魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第27話 妖怪大戦争(後編)
「ライと一緒って事はその人ってもしかして………」
(レ、レイどうするの!!)
(や、やっちまった………!!急ぎすぎてアーベントのままだったのすっかり忘れてた!!)
アイコンタクトでそんな話をするライと零治。
そんな行動をしたためフェイトも確信を得てしまった。
「ライと仲が良いし、零治だよね………?」
恐る恐る聞いたフェイトだが、もう誤魔化すのは無理だと思った零治はゆっくり口を開いた。
「はぁ………そうだよ、フェイトの言う通り有栖零治さ」
「零治君、バリアアーマー持っていたんだ!?」
「まあね。桐谷と同じくイーグレイ博士の試作品だ」
咄嗟に思いついた零治の嘘。
実際に桐谷はレジアスにイーグレイ博士の事を言ってあり、スカさんもそれを了承済みなので、辻褄は合うのだが、フェイトが狙っているスカリエッティに近づけてしまった事に申し訳無く思っていた。
「イーグレイ博士?あれ?確かイーグレイって………」
「フェリア達の父親だ」
「もしかしてミッドチルダ出身………?」
「いや、どっかの管理世界の筈だ。詳しくは分からない」
「そうなんだ………でも何で今まで隠してたの?」
「これは最近完成した桐谷のアルトアイゼンと同時期に完成した試作バリアアーマーで、かなり癖がある機体だから使用は控える様に言われてたんだ。桐谷のアルトアイゼンは近戦突貫型。圧倒的な推進力と重装備で厚い装甲を武器に突っ込んでいく。その重量に耐えきる肉体が無ければ先ず扱えない。そしてこのヴァイスリッターアーベント。………まあ長いからアーベントって言ってるんだけど、これが遠距離高機動型。圧倒的な高機動戦闘を実現するためバリアアーマーとは思えないほどかなり薄い装甲にしたため、機動力はとてつもないスピードを出せるんだ。まあこれも高機動戦闘時にかかるGが凄いから普通の使い手だと体が持たないって欠点つきなんだけど………」
「えっ、それって失敗作じゃ………」
「使えればバリアアーマーどころか魔導師相手でも自分の長所の部分なら一番になれる性能さ」
「なるほど………」
と説明している合間にゆっくりと立ち上がり零治を睨むシヴァ。
顔がとてつもなく怒りに満ち満ちていた。
「あれま、怒らせたか?」
「零治、気を付けて!アイツの投擲、もの凄いスピードと威力を兼ね備えているよ!!」
「ああ、分かってるよ。だから………」
そう言うとアーベントの赤いラインが青に変わっていく。
「出し惜しみしない」
『フルドライブ!!』
「えっ!?これって………」
そんな零治の変化にポカンと口を開けて驚いているフェイト。
「さあやるぞ、止めは任せたぞライ、フェイト」
「うん、任せて!」
「えっ、は、はい!」
返事を聞いた零治はパルチザンランチャー改め、パルチザンブラスターをシヴァに構えたのだった………
「はぁ………はぁ………」
「限界か小僧?」
「はぁ………はぁ………」
返事が出来ないほど息が激しいエリオ。
だがその目は全く諦めていない。
「良い目だ。男はそうでなくてはな………お前は良い武士になれる」
「そんなの………目指してない!!」
なおも高速移動で攻撃をしに動くがマサカドに簡単に見切られてしまう。
「無駄だ。単調な突撃だけならばどんなに速かろうと我には届かん」
そう指摘されながらもエリオは攻撃方法を変えなかった。
その理由は単純。今の自分がいくら工夫を加えても勝てると思えなかったからだ。
それだけでなく先程のシヴァの投擲の衝撃はこちらまで届いており、もし自分が負ければシヴァとマサカド、2人を相手にしなければならないフェイトの事を考えていた。
そしてエリオが考えた結論。
『一撃必殺』
そしてエリオは自分のスピードを生かしての突きに全てをかける事にしたのだ。
そしてその手段もある。
(バカの一つ覚えもこの一撃のため………マサカドも僕の事を舐めている内に確実に決める………!!)
