魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第26話 妖怪大戦争(中編)
前書き
こんにちはblueoceanです。
済みません、結局収まらないので中編で。
かなり遅れてしまい申し訳ないです………
「くそ、うじゃうじゃと………!!」
「夜美ちゃん!上、上!!」
はやての叫び声で上を向く夜美。
そこには剣を振り上げ、夜美に斬りかかろうとしていた天使の兵士がいた。
「この!!」
直ぐにエニシアルダガーを展開し、それを発射した事で、相手の軌道を変え、攻撃を避けることが出来た夜美。
「夜美ちゃん、次来るで!!」
撃退した夜美だったが、息着く暇もない。
天使達は風を起こし、雷を落とし、火を放ち、氷の礫を放つ。
「くっ!?エニシアルダガー!!」
先程発射したダガーを再展開した夜美は、そのダガーを自分の周辺に展開し、ダガーの防壁を作った。
「何それカッコイイ!!」
「加奈のフェアリーの真似事だ。取り敢えずこれで………!!」
夜美の目論み通り、敵の全ての攻撃はダガーによって守る事は出来た。
しかし一向に減らない天使の兵隊による絶え間ない攻撃で思うように攻撃に移れない2人。
2人とも広域魔法が得意なため、どうしても星やなのは達と比べると時間がかかってしまう。
直射砲撃の魔法も無いことも無いが、星みたく連射は出来ない。
その影響で依然増え続ける天使達との戦いに防戦一方になりつつあった。
「………で、どうするはやて?」
「そやな………玉砕覚悟で1人が敵に突っ込んで、その隙に広域魔法で大多数を殲滅。そして指揮をしてる天使達を叩くのが定石やろな。せやけど………」
「強固な防御魔法で守らなければ怪我だけで済むかどうか………」
今現在、互いにダガーで防御の円を作って相手の攻撃を防いでいる2人。
魔法での攻撃では無いため、あえて攻撃魔法で防御していた。
兵隊達の攻撃が主で、それを率いている天使の隊長達は兵隊達の様子を見ているだけである。
「………それにあっちで見ているだけの天使達が何をしてくるかも気になるしな………」
「そうやね………不気味やね………」
そんな手詰まりの2人。
しかしそんな状況を覆す頼もしい味方がやってきたのだった。
「えっ!?」
「何や!!」
そんな2人の後方からピンクの光との星とは違う明るいオレンジの光が天使達を一気に飲み込みこんだ。
「お疲れ2人共!」
「大丈夫ですか?」
「なのはちゃん、真白!!」
2人を助けたのはダウンしていて別荘に居るはずのなのはと、星達と別の場所で戦っていた筈の真白だった。
「なぜ2人がここに!?」
「援軍です!なのはさんとバルトさん、そして加奈さんが来てくれたので、私となのはさんははやてさん達の所に救援に来ました」
「苦戦してた2人共?」
「なわけあるか!!………と言いたい所だが、正直はやてとだと同タイプな為、中々上手く行く作戦が思い浮かばなかったところだ」
「お互い似たような技ばかりやからどうしてもなぁ………」
そんな話をしていた4人だが、再び天使の兵隊が増え、またも臨戦体勢をとる。
「………これで形勢逆転やな。先ずは天使達を指揮してる天使を撃破し、最後に一番後ろにいるカマエルを叩くで!!」
そんなはやての指示に頷き、再び戦闘が開始されたのだった………
「くそっ、このままじゃこっちが持たねえ………」
険しい顔のヴィータがそう呟く。
現れた敵はそれぞれ色々な武器や能力を持っているが強さはそれほど変わらない。
なのでそれほど苦戦する事もなく撃退してこれたが、永遠と続くのでは無いのかと思える絶え間ない増援にヴィータを始め、スターズの面々は心が折れかけていた。
本来ならロングレンジの面々が援護をするはずが、Bチームだけにしか射撃は届かず、Aチームの砲の援護射撃は最初のはやてのフレスベルグだけだった。
それにより敵の数を減らすことが出来ず、それとプラスして砲撃の無かったAチームへと敵に集中していたのだ。
「あうっ!?」
「スバル!!」
どこからか放たれた矢がスバルの脇腹を捉えた。
バリアジャケットのお陰で突き刺さりはしなかったものの、その衝撃とダメージで地面に膝をつけそうになるが、何とか踏ん張り、自分に向かってきていた2つ頭がある犬を殴って吹っ飛ばした。
