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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第77話 反撃の狼煙!集え、スーパーロボット軍団

 百鬼帝国の放った脅威は復活したゲッターロボの新必殺技【シャインスパーク】の前に散った。間一髪での事であった。現在、戦闘を終えた後、マジンガーZとゲッターロボは揃って新早乙女研究所内にある格納庫へと格納されていた。
 戦闘後のメンテナンスを行う為だ。それに、ゲッターロボは新武装をぶっつけ本番で使ったせいかその後の調査や調整も残っている。多分、こちらの方がZの整備よりも時間が掛かるだろう。
 ゲッターロボもまた一緒に来ると言う訳にはいかなさそうだった。
「何にしても、助かったぜ」
 心の底からの言葉を甲児は放った。もし、あの場面でゲッターチームが揃わなければと、思うとゾッとなる。
 マジンガーの攻撃を全く受け付けなかった敵の巨大要塞。あんなのがこれから出てくると言うのであればそれはかなり不味い展開だとも言える。
 一刻も早く戦力を揃えなければならない。敵に立ち直りの時間を与えてはならないのだ。
「すまない、甲児君。本来なら俺達も一緒に行きたいんだが」
「気にするなよリョウ君。どの道今じゃゲッターロボも動けないんだし、それにあんたは今、病み上がりの状態だろ?」
 同行できない事を気に病む竜馬に甲児が気遣うように言い返してくれた。竜馬の性格を知っているからこその言葉だ。彼は誰よりも仲間思いな面がある。が、それ故に自分を責め易い傾向があるようだ。
 自虐傾向に行かない為の措置と言えば妥当であろう。
「それで、これからお前達は何所へ向うんだ?」
「これから俺となのははウルトラ警備隊本部へと向うつもりだ。最近あそことの音信が取れないからさ。念の為奴さ」
 スーパーロボット軍団とのコンタクトが取れた以上、残るはバックを固めるだけである。その為にもウルトラ警備隊とのコンタクトは避けては通れないのだ。
「そうか、道中気をつけて行くんだ。俺達も調整が終わり次第そちらに向うよ」
「あぁ、頼むよ」
 再会の約束を握手で交わす。また共に戦うと言う約束もその握手の中にはこめられていた。
「そう言えば、なのはの奴は何所だ?」
「彼女となら、俺は医務室で会ったきりだけど……」
「何やってんだあいつ? こちとら急がないといけないってのに」
 せっかちそうに甲児が愚痴る。そんな甲児を見て、隼人がふと、笑みを浮かべているのに気付いた。
「何だよ?」
「お前、その様子じゃ女の子の事を今一分かってないようだな」
「は?」
「女ってのは準備に時間が掛かるもんだ。それを黙って待ってやれるのが度量のある男って奴だろ?」
「けっ、俺っちはどうせせっかちで短気ですよぉだ!」
 皮肉に対し買い言葉で返す。例えインテリになったとしても本質は変わらないようだ。
「しゃぁねぇ、とりあえず呼んで来るわ」
「やれやれ、あんな様子じゃ彼女も出来てないんじゃないのか?」
「それ、俺達にも言える事だぞ、隼人」
「……」
 竜馬の指摘に隼人は黙り込んでしまった。そんな二人の会話など気にせずに甲児は医務室へと足を運んだ。で、弁慶はと言うと、すぐ隣で何時用意したのか大きな握り飯を頬張っている真っ最中でもあった。
「にしても、お前良く戦闘の後でそんなに飯が食えるな?」
「あぁ、腹減ったからよぉ」
 とまぁ、こんな具合でもあった。この様子なら合流はそうそう時間は掛からないだろう。




     ***




 竜馬が去った後の医務室内で、なのはは自分の手を眺めていた。
 あの時、竜馬を助けた光。あの光になのはは疑問を抱いていたのだ。
「私、魔法は今使えないのに、何で?」
 デバイスを失い、魔力も喪失した現状、今のなのはにあんな芸当が出来る筈がなかった。それに、なのは自身回復魔法の類は苦手だ。だが、あの時、そっと触れただけで竜馬の傷は治った。
 しかし、あの光は自分の魔力光じゃない。桜色の魔力光ではなく、寧ろ白色に近かった。
 一体、あの力は何だったのか? それに、他にも疑念は尽きない。
「私は、フェイトちゃん達とは明らかに何かが違う。私は、一体何者なんだろう?」
 今にして思えば疑念が尽きなかった。他の魔導師達が怪獣を相手に撃退、もしくは戦意を喪失させる程度の事しか出来なかったのに対し、何故かなのはだけはその怪獣を倒す事が出来るのだ。
 それに、時の庭園で見せたあの不気味な力。あの力も他の魔導師にはない未知の力と言えた。
 超獣を一撃で葬り、ヤプールですら撤退させたあの恐ろしい力。
 他の魔導師達とは明らかに自分は一線を介しているというのが分かる。
 自分は、一体何者なのだろうか?
「まだ此処に居たのか?」
 入り口から甲児の声がした。声色から若干苛立ちを感じさせられた。振り返ると少しだけ不機嫌な甲児がいた。
「こ、甲児さん」
「早くしろ。次に行くぞ」
「う、うん!」
「……どうしたんだ?」
 甲児も流石に気付いたようだ。なのはが何時もと何所か違うと言うことに。先ほどまでとは比べて明らかに元気がない。
 何所か思いつめたような感じにも見える。
 そんな甲児の問いに、なのはは首を横に振ってそれを否定した。
「大丈夫ですよ。それより、次は何所へ向うんですか?」
「あ、あぁ。次はウルトラ警備隊本部へ行くつもりだ。あそことコンタクトを取るのが目的だからな」
 急に聞かれたものだから甲児も驚き混じりに答える。そんな甲児を見て、なのはがふと笑い出した。子供らしい無邪気で可愛げのある笑顔だった。
 そんななのはを見て、甲児は眉を吊り上げる。
「ちぇっ、今日はやけに俺って笑われるなぁ」
「それが甲児さんの良い所なんじゃないんですか? 人を笑わせる事が出来るって素敵じゃないですか」
「俺は漫才師じゃねぇっての! ほれ、さっさと行くぞ。もたもたしてると置いてくからな」
 不機嫌さをそのままに甲児は医務室を出て行く。その後になのはも続いた。自分が何者なのか? あの力が何なのか? それを考えるのは後にしよう。
 今、自分達がすべき事は、ばらけた戦力を纏め上げて侵略同盟を叩き潰す事が最重要なのだから。