この目論みは上手くいき、マサカドは本気でエリオを潰しには来ていなかった。
そしてエリオはその隙を突いた。
「風牙絶咬・瞬雷!!」
零治の使う風牙絶咬の同じ神速の突き。
元は雷刃と言った雷を纏った刃で貫く技であったが、ストラーダにデバイスが替わり、魔力をロケットの様に噴射することで更に突貫力の増した攻撃が可能となっていた。
更に今のエリオは雷を使って身体能力を強制的に上げており、更にスピードも上がっている。
そのスピードは零治の神速にも負けない程であった。
「なっ!?がっ!?」
その神速のスピードにマサカドは反応することすら出来なかった。
渾身の突きはマサカドの鎧ごと腹部を貫き、その衝撃で体を破裂させるほどの威力を持っていた。
「やっ、やった………」
普通の状態でも雷突はエリオにかなりの負担を与えるのでエリオは使用を控えていたのだが、その上を行くスピードで攻撃したため、自分自身で思っている以上の負担がエリオを襲っていた。
「う………うが………!?」
まるで自分の体では無いような感覚。全身金縛りにあっているように体が全く動かない。
「驚いたな………まだそんな隠し玉があったとは………だがその様子を見ると一回の使用で限界が来るような捨て身の攻撃だったようだな」
「えっ!?」
エリオの驚きもその筈、マサカドは首だけの状態でエリオに話しかけていた。
「な、何で………」
「悪いな、ワシは首だけでも生きていけるのだ」
「そ、そんな………」
既に満身創痍のエリオ。何とかストラーダを杖がわりにし立っているが戦える状態では無かった。
「この醜い姿もワシの油断が招いたもの。こうなった怒りを小僧にぶつけるのは筋違いであるが………それでも報いは受けてもらうぞ小僧」
そう言って顔までしっかり守っていた鎧がく崩れる。現れた顔は青白く、まさに死人と同じ顔色だった。しかし目は血走っており、人とは違う化け物のようにエリオには見えた。
そんなマサカドの首。
落武者の様に下りていた髪がエリオへと伸びていく。
「小僧、お前の肉体を頂くとしよう」
「な、何だと………!?」
「お前は将来必ず強くなる。だからこそ今、その体を得るのも悪くなかろう。何、苦しまずに首をかき切ってやる安心しろ」
「くっ………くそっ………!!」
逃げようにもエリオは先ほど流していた雷の影響で体が上手く動かない。
そんなエリオにマサカドは容赦なく、髪を伸ばしていき、逃げられないように全身に巻き付いた。
「や、止めろ………!!」
「さらばだ小僧!中々楽しい時間であった!!」
しっかりとエリオを固定したマサカドはそのままエリオの首にへと向かっていく。
(レイ兄、ゼストさん、フェイトさん、ルー、キャロ、エローシュ、真白、みんな………)
「ごめん………」
覚悟を決め、目を瞑ったその時だった。
「………何だ?もう諦めるのか?」
激しい轟音が目の前に起きたと思い慌てて目を開けると、自分と同じ様に体に雷を纏った銀髪の男が目の前にいたのだった………
「ウオオオオオオオ!!!」
怒りの咆哮を上げ、零治を威嚇するシヴァ。
「ぐっ………!?この迫力………流石破壊の神ってか………!!」
「レイ、来るよ!!」
「ちっ!?」
怯みそうな自分の体に喝を入れ、三又槍を振るうシヴァの槍を避ける。
「くそっ、森の所為で空中に浮きながらだと機動力を最大限に活かせないか!!」
「光翼連斬!!」
ザンバーの斬撃を連続で飛ばすライ。
シヴァは光翼連斬には目もくれず零治に向かって今度は連続突きを繰り出した。
「ちぃ!?」
そんなシヴァの攻撃を体を逸らしてかろうじて避ける。
一撃でも当たれば致命傷になるのは確実なのだが、零治は相手から逃げずに相手を見据えて攻撃を避けていた。
(本当にこの目は役に立つ………)
いくら速かろうと神速のスピードを巧みに操る相手と戦っていた零治にとってその目は大体の攻撃を見極める事が出来た。なおかつ突きのみの連続攻撃。
「ぬううう!!!」
当たらずイライラし始めるシヴァ。
更に突きが速くなるが、その影響で先ほどよりも突きが雑になり隙が出来始めた。
「よし、これなら!!」
躱しながらシヴァに向かってパルチザンブラスターを構える零治。
「喰らえ!!」
回避しながら魔力弾を発射するBモードを連射。
1発2発なら耐えられたシヴァだが、連射される攻撃に次第に槍も止まる。
「ここで一気に畳み掛ける!!」
腕を組み、完全に防御に入ったシヴァに向かってBと砲撃を発射するEモードを連続で発射する。