「大丈夫?」
「平気………!!まだまだ行けるよ!!」
支えてくれるティアナに強気でそう言うスバルだったが、限界が近づいているのは確かだった。
「ヴィータ副隊長!!」
「何だティアナ?」
「撤退しましょう。このままじゃ私達が持ちません、今なら相手を振り切って撤退できます」
「ティア、それじゃあ!!」
「………確かにこのままじゃ私達の方が全滅する。はやて達の方も忙しいみたいで手が放せないみたいだから援護もあてにできない。………よし、ティアナ、スバル。ここから撤退する、先ずはギンガと零治達と合流するぞ!!」
「………」
「スバル、納得いかないのは分かるけど、退くのも作戦の内よ。1人で突っ走ったりしないでね」
「………分かってるよ」
渋々納得したスバルを見て、ティアナはヴィータに向けて頷いた。
「よし、行くぞ!!」
「スモークバレット!!」
ヴィータの指示と共にティアナが煙を巻き起こし、その隙に3人は他のAチームメンバーの元に向かうのであった………
「たああああ!!」
ライのハーケンの一閃が四本足で歩くドラゴンを真っ二つにした。
「魔王炎撃波!!」
零治も負けじと向かってきた大きな虫達を炎を纏った刀で燃やし尽くした。
「これで何体目だライ?」
「100から数えてない!!レイは?」
「同じだ!!」
互いに背中を向けあいながら話す零治とライ。
「このままじゃジリ貧だな………いっそ温存は止めて一気に突っ込むか………」
「それは駄目だよ、結局ジリ貧なだけ。それに倒して突き進んでもその後出現した敵がヴィータ達に向かっちゃう」
「分かってるさ」
「………そう言えば転移は!?転移で一気に行けば………」
「無理だ。ブラックサレナならともかく、ラグナルフォームでは精々攻撃を避けるくらいしか出来ない」
「そうだった………となると一度撤退した方が良いかもね」
「ライもそう思うか?」
「うん。このままじゃどっちにしたって六課の新人の子達も魔力がもたないだろうし、別に撤退したからってBチームも居るし無理する時じゃない」
「あ、ああそうだな………」
ライの冷静な判断に零治は驚きつつも、ライの判断を肯定した。
2人は直ぐに囲んでいる敵の一点を突破し、囲いを抜け出すと高速でティアナ達と合流するために動いた。
しかしそんな中、
(ライにもあんな風に考えられるようになったなんて………体だけでなく心もしっかりと成長してたんだな………)
零治はライの成長に1人喜んでいたのだった………
さて、Aチームが撤退の準備を始めている中、Bチームは頂上付近の崇徳院がいると思われる予測地点へと辿り着いていた。
最初こそ爆心地みたいな砲撃の雨をかいくぐって来たBチームだが、一度休息を取った後は何事もなくスムーズに行くことが出来た。
そしてとうとう目的地に着いたのだが………
『エローシュ、撤退だ!!コイツは俺達じゃ手に負えない!!』
「エクス?」
着いた途端、ユニゾンしていたエクスがエローシュに叫んだ。
「お前、一体どうしたんだ!?」
『まさかこれほどとは………』
1人驚きに戸惑っているエクスにエローシュにも一層警戒する。
「みんな何か来る、気を付けろ………」
エローシュのいつもとは違う、真面目な言葉にBチームの面々の顔にも緊張が走る。
やがてシャランシャランと鈴の音が聞こえて来た。
「………奴だ、奴が来る」
ぬらさんの視線の先を見る。
そこにはいつの間にか白い神主の服を着た男が1人、大きな石の上で夜空の月を眺めていた。
「月は綺麗だな………月明かりだけはどんなに年月が経とうとも変わらない。なのに人と言うのはどうしたものかな………」
月を眺めながら語りかける。
「崇徳院。貴様を祓いに来た」
「2代目ぬらりひょんか………妖怪ごときの貴様が私を祓うと?初代でさえ封じるのに精一杯だったはずだが?」
「確かにな………だが今回は助っ人を連れている。今度こそ完全に祓う!!」
「ふむ、その助っ人とやらが女とガキ共か………ん?そこのガキには魂が2つ?どういう事だ?」
『くっ!?エローシュ、何してる!さっさと撤退の指示を出せ!!』
「エクス、一体どうしたんだ?何でそんなに慌ててる?」
『奴には勝てない!!この戦力じゃ無駄だ!!』