     ***




 道中は特に何事もなく事が運んだ。あの後、マジンガーZの整備が無事に終了し、ゲッターチームに分かれをつげ、甲児となのははZで新早乙女研究所を後にした。
 その後は一直線にウルトラ警備隊本部へと向ったのだ。
 此処とのコンタクトが取れれば大体の戦力は揃う。その後はアミーゴへ帰還して現状を報告すれば良いだけの事だ。
「皆、大丈夫かなぁ?」
「心配か?」
 心配じゃない。と、言えば嘘に聞こえるだろう。事実、甲児も別行動中の仲間達の事が気になってはいるのだから。
 フェイトやはやては勿論、シグナムや光太郎、それにハヤタ、ダン、郷、そしてレオとアストラの兄弟。徐々にだが戦力は揃いつつある。
 そして、人類の反撃の日はもう真近にまで迫っているのだ。
「見えたぞ」
 甲児となのはの目の前には自然の山々と綺麗な湖畔が見えた。一見何もないように見えるが、実際これは巧妙なカモフラージュなのだ。
 ウルトラ警備隊の本部はこの自然の山々の遥か下に建造されている巨大な地下施設なのだ。
 この巨大施設こそが、今回の旅の最終目的地でもあった。
「良かった、どうやら襲撃された跡はないな」
 外観を見る限り襲撃を受けた跡は見受けられない。これならば皆無事なのだろう。
 だが、同時に不穏な静けさを感じられた。
 おかしい、これはおかしいぞ?
 もし、本部が機能しているのならこれだけZが接近している事なのだから何かしらコンタクトがあってもおかしくはない筈。それが何の音沙汰もないと言うのは逆に不気味ささえ感じられた。
「通信とかはないんですか?」
「あぁ、ない。一体どうなってんだ?」
 試しに甲児は本部とのコンタクトを取ろうとした、だが、通信を幾ら送っても何も返って来ない。雑音しか聞こえないのだ。
 通信を切ってるにしたってこれは明らかに何かあるとしか考えられない。
 疑問に悩んでいた正にその時、突如山の一角が下がった。あちこちの場所から現れた物。それは対空防衛用の砲台であった。
 その光景にギョッとなる二人。その直後、砲台から白煙が吹き上がった。夥しい量の白煙、そして轟音と衝撃。
 それら全ての衝撃が全てZ目掛けて飛んできたのだ。
 な、なんだなんだ!?
 甲児もなのはも、現状を飲み込めず半ばパニックを起こしていた。何故いきなり攻撃されるのか? そもそも自分達は味方の筈。それが一体何故攻撃を受けるのだろうか?
「おい、攻撃止めろ! こちらマジンガーZ! 兜甲児だ! 応答してくれ!」
 必死に呼び掛けるが一向に反応がない。それどころか、砲撃が更に激しくなっていく。
「おい、誰か居ないのか? いるんだったら応答してくれ! 今すぐ攻撃を止めてくれ!」
 幾ら呼び掛けても聞こえて来るのは雑音のみだった。何度も通信を送ったが、結果は同じだった。
 くそ、一体どうなってるんだ?
 疑念と苛立ちに甲児は奥歯を噛み締めていた。そんな時、雑音が止み、通信がクリアになった。
 かと思うと、其処に映ったのは全く予想しない存在であった。
【ふふふ、ご苦労な事だな。兜甲児、そしてマジンガーZ】
「だ、誰だてめぇ?」
 其処に居たのは岩の様な肌を持ち、古代ギリシャの戦士を思わせる井出達をした無骨な男だった。
 その男が嫌味そうな笑みを浮かべてこちらを見ているのだから甲児自信良い思いなどしない。
【俺はミケーネ帝国のゴーゴン大公よ。このウルトラ警備隊本部は既に我等侵略同盟の支配下に落ちた。此処に貴様等の味方など居らんわ!】
「な、何だと!?」
 まさか、そんなまさか!?
 此処に来て一番予想したくない事態に甲児達は直面してしまった。ウルトラ警備隊本部が侵略同盟の支配下に落ちてしまったと言うのだ。
 となれば、この砲撃を行っているのは、もしかしたら本部のメンバーなのでは?
 となれば下手に攻撃など出来ない。彼等は大事な仲間なのだ。その仲間を手に掛ける事など甲児には出来なかった。
【それだけではつまらないだろう? これは俺からのサービスだ。受け取るが良い】
 再度不適な笑みを浮かべる。それとほぼ同時に、山頂の一角が横にスライドし、巨大なカタパルトが見え出した。其処から現れたのもやはり想像したくなかった産物達であった。
「あれは、ジェットビートルに、ウルトラホーク!」
 そう、其処から現れたのは科学特捜隊のジェットビートル。そして、ウルトラホーク1号であった。
 どちらも甲児達にとって大事な仲間でもある。半年前の戦いで彼等との共闘の記憶は今でも脳裏に焼きついている。
 そんな彼等が今度は敵として目の前に現れたのだ。
「甲児、すまねぇ!」
「御免よ、甲児君」
「その声、まさか、アラシさんにイデさんか?」
 ジェットビートルから聞こえてきたのは科学特捜隊のアラシ隊員とイデ隊員の二人であった。
 となれば、今ウルトラホークに乗っているのと言えば―――
「すまない、マジンガーZ」
「今、俺達はこうするしかないんだ!」
「やっぱり、フルハシさんにソガさん。くそっ、一体どうなってやがるんだ!」
 何にせよ、このままでは良い的だ。それに、まともに反撃など出来ないと来た以上、これ以上ここにとどまるのは得策とはいえなかった。
 悔しいが、一時撤退する他ない。悔しさに心が押し潰されそうになった。
「甲児さん?」
「くそっ、此処は一旦下がるぞ! 今の俺達じゃどうする事も出来ねぇ!」
 歯が折れる位なまでに噛み締める思いで、甲児は操縦桿を動かした。Zはウルトラ警備隊本部から背を向けてその場から遠ざかった。砲撃の届かない場所まで。追撃のない場所まで。
 その間、終始ゴーゴン大公の勝ち誇った笑い声が響いたのは言うまでもなかった。