「ぐうぅ………調子に乗るな!!」
シヴァは攻撃を受けながらも自分のエネルギーを溜め込み、そして体全体を広げ放出すると、周辺に大きな衝撃波が巻き起こった。
「くううっ………!!」
「きゃ!!」
「レ、レイ………!!」
「ガリュー!!」
「助かる!!」
その衝撃は零治だけでなくフェイトとライ、そして見ていたルーとエローシュも巻き込んだ。吹き飛ばされそうになっているところをガリューに受け止めてもらい何とか耐えている。
『おいエローシュ、目を瞑っている場合じゃないぞ!!』
「!?零治さん!!」
零治に声を掛けられ衝撃波を受けながらシヴァに目を向ける。
「くっ、投擲………!!」
エローシュに声をかけた零治だったが、零治も同様で衝撃波で足が止まっていた。
そしてシヴァはそれを見逃さず、零治目掛けて槍を構えていた。
「この状態じゃ………!!」
『マスター、来ます!!』
ラグナルにも警告されるが、衝撃波の影響でまだ動けない零治。
そして槍が放たれた。
「レイ!!」
「零治!!」
「くっ………」
覚悟を決めた零治。しかし………
「零治さん逃げろ!!!」
突然零治の目の前にクリスタルが出現し、零治の前に並ぶ。
「!?よし!!」
クリスタルに直撃した槍。先ほどと同じ紙を貫く様に次々に破壊するが、先ほどフェイトに使った時とは違い10個重なったクリスタルは零治に回避の時間を作るのに充分だった。
「助かったエローシュ!!」
「いえ、無事で良かったですお兄さん」
「………次お兄さんって言ったら撃ち抜く」
「ええっ………助けたのに………」
そんな理不尽な目に合いながらもエローシュの目はシヴァに目を向けた。
「流石破壊の神だけあって滅茶苦茶だな………」
『怒れば怒るほど威力が増している様だ。………とエローシュ、そろそろお前標的にされそうだな。こっちを向いて睨んでいるぞ奴は』
と淡々と言うエクス。それに対してエローシュの顔は慌てふためいていた。
「嘘でしょ!?だってクリスタルを発生させた事に気がついたとは………」
『あのお兄さんのせいだろ』
「名前呼ばれた俺が返事したからか!!」
シヴァはエローシュの方を向く。
「はは、大ピーンチ………」
『今のお前の防御じゃ紙同然だからな。防御のクリスタルもさっきの10個が限界だ。諦めろ』
「いや、諦めろって………一応相棒だよな?」
『………』
「返事は!?」
そんな会話をし合うエローシュだが、相手にされていないと思ったシヴァは更に怒りが溜まっていく。
「うおおおおおおおおおおお!!!」
大きな咆哮を上げた後、鋭く睨むシヴァ。
「くっ!?」
思わず身構えるエローシュ。
そんなエローシュに向かっていこうとしたシヴァだが、首に受けた砲撃で動きを止めた。
「待てよ、相手は俺だろ?」
「ううう………!!」
怒りの目が今度は零治に向けられる。
「さあ、来いよ」
零治のその言葉に呼応するようにシヴァが再び槍を構える。
「また同じか?そう何度も同じ手を………」
その瞬間だった。
「あ?」
腹部に激しい痛みが零治を襲った。
「血………?」
右腹部を触れるとえぐられた様な後があり、そこから出血していた。
「一体何が………」
シヴァを見ると額に3つ目の目があった。
「まさか………目からビーム………?嘘だろ?何処ぞの吸血鬼だ………」
フラフラと地面に落ちていく零治。膝からゆっくり着地し、倒れ伏した。
「レイーーー!!!このぉーーー!!!」
「ライ、駄目!!」
そんな零治を見たライがスプライトフォームへと変わり、零治に負けないスピードで向かっていった。
「はああ!!」
光翼斬を飛ばし、ながらもシヴァに向かっていくライ。
フェイトの時と同じ様に槍を回転させて攻撃を防いだ。
「だけど!!」
回していた槍の防御を越え、懐に潜り込んだライ。
ハーケンを力強く握り締めた。
「喰らえ電光石火の攻撃!!!シェイク!スプリット!スラッシュ!ライトニング!クラッシュ!パニッシュ!そして………ディバイドエンド!!!!」
ライが行った怒涛の連続攻撃。
シェイクで斜めに斬り裂き、スプリットでランサーを発射、スラッシュでザンバーに変え横薙ぎに斬り裂き、ライトニングで雷を落とし、クラッシュで再びハーケンで、真上から斬り下ろし、バニッシュで手に溜めた魔力を爆発させバックステップし、ディバイドエンドでザンバーの巨大な剣で叩き潰したのだった。
「うわぁ………」
「容赦ねぇ………ってかあんなネタ技教えたの誰だよ………」
「ネタ技?」