「無駄?」
「………そのガキの体にいるもう一人の人格か?何か慌てているようだがどうやら気がついたようだな。全く、勘が鋭い」
「エローシュのユニゾンに気がついた!?」
フェイトが思わずそう言ったが他の魔導師の面々も同様に驚いていた。
『奴は怨念の塊、魔法で消し去ることは可能だと予想はついていた。何故ならば俺がいた時代にもよく怨霊の様な存在を確認できたからな。だが奴等には面倒な事があってな………』
「面倒な事?」
『怨念を全て晴らさなければ完全に消し去る事が出来ないんだよ』
「そうなのか………てか知ってるなら何で最初にはやてさんに言わなかったんだ?」
『こっちの世界と過去の自分の世界が一緒だとは限らん。下手な情報は要らんだろう』
「確かに………で、何がそんなに絶望的なんだ?」
『………奴の怨念、魔力に例えればSSSオーバー。膨大な怨念があの人の形に凝縮されている。あんなのを削るとなると何時まで戦わなくてはならないのか想像できない。初代ぬらりひょんが封じたのは迅速に事を治める最善の判断と言えるだろう』
「そんなに凄いのか!?」
『ああ。だからこそロストロギアを回収し早々に退却するべきだ』
「と言うことです、どうします?」
そんなエクスの考察にエローシュが他のメンバーに意見を問う。
「………どちらにしてもロストロギアはなんとしても取り返さなくちゃいけません。みんな戦うよ」
「はい!!」
「ガリュー、お願いね」
「!!」
エクスの念話を聞いていたBチームの魔導師達はデバイスを構え臨戦態勢をとる。
「ふむ、分かっていながらも戦うか。………良いだろう、あの時代から今を生きる人間達よ、我の怨念を受けるが良い」
岩から降りた崇徳院はフェイト達の方を向き、腰につけていた刀を抜いた。
「今度こそ決着を着けようぞ………!!」
ぬらさんも自分の愛刀を抜きそして戦いが始まる………
「はぁはぁはぁ………」
「リンスちゃん………大丈夫?」
そんな未だに戦い続ける2人も既に体力の限界が近づいていた。特にリンスに関しては元は冥王と呼ばれていたとしても体は子供、どうしても限界が早いのだ。
「だ、大丈夫で…す………ま、まだやれ………ます………!!」
肩で大きく息をしながらそう答えるリンス。
しかし誰がどう見ても限界なのは明白。
(このままじゃお互い共倒れね………ここまで戦って助けが来ないとなると他のみんなも戦闘が膠着ているのね………どうにか逃げる方法を考えないと………)
そんな風に今後の展開を考えていたギンガ。
しかしそんなギンガの横にいたリンスの雰囲気が変わる。
「……………」
「リンスちゃん?」
ギンガもリンスの変化に気がつき、声を掛ける………がリンスの反応は無い。
「リンスちゃん………?」
心配しながら恐る恐る頭を触れようとするギンガ。
「駄目!!ギンガ!!!」
そんなギンガを止めたのは黄色いバインド。
ライが放ったバインドだった。
「リンス!!しっかりしろ!!!」
「………レイ兄?」
「ああそうだ!!大丈夫か!?」
「大丈夫………?ああ、私また無意識の内に………」
何の事か分からないギンガであったが、それを考えさせる暇も無く、新たに敵が湧いてきた。
「ギンガ、リンスここから退却だ。このままじゃこっちは全滅する。先ずはヴィータ達と合流して………」
「ああ!!いたぞ!!!」
そんな話をしている所に零治達とは反対側の方からやって来たヴィータが大きな声を上げながらハンマーで敵を吹き飛ばした。
「ギンガ、リンス大丈夫か!?大丈夫なら次に零治達と合流して………って零治とライ!?」
「どうやらヴィータ達も無事みたいだな」
「当たり前だ!………それよりも撤退するぞ。私達だけじゃ耐えきれない!!」
「分かってる!だからこそ俺達も………ちっ!?」
零治は舌打ちをしながら自分達が来た方向を見る。
「やっぱり追ってくるか………ヴィータ、お前は新人とリンスを連れて先に山を出ろ。俺とライが殿として残る」
「はぁ?お前、何言って………」
「このままじゃ奴等を連れていく羽目になる。それじゃあ逃げる意味がない」
「レイ兄………だけど……それじゃあレイ兄とライ姉が………」
「僕達?僕達はまだまだ元気だよ。それにいざというときはレイの転移で逃げれば良いし」
