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銀河英雄伝説~生まれ変わりのアレス~

作者:鳥永隆史
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チームの弱点



 返された小テストに、リシャール・テイスティアはため息を吐いた。
 戦略概論と書かれたテストには、赤い×印が踊っている。
 書かれた点数には二十三点の文字だ。三十点満点でも、五十点満点でもない。

 百点満点でそれなのだ。
 五十五点の赤点で落第となるのであるから、小テストとはいえ非常に危険だろう。
 去年戦略概論を担当していたドーソンがいたら、嬉々として狙われていたであろう成績だ。
 それが幸か不幸か、当初こそ怒られていたものの今では教官からも見放されて怒られる事はなくなった。自分の倍ほどの点数を取った同級生が、叱られている。

 見放された――それは生徒同士でも同じようだ。
当初こそ仲良くしていた人間は少しずつ離れて、今では声をかけられることもなくなった。何点だったと比べられる余地もない。
 それが戦略概論の授業だけではなく、ほぼ全てにおいてそうだった。
 近くの席で、小さな笑い声が聞こえた。

 慌てて、隠すように小テストを畳んだ。
 それでも笑い声はやまないようだ。
 自分が笑われているのか、気になったが、後ろを振り向く勇気はテイスティアにはない。ただ笑いが早くやむことを祈りながら、前を向いていた。
 自分が勉強できないというのは、理解していたつもりだった。

 でもと、テイスティアは思う。
 戦術シュミレート大会によって、上級生と交流を深めれば、そのあまりのレベルの差にテイスティアは驚く事となった。自分よりも遥かに高次元な会話、そして作戦に、自分が口を挟める余地はない。
 ワイドボーンが言うには、もっともレベルの高い集まりとのことであった。
 それを聞いて、なぜ自分がそこにいるのだろう。

 足を引っ張るとしか思えない。現に一学年での戦術シミュレーター大会の優勝予想は、人望の高いラップ先輩を筆頭に、ワイドボーンを破ったヤン先輩、四学年と二学年の主席がいるシュレイ先輩とフォーク先輩、一学年主席がいるセランのチームの名前はあったが、ワイドボーンのチームは少ない。
 理由はテイスティアがいるからだ。

 テイスティア自身としては、例え自分がいたとしてもワイドボーン先輩を初めとした先輩方が負けるところは予想できない。
 それは非公開だが、毎日の訓練での戦いは、過去で手本とされるどの戦いにもひけを取らないと思っている。

 冷静沈着に与えられた任務をこなすローバイク先輩。
 芸術のように艦隊を綺麗に動かすコーネリア先輩。
 まさに天才的とも言える用兵を行うワイドボーン先輩。
 そして、そのワイドボーン先輩にすら勝って見せたアレス先輩。

 特にアレス先輩とはわずか一年の差のはずが、あまりの才能の差に落ち込みすら感じる。
 学年があがればそれが普通となるのだろうか。
 それならば、自分がその場所に立つのは酷く非現実的なことのように思える。
「それでは、本日の授業を終了する」
 言葉とともに、教官が立ち去った。

 授業が終わり、以後は自分の時間となるが、最近は戦術シミュレーターのために訓練の時間となっている。
 早くいかなけれなと、テイスティアは鞄に小テストをしまった。
 机の中の教科書と筆記具を次々としまうと、声がかかった。

「テイスティア」
「な、何?」
 慌てたように振り返ると、そこにはにやにや同級生が三人いた。
 普段はテイスティアに声もかけない人物だ。
 授業態度は真面目と言い難く、成績も普通だ。

 先頭の男はランデルといったろうか。
「掃除代わってくれよ?」
「え……」
 驚いたように問い返した。

 授業後は、順番に室内を掃除するようになっていた。
 それを変われと言う事なのだろう。
 時代錯誤の箒を手にして、ランデルがそれを差しだした。
「えじゃねえよ。掃除を代われっていってんだ」
「き、昨日代わったよね?」