 Zが着地したのはウルトラ警備隊本部からかなり離れた森林地帯であった。其処にZを隠し、甲児達は降りた。
「くそっ、侵略同盟めぇ!」
 怒りを隠そうともせず、甲児は手近な木に拳を叩き付けていた。相手が戦力を出して襲い掛かってきたのならば叩き潰せば良いだけの話だ。だが、かつての仲間達が相手では手出しが出来ない。
 しかし、このままにしておく訳にはいかない。何とかして彼等を解放しなければならないのだ。
「これから、どうしましょう?」
「難しいな。Zで内部に殴りこむにしたって、そんな事をしたら奴等の事だ、きっと施設を爆破しかねない。そうなったら元も子もねぇ」
 恐らく、あのゴーゴン大公の事だ。ウルトラ警備隊の殆どの施設を掌握しているに違いない。
 無論、基地を放棄する為の自爆装置の類もきっと知ってる筈だ。迂闊に手出しが出来ない状態なのだ。
 突如、何所からともなくギターの音色が聞こえてきた。何所か儚げで、そして悲しげな曲だった。
「ギターの音色?」
「この曲……もしかして!」
 なのははこの曲に聞き覚えがあった。そして、この曲を弾く人物の事も。
「よ、また会ったな」
「早川さん!」
 現れたのは早川健であった。神出鬼没が似合う色男を自称する私立探偵である。
「早川? 知り合いなのか、なのは」
「うん、前にこの人に助けて貰った事があるんです」
「ふぅん」
 甲児は再度早川を見た。黒いジャケットとズボン、それにウェスタンハットに身を固め、白いマフラーとギターを持っている。明らかにキザったらしい姿だと一目出来る。
 一体この男が何の用だと言うのか?
「ウルトラ警備隊が奴等の手に落ちたそうだな?」
「あんた、知ってたのか?」
「当然だ、伊達に私立探偵をやってる訳じゃねぇんだぜ。俺の情報力は日本一だからな」
 口調も全てがキザの塊にも思える。が、突っかかるのは止めにした。今此処で突っかかったって何も解決しないのだから。
「早川さん、また私達に力を貸して貰えますか?」
「勿論、世の悪党を野放しにしてたんじゃこの早川健の名が泣くからな」
「つってもよぉ、あんた一人が加わったってどうにもならない状況なんだぜ?」
 甲児がそう突っかかった。すると、早川はまるで嘆き悲しむかの様に目元を帽子の唾で隠し、やれやれと言わんばかりに首を横に振るった。
「な、何だよ?」
「やれやれ、頭がよくなっても本質は変わらないようだな。確かに、あの本部は外面からの襲撃には強い、堅牢な防備に天然自然の要塞。外から攻めたんじゃまず落とすのは無理だろう」
「じゃぁ、どうやって?」
「だが、内面から攻めれば勝機はある。それに、施設の全てが奴等の手に落ちた訳じゃない。要するに頭を潰せば施設はまた俺達の物になる」
「な、なるほど!」
 考えもしなかった。確かに外から攻めてたんではあの自然の要塞を落とすのはひと苦労だ。
 だが、内部から攻めれば中は普通の施設。それに潰す目的は其処を牛耳っているミケーネの一部の奴等と決まっている。それならばまだ勝機はありそうだ。
「だが、幾ら勝機があったとしても、俺だけじゃ流石に骨が折れる。そこで、今度はお宅らにも力を貸して欲しいって訳さ」
「俺達に?」
「生憎、俺はあの施設の地理がない。そこで、なのはに道案内を頼みたい」
「わ、私がですか?」
「出来るか?」
 早川の問いに、なのはは少し考え込んだ。しかし、その後になのはは強く首を縦に振り頷いた。
 その表情には一切の迷いがないと言う事を早川は知った。
「なのは、お前……」
「今の私は、戦う事が出来ません。だから、今は私の出来る事をします」
「そうか」
 なのはがそう言った以上、絶対に引き下がらないと言うのは甲児が良く知っている。
 此処は彼女に任せる他ないだろう。
「そして、もう一つがお宅だ。ミスターマジンガー」
「お、俺か?」
「俺達が内部に侵入している間。お宅はマジンガーで敵の注意を引きつけて貰いたい」
「なる程、二面作戦か」
 作戦の内容はこうだ。まず甲児の操るマジンガーZが再度ウルトラ警備隊本部へと襲撃を行う。それにより施設の注意が一斉にマジンガーに向けられてる間に早川となのはの二人が内部へと潜入し、施設を掌握する。そう言った手順なのだ。
「出来る限り甲児は派手に暴れてくれ。奴等の注意を出来るだけ多く引きつけて欲しい」
「任せとけ!」
「それからなのは、施設の入り口に俺の助手を待たせてある。其処から潜入するぞ」
「分かりました」
 かくして、ウルトラ警備隊本部奪還の為の作戦が開始された。