「だけど………!!」
スバルがそう呟く。当然他のメンバーも不服そうな顔をしていた。
「ティアナ、お前はどの状態が今の状況でベストなのかよく考えろ。全員で逃げたとしても敵に追い付かれる危険性がある。そう考えれば殿を置くのは当たり前だよな?」
「だけどもっと良い方法が………スモークバレットで敵の視界を奪って逃げれば………」
「奴等は言わば作られた存在だ。そう何度もうまくいくとは考えにくい」
「それは………」
「ティアナ、指揮する者は時に非情な決断もしなくてはいけない場合もある。それを躊躇してしまえば今度は全てが駄目になるぞ?」
「それでも私は………全員が助かる作戦を考えます。ギリギリまで諦めたくありません!!私は………いいえ、私達はみんなで笑顔で作戦を終えるんです!!」
そんなハッキリと答えたティアナに零治は一瞬ポカンとするが、直ぐに笑い始めた。
「レ、レイ?」
「ククク………いや済まん。別にティアナをバカにして笑った訳じゃないぞ?何だか懐かしくてな………」
そう言って零治は1人、来た道の方を向く。
「零治さん!!」
「ティアナ、1つ勘違いしてるぞ?確かに殿に残ると言ったが別に犠牲になるだなんて思ってない。むしろ返り討ちにしてやるつもりだ」
「でもそれが出来ないから撤退を………」
「いや、やろうろ思えばいつでもやれるんだが、恐らく崇徳院との戦いを他の奴等に任せる事になりそうだったから地道に倒してただけだ。………まあ温存だな」
「それにリンスとか君達も心配だったからね。僕達のお願いでこれからの任務に支障がでちゃ、申し訳ないし」
零治の隣に並んだライが振り向いてそう言った。
「まあそう言うことだ。だから安心して先に行け」
「リンスをお願いね」
そう言って2人は敵に向かって駆けていった………
「ねえレイ?」
「うん?」
他のAチームのメンバーと離れた2人。
敵の方へ移動中、ライが零治に声を掛けた。
「あのときティアナと話をしてて何でいきなり大笑いしたの?かなり不気味だったんだけど………」
「ああ。あれは先輩と似たような事を言ったからつい思わずな」
「ウォーレンさんが………」
「戦闘の仕方の先輩に似てるし結構似てるのかもな。………まあ先輩と違って真面目そうだけど」
「うん、学級委員みたいだったね」
「………何か表現が幼くないか?」
「でもその上の生徒会は私の知ってる限り真面目じゃないから」
「………まあ確かに」
反論できない零治だった。
「ここで良いよね?」
「ああ」
そう言って止まった場所。
ちょうど見張らしもよく、ここがAチームへの最短ルートであった。
「さて気張るか!」
「うん!!」
互いに並んでデバイスを構える2人。
そしてしばらくして大群の敵が現れた………
「はああああ!!」
「………!!」
突貫するエリオとガリュー。
勢いも速さも申し分ない一撃。
しかし………
「ふむ」
エリオの突きとガリューの拳をあっさり避けてしまった。
体の向きを変えただけで………
「まだ!!」
直ぐに止まったエリオはそのままストラーダで横なぎに斬りかかる。
「ほう」
崇徳院はまたも対して動かず体をだけで避けた。
「中々やるじゃないかガキ。………だが、その甲羅の戦士と同じく私に挑むレベルでは無いな」
そう言うと強い衝撃波が2人を襲った。
「!?」
「うぐっ!?」
一度は耐えたものの、長い間耐える事は出来ず、エリオとガリューは吹き飛ばされてしまった。
「エリオ!!この!!!」
そんなエリオの仇討ちとばかりに、ザンバーで崇徳院に斬りかかるフェイト。
「勇敢だな。だがそれでも熱くはならず冷静に考える頭を持つか。実に優秀だ」
フェイトのザンバーを素手で受け止めながら淡々と分析する崇徳院。
「プラズマスマッシャー!!」
そんな崇徳院にすかさず左手から直射砲の雷撃を放射した。
「むう!?」
流石の崇徳院も想定してなかったのか、ザンバーから手を離し、砲撃から逃げようと離れようとするが………
「遅い!!」
フェイトのプラズマスマッシャーが崇徳院を逃さず、飲み込んだ。
「よし………」
先ずは一撃と考えていたフェイトの攻撃は見事に直撃した。まるで攻撃がスローモーションで見えているような避け方。それを見たフェイトはクロスレンジでの近距離砲撃を考えた。