「あっ、いやこっちの話」
そんなライの攻撃を見てそう呟いたルーとエローシュ。
流石のシヴァも耐えきれず、かなりのダメージを受けていた。
「フェイト!!」
「任せて!!撃ち抜け雷神!!!」
怯んだシヴァにフェイトの振るったザンバーの衝撃波に耐え切れず完全に動きを止められた。
「ジェットザンバー!!」
そしてライとは違う黄色の巨大な大剣が天を斬り、そのままシヴァに振り降ろされた。
「うおおおおおおおおお!!!」
ダメージが大きいのかフラフラになりながらも立ち上がるシヴァ。
「ああああああああああああ!!!!」
怒りが爆発したのか先ほどとは違い全身が赤くなりまるでその姿は神というより魔人。
「がああああああああああ!!」
先ほど攻撃を与えたライとフェイトに向かって槍を無造作に振るう。
「きゃ!?」
「おっと!!」
どちらとも避けるが、地面は抉れ、衝撃波が大きく木を揺らす。
「凄い………」
「だけどスピードが落ちてる、あと少しで………」
しかしシヴァの攻撃は豪快で木をなぎ倒そうが、地面を抉ろうが関係無く攻めていく。
だがその荒々しさが逆にライとフェイトを攻めさせないでいた。
「これじゃあ近づけない………」
「私達を狙ってるから距離をとってロングレンジで攻撃しようとしても直ぐに踏み込んでくるし………」
「いっそ突っ込もうか?」
「駄目だよ、私達も防御は弱いんだから………あの攻撃をもしも喰らったら………」
『俺に………任せろ………』
そう念話で2人に話したのはパルチザンブラスターを構えた零治だった。
片膝を地面に付けながらもブラスターをシヴァに向けていた。
「パルチザンブラスターFモード………」
「零治!?」
「レイ駄目!!」
『チャージ完了』
「パルチザンブラスター、Fモード行け………!!!」
銃口で集束されたBとEも魔力が渦を巻いて発射された。
「うがあああああああ!!!!」
怒りに我を忘れかけているシヴァは零治の攻撃を守る事無く、正面から受けた。
「ライーーーー!!!!」
「はあああああ!!!!」
倒れながらも叫んだ零治の声と共に、シヴァの額の第3の目にハーケンを突き刺したライ。
「ぐあああああああああああ!!!」
シヴァはそのまま地面に倒れ伏して、ゆっくりと消えていった。
「や……った………」
「レイ!?」
「ルー!!零治の治療を!!」
「レイ兄!!レイ兄!!!」
「貴様は………」
「強者を求める者………お前気持ち悪いが、その首だけの姿でもひしひしと感じるぜ………エリオ、俺と変われ」
そう言ってエリオを軽く押すバルト。
「えっ………!?」
「邪魔だから下がって見てろ。俺が手本を見せてやる」
そう言って不敵に笑うバルト。
その背中は今のエリオにとってとても大きな大きな壁の様に見えた。
(こんなに差がある………僕は非力すぎる………)
「………相手が替わったが問題は無い。この際貴様でも良い、貴様の体貰うぞ!!」
そう言って再び長い髪を伸ばすマサカド。
「ああ?俺を舐めてんのか!!」
そう言って斧を地面に1振り。
「爆砕!!」
地面と斧がぶつかった事で爆発が起こり、地面が舞い上がる。
「ぬおっ!?」
舞い上がった地面とぶつかり、伸ばした髪の軌道がずれ、修正しようとするマサカド。
「ふん!!」
しかし修正しようとした髪はその間動きが止まっていたため、バルトの斧を避ける事は出来ず斬り裂かれた。
「くっ、この………!!」
しかし直ぐに髪は元通りに伸びた。
「髪を斬ったところで変わらねえか………やっぱ本体を殺るしかねえか」
「それをさせると思うか?」
「やるさ。あまり俺をなめるなよ?」
斧を降ろし、横に構えるバルト。
「大・烈・斬!!」
そのまま270度回転しながら下からすくいあげるバルト。
斧から伝わった衝撃が地面を抉り、徐々に大きくなってマサカドへと向かう。
「小癪な!!」
マサカドは大きく目を見開く。
すると衝撃波はバルトの方へと跳ね返った。
「何だと!?」
跳ね返ってきた斬撃を避けるが驚きは隠せなかった。
「くっ、行けランサー!!」
即座にバルトはボルティックランサーを発射。
ランサーはマサカドで真っ直ぐ向かっていくが………
「ふん!!」
またも跳ね返り、バルトへ向かっていった。
「………ちっ、操作出来ねえ………野郎何を………!!」
自分へ向かってくるランサーを斬り落とす。
「首な分、どうしてもワシは体があったときよりも無防備になってしまう………その為の完璧な守護壁だ。これさえあれはワシは無敵!!」