 甲児は早速マジンガーへと乗り込み大空へと飛び立っていく。残った早川となのははそのまま森の中を歩いた。
 森を抜けると、其処は本部へと繋がる隠し通路の前であった。
 そして、其処には一人の少年が待っていた。
「クロノ君!」
「なのは、無事だったんだね?」
 其処に居たのはクロノ・ハラオウンその人であった。確かに、彼は早川の助手的な位置の人間である。
「よぉ、準備は万端か?」
「はい、後は外での砲撃音が聞こえれば……」
 言葉の途中で、突如盛大な爆音が響いた。どうやらマジンガーZが攻撃を開始したようだ。
「よし、行くぞ」
「はい!」
 爆音を合図に、三人は本部の内部へと潜入を試みた。隠し通路なだけに其処には見張りは一人も居なかった。どうやら非常用に作られた通路なのだろう。
 其処を抜けると基地の中へと入る事が出来た。
 思っていた以上に配備されている兵力は少ない。
 どうやら少ない兵力を警備隊の所員で賄っているのであろう。
「なるほど、奴等少数精鋭で此処を乗っ取ったって事か」
「でも、それなら物量さで警備隊の皆が勝つんじゃないんですか?」
「恐らく人質の類を取られてる事なんだろう。敵を動かすには奴等の喉下を抑えれば良いからな」
 もし、そうならば最初に行くべき場所は自ずと決まる。
 それは、地下にある独房であった。其処にもミケーネの兵士と思わしき者の姿は見受けられた。だが、見張りの数は二人と案外少ない。
 これならば行けるだろう。
「クロノ、お前は片方をやれ」
「分かりました」
 クロノと早川が互いに合図を送り、静かに二人の見張りに接近する。視界に入らないように、音を立てないようにゆっくりと、その背後へと接近する。
「よぉ、見張りご苦労さん」
「む、なん―――」
 振り返るよりも前に早川の手刀が見張りの後頭部を強打した。相当のショックを与えたのだろう。首がガクンと曲がり、そのまま見張りは崩れ落ちた。 
 もう一人の見張りが異変に気付き、振り返った時、其処にはクロノが目の前に控えていた。
「静かにしろ、でないと容赦はしないぞ!」
 見張りの眉間にデバイスの切っ先を近づけてホールドアップを強要する。流石にこれには参ったといわざるを得ず、見張りは武器を捨てて両手を挙げる。すかさず早川はその見張りをロープで縛り上げる。
「さぁて、それじゃこれから幾つか質問をするぞ。ちゃんと答えてくれれば手荒な真似はしない。まずは一つ。此処に居るお前等の仲間は何人だ?」
「ぜ、全部で……10人足らずです」
「思ったよりも少ない。そんな数でどうやって此処を占拠したんだ?」
「せ、星間連合の協力があったからだ。奴等の主でもある、異次元人ヤプールが空間湾曲を用いて電撃戦法を用いて制圧する事が出来た。如何に堅牢な防備を誇っていても内部から奇襲されては脆い物だ!」
「なる程、その戦法を用いて内部から一気に制圧したって訳か。それで、お前等の事だから主要人物の殆どを人質に取ったって奴だろ? そうでなけりゃあの科学特捜隊やウルトラ警備隊のメンバーが寝返るとは到底思えない」
「ひ、人質は確かに取った……だが、場所は教える訳には―――」
 答えを渋るミケーネ兵士。口を堅く閉ざしてしまったミケーネ兵士。こうなるとそう簡単には口を割らないだろう。
 だが、割らせる方法がない訳ではない。
 堅く口を閉ざしたミケーネ兵士の眉間にクロノはデバイスの切っ先を突き付けた。トリガーに指を掛け、隙あらば何時でも射殺出来る用意をしてあるのだ。
「答えて下さい。人質とは誰なんですか? 何所に居るのですか?」
「答えた方が身の為だぜ。でなけりゃ一瞬の内にお前の頭が粉みじんになるぜ」
「ま、待ってくれ! 牢だ、地下牢に閉じ込めている!」
「嘘じゃないんだな?」
 早川の睨みが利く。少しでも嘘を言えば容赦しないぞ。とでも言いたげな表情でもあった。
 その表情で睨まれれば、忽ち肝が冷え切ってしまうだろう。兵士の顔が青ざめていくのが見て取れた。
 流石の顔力と言うべきだろうか?
「う、嘘じゃない! 本当だ!」
「そうかい、それだけ聞ければ……充分だ!」
 聞きたいだけ聞いた後、早川は兵士の鳩尾に鉄拳を叩き込んだ。兵士の体がその場でくの字に曲がり、そのまま倒れこんでしまった。
「良し、それじゃさっさと地下牢に向うとしますか。急がんと外に居る甲児の身が危ないしな」
 意味深な発言をしつつ、早川は腕時計に目をやった。侵入を開始してから既に30分の時間を費やしている。
 余り無駄な時間を掛ける訳にはいかない。自分達がもたついていては、外で戦っている仲間達がそれだけ追い詰められてしまうのだからだ。