しかし………
「ぬう………」
直撃したが、平然と立っている崇徳院。
「そんな………」
見た目からもダメージを受けているようには見えず、流石のフェイトも予想外の事であった。
「別に武器からでなくても攻撃は出来るのだな………全く、魔導師とは恐ろしいものだ………」
「よくも言いますね………私にはあなたの方が恐ろしい」
「そこのガキに聞けば分かる。私を倒すのは不可能だ。私は怨念で形成されている。そして怨念は過去に封印された時と比べても実に2倍以上。これを祓うどころか封印すら不可能だろう」
そう言われ、フェイトはエローシュを見る。
エローシュはゆっくり頷いた。
「ふっ、分かったであろう?無駄な抵抗は………ちっ!?」
「そう言って諦めると思うたか?なめるな!!」
そんな会話をしていた崇徳院に今まで動いてなかったぬらさんが斬りかかった。
「元気だなぬらりひょん」
「ぬかせ!!」
2人が互いに戦っている中、フェイトは一旦エローシュの隣へとやって来た。
「良い作戦を思い付いたって本当!?」
先程のエローシュはフェイトと崇徳院が話している中、念話でこっちに来るように話していた。
そしてその中には良い作戦を思い付いたと。
「はい、恐らくこれなら奴を消し去れます。ただ………」
「ただ?」
「奴が形成している怨念を一度外に放出させ、もう一度再形成する前に全員の一斉射撃で完全に消し去るって作戦なんですけど………」
「クロスレンジ組とAチームの力も必要って訳だね………」
そうフェイトが言うとエローシュは頷く。
「そして放出させるタイミング。恐らくですけど、チャンスは一度。それを失敗したら次も同じ手が通じる相手だとは思えません」
「そうだね相手はそう言う相手だもんね………うん、それでいこう。エローシュ、私達はどうすれば良い?」
「先ずはメンバーを集めないとどうしようもないです。崇徳院からロストロギアを奪いつつ、他のメンバーに連絡してこの場に来てもらうように言う。連絡はルーに任せます。なのでフェイトさんは………」
「ロストロギアの回収ね、了解!」
「恐らくですけど、ロストロギアの発動を止めないと救援も来れない。………頼みますフェイトさん!」
「分かった、任せて!!」
そう力強く言ったフェイトは再びザンバーを構えて崇徳院に向かっていった………
「………分かった」
エローシュから念話を受けたルーテシアは1人静かに返事をした。
「………そうと決まれば僕も休んでいられないな」
「エリオ大丈夫なの?」
「少し頭を強く打っただけだよ。戦闘に支障はない」
吹き飛ばされたエリオはその先にあった木に頭を強く強打し気を失っていた。
ルーテシアが回復と声をかけてくれたお陰で直ぐに目覚める事ができた。
「だけどクロスレンジで戦うのは危険かも………あいつ、まるで動きが分かるみたいに、最小限の体の動きだけで避けてた」
「怨霊って言われてるし、もしかしたら心の内が読めたりして………」
「それだったら何で念話で話している事には気がつかなかったんだろう………」
そんな会話をしている2人だったが、直ぐに激戦を続けているフェイト達を見て、2人は立ち上がった。
「取り敢えずそれは戦いながら確認する。ルーも連絡頼むね」
「うん、気を付けて」
ルーテシアの言葉を聞いてエリオは駆け出した。
「さて、私も………」
「………聞いたかみんな」
「うん。でもみんなで一斉攻撃か………闇の書以来だね」
「我はまだ生まれていないんだな………不思議なものだ………」
「???」
懐かしんでいる3人の隣で不思議そうに見ている真白。
天使の大軍勢は援軍に来た魔王とその後継の少女が加わった事により難なく殲滅できた。
「いやぁ、爽快やったわ………」
はやてと夜美も今まで攻めに転じられなかった鬱憤を晴らすがごとく、攻撃に容赦は全くなかった。
「まあ多少大人気なかったか?」
「良いんやって、相手はロストロギアで作られた天使やしバチは当たらんって」
「でも行いは見てるだろうね………」
「トリガーハッピーななのはちゃんには言われとうない」
「べ、べ、別にハッピーだなんて………」
「図星か………」
「あ、あの!!」