「俺はな。次はこいつが担当だって」
 馬鹿にしたように笑いながら、ランデルは隣を差した。
 そこには申し訳なさそうな様子が一切ない男が笑っている。
「だ、だめだよ。昨日だって遅れたから、今日も遅れるわけにはいかないよ。先輩を待たせちゃうし」

「こいつの先輩は待たせてもいいのかよ?」
「そうじゃないけど。それなら一緒にやろう、早くなるし」
「お前何言ってんの? 頼んでやってんだから、はいって言えよ。第一、お前がいてもいなくてもかわんねーだろ」

「そ、それは」
 奥歯を噛んだテイスティアを、ランデルは馬鹿にしたように笑った。
 ショックを受けたような様子が面白かったのだろう。
 指を差して馬鹿にする様子に、教室内に残った何人かが顔をしかめたが、誰も止めようとはしなかった。

 またかと、そんな印象に教室内を出ていく。
「笑えるわ。それより、さっさとしろよ」
 ほらと、差し出した箒に、テイスティアは唇を噛みながら、受け取った。
「馬鹿がちんたらするなよ……行こうぜ」

 ランデルを含め三人の男達は、礼すら言わずに歩きだした。
 もはやテイスティアすら見ていない。
「おい、女。端的に言うぞ、邪魔だ」
 と、教室の扉から聞き覚えのある声がした。

 同時に、それは本来は一学年の教室に存在しない声で、
「テイスティア。何している、迎えにきたぞ」
「ワイドボーン先輩!」
 驚いたようなテイスティアの声に、周囲が慌てて敬礼を行う。
 突然現れた最上級生の姿に、目を丸くしてれば、ワイドボーンはその様子に構うこともなく、ずかずかと室内に入ってきた。

「何をしている?」
「え。えっと」
「また掃除とか寝言をいうんじゃないだろうな、その箒は何だ?」
 三人の男達も、足を止めた。

 ランデルの隣をワイドボーンが苛立ったように通り、テイスティアの前に立つ。
 箒を盾にするように握りしめた、テイスティアがワイドボーンを見上げた。
 その箒に、ワイドボーンが気づいた。
「お前のクラスは一カ月間ずっと掃除とか面白い仕組みでもあるのか?」

「ち、違います。これは」
「これはなんだ、テイスティア。どうなんだ――貴様らにも聞いているのだぞ?」
 それまで他人事の様子であった三人の男達に問いかけられ、彼らは面白いほどに狼狽した。
「え。いや」

 男達が、正直に答えられるはずもない。
 戸惑ったような声に、ワイドボーンは苛立ったように髪をかいた。
「貴様のクラスはどもりが流行ってるのか。どうなんだ、答えろ――後輩」
 テイスティアと三人の男達からはまともな答えが返ってこないと思ったのだろう。ワイドボーンは自分が押しのけた入口の女性に声をかけた。

「ち、違います」
 慌てたような言葉に、ワイドボーンは満足したように頷いた。
「違うらしいぞ、テイスティア。ならば、貴様はなぜ二日連続で掃除などをしている。計算まで出来ないのか?」

「それは」
 答えられず、視線がランデルを向いた。
 ランデルはその視線に、ちっと小さく舌打ちをする。
「テイスティアが優しくて、自主的に代わってくれたんです。ワイドボーン先輩」
「ふざけるな、後輩。貴様らに名前を呼ぶ許可を出した覚えはない。第一、こいつは掃除など代わっている余裕はない」

「わかりました、すみません」
 言葉ではそう言いながらも、不満な様子を隠すこともなく、ランデルはテイスティアの箒を奪い取った。
 覚えてろと、小さく呟く。

「テイスティア、お前の担当はいつだ」
「それは来週の水曜日です」
「そうか。聞いたか、後輩――テイスティアが代わった昨日の掃除は、水曜日と交換だ。水曜日もお前がやれ」
「な!」