     ***




 三人が基地内に侵入を開始するよりも数分前、甲児の操るマジンガーZが再度ウルトラ警備隊本部への攻撃を開始した。
 攻撃とは言うが、実際には本部の主要部を避ける様に武器を叩き込んでいく。施設が使い物にならなくなっては意味がない。
 それに、内部へ侵入した仲間達の妨害になってしまわないように配慮しつつも、なるだけ怪しまれないように派手に攻撃をしていく。
 そんな事をされれば、当然本部を占領している輩達も黙ってはいられない。反撃にと施設内の設備を用いて迎撃をしてきた。夥しい量のミサイルや対空砲撃が襲い掛かってくる。
 だが、対空砲撃や迎撃ミサイル程度でマジンガーは怯みはしない。多少コクピット内に振動が伝わってくるが大した揺れじゃない。
 それに、甲児にとって厄介なのはこれじゃないからだ。
 恐らくは、迎撃が一通り終わったとに訪れる筈だ。
「来るか!」
 突如、山の一角が開く。其処から二機の戦闘機が姿を現した。
 ジェットビートルとウルトラホークだ。
「また来たのか? 甲児」
「何か策とかあるのかよ!?」
 通信機越しに声が聞こえてくる。結構慌しい声ではあった。だが、甲児はそれに答える訳にはいかない。下手に答えて通信内容を敵に傍受されでもしたら全てが台無しになってしまうからだ。
 なので、今はただ攻撃に耐えるしかない。
 幸い、防衛隊の攻撃程度でマジンガーが傷つく事はまず有り得ない。なので今はひたすら攻撃に耐えれば良い。
 そう思っていた矢先であった。再度山の一角が開かれる。其処から現れたのは無数の戦闘獣の群れであった。
 一体あの地下施設の中にどうやってこれ程の戦闘獣を隠しておけたのか?
 そう疑問に思える程の数の戦闘獣が姿を現してきたのだ。その戦闘獣軍団から夥しい限りの攻撃が降り注いだ。
 対空ミサイルの類とはまた違った攻撃が襲い掛かってきた。その威力もまた桁違いな物となっている。
 幾ら装甲を超合金ニューZで身を固めたとは言え、戦闘獣の攻撃をまともに受け続けていては流石に不味い。
「くそっ、こいつら……ビートルやウルトラホーク諸とも俺を落とすつもりだな!」
 戦闘獣の攻撃は敵味方関係なく襲い掛かってきた。夥しい量のミサイルやビーム、更には溶解液や弾丸などが雨霰の如く飛んできた。
「この野郎!」
 お返しと言うかの様にZの両目から光子力ビームが放たれた。黄色の閃光が放たれ、前方に居た戦闘獣を纏めて数体貫いていく。
 胴体を貫通された戦闘獣達が上空で爆発し、残骸となって地面へと散らばっていく。
 しかし、その後も仕切りに敵戦闘獣は続々と本部内から押し寄せて来る。
 更に本部からの対空砲火やビートル、ウルトラホークの攻撃が降り注いでくる。戦闘獣だけに集中出来ればやり易いのだが、どうにも分が悪すぎる。
「皆、急いでくれ! このままだと流石にヤバイぜぇ、こりゃぁ」
 甲児は愚痴った。自ら買って出た役割とは言え、流石に余り長い時間足止めするのにも限界がありそうだ。
 せめて本部の機能を取り戻せれば心強いのだが。




