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緋弾のアリア 鋼鉄の武偵

作者:M・R・F・D
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第1部武偵編
序章その名はscull
  遭遇

「────でさぁ、そこで長谷川がさぁ……おい、聞いてる?」

「……へ? なんか言ったか(たける)?」

「なんだよなんだよ。クロスさんよぉ……お前人が折角元気なさげな友人の為に面白可笑しいトークショーを繰り広げてやってるつーのに……無視ですか? シカトですかイジメですかぁぁぁ!?」

コイツの名前は柏木剛(かしわぎたける)。この東京武偵高校入学以来の僕の親友だ。特徴を列挙するならば僕より5㎝も高い180㎝の身長と、何故か男の癖に肩甲骨にまで届く位にのばして一括りにしている黒い髪、あとウザさと被害妄想癖が挙げられる。

「ああごめん。それで、なんだっけ? 田口が野良犬の大群に追っかけられて酷いめにあった、だっけ?」

「全然聞いてねぇじゃねえか! やっぱりお前俺の事キライなんだなそうなんだな!? だからこの前一緒に映画観に行ったとき席を1つ明けて座ったんだな!? 俺がキライならキライって直接言えよ! 俺の心のライフはもう0だぜ!?」

聞いていなかったのは事実だが、映画館での話は今関係ないだろ……だってお前、『彼女が出来たときの練習』とか言って俺の手握るじゃん。正直言うと気持ち悪い。めっちゃ手汗かいてるし。

「よーし席に着けお前ら! 出席とるぞ!」
黒板の前にある教卓に着き、号令を飛ばしてきた男性の名前は熱気焼斗(ねっきしょうと)教諭。常に元気、とにかく元気。冬でも短パンの熱血教師だ。こういう人物は普通暑苦しいと言われて生徒から敬遠されがちだが、熱気先生はどんな生徒にも分け隔てなく接するため寧ろ人気者の部類に入る。あの人格者で有名な高天原(たかまがはら)ゆとり先生と同等の慕われようだ。

そんな熱気先生が檄を飛ばせば……

『………………』

さっきまでザワザワしていた生徒達が一斉に席に着き、先生の次の言葉を待っている。剛や僕も例外ではない。

「さて。今日からこの2年B組の担任になった熱気焼斗だ。知ってる奴も見たこと無い奴にもまずはこれを言わせてくれ……」

熱気先生がそこで言葉を切り、そしてそれまでの神妙な雰囲気をぶち壊すように

「無事なお前らにまた会えて……先生は嬉しいぞぉぉぉ!!!」

『俺 (私)達もだよ先生!!!』

……はは、これだよ。どうやら今年も去年に比べて騒がしいクラスになりそうだな。

~ ~ ~

東京武偵高校。そこは武力を行使する探偵……通称『武装探偵』を育成する国家機関である。略して武偵と呼ばれる。
武偵とは報酬に合った仕事をなんでもやることから何でも屋としての面を持っている他、警察とは別で動く武偵企業なる組織も存在する。
近年、凶悪化していく犯罪に対抗するために作られたのが武偵制度。ここは、そんな武偵を育成する学校なのだ。
ここでは毎日の荒事が日常茶飯事なので、世間一般にはあまり良い目では見られていないんだけどね。
そんな高校に俺……クロード・マティスは在学している。
今もどこかで戦い続けているであろうあの人達の役に立てるようになるまで……

~ ~ ~

「おいクロス、校内メール見たか? 爆弾事件(ボムケース)だってよ物騒だなぁ」

帰り道、剛がそんな事を言って来たので僕もケータイを確認してみた。

「被害にあったのって……2年生か」

幸いにして生きてるようだが、如何せん気になるな。なんだこれは?

「自転車での通学中、サドル裏にC4が仕掛けられていた模様……ってつまりはチャリジャックって事か?」

「ほう? クロスにしては上手い事言うじゃねーか」

「にしてもツイてないなこの人。新学期早々にこんな事に巻き込まれるなんてさ」

因みにさっきからクロスクロス言われているがこれは僕の愛称である。クロードのクロとマティスのスでクロスだ。

「乗り物を奪って爆弾とか、『武偵殺し』にそっくりの手口だな」

『武偵殺し』とはそのまま武偵のみを狙った爆弾魔の事である。ちょっと前にかなり有名だったがつい最近ようやく犯人が逮捕されたらしい。

「模倣犯かなんかだろどうせ? ま、俺たちには関係な……くねぇぇえ!!!」

「! な、なんだよ剛。急に叫び出して」

「今日 蘭豹(らんぴょう)先生に呼び出しくらってたのすっかり忘れてたあぁぁあ!!!」

叫びながら校舎の方に疾走していく剛……憐れだな。『あの』蘭豹からの呼び出しを忘れるなんて……命がいくつあっても足りないよ。
蘭豹は香港マフィアのボスの1人娘で『人間バスターバンカー』の異名を持つ暴力教師なのだ。噂では勢い誤って何人かの凶悪犯罪者を葬り去ったという話も聞く。剛大丈夫かなぁ……半殺しで済めば良いけど。

そんな剛の心配をしつつ、もう既に冥福を祈る器用な事をしながら再び家路へ。

ドンッ

……つこうとしたら人とぶつかってしまった。

「す、すみません! 大丈夫ですか?」

ぶつかってきた人はフードを目深に被り全身裾の擦れたマントみたいなのを羽織っていた。よろけているところを引き寄せ謝ったけど……なにこの怪しい人。

「こ、こちらこそすみません……では急いでいるので失礼します……!」

その人はかなり慌てて走って行った……路地裏の方に。

ここいらの地域は人工島になっており、武偵高がある島と居住用の島に別れている。そして今は居住用の島の内部のほうであるのだがここら辺は建物間の裏通りが入れ込んでいて慣れていないと大通りに戻ってくる事も難しい。

あの人……大丈夫かな……?

「……様子もおかしかったし、尾行()けてみるか」

僕もまた、その人を追って、路地裏に入って行った。

結果としてこの行動が、後の自分の運命を大きく変えてしまう分岐点(ターニングポイント)になる訳だけども……そんな事分かる訳なかったんだよな。 
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