「な? おい、屑ども。間違えるな――私は交換だと言ったんだ。はい以外口にするなと、教官から習わなかったか?」
「ちょ、横暴だろが」
「横暴? 横暴というのは、抵抗できない人間に無理矢理自分の仕事を押しつけるお前らのことをいうのだ。屑」

 ワイドボーンは断言し、そして周囲を見渡した。
「さらに言えば、それを見て見ぬふりをする貴様ら全員も同罪だ」
 そう吐き捨てられれば、周囲も慌てたように視線をそらした。
「ふん。言い返す根性もないか――玉無しばかりだな」
「ふざけんな、てめっ!」

 辛辣な言葉に、ランデルが手を伸ばした。
 もはや上級生であることも忘れているようだ。
 あと小さくテイスティアが反応すれば、ランデルの身体は宙を舞っていた。
 本人はなぜ投げられたかわからないようで、地面に叩きつけられて悶えている。
 テイスティアの目には、ワイドボーンが手を小さく捻ったようにしか見えなかった。

「屑が。私は学年主席だぞ? 陸戦に技能がないとでも思っているのか」
 そうワイドボーンは胸を張ってつげ、残った二人の男に視線を向ける。
「で、貴様らはどうする?」
「あ、いや」
「やはり玉無しではないか。行くぞ、テイスティア」

「は、はい」
 慌てたようにテイスティアが頷けば、ワイドボーンはテイスティアの様子を確認せずに、歩きだした。
 駆けだすようにテイスティアが続けば、ワイドボーンがちらりと肩越しに見る。
「勘違いするなよ。あんな能無しどもに抵抗できない貴様は、あの能無しよりも遥かに無能だ」


 + + +

 赤軍と青軍が並びあって砲撃を開始している。
 情報画面に映し出されるのは双方ともに同様の損害だ。
 いや、若干青軍の方が被害が大きい。
 先に動いたのは青軍であった。
 並んでいた状態から左翼が緩やかに左斜めに動きだした。

 攻撃線が集中する。
 撃ちこまれた中で、敵左翼だけが一瞬身じろぎのように動き出した。
 しかし、それもすぐにおさまり再び連携を取って青軍左翼に攻撃が集中した。
 と、それまで青軍の色が増加した中で、損傷艦艇に赤軍の色が増えた。
 敵の中央と右翼が斜めに駆けあがり、赤軍の右翼に攻撃を集中し始めたからだ。

 咄嗟に隊列を変換させようとするも、敵左翼によって右翼はおろか左翼も攻撃のために隊列を前に出している。
 一万の砲撃にさらされた赤軍左翼は混乱したように慌てて反転しようとした。
 そこに斉射が加われば、もはや崩壊するしかない。
 混乱の状況にある中で、中央も右翼もまともな攻勢もできるはずがない。

 態勢を立て直そうとしたところで、青軍左翼はすでに初撃から態勢を立て直しており、赤軍右翼に攻勢を加えた。
 情報画面では赤軍だけの損傷が広がる中で、降伏の文字が見えた。


 ほぼ同時に五つのカプセルから空気を排出する音が聞こえて、筺体全部のライナーがあがった。
 局地戦に限定していたとはいえ、実時間で二時間もの戦闘を狭い筺体で過ごしたのだ。硬直した肩を回して、筺体から姿を見せたのはワイドボーンチームの五名である。

 申し訳なさそうなテイスティアをローバイクが自然と慰め、コーネリアは結んでいた髪留めを外して、髪をゆっくりとといた。
 眉をひそめていたワイドボーンが姿を見せて、同時にアレスもヘッドホンを外した。
 非公開試合のため、勝利を告げるアナウンスはない。

 それでもどこか楽しそうにワイドボーンがアレスに近づいた。
「また負けたか」
「ぎりぎりでしたけどね」
 苦笑するアレスだが、決して嘘を言っているわけではない。

 こちらが動くまで、アレスとコーネリアの艦隊――青軍は劣勢であった。
 時間の関係上、局地戦であるから、今回は補給線を気にする必要はない。
 ほぼ同数の艦艇での真正面からの戦闘だ。
 それでいて、ワイドボーンは優位に戦闘を進めていた。

