『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
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第三十五話
「くそッ!! また攻めて来たぞッ!!」
「往生際の悪い奴等だなッ!!」
エルベ藩王国軍との戦闘は二日目に突入していた。初日の攻撃にエルベ藩王国軍は一旦は引き上げたが、戦力を補充して第二次攻撃を開始していたのだ。
「装填良しッ!!」
「復唱はいらんッ!! 装填出来次第撃ちまくれェッ!!」
「はいッ!!」
九六式軽機関銃を持つ一等兵は准尉の言葉を聞いて引き金を引いた。
九六式軽機関銃の銃口から六.五ミリ弾が発射されてエルベ藩王国軍の兵士の鎧を貫通させて兵士の命をもぎ取る。
「九九式なら良いんですがね」
三八式歩兵銃に六.五ミリ弾のクリップを装填する軍曹はそうぼやいた。
「文句を言うな軍曹。俺達はまだいい方だ。高田の班の機関銃は十一年式軽機関銃だぞ?」
「……すいません、少し言い過ぎました」
軍曹は謝って接近してくる騎兵に六.五ミリ弾を放ったのである。
「准尉殿ッ!! 弾がありませんッ!!」
九六式軽機関銃を撃っていた一等兵がそう叫んだ。周りにある弾倉は全て空であったのだ。
その間にも騎兵隊は守備陣地に接近していた。准尉は後退をしようかと思案した時、後方から射撃音が聞こえた。
「弾を持ってきたぞッ!!」
「海軍さんッ!?」
補充の弾を持ってきたのは海軍陸戦隊の兵士達だった。
「これくらいあれば良いだろ?」
「助かりますッ!!」
一等兵は陸戦隊員から弾倉を受け取って初弾を薬室に装填して再び射撃を始めた。
「済まないね海軍さん」
「いやぁ、良いって事ですよ准尉。増援には自分達もいますので」
陸戦隊の二等兵曹はニヤリと笑ってベ式機関短銃を接近してくる騎兵に撃ちまくった。
「えぇい、何故だッ!! 何故奴等の陣地を突破出来んのだッ!!」
エルベ藩王国軍の陣地でへルマンはそう叫んでいた。
「異世界軍の抵抗が激しく、陣地の突破が容易ではありません。このままでは前回同様に戦力は消耗しますッ!!」
「ぬぅ……。やむを得ん、第二次攻撃は中止して戦力の補充を努めるのだッ!!」
エルベ藩王国軍は第二次攻撃を中止して引き上げたのであった。日本軍もそれを察知して弾薬の補充を始めた。
「ふむ……いくら異世界の軍でもそう簡単には勝てんか」
「炎龍討伐隊と比べると装備は旧式ですのでな」
「ほぅ、すると勝てないのは旧式だからかね?」
デュランは狭間にそう聞いた。
「いえ、旧式であろうとも我が軍は圧倒します」
「では何故圧倒しない?」
「デュラン殿、戦は力押しで勝つだけではありません」
狭間はニヤリと笑ったのである。
そして数日後、エルベ藩王国軍は第三次攻撃を開始したのである。
「突撃ィッ!!」
『ウワアァァァァァァーーーッ!!!』
エルベ藩王国軍は雄叫びをあげながら突撃を敢行した。それを視認した日本軍は迎撃を開始する。
「撃ェッ!!」
後方に陣地を構える三八式野砲が砲撃を始めて第三次攻撃を妨害するが、エルベ藩王国軍は味方の屍を乗り越えて突き進んだ。
「撃ェッ!!」
小銃や軽機関銃も射撃を始めた。六.五ミリ弾が兵士の命を刈り取る。
「今度こそ異世界の軍を攻め落とすのだッ!!」
へルマンがそう吠える。既にエルベ藩王国軍の兵力は底を尽き、この第三次攻撃に全てをかけていた。
しかし、彼等に勝利の女神が微笑む事はなかった。突然、大きな爆音が響いてきたのだ。
「な、何だこの音はッ!?」
「異世界軍の後方上空に多数の飛翔体ですッ!!」
日本軍の後方から飛来してきた飛翔体は徐々に大きくなり、姿を現したのである。
「陸軍飛行隊だッ!!」
「味方機だッ!!」
上空を見上げていた陸軍兵士が歓声を上げた。飛来してきたのは九七式戦闘機二十機、九九式襲撃機二十機、九七式軽爆撃機同じく二十機であった。
「おぉ、いやがるいやがる。全機攻撃だッ!! 徹底的に叩けェッ!!」
九七式戦闘機が急降下をして機銃掃射をする。七.七ミリ弾はエルベ藩王国軍の兵士の命を刈り取る。
そして九七式戦闘機の後方から九九式襲撃機と九七式軽爆撃機が五十キロ、六十キロ小型爆弾を投下してエルベ藩王国軍兵士を吹き飛ばした。
「な、何だッ!? 爆発の魔法かッ!!」
へルマンは動揺する。その時、伝令が駆け込んできた。
「ほ、報告しますッ!! 我が軍の後方にデュラン殿配下の軍団が展開していますッ!!」
「な、何だとォッ!!」
伝令の報告にへルマンは吠えた。デュラン配下の部隊約一万はエルベ藩王国軍に気付かれぬように両翼へ展開していた。
「馬鹿息子の引導を此処で渡すッ!! 全軍突撃ィッ!!」
『ウワアァァァァァァーーーッ!!!』
デュラン軍が雄叫びをあげながら突撃を敢行した。
「へ、陛下ッ!! 如何なさいますかッ!!」
「ふ、防げッ!! 防ぐんだッ!!」
その時、一機の九七式戦闘機が急降下してきて機銃掃射をした。狙われたのはへルマン達だった。
「ぐゥッ!?」
へルマンは右脇腹を貫通する重傷を負って馬から落馬した。
「……ぅ……」
へルマンは薄暗くなる意識の中、負けた事を漸く悟ったのであった。
後書き
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