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SeventhWrite

作者:完徹
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四日目

 
前書き
暴力描写が含まれます。 

 
 何度か電車を乗り継いでやって来た町の駅でおりると田畑が目の前に広がっていた。予想以上の田舎町だ。ここから中学校に向かうには小学校の横を通る方が近い、それに目印になりやすいからまず僕は小学校を目指すことにした。
 電車の中では常にナイフがポケットに入っているから緊張していたけれど、こんなに人通りの無いあぜ道じゃあ警察だって通らないだろう。
「さて、と授業が終わる頃には着くかな」
 それにしてもやっぱり制服はまずかったかな、今日は平日だし学生が一人で電車に乗っているのは不自然に見えたんじゃないかな。私服ならまだ大学生くらいに見られたかもしれないけど…ん?

「うっ…うぇぇぇ」

 目の前に今にも泣き出しそうな女の子が居た。年は小学校低学年、つまり七、八歳くらいだ。
 改めて周りを見わたしても僕とその女の子以外に人影は無い。

「…ったく、仕方ないか」

 僕は女の子にどうしたのと、話しかけた。何てことはしない。
 当たり前だ。男子高校生と女子小学生だぞ?誰かに見られたら不審に思われるに決まっている。それに今の僕はナイフまで所持しているんだ。さらに急いでいるし、こんなところで誰かに構っている余裕なんて無い。
 デメリットしかないのだ。

「おにいーさん何を言ってるの?」

 目の前の女の子は僕を見て泣き止んでいた。
 そうだよ、話しかけたんだよ、デメリットしかないけど放っとけなかったんだよ悪いか!?
 …誰に言い訳しているんだろうか、僕は。

「何でもないよ、どうしたの泣いていたのかな」

 新しい発見、僕は小さな子には好かれるみたいですんなりと話をすることが出来た。その子は下校時刻になった時にいつも教室に迎えに来てくれる兄が今日は風邪で休んでいて、普段は一人で登校しないから帰れずに小学校周辺を一人で歩いていたらしい。
 ちなみにこれだけのことを聞き出すのに十分かかった。その間僕は誰か周囲を通らないかドキドキしていた。
 彼女はそこそこ僕を気に入ったらしく、色々と聞いてもいないことを長々と話し始めた。とはいってもほとんど舌足らずで聞き取れなかった。ただかずみおねえちゃんという単語だけが耳に残った。まさか…ね。
 さて、どうしたものかな?手っ取り早く学校に送り届けてからこの子の自宅に迎えに来るように言った方が確実かな。任せたら僕はさっさと中学校に向かうとするか。

「はるかー、どこだーーー」

 僕が彼女の手を引いて小学校を目指して歩こうとすると小学校と反対の方向から少年の声がした。

「あ、おにいちゃん、すぅ…ここだよーっ!」

 彼女、はるかちゃんはその声に反応した。どうやらお迎えが来たみたいだ。
 彼、はるかちゃんの兄は銀色の髪をしていて西洋よりの顔立ちをしていた。はるかちゃんを見て安心した顔をするけど僕を見て顔が強張った。

「あんた、だれ?」

 かなり可愛げの無いガキだった。
 そりゃ探していた妹が見ず知らずの男と一緒だったら警戒するだろうけど何か腹立つ。
「僕は峰岸大樹っていうんだ、お兄さんって呼んでいいよ」
 僕は出来るだけ穏便に話す。なんたって相手は子供、こっちとしても大人の対応をするだけだ。
「峰岸大樹さんですね、覚えました。じゃ、帰ろうはるか」
 そういうと少年ははるかちゃんの手を引いて歩き出す。何故か不穏な予感のした僕は呼び止める。
「待て待て、何か誤解してない?」
 すると少年は胡散臭そうなものを見る目で僕を見る。うん、めっちゃ腹立つ。
「何でしょうか?生憎どこにも着いていく気はありませんよ」
 なんてガキだ…善良な男子高校生を人攫いのように…ってそうか確かに僕は人攫いみたいなもんだ。
「いや別に、ただ妹…ちゃんと守ってやれよ」
 彼はフンと鼻を鳴らした。それで大人ぶっているつもりなのか。
「言われるまでもありません。…あぁ忘れてました。はるかの話し相手をしてくれてありがとうございます」
 なんだよ、ちゃんと分かってるじゃないか。
「いえいえ、どういたしまして。じゃあね」
 僕は離れていく兄妹に手を振った。
「おにいちゃーん、ばいばーーーい」
 はるかちゃんが名残惜しそうに僕に手を振っていた。いやはや何をしているんだろうか、僕は。

 さてと、気を取り直して小学校に行くか。
 歩き出して数十分で小学校は見えてきた。結構道が入り組んでいて何回か道を間違えたせいだ。小学校は所々塗装が剥げてたりグラウンドも狭い。ここであの二人は授業を受けているんだなと、どうでもいい事を考えながら通り過ぎた。
 そして地図を確認しながら中学校までの道筋を確認する。
 うん、こっちだな。
 小学校から少しはなれたところで僕は肝心なことに気付いた。