 最後に戦場を動かして、敵を左翼に引きつけて足を止め、同時に斜めに敵左翼に対して攻勢をかけられたが。
 次第に強くなっているというのが、アレスの印象だった。
 ワイドボーンだけではない。
 ローバイクは攻勢にも守勢にも秀でており、さらに後方で補給線を支えることも出来る。顔通りに実直で、自分に与えられた任務を完璧にこなしている。

 コーネリアの艦隊運用は、芸術的だった。
 原作の艦隊運用の達人であるフィッシャーにはいまだ会えないし、彼の艦隊運用を見た事はないが、それに劣らないのではないかと感じる。
 今回は彼女と組む事になったが、劣勢からの艦隊行動はほぼ彼女が行ったものだ。

 ワイドボーンやローバイクは苦手ではないものの、自分も含めて彼らであったならば失敗していた可能性もあった。こちらの左翼に敵の意識を引きつけさせて、敵の左翼に中央と右翼をぶつけるという単純な作戦を成功に導いたのは、彼女といっても良かった。
 これで原作で名前が出ないのだから……。

 原作ではローバイクやコーネリアが加減をしていたなどという事はないだろう。
 自分と出会ったから才能が開花したなどと自惚れるつもりもない。
 おそらくは。
 ――才能が理解される前に死んだのだろうな。

 ため息混じりに、アレスは呟いた。
 この世界は死者が多すぎる。
 元々の人口も多いのであろうが、一回の会戦での死者が数十万人単位で増加する。
 アムリッツァに至っては、二千万人だ。
 アレスの――彼の前世での人口の実に六分の一が死に絶える。

 そして、それは優秀である、ないに限らず平等に。
 アレスも、彼もまた戦場に出た瞬間に死ぬのだろうか。
「どうした、後輩」
「何でもありませんよ……先輩。どんどん皆強くなっているなと思ってました」
「そうか、それは楽しそうで何よりだ。だが」

 小さな舌打ちとともに、ワイドボーンが見たのはテイスティアだった。
 自分の欠点を見つめる事が出来ても、元より劣る人間に対して冷たいところまでは矯正できないらしい。
 もっとも、そこまでは面倒が見切れないというのが正直なところだが。

 ワイドボーンのテイスティアに対する態度は、非常に厳しい。
 それは周囲が優秀であるから、よりテイスティアが凡人に見れるのだろう。
 艦隊運動、戦術思考、戦略思考――その他、確かに優れているところはなかった。
 ワイドボーンいわく、赤点をとって来年にはいないというのは真実なのだろう。

 同じチームであるから、頑張ってもらいたいとは思うが、それでも戦場に出ない方が彼にとっては幸せなのかもしれない。
 ローバイクに慰められて、心底申し訳なさそうにする姿は小動物のようだ。
 見る分には良くても、そこに配属された部下が可哀そうだろう。

「奴は何度やっても成長しないな。今回も勝手に左翼を動かそうとした」
「ああ。それです、一瞬左翼がこちらの動きに気づいたように見えたのですが?」
 敵がこちらの陽動に引っかかる中で、左翼だけが前に出ずにこちらの右翼へと攻撃を加えていた。その瞬間、見破られたと思い戦術の修正を考えたが、すぐに元に戻ったため、結局は当初通りの行動となったのだが。

「まさか。今回の左翼は奴だ。なぜ動かしたと聞けば、なんとなくと――ふざけた回答だった」
「何となく。作戦を見破ったわけじゃないのですか?」
「そう言われれば、こっちだって艦隊を動かしたさ。結果としては奴が正しかったわけだが」
「そういうことって、前もありませんでしたか?」

