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英雄伝説 零の軌跡 壁に挑む者たち

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21話

クロスベル市南東区が旧市街と呼ばれるようになったのはこの10年のことである。
駅や空港が建設されるまでは都市計画の一環もありほかの区と同様に都市開発が進められた。
そして駅と空港の建設により爆発的に増加した流通量から倉庫街としての側面が強くなり、ある程度の発展を見せた東南区だったが、10年前の百日戦役後の帝国、共和国の緊張状態による物流の鈍化で倉庫街としての地位を失っていく。
さらに鉄道を挟んだ“鉄橋の向こう側”という立地条件の悪さ、中心部からも遠く使い勝手が悪いため人口は流出し地価は下落。不戦条約以後の物流と景気は戻ってきているが、一度開発が止まり放置され治安も悪化し近代ビルの一つもない取り残され続けた古臭い昔の町並みと誰も住まない廃墟を残す東南区は旧市街と呼ばれるようになる。
住民の多くは低所得者や空き家を占拠する不法占拠者などクロスベルでも治安が悪い部類である。

ロイドたち支援課は住民の通報を受けて不良同士の喧嘩の仲裁すべく鉄橋を渡ってやってきた。
そして鉄橋を渡ったすぐのところにある広場で大声で怒鳴りあう声から一目でぶつかる寸前の状況にある二つの集団を発見した。
一つは赤いジャージとバンダナの集団で態度から釘バッドなどイメージ通りの集団。もう一つは青い頭巾を被り全身青装束で鉄パイプで武装した宗教がかった集団。
両者共に4人ずつのロイドたちと同じぐらいの若者だったが表情は敵対色で染まっていた。
赤いジャージの集団は武器を構えて怒声を張り上げ、青装束の集団は同じく武器を構えてそれを馬鹿にしたように見下している。

「テメエらがクソ汚い真似したってネタはあがってんだよぉ!青坊主共が!」

「赤マムシの低脳共が。君らごときチンピラに卑怯な真似をするまでもない」「そ、そっちこそよくも仲間を病院送りにしてくれたな。か、覚悟してもらうぞ」

「上等だ!ヴァルドさんが出るまでもねえ。やっちまうぞ」「こちらこそワジの手を煩わせるまでもない。総員、聖戦準備!バイパーを殲滅する!」

怒声と挑発の応酬は最高潮に達し両者は武器を構えて今にもぶつかろうとしていた。
止めるには今しかないと詳しい状況もわからずロイドは飛び出していた。

「待った!」

ぶつかろうとした両集団は突然大声を張り上げて間に割って入ってきた乱入者に勢いを殺され、視線が集中する。

「双方、喧嘩をやめてくれて。ここは公共の広場だ!ほかの住民が迷惑している!」

「ああ?何言ってんだてめえ」「いきなり現れて何者だ」

ロイドのすぐ後ろについているランディたちは、不良たちの当然の反応を見て、ロイドはどうするんだと注目するとロイドは警察手帳を取り出した。

「クロスベル警察、特務支援課のものだ。付近の住民の要請で喧嘩を止めにきた」

警察として身分を提示して自分たちの目的とその正当性を示すという当然の行為を行い、これで解散してくれればと思ったのだが、不良集団の反応は悪い方で予想通りだった。

「ヒャッハハハ!フカシてんじゃねえぞ!そんなんでビビると思ってんのかコラァ!」

「警官なんかまったく寄り付かないのに、まったく吐くならもっとマシな嘘を吐くべきだよ」

手帳まで提示したのに警察官だということ自体信じられず、むしろ背後のエリィたちを見てデート中の彼女に良いところ見せようと警察の振りをして不良に因縁つけた正義感ぶった馬鹿だと認識されてしまった。
ロイドはとにかく近所が迷惑していると解散させようと説得を続けたのだが、すぐ横からランディが外でやれと追い出すように言われたことが気に障ったようで二つの集団の敵意がこちらに向く。

旧市街(ここ)で俺たちにデカイ口叩くとは良い度胸じゃねえか」「旧市街(ここ)には旧市街(ここ)のルールがある。口出しするなら痛い目に遭ってもらう」

武器も構えてしっかり戦闘態勢に入る両集団に、やっぱりこうなるかと不良相手なので戦闘を覚悟していた支援課の4人も武器を構える。

「邪魔者を片付けたら改めて戦闘開始だ。いいな、赤マムシ」

「上等上等。サクッとこいつらボコボコにしておめえらと片つけてやるぜ!」

不良集団は先に喧嘩に水を差した乱入者を排除することを決めると8人全員で支援課に襲い掛かった。
ロイドは仲裁のために両集団の間に飛び込んでいたために挟まれる形で真っ先に攻撃が集中した。
勢い任せに突っ込んでくる不良集団相手にロイドは両手に構えたトンファーで向かってくる釘バットと鉄パイプを冷静に一撃ずつ受け流し全て捌ききる。
そこにすかさずランディがスタンハルバートで赤いジャージの不良の一人を殴りつけるが、釘バットを盾にしてその一撃は防御される。しかし大振りのハルバートの勢いで後ろに吹き飛ばされバッドを落として転ばされる。ランディはそのまま赤いジャージの不良集団を相手に突っ込み、大きく薙ぎ払うと不良たちは攻撃を避けようと防御姿勢で数歩後ろに下がった。
これで赤いジャージの不良たちが引き離されてロイドは青い頭巾を被った不良集団に集中し押し留めた。
だが鉄パイプを持ってるのは3人だけで一人はスリングショットを構えてそこらの小石を発射してくる。
トンファーで叩き落して防御しても当たった破片がぶつかりそれを連続してくるので、また鉄パイプを持った不良たちは射線に入らないように動いており赤いジャージの不良がより力任せなのに比べると連携している。
スリングショットの援護で青い頭巾の不良にてこずっているとティオが進み出て不良に向けて魔導杖を振った。
至近距離で導力波を浴びた不良は突然痺れるような衝撃を全身に受けて何が起こったかわからず膝をつく。
そしてエリィが導力銃でスリングショットの不良の足元に向かって威嚇射撃をした。

