkyrieの製造した武器を売り捌く死の商人。
名前は『安食空夢』。
黒のメンズスーツに紫に赤いラインが入ったネクタイ、そして身長は175センチメートル、長い前髪を分けた外見。
ため息をつきながら窓の前に立った。

「...はぁ...あと2日でこの街ともお別れか...」

デンサンシティはこの数年でニホンの中でも犯罪統計はトップ、治安のレベルも地を這うようなくらいまで見事な転落を遂げた。
街を歩けば、ひったくりやひき逃げ、不良やギャングで溢れ、善良な市民が鳴りを潜めるというニホンでは最低最悪な街だ。
だが安食からしてみれば、そこまで酷い場所には思えない。
むしろ名残惜しくなってしまうくらいに平和な街に思えていた。
今日のスケジュールは2時間後に官庁街のオフィスビルの一室で取引、そしてギャングだらけの犯罪組織との商談だ。
そしてその後、この街を裏から牛耳るValkyrieの商売敵であるディーラーが管理する施設を乗っ取りを仕掛ける。
既に全体の30%程を占拠した。
計画が終了するまでにディーラーに妨害されるのを防ぐためた。
しかしディーラー相手でもこちらにも切り札がある。
売っている自分たちが言うのも気が引けたが、もはや銃やミサイル、戦車を使った戦いなど時代遅れだ。
それでこそ毒ガスや核などの化学兵器、もしくはシステムを乗っ取る、通信を傍受するなどといった電子戦を制する者が強者と成り得る世界だった。
そう、例えば電波。
そこら中に溢れている電磁波の一種を自由に操れるとしたら。
この新商品は飛ぶように売れている。
そしてこれは自分たちにとっても有力な武器だった。
備え付けの冷蔵庫に入れてあったクリスタルガイザーを手にとった瞬間、枕元で充電していたLumiaが鳴る。

「ハイ。あぁ、どうも。如何です?我々の商品は?」
『ああ。人に撃ったりはしてねぇけど。脅すにはかなり十分!カツアゲの成功率が上がったから、また商品買ってやるよ』
「そうですか。では予定通り、今夜10時に例の倉庫で」

安食はまだ声変わりの終わっていない電話相手との通話を切る。
たとえ武器を売るのが、しょうもない理由で強がるだけの子供であっても売れるならば売る。
それがValkyrieのやり方だった。
むしろこれからの時代を担う若者たちに武器を売りまくる事こそが、世界そのものを変えることに繋がるのだった。

「ったく、撃てもしねぇのにカツアゲに銃を使うだと?」

安食は先程の電話とは口調を変えて本性むき出しで愚痴った。
電話や商談の時に優しい笑顔と声は全て作り物だ。
これまで自分の態度があらゆるものに影響を及ぼすということを人一倍に学んでいた。
だからこそ、自分を偽らずに済む1人きりである状況を心から愛している男だった。














『今日で1週間だ。これで君は晴れて我々と同じ『紺碧の闇』の一員だ』
「.....」

彩斗は息を整えながら、目の前のダークネスを見た。
正直、恨みすらも抱きかけていた。
この3日は地獄と言うしか無かった。
相手の恐怖を操作するためには、相手の感情を理解する必要がある。
彩斗にはシンクロが備わっているため、相手の感情は相手の脳から直接理解できる。
だがダークネスはそれを使うことを許さなかった。
シンクロは危険だからだ。
相手の脳にリンクするということは、下手をすれば逆に乗っ取られることもある。
だがらこそ相手の表情、口調、仕草から相手の感情を読み取るための動作を何度も繰り返した。
必死に頭を回転させ、感情を推測する。
それは恐ろしいまでに脳を酷使する。
そして暗闇に紛れ、何処から襲われるか分からぬ恐怖心を与え続け、気配を消して接近し、とどめを刺す。
与えられたのは発煙筒2本と手甲鉤、火薬、そして短刀だけ。
相手は熟練した『紺碧の闇』の戦士だ。
身体能力も精神力も勝てる要素など1つもない。
気配に気づかれ、反撃を喰らうのがオチだ。
実際、何度も何度もあと一歩まで追い詰めたところで負けた。
勝ち星は今日まで無かった。
だが今は違う。
足を砕き、膝立ちになっている状態に短刀を突きつけている。
黒マントの忍者は驚きを隠せないようだった。
周囲にばかり気を配り、手甲鉤で天井に張り付き、彩斗が隙を伺っているという発想が浮かばなかったのだ。
天井から火薬を落とし、火花と音が鳴ったことでそちらを警戒している隙に、一気に仕留めた。