「……前も。いや確かに、変な動きをする事は前もあったが、あり過ぎてわからん」
「確かに」
 テイスティアが怖いという理由で艦隊を動かすことは何度もあった。
 無意味ということも数多くあった。

 だが。
「テイスティア」
「は、はい!」
 呼ばれて、驚いたようにテイスティアが背筋を伸ばした。
 急いで走ってこようとして、間の筺体に足をぶつけて、それでも涙目で走ってきた。
「ご、ごめんなさい」

 とは、誰に対してなのか。
 今回の戦いなのか、それとも高価な筺体を蹴った事に対してなのか。
「謝ることはないけど。今回の動きを教えてくれるか?」
「ご、ごめんなさい!」
 また謝られた。

 その姿は確かに軍人らしくなく、とても部下に対して命令している姿は想像できない。むしろ、新兵の二等兵ですらここまで腰は低くないだろう。
 常に謝られるため、あまりに謝罪の言葉が軽いため、すでにワイドボーンはいらいらと足を鳴らしていた。その姿が、よりテイスティアのごめんなさいの回数を増やすらしい。
「テイスティア。謝れとは言っていない、今回の動きを教えてくれと言っている」

「ごめんなさい。あ、その、あの……ごめんなさい」
「き、きさ、あああっ!」
 隣で怒声を上げようとしたワイドボーンが、足を押さえて蹲った。
 目を白黒させるテイスティアに気にするなと、地面に叩きつけた足を後ろに隠しながら、アレスは笑顔でテイスティアの肩をたたく。

 足が、足が……と喚くワイドボーンを体で視界から隠しながら、優しくアレスが問いかけた。
「うん。で、何故ワイドボーン先輩の命令を無視して、こちらの左翼に攻撃しなかったんだい。ううん――なぜ、こちらの作戦を看破した?」
「そ、そんな見破って何かいません。僕がアレス先輩の作戦を見破れるわけが」
「でも。君の動きは正しかった。もし、そちらの左翼が動かなければ、こちらは君の艦隊に対して攻勢をかけれなかっただろう。さらに言えば、もし君の言葉がワイドボーン先輩に理解されていれば、作戦自体が完遂できなかった」

「み、見破って何か。ただ、何となく……」
「何となく?」
「何となくなんです。本当に、何か、嫌だなって思って。それで」
「嫌だなと思ったから、こちらの右翼を攻撃したと……じゃ、何で嫌だと思った?」
「そ、それは何となくで」

「何となく何となくと、きさ……あああああっ、鼻が、鼻が」
 蹲ったままに叫びかけたワイドボーンを踵で打ち抜きながら、アレスはにこやかに答えた。
 ますます目を白黒させるテイスティア。ローバイクとコーネリアは、その様子に小さく苦笑している。

 周囲の失笑に、少しずつ緊張も取れたのか、テイスティアは少し考えた。
「その。今までのアレス先輩だと艦隊を動かしたら、他も少し動いた気がしたんです。でも、今回はまったく動きがなかったので」
 アレスは目を開いた。
 その様子に怒られるとテイスティアは頭を抱えた。

 確かに、一つの艦隊を動かす時にアレスは他の艦隊の連携も考えてわずかに艦隊を動かしている。
 それは敵の動きに合わせてもっとも効率的な射線を作りだすことであった。しかし、それは誰にも気づかれないほどに微妙だ。小さくて艦隊一個分程度の動きでしかない。
 現にローバイクとコーネリアが顔を見合わせている。
 その事にますます申し訳なさそうにするテイスティアに、アレスは黙っていた。

 おそらくはこちらの癖を読まれた。
 そう結論付けてよいのだろうが、彼が癖を読んだのはわずか艦隊一つ分の動きだ。
 彼が嫌だといったことを考える。
 ただ怖いからと思っていたが、本当にそれだけだろうか。
 頭を抱えるテイスティアに、アレスはしばらく迷う。


「君は、士官学校をやめた方がいいな」

 
 
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