夜美達が同級生どうし仲良く話している中、真白は勇気を出して手を上げ、話に割り込んだ。
「どうしたんや真白?」
「Bチーム大丈夫なんでしょうか?最初想定していた大悟さんがかなり遅れているのでメンバーも少ないし、いくらフェイトさんでも………」
「大丈夫!!」
そんな真白の問いになのはが力強く答えた。
「あっちにはバルトさんが向かってるから」
「なのはが来ているから奴も来ているのだと思っていたが………」
「うん、バルトさんいつも通り強い奴と戦ってくるって真っ先に登って行っちゃった」
「Bチームが目標と戦闘に入ってるんやから空からでもどの辺りか分かるのに………せっかちさんやね」
「うん。まあ休んでたお陰で調子良いって直ぐに行っちゃったから教える暇も無かったんだ………」
「まあバルトさんやから仕方無いな………」
と互いにため息を吐くなのはとはやて。
「とにかく、Bチームは心配無いよ。だから私達は取り敢えず星ちゃん達と合流してチャンスを待とう」
「そやな、先ずは星ちゃん達と合流や」
「これで終わりかな………」
星達が戦っていた空。
夜空を覆うほど居た鳥獣達も加奈がプラスされたおかげで、更にスピーディに殲滅は進んで行き、そう苦労せず、全ての敵を殲滅したのだった。
「しかし数ばかりで大した事無かったわね………」
「敵はそんなに気にしてないよ。問題は………」
そう言ってキャロは星の方を見る。
「あれ?私は一体何を………ってあれ?何で私バインドされてるんです?」
「兄さんの言う異名もあながち間違いじゃないわね………リンスよりも星の方が冥王にふさわしいわ………」
加奈の呆れる視線の先、そこには森だった場所に大きなクレーターが出来ていた。
因みにBチームが登っていたコースがある場所である。
「優理もリミッター外してもらったからって調子に乗って本気出しすぎよ」
「だって星が暴走するし、キャロは囲まれるしかなり一杯一杯だったんだよ………」
「ごめんなさい………」
「キュウゥゥ………」
「ああ、別にキャロが悪いって言っている訳じゃ無いんだよ!!」
うなだれるキャロとフリードに慌てて慰める優理。
(あら、ちゃんとキャロを労わる様になったのね………成長したって事かしら………)
と2人を見ながらそう思う加奈。
(………ってこんなの何かおばさんみたいじゃない!!)
「加奈、いい加減外してくれません………?」
そんな星が開放されたのははやてからの念話が届いてからである。
「………レイ、どう思う?」
「ハッキリ言って分からない。だけどかなり嫌な予感がする………」
ライと零治は殿として残っていたが、今現在かなりのスピードで山を登っていた。
「だが、あれだけ召喚していたのを一気に引っ込めたって事は考えられるのは2つ。1つは単純にロストロギアに限界が来た、2つ目は膨大なエネルギーを使って今までとは違う強大な何かを召喚しようとしているって事だな」
「………で、レイは嫌な予感がすると」
「ああ」
「レイは普段鈍感だけどこういうのは結構当たるんだよね………」
そう話しながらもスピードは変わらない。
「ヴィータ達は星達と合流するんだよね?レイ、上手くいくと思う?」
「他に良い手が無い以上これがベストだと思う。ライはこのままロングレンジに………」
「僕もレイと行くよ。ロングレンジメンバーは充分戦力が居るし大丈夫だよ。問題はこっちだよ」
「ああそうだな。もっとスピードを上げるぞ。フェイト達が心配だ」
「レイ、付いてこれる?」
「………ラグナル、アーベント」
『あっ、はい』
「ちょっと!!それずるい!!」
そんなライの言葉を流した零治はアーベントとなり更にスピードを増すのだった………
「さて、準備は整ったな」
フェイトとエリオが身構えているといきなりそんな事を言う崇徳院。
そして懐から小さい四角い箱を取り出した。
「あれはもしかして………召喚?」
「このタイミングで?」
「流石に複数を相手にするのは骨が折れそうでな。私も仲間を作らせてもらうよ」
そう言って右手にあった小さい四角い箱を掲げた。
「来い、シヴァ!!マサカド!!」
そう叫ぶと崇徳院の両隣に大きな円が現れ、そこから2mを超え、三又槍を持ち、額に第三の目がある男と全身鎧に覆われながらも崇徳院に負けない様な異様な雰囲気に包まれた男が現れた。