     ***




 ミケーネ兵士の言った通りであった。地下牢獄内には警備隊員の殆どが閉じ込められていた。幸い早川が鍵空けを行ってくれたお陰で扉を開けるのにはさほど苦労はしなかったのだが。
「けど、本当に早川さんって何でも出来るんですね。何か出来ない事ってないんですか?」
「さぁてな、俺は何をやらせても日本一だからな。逆にそう言うのを探す方が難しいな」
 なのはの問いに含み笑いを浮かべつつ自慢げに返す早川。何でも出来るが故の悩みと言うべきだろうか。
 とにかく、彼が居れば大体の事は出来てしまうと言う。いんちき並な人間だと言えた。
「それにしても、ムラマツさん達まで捕まってたなんて」
「すまない。奴等突然襲いかかってきた物でね。迎撃する間も無くこのざまだよ」
 苦笑いを浮かべながらもムラマツキャップは言葉を発した。やはりヤプールの異次元跳躍能力は恐ろしいものがある。
 空間を裂いて突然の奇襲戦法。こんな事を常套手段とされれば忽ち防衛戦力の大半がやられてしまう。
 その証拠にウルトラ警備隊本部を僅か数人で制圧されてしまったのだから。
「これで、捕まってる奴等は全部か?」
「いや、まだ最奥の牢獄に捕まってる人達が居る」
「そうか、おいクロノ! お前の方が近いから其処は任せるぞ」
「分かりました」
 最奥の牢獄に一番近くに居たクロノは頷く。しかし、幾ら早川の助手とは言え、別にクロノは日本一何でも出来る、と言う訳ではない。従って彼にピッキングの技能はない。
「中の人、聞こえますか? 今から扉を破りますから下がってて下さい」
 中の人が聞き届けている事を願いつつ、クロノはデバイスを手に持つ。体内の魔力を上手く調整し、扉だけを破る程度の魔力砲を放つ。加減を間違えれば中に捕えられている人達に危害が及んでしまう危険性がある。
 それだけは避けなければならない。細心の注意を払いつつ、デバイスに魔力を収束させていく。
 そして、引き金を引き絞った。流石は執務官である。
 見事に扉だけを破壊する事が出来た。衝撃と共に破壊された扉が牢獄内に向けて倒れる。
 扉が倒れるとほぼ同時に牢屋内にクロノは入った。中に捕えられている人達の安否を確認する為だ。
「皆さん、大丈夫ですか?」
 牢屋内に入った際に、クロノは中に捕えられている人達を見た。其処に囚われていたのは、何とアースラ隊のメンバーだったのだ。
 エイミィを筆頭にアースラの主だったメンバー達が揃って閉じ込められていたのが目に映った。
 しかし、何故彼等が此処に閉じ込められているのか?
 そして、何故このメンバーの中に艦長であるリンディの姿が見られないのか?
「エイミィ、かあ……艦長は?」
「クロノ君……実は―――」
「おい、どうした?」
 エイミィが説明をしようとしたその矢先の事であった。扉側の方から早川となのはが姿を現す。
 どうやらクロノの戻りが遅いのに疑問を感じたようだ。
「あれ? エイミィさん達も捕まってたんですか?」
「う、うん」
 なのはの問いにエイミィは受け答える。だが、その言葉に何時もの元気さは感じられない。それに、心なしかメンバーの殆どが沈んだ顔をしている。
 一体何があったのだろうか?
「積もる疑問があるのは分かるが、生憎俺達には時間がない。悪いが此処から先は自力で脱出して貰えるか?」
「分かりました」
 言いたい事があったのだろうが、今は此処の施設の奪還が最優先である。
 そして、その為にも囚われていた者達の協力もどうしても欲しい。
「俺達はこれから残りの敵を殲滅する。あんたらは本部の機能の回復をして欲しいんだが。出来るかい?」
「任せてくれ。この本部は我等ウルトラ警備隊の本部だ。その役目は我々に任せてくれ」
 キリヤマ隊長が名乗り出てくれた。元々此処を本拠としている彼等ならその役目は適任だと言えるだろう。
「アマギとアンヌは動力炉を取り戻せ! ムラマツキャップ、並びにフジ隊員は外で戦っている者達に通信を送って欲しい。残りの者達は本部の機能回復だ!」
 的確な指示に皆が頷く。人質は無事に皆救い出す事が出来た。後は本部を取り戻すだけだ。
 そして、早川達三人がすべき事は後一つ。それは此処を占拠したであろう不法侵入者を追い出す事だ。そして、その役目は彼等が担う事となった。
「急ぎましょう。外の振動が強まってます」
「時間が余りないようだな。それじゃさっさと行くぞ」
 クロノの言う通りだった。さっきから外の振動が強まっている。恐らく激しい戦闘が行われているのだろう。
 急がなければどんどんこちらが不利になってしまうのは目に見えている。
 これが最初で最後のチャンスだ。このチャンスを逃してしまった場合、もうチャンスは訪れないだろう。