「ねぇそこの君、転校してきたばかりの杵島って子知らない?」

 中学校へ向かう途中で見つけた中学校の制服(胸の位置に中のエンブレムがついてた)を着た女の子に話しかける。
 これ幸いと聞いた、用意周到のつもりだったけどノートを呼んだだけの僕は肝心の杵島一美の顔を知らないんだった。
 どれだけ僕は焦っていたんだろうか、別に相手は逃げやしないのに。

「……だれ?」

 振り返ったその女の子は警戒心剥き出しで僕を見る、手にはケータイを持っていた。
 そのまま百十番に電話されちゃかなわんので、フレンドリーに自己紹介する。
「僕は峰岸、峰岸大樹、杵島一美ちゃんを探してるんだ、僕は彼女の血縁でね、今日会う約束をしていたんだけど、見つからなくて」
 その女の子は動きを止めて僕をじっと見る、田舎町の学生だからもっと友好的かと思ったけどやっぱりこの年頃の子供は警戒心が強いみたいだ。さっきの少年含めて。
「君と同じ学校に転校してきた子なんだけど、知らないかな?」
 そんな警戒しなくても君には何の危害も加えないのにな。っていうか怯えてるよ、これはちょっと不味いな。
「知りませんね、あたしと別の学年の人だと思います」
 え?こんな田舎なのに転校生がきたら違う学年でも噂になるんじゃないの。
「へぇ、確か繰賀中学校はクラスが三学年で六クラスの小さい学校だよね、他学年でも噂くらい聞いているんじゃない?」
 心の中の疑問がそのまま口に出た。…具体的な数字を出したのは怪しいかな?
「知らないって…言ってるでしょ」
 どうやら気に障っただけみたいだ。
「…ごめんね、疑ったつもりは無いんだけど、失礼したね」
 僕は名前も知らない女の子に軽く会釈すると中学校へ向けて歩き出した。

 さっきの女の子、三年生かな?六月とはいえ受験を控えているからピリピリしていたのかもしれない。悪いことしちゃったな。
 なんて考えていたら道を逸れてしまった。

「ああもう、何処だよここ」

 おかしいな。もう着いてもいい頃なのに…。
 何度も出し入れしてくしゃくしゃになってしまった地図を取り出してまた場所を確認した。

 そして着いた頃には…もう部活も終わってるじゃん…という時間になってしまった。
 あ~あ、今日はもう無理そうだし、明日にしようかな。母さんには友達の家に泊まると連絡しておこう。…ここら辺にあるかな?公衆電話。
 もはや過去の遺産になりかけている存在の心配をしていると。

 何故かさっき下校していた少女が校門の前に現れた。

「あれ?君、さっき帰ってたんじゃないのかな」
 そう聞くと彼女はばつが悪そうな顔をする。
「……忘れ物、取りに来たんです」
 どうやらかなり辛そうだ。ノイローゼかな?
「それじゃ、転校生に会えるといいですね」
 そう呟くと少女は危なげな足取りで校舎に向かう。
 大変そうだな、ま受験なんて気合だよ。
 他人事のように考えていると。


「もう部活動終わってるよ」

「え?」

「この学校はね少し完全下校時間が早いの、だからもう部活動してないよ」


 ん?彼女は忘れ物を取りに来たのだから部活は関係ない、もしくは三年生ならOBとして顔出しようとしていたとか?そもそも…


 完全下校時刻の知らない生徒なんているのか?


「ぁぁ、そうだよね、あたしったらうっかり忘れ…」
 少女は慌てたように言いつくろう、なるほどね。だからさっきあんな変な態度だったのか。


「へぇ、そうか君が転校生だったんだ。まさか真っ先に会うとはね、僕はついてる」


 いやぁベストタイミングに気付けた。
 このまま彼女に校舎に入られたらどんな対策をとられるか分かったもんじゃない。
 さて、ちょっと強引にでも着いてきてもらうとするか。

「…水瀬さん、その人だぁれ?」

 と、邪魔なのが一人いたのを忘れていたよ、とりあえず先にこの子には帰ってもらわないと…水瀬?

「さぁ、あたしは知らない人だよ月村さん」 

「え?水瀬、水瀬って…君は杵島じゃ…それに月村?月村って」

 月村?あの夢に出てきた架空の幼馴染の?

「杵島…誰ですかそれは?」

 あぁ?何だその反応は、転校生は杵島一美だろう?それに月村って苗字…偶然なのか?
 僕が混乱していると、視界に校舎内へと走る彼女の姿が見えた。

 しまった。…校舎に入られた。さすがにそこまで追えば誰かに捕まるだろう。
 だとしたら………一度退くか?