「嘘だろ………?」
『エローシュ、知っているのか?』
「あの3mを超えるシヴァって言う男は破壊神と呼ばれる神で、他にも色々な地域で様々な名前を持つ神様なんだ。そしてあのマサカドって人は鬼神と呼ばれる程の武士で、打ち首にされ、川に首をさらされてながらも3ヵ月も生き、『体を返せ』と首だけになりながらも胴を探し続けたと言われているんだ。ある意味崇徳院と同じ、怨念の塊みたいな奴かもな」
「えっと………エローシュ、何でそんなに詳しいの?」
「ゲームで覚えた!!」
そんなエローシュの言葉に呆れるルーテシアだったが、突っ込む余裕はなかった。
「相手は神様と鬼神と呼ばれた男か………」
「油断出来ないよエリオ」
そう小さく呟くエリオとフェイト。
今まで感じたことのない威圧感と悪寒を感じ、冷や汗が流れる。
「ふん、神だろうが鬼神だろうが、ワシは妖怪の総大将じゃ!!誰であろうと叩き斬る!!」
そんな中、ぬらさんだけは気持ちがぶれることなく、崇徳院を睨み続けていた。
「エクス、どうにかしてあのロストロギアを奪わないといけない。先ずはそれからだ」
『さっき驚愕していたと思ったら直ぐに切り替わるか………』
「いや、普通に感動してた」
『本当に変な奴だな………まあ手が無い訳では無い。俺の次元移動で奴からロストロギアを奪えば良い』
「………そう言えばそんな事出来たな」
『だが、それにはお前が最低でも2mは近づいて貰わないとな」
「………えっ?」
そんなエクスの言葉に固まるエローシュだった………
「さあ行けシヴァ、マサカド!!」
崇徳院の掛け声と共にシヴァがフェイトに、マサカドがエリオに向かっていった。
「エリオ油断しないでね!!」
「はい!!」
対して2人も互いに互いの相手に集中する。
1対1の勝負。
「ガリュー、あなたも………」
「待った!!ガリューにお願いしたいことあるから戦わせないでくれ」
「わ、分かったわ。だけどお願いしたいことって何?」
「それは………」
「接続回路形成………対象に雷の加護をブースト!!」
「ありがとうエローシュ」
戦闘が開始される前にエリオとフェイトにブーストをかける。雷のブーストにより2人の体には雷が帯びていた。
「行きます、プラズマランサー!!」
先手必勝と言った形で魔方陣から雷の槍を飛ばす。
シヴァは向かってくるプラズマランサーを見ながらもその場で仁王立ちしている。
「直撃?」
「いや、違う………!!」
エローシュがそう言った様にシヴァは右手に持つ巨大な三又槍を自分の前で回し、向かってきたフォトンランサーを全て消し去った。
「そう、簡単に攻撃が通る訳無いよね………」
フェイトは特に落胆した様子もなく、次の攻撃の準備を始めていた。
「プラズマスマッシャー!!」
先程崇徳院に使ったように雷撃を放射するフェイト。
シヴァはまたも槍を回し防ぐだけである。
「そして、ハーケンセイバー!!」
最後に誘導性のある魔力刃を放った。
「ウオオオオオオ!!!」
シヴァは雄叫びの様な声を上げ手の空いている左手を使って、ナイフのようにハーケンセイバーに斬りかかるシヴァ。
「まさか!?」
ハーケンセイバーは鋼鉄でも斬り裂けるほどの威力のある斬撃。勿論使用者によっては威力もコントロール出来る。
だが当然手加減などするはずもなく本気の攻撃だった。
しかしそんな斬撃をシヴァは左手の手刀でハーケンセイバーを叩き斬った。
「嘘でしょ………」
そんな様子を見ていたルーテシアが驚く。
「いや、不可能じゃない。あの様な斬撃は正面の切断力は凄いが横の衝撃には弱いんだ。奴は横なぎに手刀を振るったろ?だからこそ、簡単に破る事が出来たんだ。だけど………」
「だけど?」
「それでも手刀で破壊するなんて普通考えないよな………」
「流石に予想外だよ………」
そんなフェイトの言葉を流し、無言で三又槍を頭の上に構えるシヴァ。
「何を………」
「!?エクス!!クリスタル多重展開!!!」
そんなエローシュの叫びと同時にもの凄い勢いで持っていた三又槍を投擲するシヴァ。
そのスピードはまさに神速。
投擲は寸分の狂いも無く、真っ直ぐフェイトに向かっていく。
「えっ?」