「なるほど、要するに反射したって事だろ?………しかし、首だけでも甘く見ちゃいけねえって事だな………」
「ふむ………先程の小僧よりははるかに良い肉体だな………やはり確実に頂くとしよう」
「お前みたいな化け物に差し出せるか!!」
先程と同じくランサーを発射するバルト。
「ふん、同じことを………」
そう呟きながら先程と同じく目を見開く。
しかしランサーが直撃する直前でランサーが急停止した。
「何!?」
「終わりだ!」
そんなマサカドに斧を振り下ろすバルト。
マサカドは近くの木に髪を伸ばし、自分を引っ張りあげる事で攻撃を回避した。
「逃がさねえ!!」
バルトも逃がすまいと追撃に移る。
「調子に………乗るな!!」
またも目を見開くマサカド。
「へん、その見えないバリアーは魔法じゃない攻撃は防げねえ!!」
そう宣言したバルトはそのまま斧を振り下ろすが、斧は見えない固い壁の様な物に弾かれてしまった。
「何だと!?」
「終わりだ!!」
そんなバルトに槍の様に鋭くした髪を首めがけて一気に伸ばした。
「ふざけんな!!」
弾かれた拍子に崩れた体勢を敢えて直そうとせず、逆に足を上げ体勢を更に寝かせた事で間一髪避けることが出来たバルト。
「うがっ!?」
しかし地面に思いっきり背中を強打してしまった。
「まだだ!!」
そんなバルトに追撃の手を緩めない。
バルトに向かって髪で貫こうとし続ける。
「ちっ!?」
直ぐに体を横に回転させ、攻撃を避け、一気に飛び上がって何とか追撃の手から逃れた。
「ったく、容赦ねえ攻撃しやがって………」
「中々しぶとい………あの攻撃を全て避けるとは………」
「狙ってる所が一点だけだと対応しやすいんだよ。体欲しさに焦りすぎなんじゃねえか?」
「ほざけ!!」
と軽口を叩くバルトにマサカドが再び髪を伸ばしバルトを襲う。
「吹き飛ばせ!ボルティックブレイカー!!」
しかしバルトは攻撃が来る直前で砲撃魔法を放った。
「ぬおっ!?」
髪をも巻き込んだ一撃はマサカドを飲み込もうとする。
「させん!!」
またも見えない壁に攻撃が跳ね返された。
しかしバルトは分かっていたかのように、動揺も無く軽々と自分の砲撃を避けた。
「やはりか………さて、どうしたもんか………」
そう呟きながらマサカドを見るバルト。
そしてふと、先ほどの事を思い出した。
(そう言えば奴は何故ランサーが急停止してヴォルフバイルで斬りかかった時避けたんだ?その後の攻撃は弾いてたよな………もしかしたら奴は………)
そうふと思いついたバルトは自然と笑みが溢れる。
「………何がおかしい?」
「いや、悪い。楽しくてな………さて、さっさと殺るか」
「おかしな奴だ………だが分からんでもない。いいぞ………来い!!」
そう言ったバルトは先ほどのエリオと同じく自分に雷を流し、全身に雷が帯びた。
「先ほどの小僧と同じ………いや、それ以上と見た」
「悪いが、お前は前座に過ぎねえんだ、これ以上長引かせるつもりは無い!!」
そう言ったバルトは瞬時にその場を駆け、マサカドに斬りかかる勢いで襲いかかった。
「無駄だ!!」
マサカドは先ほどと同じく自分の前に見えない壁を作り出す。
「貴様の攻撃は何度やっても通らん!!」
「さて、どうかな?」
そう言ったバルトはマサカドに斧を振り下ろした。
「ぐっ!?」
「バカめが!!何度やっても………!?」
「終わりだ、プラズマスマッシャー!!」
斧を持っていない左手を突き出したバルト。
フェイトが崇徳院に放った様に手から直射砲の雷撃を放った。
「ぬおおおおおおお!!!」
そんな予想外のバルトの砲撃にマサカドは避ける事も出来ず直撃した。
「お、おのれ………」
感電した様に自身に電撃が流れている中、バルトの姿を見る。
「楽しかったよ、じゃあな」
マサカドは何も出来ず、振り下ろされた斧を受けたのだった………
「貴様………何故………」
2つに分かれながらも弱々しくバルトに話しかけるマサカド。
「おかしいと思ったのは2回目に反射しようとした時だ。フェイントを入れて斧で斬りかかった時、お前は何故か反射せず、髪を使って避けた。それでふと思ったんだよ。反射出来るのは物理攻撃と魔法………まあ何かしらの物理とは違うものそれぞれ別々にしか反射は出来ないんじゃないかってな」
「なるほど………見切られたと言うことか………」
「そういう事だ」
そう言うと満足したように目を瞑るマサカド。
すると次第に首が塵になり始めた。
「最後に楽しい戦いが出来た。あの小僧にも感謝せねばな………小僧、そしてお主、名前は?」