「これ以上の喧嘩は中止しなさい!」

発砲音とそれに続くエリィの声で一瞬の静寂が起きる。
青頭巾は一人が戦闘不能になり銃を向けられてスリングショットの不良も動けなくなっており、戦意の衰えが見えた。
しかし赤いジャージの不良たちはこっちに銃口が向いていないので戦意は衰えていない。銃が古く小型で急所じゃなければ致命傷は受けないのは見てわかるのでむしろ一人が吹き飛ばされただけでまだ戦える、勝てると戦意は上がっていた。

「そんな銃でやられるっかっつーの」

転がっていた不良が横からランディに向かって体当たりしてくる。何か握ってると思ったランディはハルバートの腹で防御するとナイフを握っており突きを連続で繰り出してきた。
懐まで入り込まれてのナイフを避けつつバックステップで距離を取るとハルバートで殴りつけ、今度は防御するものがなくてまともに食らって倒される。
だが、この一連の攻撃は注意を目の前に集中させるための囮で、後ろに下がっていた赤ジャージの連中は一人が懐からボールを出すとライターで火をつけてそれをほかの二人が釘バットで撃ち出して来たのだ。
飛んでくる火球をランディは避けるが、それはエリィやティオに向かって放たれたものだった。
すぐさまロイドは間に入りトンファーで叩き落すが、ティオはそんなことをせずとも導力波を火球にぶつけて弾き、エリィにいたっては撃ち落すという離れ業をやってのけた。
これを見たランディは良い所を見せようと火球を刃の部分で打ち返した。それがボールを出していた不良に命中してしまったのだ。
火球を受けた痛みで動けず、火で服が燃えそうになり、傍にいた仲間たちに消火してもらったが、これに掛かりきりとなって、戦闘は終了となった。

「遊撃士だ。警察だとフカシて油断させやがったんだ。クソが!」

「いや、警察だってさっきから言ってるだろう」

「信用ないのね」

エリィがロイドの言葉が信じてもらえないほど警察の信用が落ちている現状を嘆いたが、不良集団たちは遊撃士相手にぶつかるのかと不意打ちを食らわされた怒りを抱えながら本気でぶつかれば勝てるのかと及び腰になっており、警察は怖くないが遊撃士は怖いという不良たちの認識に市の警察力が及んでいないと溜め息をつく。
その時、男の声が飛んでくる。

「おいおい、なにやってやがる」

声の方向、旧市街の東側から3人の男が姿を現した。二人はほかの不良たちと同じように赤いジャージを着ており同じ集団だとわかるが、声を発した男は上着は赤いベスト一枚で一回り体格が違う筋骨隆々の長身の若い男で赤毛に立てた前髪だけ金髪に染めてその表情は凶暴さを滲ませ自己主張が強く一目でリーダーだとわかる。

「ヴァ、ヴァルドさん!?ジェドさんもルガノフさんも!?」

赤いジャージの不良たちの怯えたような態度からもこの三人がリーダーと幹部であるとわかる。
だが、すぐにもう一つ別方向から声がした。

「その辺にしておきなよ」

西側からの声の主は中性的で美少年とも美少女とも言って良いほど美形な顔立ちで小柄で華奢な体格だった。だが、へそを出した奇抜な青い服装で、コートを着たサングラスをかけた禿頭の大男を連れている。

「ワジ。来たのか」

呼び捨てながら青頭巾の不良たちの尊敬の念の篭った声が彼がリーダーであることを一目でわからせた。

(両チームの(ヘッド)のご登場ってわけか) 
 

 
後書き
不良と遭遇して早速バトル。
原作だと遊撃士とわかろうがぶつかってくるガッツがあって、だから誰だろうが噛み付く自尊心があったのだけど、普通に戦闘を余裕で勝っちゃったことを描いたので、こいつらにボコボコにやられたすぐ後にもう一度挑めないと思ってしまったので。

バイパー創設時からの同志であるジェドとルガノフはヴァルドにとって一際大事な仲間であって欲しいからもうちょっと幹部っぽく描きたい。ナンバー2とか3とか設定はあるけど零ではほぼ使われなかったからね。碧で創設メンバーだったとか知った時は零で伏線張ってて欲しかったと思ったよ。

戦闘は銃の乱射をしたくなかったので、エリィもあんまり撃ちたくないので威嚇と迎撃のみで接近戦バトル主体に。
人間同士だと支援課の優秀さがわかるので気持ち良い。
ただこの時の不良共は武器持ってるけどデートのついでに絡んできたとしか思っておらず、ぶっ飛ばされてやっと本気出そうとしたらやられた感じで、ちょっと油断してました。
しかもバイパーは幹部を欠いており、テスタメンツも装備が十分じゃないのでこの時が最弱でした。ただ陽動とか連携とか本気で殺すために突っ込んでくるとかそれなりに喧嘩慣れしている感は出せたかと。
ただ普通に殺し合いだよね。

今回一番悩んだのは玉に火をつけるのが戦術導力器を使うかライターを使うかマッチを使うか。
ライターが一番しっくり来たけどそもそもファイヤーボルトを打って威力強化していたら凄いと思うけど、下級しか使えないからとかで。 
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