正面から来ているのにも関わらずフェイトの反応は遅れ、直撃コースから逃げる余裕も無かった。
………だが、
「!?」
いきなりフェイトの目の前に大きなクリスタル5個並んで出現。
それが壁代わりとなり、槍を防いだのだ。
しかし決して強固の壁と言うわけでは無く、槍が突き刺されば直ぐに砕かれてしまうほど脆かった。
だがその間に出来たコンマ数秒がフェイトを救ったのだった。
「くっ!!」
気がついた時にソニックムーブで逃げる気でいたフェイト。
その判断こそが、自分の命を救ったのだった。
大きな音を立て、揺れる程の衝撃が地面を伝わる。
フェイトの横を通り過ぎた槍はそのまま地面に突き刺さり、大地をえぐった。
その後はまるで大きな爆発が起きたように地面にクレーターが出来ていた。
「こんなの喰らったらひとたまりも無い………」
『いい判断だったなエローシュ』
「ありがとうエローシュ」
「いえ、間に合って良かったです。だけどこんな敵にどうやって………」
六課でも最速と言ってもおかしくないフェイトでも反応出来ないスピード。
そして一撃必殺の威力。
この場にいる誰もが奴に対抗出来る手を持ち合わせていなかった。
「くうう………」
「小僧、そんなものか………!!」
対してエリオもマサカド相手に苦戦を強いられていた。
零治の時に見せた雷を自身に流し、肉体の限界を超える戦闘方法を行なっていた。
まだ完成とは程遠い出来であるが、それでも今エリオが出来る精一杯だった。
そしてそれはマサカドとも互角に戦えていたのだ。
だが所詮互角なだけであり、エリオが苦戦を強いられる要因となってしまった。
スタミナ切れである。
「まだその術も慣れていない模様。だがその中でもワシと同等に戦うとは恐れ入った。ワシも本気で戦わざる追えない所まで来ていた。全く、末恐ろしい小僧よ………」
「ほ、本気じゃない………?」
「これくらいの実力がワシだと?それはワシに失礼だぞ小僧。ワシは武士なり。武士は武士として道を持つ。どんなに時が経とうとワシがその道から外れる様な事は絶対に無い」
そんな武士道を貫くマサカドに戦闘はまさかの指南の様な形になりつつあった。
「さあ来いまだまだやれるな」
「あまり僕を舐めるな………!!」
そして再びエリオはマサカドに向かっていった………
「プラズマスマッシャー!!」
投擲を終え、外れた事に驚愕していたシヴァに再び電撃を放射するフェイト。
投擲をした後であった為、手ぶらなシヴァはこの攻撃を防ぐ手立てが無いはずだった。
「なっ!?」
「うそっ!?」
しかしシヴァの腕には先ほどと同じ三又槍が右手の中にあった。
そして先ほどと同じく槍を回して雷撃を防いだ。
「何で!?」
「そんな………」
「フェイトさん!!また奴の投擲が来る!!」
先ほどと同じで頭に槍を構えたシヴァ。
まるでバネの様に腕が後ろに行くほど力が溜まっていくのがエローシュには分かった。
(溜まっていく………?それってもしかして………)
『バカ!!奴が投げるぞ!!』
「!?しまった!!」
エローシュが気づいた時には既に投げようとしていたシヴァ。
「フェイトさん!!」
既にソニックムーブで回避に入っていたフェイトだが、シヴァは完全にフェイトを捉えてた。
そして槍が放たれようとしたその時………
「インパクトステーク!!」
シヴァに大きな衝撃が響きわたった。
「極光斬………ブレイカー!!!」
そして極めつけは青い斬撃のによる攻撃である。
「ふう………何とか間に合ったな」
不意に現れた白銀の聖騎士。
黒の亡霊とは真逆の存在にフェイトとエローシュは驚いてたが、ルーテシアだけが気がついていた。
そして白銀の聖騎士がやってしまった大失敗にも。
「危なかったなフェイト」
「………あなた誰ですか?」
「えっ、誰って………」
そこまで言って自分のしでかした事に気がついた。
「レイ、アイツあれくらいじゃ………ってあっアーベント………あれ?あれれ?あれれれれ?」
時は戻らない………
後書き
最近家のパソコンがおかしい。一文書くたんびに応答無しってなる。
そんなんばかりで一向に進まなかった………
パソコンに強ければな………
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