『気配を消すこととともに敢えて気配を出すことで相手に注意を向けさせ、真上から攻める。素晴らしい』
「...これで...アイツらを」
『ああ、好きにするがいい。だが『紺碧の闇』について口外することは許さん。君は3日でようやくこの男を倒した。もし我々10人に一度に攻められれば、君に勝ち目はない。我々の敵にはならないことだ』
「...分かってるさ」

彩斗は肌で感じていた。
この『紺碧の闇』という集団は決して自己満足のために悪を根絶しようとしているわけでない。
確固たる信念を持って犯罪と戦おうとしている。
つまりこの脅しは嘘ではない。

『君は強い。今まで絶望しても心が折れたこと無い。何度も立ち上がった』
「....」
『最後に君に教えておくことがある』
「?」
『これからの敵はテクノロジーだ。人の悪意を何処までも増幅し続ける。インターネットがいい例だ。あれには我々にも太刀打ちできん。だが君には、それに対向する術がある。これからの君の"正義"に期待する』
「....ありがとう」

彩斗はそう告げて教会を後にした。
体中に装備した防具を脱ぎ捨て、ジーパンとTシャツといういつもの格好で1週間前の夜に歩いてきた道を戻っていく。
だがふと振り返る。
既に視界から教会は失せていた。
ダークネスの言う通り、招待状が無い者はあの建造物を目にすることもできないのだった。

「....」

彩斗は再び歩き出す。
既に日が落ちかけている。
そして深呼吸をするが、ふと笑みが浮かぶ。
相手に恐怖を煽るための鍛錬で、狂った演技をし過ぎたせいだろうか。
口がまるで裂けてしまったかのように大きく開き、睨みつけているのに嬉しさが混じった目という表情だ。
自分でも何が楽しいのか分かっていない。
だが今の自分にはミヤや自分を貶めた不良たちに復讐するだけの力と術がある。
これから自分が行うであろう復讐、そしてそれによって腐っていく自分が頼もしくて仕方がないのだった。

















デンサンシティはもはや末期症状を示していた。
世間一般では学校は休みだ。
結果として街には学生が溢れる。
映画館、デパート、衣料品店、ゲームセンター、カラオケなど。
だが同時にもたらされるのはトラブルだ。
映画を上映している最中に殴り合いが起こるのは可愛いものだ。
万引きなどを弱い者にやらせ、自分たちは無関係を貫く卑劣な行為。
それによって善良な力無き者が淘汰され、どうしようもない連中が街を支配する。
しかしその連中1人一人では何も出来ない。

「なぁ?こいつにやらせようぜ?」
「おっ!!いいじゃん!!」
「じゃあ次はこいつな!!」

群れなければ何も出来ない。
1人の状態では強がるだけが取り柄のクズも同然だった。
だが近年、そのクズが増えすぎたために、街はもはや司法が役に立たないまでに腐敗の一途を辿った。
デンサンシティはこれまでにW.W.W、ゴスペルなどの犯罪組織の影響を受けてきた。
事件は解決したものの、それによって街の治安は悪くなっていった。
悪=カッコイイなどというふざけた風習が生まれた。
少しずれたことをしていた方が魅力的、タバコを吸い、喧嘩に明け暮れるのが青春などというメディアからの間違った影響も同時に受けているのが、中学生から高校生の連中だった。
たとえそれによって弱者が傷ついていたとしても、自分を誇示し続けるには全く罪悪感など無いのだった。
そして彼らの行き過ぎた行いを法は取り締まれない。
『少年法』だ。
彼らは暴力を振るっても人を殺しているわけではない。
たとえ人を殺そうとも少年法によって未成年ならば2年やそこらで出所することなど良くある。
親が大量の金を積み、目の眩んだ汚職警官や汚職警官が書類1つでそんな悪を街に再び放流する。
そして何度も同じことを繰り返すのだ。
法を犯すことを恐れない。
それは法を含めたこの街の全てが彼らを甘やかすからだ。
図に乗った彼らの欲望は留まることを知らない。