     ***




 外では大量の戦闘獣を相手にマジンガーZが苦戦を強いられていた。
 如何にパワーアップを遂げたマジンガーだと言えども、人質を取られているも同然の状態ではその真価を発揮する事が出来ない。それに加えて、警備隊本部からの対空砲火や、周囲を飛び回っているジェットビートルやウルトラホークからの攻撃までもがあり自由に戦う事が出来ずに居る。
「まだか? まだなのかよ皆!」
 甲児が愚痴りだす。これ以上は流石に厳しくなってきた。装甲を超合金ニューZに変えたお陰で破壊される心配は今の所ないがどの道このままでは状況は好転しそうにない。それに、仲間達が侵入している事を敵に悟られる訳にはいかず、その為に通信を送る事も出来ない。
 少しずつ戦闘獣を撃破してはいるが、その度に別の戦闘獣が出撃してきて戦列に加わってくる。まるでいたちごっこであった。
 出てくる度にマジンガーの武装で戦闘獣を破壊していく。その度にまた別の戦闘獣が姿を現し戦闘を継続していく。
「くそぉ、このままじゃ直にこっちのエネルギーが尽きちまう。それに、幾ら超合金ニューZになったからって限界が来たらかなりやべぇぞ!」
 不安が甲児の脳裏に過ぎり出す。だが、一度自分の口から言った以上途中で引っ込めるつもりは毛頭ない。
 こうなれば行けるだけ行くだけである。覚悟を胸に抱き、目の前に居る無数の戦闘獣達に目をやる。
 正にそんな時であった。
 突如高速で飛行する何かが目の前に居た戦闘獣達を切り刻んで行ったのだ。
 それは高速で回転する何かであった。
 縦横無尽に空を飛び回り、それに当たった戦闘獣達は分断され、爆発した後残骸となって散らばっていく。
 その光景に甲児は勿論、ビートルを操縦していたアラシやイデ、それにウルトラホークを操縦していたフルハシやソガ達も驚かされた。
 やがて、その回転する物体が何なのか理解出来た。
 それは巨大な斧だった。両刃の巨大な斧が回転しながら獲物を次々と切り裂いていくのだ。
 しかも、その回転する物体は一つだけじゃない。他にもある。
 一つは円月状の刃を持つ武器であった。その武器の形状は甲児にとっては御馴染みとも言える武器だった。
 もう一つは赤いブイ字のブーメランであった。
 それらが自在に空を飛び回っている。甲児の中に一つの結論が見出された。
 これら御馴染みの武器が目の前に飛び回っていると言う事は即ち……
「来てくれたのか!?」
 甲児の視線は自然とその回転する物体が戻っていく場所へと向った。其処にはマジンガーZと同じ位の大きさのロボットが三体居た。
 そのどのロボットにも甲児は見覚えがあった。かつてマジンガーZが各地を回った際に共に戦ったスーパーロボット達の面々だ。
 グレートマジンガー、ゲッターロボG、グレンダイザーにダブルスペイザー。
 皆が今、こうして駆けつけて来てくれたのだ。
「もう少し早めに来た方が良かったかな?」
「欲を言うならそうかも知れないけどな」
 皮肉めいた言い方をする鉄也に甲児もまた同じ様にして返す。しかし、その甲児の中では安堵の表情が浮かんでいた。少しでも嬉しい情報が欲しかった時にこの情報はとてつもない朗報となったのだ。
 更に、甲児にとって嬉しい報告は続いた。
 突如警備隊の本部から全周波で通信が送られてきたのだ。
 その内容は【本部を奪還せり】の報告であった。
「本部を奪還できたのか? 中に行った皆がやってくれたんだな!?」
 更に甲児の顔がほころぶ。こうも立て続けに嬉しい情報が流れてきてくれたのだ。表情に変化があってもおかしくはない。
 そして、その報せが飛び交った途端、周囲から激しい砲撃を続けていた本部からの対空砲撃がまるで嘘の様に止むのを知った。そして、ジェットビートルやウルトラホークからの攻撃も同様に停止したのであった。
 もうこちらを攻撃する必要がなくなったからだ。これで思い切り戦う事が出来る。後はこの地区に居る戦闘獣達を殲滅するだけだ。
「甲児君、事情は後で聞く。今僕達は何をすれば良いんだい?」
「簡単な事さ。まずはこのエリアに居る敵を全滅させる事さ。その後で積もる話もあるしさ」
「了解した」
 それからの一同の行動はとても早かった。周囲に目に付く敵と言う敵をかたっぱしから蹴散らしていく光景が目に映っていた。
 数では未だにミケーネの戦闘獣達の方がまだ勝っている。だが、突如として襲来したスーパーロボット軍団に加えて、機能を回復した警備隊本部からの援護射撃やビートルやホークからの攻撃が合わさり、禄に反撃も出来ないままその数を減らし続けていた。
 特にロボット軍団の戦闘力は目覚しい物があり、彼等と目を合わせよう物なら確実な撃破が約束されている様なものでもあったからだ。
 誰の目からも明らかな光景が映し出されていた。反撃は成功したのだと。