「エ、エリオ・モルディアル………」
「バルト・ベルバインだ」
不意に声をかけられたエリオは小さい声ながらも力強く答えた。
「ふっ、その名、覚えて地獄へ行こう………さらばだ!!」
そう言い切ったマサカドは静かに塵となっていった。
「………」
「お疲れだなエリオ、後はゆっくり………」
「バルトさん………」
「あん?」
肩に手をやり、崇徳院の所へ向かおうとしたバルトにエリオが声を掛けた。
「僕は弱いです………」
「そうだな………」
「大事な人すら守れないです………情けないです………」
「だな」
「だけどもっと強くなります。どんな敵が現れてもせめて守りたい人を守れるように………」
そんなエリオの決意を聞いたバルト。
いつもなら茶化したりバッサリ否定したりするのだが、今回は違っていた。
「そうか………守りたい人を守る………強くなったら挑んでやるよ。それまでしっかり鍛えとけ」
「はい………後、頼みます………」
そう返事をしたエリオは安心した顔で眠りについたのだった………
「守りたい人を守る………か。結局それが強さへの一番の近道なのか?だがそれじゃあ守れなかったんだ………くそっ!!」
地面にイライラを全てぶつけるように斧を振り下ろしたバルト。
その後、何事も無かった様に崇徳院の所へ向かうのだった。
「はははは!!こんなものかぬらりひょん!!」
「くっ、このやかましい!!さっきまでのキャラは何処へいったんじゃ!!」
激しい刀と刀のぶつかりあい。
しかし押していたのは崇徳院の方だった。
視界から消えるように姿を消しても何処にいるのか把握しているのか、ぬらさんは思うように戦えていなかった。
(親父から聞いた事が会ったが………ここまでやりづらいとは………!!)
「どうした!!前のぬらりひょんの方が強かったぞ?」
「黙れ!!」
両手で思いっきり刀を振り下ろすが、それが逆に仇となり、受け止められた後、足蹴りを喰らい動きが止まってしまう。
「終わりだ」
「くっ!?」
刀を受け止めようと刀を自分を守る様に構えるが、崇徳院はそれを弾き、胸目掛けて突き刺した………
「ふむ、そう簡単にやらせてはくれんか」
「そういう事だ」
突き刺そうとした腕に雷の槍が突き刺さり、刀はぬらさんの横の木に突き刺さった。
「先ほどはいなかった男だな。なるほど、先ほど居た者達とは違う様だ」
「そうか?まあ俺は戦いを楽しんでいるからな」
「いや、そう言う意味ではない。………いや、似たような者達はいたな。だがお前は先ほどの者達と比べて対して年月が経っておらん」
「………お前何を言っている?」
「しかしこんな事が出来るようになっているとは………やはり私が導いておればこんな事には………」
「さっきから何を訳の分からん事を………いいから早く殺るぞ!!俺を楽しませて見せろ!!」
「まあいい………知らぬほうが良いこともある。………だが同情はせん!!来い、修羅よ!!」
ぬらさんと崇徳院の戦いにバルトも加わったのだった………
「心を読める?」
「そう、恐らく崇徳院は人の心が読めるんだと思う。だから簡単に見切られちゃうんですよ。ただそれは全てが分かるわけじゃない。恐らく今考えている思っている事が分かる程度だと思う。念話での会話は読まれなかったのも魔法であるからこそなんじゃないかって」
「えっ、ということは………」
「普通に戦ってちゃ先ず勝てない」
零治の治療をルーテシアに任せ、崇徳院との戦闘加わろうとしたフェイトとライを止めたエローシュは自分の考察を語り始めた。
「そんな相手にどう戦えば良いの!?」
「ライお姉さん、有利に進める方法は何通りかはあります。1つ目は大人数で攻め、読まれても回避不可能な攻撃をする。ただ相手がそんな状況にしてくれるかは分からないですけど………2つ目は相手以上の速さで戦う事。ただしこれもクロスレンジからの砲撃を避ける位ですから通用するか微妙ですけど………」
「う~ん、1つ目は戦える人数が少ないから確かに無理そうだけど2つ目は出来そうな気がするけど………」
「ライ、多分難しいと思うよ。私の砲撃を避けられたのは事実だし、いくら速くても攻撃がバレてれば避けるのだって難しくない」
「う~ん………」
そんなフェイトの言葉に更に頭を悩ませるライ。
「………で、これは試して見ないと分かりませんがもう1つあるんです」
「ちっ!?」
「ふはは、私はこっちだぞ?」
バルトが加わった崇徳院戦だが、戦闘は依然崇徳院が押す形になっていた。
