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緋弾のアリア 鋼鉄の武偵

作者:M・R・F・D
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真実を知る者

「ヤバい……迷った」

追いかけてきたのは良いけど……迷ってしまった恥ずかしい。

大体よくよく考えれば僕も見取り図に少し目を通した事があるくらいで、実際に来てみた事は皆無に等しい。

「さっきの人大丈夫かな……ん?」

少し開けた場所に出た。

「ほえぇ……こんな場所があったのか……」

そこは小さな公園だった。明らかに人工物だと分かる小さな噴水が中央に佇み、水の静かな流れの音が聞こえてくる。

「あれ? あの人……さっきの」

噴水をこちら側から見て裏側の方に、さっきのマントの人が座っていた。

……よし。怪しい人に見えるし、ここは一つ職務質問をしよう。僕、一応武偵の端くれだし。

「えっと、そこのあなた……ちょっといいですか?」

「────! もう追っ手が!? ……って、あなたはさっきの……」

声をかけたこっちがびっくりしてしまいそうな反応だったけど、向こうも僕を認識してくれたようだ。 

「えっと、さっきはぶつかってしまってごめんなさい。僕はこういう者なんですけど」

鞄の中から自分の武偵手帳を取り出し相手に開いて見せる。刑事ドラマとかでもあるよねこういうシーン。

「……クロード・マティス……さん!? え、あなたがクロード・マティスなんですか!?」

「え、あ、はい。一応僕がクロードで間違いありませんけど……」

僕の名前を確認するや否やおもむろに詰め寄ってきて顔を確認でもするかのようにのぞき込まれた。なにこの反応?

「そんな……!? 写真と全然違う違うじゃないですか……!? それにそもそも性別だって……」

こちらに背を向け、俯きがちにぶつぶつなにか言ってるみたいだけど……そんなに僕が僕であることに納得出来ないのだろうか?

「それで、ちょっと良いかな?」

「誤情報……? それとも悪戯だとでも? でもなんの為に……って、す、すみません呼びましたか?」

「うん。えっと、僕はこれからあなたに幾つか質問させて貰いたい事があるんだけど……」

「職務質問という事ですか? それは構いませんよ。しかし1つ、条件があります」

「? 条件? どういうこと?」

「私は今、とある事情があって特殊な条件下の下行動しています」

「ふむふむ……それで?」

「つまり、私は簡単に人に自分について話してはいけないのです」

ものこの時点でこの人が普通の人じゃないことくらいは分かってしまっていたが、それでも僕は続けた。

「えっと……じゃあどうすれば僕の質問を受け付けてくれるのかな?」

「あなたが私の信用に値する人物かどうか、証明出来たらなんでもお話します。それが無理なら私はここでなにも喋る事なく、帰らせて貰います」

初対面の人間の信用に値できる人類なんて、僕の知る限りは存在しないよ……

怪しさ全開だなこの人。どうも声音から女の子なんだとは思うけれど……それにしたって怪しすぎる。

「じゃあ、君の信用を勝ち取るにはどうすれば良いのかな僕?」

「今から私のする質問に応えられたら、あなたを信用しましょう」

なんで職務質問しようとした側が質問されてんだろう……
もうこの際だ。早く終わらせて注意して、さっさと寮に帰ろう。

「大丈夫です。この質問はあなたが本当に『クロード・マティス』ならすぐに応えられます」

「はあ……さいですか」

「いきますよ……」

「そこまでだ。『 銀ノ巫女(シルバリオン)』」

突如として響いたその声。すぐに周囲を見回すと3人の黒ずくめの人物が僕たちを包囲していた。

……何者だこいつ等は?

3人共同じ恰好をしている。あの黒い服は……多分武偵高の色違いだな。厳密には色違いモデルは無いから意図的に黒くしてるのだろう。そして頭を完全に覆い尽くす黒いフルフェイスメットを被っていて……極めつけは三者三様に持っている物騒な拳銃とかナイフとかだ。どう見ても友好的ではないのが一目瞭然、はっきりと分かる。こいつ等は多分僕の敵だ。