「あれ、水瀬さんどこ行ったんだろう?」

 残された長髪の少女はポツリと呟いた。
 もうここにいても意味は無い、非常に腹立たしいが今日は失敗だ、しかたがない、例の人形屋敷へ向かうか。
 チャンスはまだあるはずだ。
 そしてその少女に礼を言いその場から速やかに立ち去った。そして現状をまとめる。

 一つ、僕は水瀬一美を見つけたた。
 二つ、彼女は僕を警戒している。
 三つ、学校に逃げられた事により何かしらの対策をしてくるはず。

 ……かなり不味いな、いや最悪だ。いくら会いに来ただけとはいえ彼女が僕をどう見ているかは明白だ。完全に不審者扱いだろう。僕の本名も知っているし…これはさっき無理やりにでも連れ去るべきだったのでは?
 ……いや学校前で騒ぐのは得策じゃない、目撃者もいたし……

「あぁ、もうっ!」

 なんで上手くいかないんだ!
 なにか!なにか上手くいく方法は……………ダメだ!思いつかない!!
 頭を抱えながら歩いているとあっという間に人形屋敷に着いてしまった。

 気が焦りドアを勢いよく開ける、どんな場所かあらかじめ確認しておきたい。
 果たして、それは正解だった。
 何故ならその屋敷の中には三人の人間がいたからだ。
 
「なんで?ここは無人のハズなのに…………」

 僕は驚愕した。
 外から見た限り、屋根や壁に苔が生え、ツタが伸びて明らかに誰にも手入れされていない事が明らかであり、おおよそ人が住まなくなってから十年単位が経っていると思わせるような外見なのにその中は電化製品などは見当たらないが、豪華な大広間や大きな階段のある、まるで西洋のお屋敷のような内装だった。


 「くそっ!」


 よく分かんないけど、ここにいる奴らとは関わるべきじゃない。無意識にそう感じた僕は屋敷に背を向けて走り出した。その時何か言われた気がしたけどかまわずその場から離れる。

「何なんだ?あそこは廃墟で誰も住んでいないんじゃ無かったのか?」

 夕日が照るあぜ道を走りながら呟くが誰も何も答えない。
 もう何もかもダメだ。あの屋敷が使えないんじゃもうどうしようもない………

「はぁ……はぁ……ごほっ………あれ?」

 走りつかれて立ち止まった場所は、何故かさっき来た中学校前で………



 そして、”何故か一人で立っていて僕を見ている杵島一美”がいた。



 それからの僕の行動早かった。まず左手で彼女の口を塞ぎ、下腹部に二回硬く握った右手を叩き込む。昨日インターネットで調べたら下腹部は男だけでなく、女性にも有効な急所らしい、そこに激しい衝撃を与えれば意識を失わせることが出来ずとも、悶絶させる位の効果はある。左手には空気の当たる感触が伝わる。失禁まではしていないみたいだけどしばらく声は出せないだろう。だけど念のために胸、肺に手のひらを強く打ち付ける。かはぁと彼女の口からさらに空気が漏れる。
 一度彼女から手を離して、周囲を確認する。校門のおかげで校舎からここは見えないし道路にも人影は無い、どうやら誰にも見られていないようだ。

 さて、これからどこへ向かったものか
 彼女を担ぐと、僕は歩きだした。学生カバンもあって、悩んだが、持って行くことにした。校門前に置いておくと後々都合が悪いと思っただけだ。

「交差点か………」

 正面、畑やあぜ道が見える、最初に通ってきた道だ。
 右、山しかない、ここは調べても下見もしていない。
 左、舗装された道路にちまちまと家が見える、大体把握している。

「こっちだな」

 僕は右に歩き出す。正面に行ってもあるのは人気の失せた小学校と人形屋敷だけ、左は人が住んでいるから誰に見られるか分からない。という消去法により僕はてくてくと歩く。
「最初から………こうすればよかった………人形屋敷に向かう必要なんて無かったんだ」
 歩き始めて数分後、着いた先は山道だった。とはいえ道といえるような道も無くこの時間にここを訪れる人など確実にいないだろう。

「起きろ」

 小川が流れている場所に彼女を乱暴に下ろす、すると数十秒程して身体が冷えてきたのか彼女が飛び起きた。
「寒っ!!」
 そして自身を抱きしめようとした彼女は自分の両手が自由に動かせない事に気付いた。
 僕がもう暴れられないようにそこら辺のツタで縛っておいたのだ。
「やっとだな、面倒だったよ……まったく」
 やっとコイツを”殺せる”よ

「……何で?……何でこんな事するの?あなたは一体?」

「まぁ知らなくて当然だよね、僕と君は今日始めて会ったんだし。でもね、僕は君の事を…いや君のしたことを知っている」

 彼女は青ざめた表情で小さくまさかと呟いた。

「もしかして、あなたは………お父さんの………浮気相手の子供なの?」

 あぁやっと気付いたか。ま、完全に手遅れなんだけどね。
 僕はポケットからバタフライナイフを取り出した。



   ◆◇◆◇◆綾文◇◆◇◆◇


これが、原稿用紙に書かれていた内容だった。ここから先はまだ書かれていない。だからどうなるかは予想がつかない。だけどこのままだと…急がないと、転校生が危ない!! 
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