「くそっ!?何故当たらねえ!!」
「ワシの攻撃も分かっている様に避ける………一体何の術を………」
そんな呟きを互いにしている時、崇徳院は楽しそうに2人を見ていた。
「さて、私もそこの男みたいに魔法を使ってみるか………名付けて、ブラッティハウリング」
そう言って手をかざした崇徳院。
すると手からドス黒い赤色のモヤの様なものが現れた。
「な、何だ?」
「人の悲鳴………?」
この世の物とは思えない悲鳴の様な音を上げながらバルト達に向かっていく。
「こんなもの吹き飛ばしてやるよ、ボルティックブレイカー!!」
直ぐにバルトは砲撃魔法を放つが、バルトの一撃を喰らったモヤは更に膨張した。
「何!?」
「来るぞ!!」
まるで雲の様に膨らんだモヤは逃げるバルト達を飲み込む。
「なっこれは!?」
「人の叫び、悲しみ、恨み………負の感情の嵐………!!ぐうぅ頭が狂いそうだ………!!」
ぬらさんが頭を抑えうずくまる中、バルトは涼しい顔で立っており、2人の光景を見ている崇徳院を睨んでいた。
「ほう、君には効かないみたいだね」
「負の感情の嵐?そんなもんがどうした!!俺の歩いてきた道は血塗られた道、叫びや恨みなんてものは聞き飽きたよ!!」
そう言ったバルトは銀色に光る斧をひと振り。
すると先ほどは消し去る事が出来なかったモヤをかき消した。
「!?何だそれは?」
「俺の本当の愛斧バルバドス。くだらねえ攻撃してんじゃねえよカスが」
そんなバルトの言葉に険しい顔をする崇徳院。
「やれやれ………中々骨のある奴がいたものだ………だがそうでなくては面白くない」
「………悪いが、お前の相手をしているのも飽きたんでな。さっさと終わらせてもらうぞ」
「終わらせる?どうやって?」
「最高の一撃を喰らわせるだけだ!!」
そう言ってバルバドスに膨大な魔力を集束させるバルト。
「ふん、いくら攻撃したところで無駄だ、私には届か………ガガッ!?」
いきなり壊れたラジオの様な声をあげる崇徳院。
「な、何だ!?体が………これは………雷の剣………!?」
崇徳院の体にはライが使う雷刃封殺爆滅剣の剣が刺さっていた。
「いくら心が読めようとも動きを封じられれば終わりだな、エローシュの目論見通りだ」
「エローシュ………だと!?ま、まさか………私に心が読まれない様に………遠距離から攻撃を………したのか………!?」
「ああ、やるだろあの変態くそガキ」
「だ、だが………どうやって連絡を………そ、それに……それならば何故貴様の心が………」
「俺は動けなくなった崇徳院に最高の一撃を与えてくれとした言われてねえからな」
「お、おのれ………!!!」
体を電撃で動けない状態になりながらもバルトを睨む崇徳院。
「さて、今までコケにした借りを返すぜ。………死ね、ジェノサイドブレイカー!!」
集束していた魔力を斬撃に変え、一気に放出したバルト。
その一撃は崇徳院だけじゃなく、後ろに生い茂る森も巻き込む一撃となった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
山全体に広がる様に聞こえる咆哮に思わず耳を塞いでしまいそうになるほどの大きさだった。
「ぐぅ………このぉ………!!」
かなりボロボロの姿で何とか立ち上がる崇徳院。
そんな崇徳院にぬらさんがゆっくり近づいた。
「ぬ、ぬらりひょん………!!」
「これで貴様とも終わりだ、消えろ!!」
ボロボロになりながらも刀を構えるぬらさん。
「ぬ、ぬらりひょん………舐めるな、私はこんなものでは………!!」
そう呟いた後、ぬらさんの刀が崇徳院を斜めに斬り裂いた。
『オ、オノレ!!コウナレバヒロガリスベテノモノ二ゼツボウヲ………」
斬り裂かれた崇徳院の体から先ほどのブラッティハウリングの様にドス黒いモヤが上空へと上がっていった。
「そうはさせへんよ~」
そう軽い口調で話すはやて。
『ナニ………!?』
上空に上がった崇徳院を待っていたのはロングレンジで戦っていた魔導師達。
既にそれぞれがデバイスを展開しており、直ぐに戦闘出来る状態となっていた。
『コ、コレハ………』
「幸せ者やなぁ………最後にこんな美人な魔法少女達にドドメを指してもらえるんやで?」
「ま、魔法少女………」
「私も含まれてるの?」
夜美となのはが互いを見ながら苦笑いして呟く。
「はやて、もはや魔法少女って呼べるのはキャロや、優理、真白だけですよ?」
「確かに私達を少女と呼ぶには厳しい年齢になったわね………」