「くっ、もう追って来たんですか……しつこいですよあなた達」

「ねぇ、この人達誰? 知り合い?」

「個人では知りませんよ。けど、何者なのかは知ってます」

「彼等は」

「そこまでだ『銀ノ巫女』。それ以上の発言は重大な秘密事項に抵触する。命が惜しければ我等と共に来い」

「命も何も、私が死んだらあなた達が困るんじゃないんですか? だからここに着くまでにもあなた達は私を取り逃がしてるんですよ……」

「応えろ。我等と来るのか? 来ないのか?」

「応え? イヤだ、ですか? NO、ですか? それともあっかんべー、ですか!? どれでも好きなので応えてあげますよ!」

つまり、ついて行かないって事か? なんともまあ、新しい断り方だな……

「……そうか。ならば致し方ない。少々手荒く対応させて貰うまでだ」

じゃき! 3人は武器を構えて包囲網をジリジリと狭めて来る。

……もしかしてこれ、僕もターゲットの1人?

「男の方はどうなっても構わない。『銀ノ巫女』の捕縛が最優先事項だ」

「「了解」」

どうやら知らない内にヤバい事柄に巻き込まれてたみたいだ……仕方ない。

「えっと……君名前なんだっけ?」

「え……いや、だからそれは今はまだ教えられないんですって」

こんな状況なのに特に怯えた様子も見せずそう返してきた。はあ、じゃあここを乗り切ってからまた聞こうかな。

「ちょっと、これ持っててくれる?」

「? なんでですか? 早く逃げないんですか?」

疑問を投げかけつつ防弾製の鞄を受け取ってくれる彼女。

「降りかかってくる火の粉は振り払うよ。それにこんな状況で、女の子1人置き去りにするほど、僕の根性は腐ってないんだよ……ね!」

「な!? 消え……ごふっ!」

よし。まず1人。

「き、貴様! 今なにをした!」

なにって……

「普通にボディ入れただけですけど……というか、あなた達こそ何なんですか一体? 女の子1人追いかけ回してるみたいですけど……事と次第によっちゃあ痛いですよ?」

これ武偵高の制服にしては脆いな……レプリカか?

「くそっ! T3! 2人で挟み撃ちだ!」

「くっ、了解!」

そういうなり、黒ずくめの男Aは俺の前に、B は俺の背後に回った。うーん……まあ、妥当な判断だけど……

「今だ! 掛かれ!」

「悪が……死んでっ……ぐあっ!?」

後ろから来たBの方には大体の読みで軽く回し蹴り。それだけで簡単に倒れてくれた。

「くっ! ……何者だ貴様!?」

ヤケになったのかナイフを構えて突っ込んでくるA。そんななんの捻りもない直線的な突撃なんて迎撃してくれって言ってるような物だ。

「ほいっ」

なので無難にナイフを奪って首もと……頸椎の辺りに軽くチョップを入れさせて貰いました。

なんか……こいつ等、見た目に反して超弱いぞ。ナイフの構え方なんて完全に素人丸出しだったし……

「まあ、いっか。取り敢えず 教務科(マスターズ)に報告だな」

「あの……」

さっきからずっとそこに立っていた彼女がおずおずといった体で話し掛けて来た。

「ごめん。携帯使いたいから鞄返して貰えるかな? 持っててくれてありがとう」

「あ、はいっどうぞ」

「えっと……職員室の番号は……」

「マティスさん……助けてくれてありがとうございます。」

「いーえ、どう致しまして。……あれ、番号登録してないや……」

弱ったな。番号が分からないんじゃ直接行くしか……いや待てよ? 後は風紀委員に任せてもいいか。

「それでその……お話の事なんですけど……」
「あ、そういえば忘れてた。それに君さり気に僕のことマティスって呼んでくれたね。クロードで良いよ」

「……では、クロードさん。私から、あなたにお話があります」

「じゃあ、ちょっと待っててくれる? 今後始末しちゃうから」

言いながら風紀委員の知り合いにコールする。3コールくらいで繋がり話をつけた。

「ゴメンね待たせて。さて、じゃあ」

「待って下さい。この話はとても大事な話なので聞かれたくないんです。どこか別の場所はありませんか?」

「じゃあ……僕の部屋でいいかな?」

「分かりました。では案内お願いします」

僕は彼女を引き連れ、寮へと帰った。

~ ~ ~

「い、今なんて……?」

彼女の口から飛び出した言葉は、今日という日の中で一番ショッキングだった。

「私の名前はマリアン・オルファン。大義賊クロスボーン・バンガードの……最後の生き残りです」
 
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