「.....」
「落ち着きなさい。言ったでしょう?怒りなんてあるだけ無駄だと」

メリーは駐車場に止まったハートレスのガヤルドの助手席で街を見ていた。
既に彩斗がいなくなって1週間目だった。
手がかりすら見つからず、巨大な組織であるディーラーも焦りを覚えていた。
そもそもがずっと施設で育ち、記憶もないため、頼れる身内などいないため、隠れることも出来ないはずだった。
クレジットカードも持たせているが、使えばすぐに分かる。
そんな状況でどうしようもないと分かっていながら、ハートレスに彩斗を探すことに強力を頼んだ。
本来ならこんなことはしたくない。
メリーはハートレスが苦手だった。
氷のような女性だと思っていたのだ。
街を歩く人の中に彩斗がいないかを見る。
しかし既に4時間近く経過するが、それらしき人間は1人もいない。
彩斗は少年でありながら美しい外見だった。
160センチメートル程の歳相応の身長にシミ一つ無い肌、中性的な顔立ち、青みのある艶やかな髪に、大きい目。
女性的な要素を併せ持った少年。
だが通るのは髪の毛をワックスで硬め、金髪や茶髪に染め、ピアスやタバコを加えた学生たち。
そしてその横を目につかないように、こそこそ歩いていく善良な学生たちだった。
メリーは怒りを覚えた。
彩斗とミヤを襲った不良たちが大笑いしながらカラオケバーから出てきた。
このまま歩いて家にも帰らず、何処かへ向かう。
前に彩斗に聞いたことがあった。
連中はデンサン港の廃工場を根城にしていると。

「ハートレス...兄さんが行きそうなところ...心当たりは?」
「一応、ディーラーの人間たちが死に物狂いで探してるけど、こっちに割ける人数は少ないわ。Valkyrieにディーラーの施設が幾つか乗っ取られたということは宣戦布告も同然よ。いつでも戦闘ができるように待機してる」
「...一体何処に?」
「街にはいないとすると、デンサンシティを出たかも。デンサンシティは自然に囲まれた近代都市。ちょっと出れば、密林といってもいいくらいの森がある。断崖絶壁の海もある。この森で人を探そうとするのは無理よ。地図も正確とはいえない。気づけば森を抜けて海に落ちたなんて珍しくもないわ」

メリーは人前では彩斗を「兄さん」、そして本人の前では「サイトさん」と呼び分けていた。
ハートレスは運転席の膝の上に乗せたMacbook Proに森の図を表示している。
確かに鬱蒼としている樹海とも言える場所だ。
もし夜に入れば、誤って死ぬ可能性は高い。
所々に沼や断崖絶壁がある。

「富士の樹海といい勝負よ。そこに入るのは得策とはいえない。だから取り敢えず、街を調べ尽くしてから、最終手段として森に入る」
「...じゃあ出来るだけ急いで...。ところでそのレーダーは?」
「彩斗のトランサーかケータイの電源が入れば、すぐさま反応するわ。でも彩斗はかなり賢い。もし自分の意志で身を潜めているとすれば、あまり期待は出来ない」

メリーは自分の親愛なる人の特徴を思い出した。
恐ろしいまでに洞察力と発想力、そして実行力を持っている。
確かに端末のGPSやネットの居場所検索機能などという初歩的な手で見つかるわけがない。

「もうそろそろ行きましょう。日が暮れるわ」

日が暮れては探すのは難しい。
それを悟ったハートレスはエンジンを掛け、アクセルを踏み込む。
するとガヤルドはスムーズに駐車場を飛び出し、まだ暴走族のホームグラウンドと化していない一般道を走って行った。





 
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