星の答えに頷く加奈。
「体は大人、頭脳は少女や」
「何かエッチな感じがするんですけど………」
「零治といい勝負」
「ええ、それはそれでねぇ………」
そんな会話をするキャロと優理。
「え、えっと………攻撃は良いんですか………?」
「平常運転だな………」
崇徳院の事などそっちのけで話すメンバーに真白が恐る恐る質問し、ヴィータが呆れながら呟いた。
『キ、キサマラ………!!』
余裕そうに勝手に話すはやて達に怒りが沸き上がる崇徳院。
『ワタシハキエン!!スベテノモノニフクシュウスルマデハ!!!』
「させへんよ、私達が必ず止めてみせる。だがら諦めるんやな」
『コ、コノ!!!!』
「皆、一斉射撃、開始!!!」
そのはやての号令の後、この世のものとは思えない、砲撃の嵐が崇徳院を襲ったのだった………
「………ってあれ?そう言えばロストロギアは?」
戦闘は無事終わり、それぞれの事後処理をしている中、フェイトがふと思い出したように呟いた。
「そうや!!元々、ロストロギアの回収の為に地球に来たんやった!!何か色々な相手と戦ってたからすっかり忘れてたわ!!」
「笑い事じゃ無いですよ………」
結局この戦闘の負傷者は1人、零治だけだった。
零治は加奈の治療を受けた後、星達3人と優理とキャロに付き添われて一足先にペンションへと戻って行った。
「バルトさん、崇徳院と戦ったんやろ?見てへんか?」
「いや、俺は見えてねえぞ?ぬらさんはどうだ?」
「………」
「あら?ぬらさんどないしたん?」
「………もしかしてだが、ロストロギアはもしやこれだったりするか………?」
そう言って恐る恐る手の中にある宝石を見せるぬらさん。
「ああ、これやこれ。………でも何で2つに割れてるん?」
「………いや、すまん。最後の一撃を与えた時に一緒に割ってしまったみたいだ。いやぁ、困った困った!!!」
誤魔化すように笑うぬらさんを呆然と見ていたはやてとフェイトだったが、我に返って直ぐに掴みかかった。
「何考えとんねんぬらさん!!最初に言ったやんかロストロギア回収が機動六課の仕事やって!!ロストロギアは変に魔法や衝撃を与えると暴走することもあるんやで!!!最悪の場合はその星を消し去る事だってあり得たんや!!!」
「そ、そんなに危険だったのか………」
「そうや!!今回は何も無かったからいいものの、間違ってたら星を破壊したぬらりひょんって名前が残るとこやったんやで!!」
「それは勘弁してほしいな………」
はやての迫力に少々引きぎみで答えるぬらさん。
「せめてロストロギアを回収してから攻撃してほしかったわ………」
「済まない………」
「私達はロストロギアのスペシャリストなんやからね」
「ああ、本当に済まなかった」
頭を下げて謝るぬらさんに、はやても冷静さを取り戻した様で、「分かってくれればいいんや」と許したのだった。
「………そう言えばワシが攻撃する前にバルトが思いっきり強力な魔法使ってたんじゃがそれは平気なのか?」
「…………何やて?」
せっかく和やかな雰囲気が再び暗雲が立ち込める。
「バルトさん、ちょっとええかな?」
「あっ?何だよ?」
「バルトさん、ロストロギア持ってる相手に強力な砲撃魔法撃ったって本当なん………?」
「ああ、撃ったぞ。動きをライが止めてくたんでチャンスだったからな」
「バルトさん、話した任務内容覚えとる?」
「崇徳院って奴の撃退だろ?成功したのに何怒ってんだ?」
「成功した?バルトさん、六課始動して最初の座学で口酸っぱくロストロギアに付いて教えた筈や。ぬらさんは百歩譲って仕方がない。せやけどバルトさんあんたは局員やないか!!」
「ちっ、うるせえな………上手くいったから良いじゃねえか」
「良くないわ!!!」
そう言ってヒートアップし始める2人。
既に事後処理も終わり、はやての命令を待つだけなのだが、そのはやてはバルトとヒートアップしており、すっかり忘れていた。
「は、はやて………」
「さて、巻き込まれんように離れるとしよう」
「あっ、はい………」
ぬらさんにそう言われ、ついて行くフェイト。
ギャーギャー騒ぐ2人を置いて事後処理を終えたメンバーはペンションへと戻っていくのだった………
後書き
取り敢えず妖怪大戦争はこれにて終了です。
しかし思っていた展開とは随分変わったな………
結局ヤマタノオロチもスサノオミコトも出なかったしwww
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