     ***




 未だに本部内に居たゴーゴン大公にとって外と中で行われている光景は予想外と言える光景でもあった。
 突如現れたロボット軍団に加えて。内部に侵入した少数の敵により折角占領した基地施設を奪い返されてしまったからだ。その上、外で戦っている戦闘獣の数ももうそれ程ない。後数分もすれば全滅は確実な物となるだろう。これ以上此処に長居していてはこちらが危険である。
 口惜しいが此処は一旦身を引くのが上策と言えた。
 幾ら機能が回復したとは言え完全に復旧した訳ではない筈。格納庫へ向えばまだ自分が乗ってきたミケロスが待機してある。あれを使い逃げ帰る事は出来る筈だ。
 そんな矢先、突如として背後の扉が音を立てて開いた。仲間の兵士かと思い振り返ったが、其処に居たのは全く別の存在であった。
「ほぅ、此処を占拠していたのはお宅みたいな化け物だったって事か」
「き、貴様等。一体何者だ!? まさか貴様等が……」
「ご名答。もうこの中にお前さんの味方は一人も居ないぜ」
 不適な笑みを浮かべつつ早川が告げる。その後ろからクロノやなのはが姿を現す。
 どうやらこの三人の為にゴーゴン大公の計画は水泡に帰してしまったと言えるのだろう。
「おのれ……下等な人間如きに、この俺が舐められたままでいられるか! こうなれば貴様等だけでも此処で葬ってくれる!」
 顔全体に怒りの表情を浮かべだす。下半身の虎が雄叫びを挙げてより一層怒りを表している。
 腰に挿していた両刃の剣を思い切り抜き放ち今にも跳びかかろうと虎の足が力強く地面を蹴り出した。
 その刹那、地面に数発の銃弾がめり込んできた。続々と部屋に本部の兵士達が現れてきた。誰もが火器を手にしてこちらに構えている。
 流石にこれだけの数を相手にするのは無謀と言えた。
「さぁ、どうするんだい敵の司令官さん? 此処で俺達と一戦交えるかぃ?」
「ぐっ……」
 最早打つ手などなかった。今から攻勢に転じたとしてもその刹那に兵士達の銃撃で蜂の巣にされるのがオチだ。
 人質も奪い返され、施設も奪還され、兵力も今や底を尽きそうになっている。万に一つの勝ち目は見られなかった。
「ふ、ふん! これで勝った気でいるつもりか? もしもの時の為にこの本部の動力炉に俺が仕掛けた時限爆弾があるのだ。俺のこのボタン一つでこの本部を爆破する事だって可能―――」
 これみよがしに懐から起爆スイッチを取り出そうとしたその刹那、まるで鞭の様に光る何かが撓って襲い掛かってきた。それはクロノのデバイスから発せられてる魔力の糸であった。
 それを巧みに操り鞭の様に撓らせてゴーゴンの手に持たれていた起爆スイッチを弾く。
 頭上で持ち主を失い回転するスイッチに再度光る糸状のそれが絡みつき、そのままクロノの手元へと納まっていく。
「これで爆破は出来なくなった訳だな」
「やれやれ、やる事がお約束過ぎて詰まらないな。お前さんのやる事なんざ10手先まで見え見えだぜ」
 完全に見抜かれていた。敵のする事は誰も彼も大概同じだと言いたげな様子だった。
 今度こそ完全に手詰まりと言える状態に陥ってしまった。
「ま、待て! 分かった、お前達の勝ちだ。此処は大人しくお前等に従うとしよう」
「随分物分りが良いじゃないか。まだ何か隠してるんじゃないのか?」
 疑り深い早川の睨みが放たれる。ゴーゴンの額を冷や汗が流れ落ちて行った。
「まぁ良い。逃げたいならとっとと逃げな。俺達の気が変わらない内にな」
「ほ、本当か? 本当に逃がしてくれるのか?」
「聞こえなかったのか? 早くしないと此処に居る奴等に蜂の巣にされるぜ」
 無数の銃口がゴーゴンに向けられているのを感じた。そんな時に早川の言い分は正に天の助けにも聞こえてきた。もう恥も何もない。その場から逃げ去るようにゴーゴン大公は真っ直ぐに停泊しているであろうミケロスへと一目散に向っていってしまった。
 その光景を早川やクロノは勿論、兵士一同誰一人として止める者は居なかったと言う。
「早川さん、何で逃がしちゃったんですか?」
「ふっ、奴にとっちゃ外に出る方が地獄だからさ」
「あ!」
 なのははその時納得できた。そう、外に出ればここ以上の地獄がゴーゴンを待ち受けているからだ。




     ***




 警備隊本部上空を万能要塞ミケロスが飛行する。円柱状の巨大な要塞に四方に取り付けられた人の顔状のオブジェが取り付けられた不気味な飛行要塞である。
 そして、その中でゴーゴンは怒り心頭となっていた。
 折角占拠した敵施設を無残にも奪い返された上に敵に情けを受ける羽目になってしまった。
 恐らく、このままおめおめ逃げ帰れば大将軍からの怒りは避けられない。その上ミケーネ中の笑いものになるのは明確であった。
 しかし、一時の恥なら甘んじて受けよう。その恥を何倍にして奴等にたたき返してやれば済むのだから。
 だが、この時ゴーゴンは思い出すべきであった。外には更に
ゴーゴンを付け狙う存在が居たことを。
 それをゴーゴンが思い出したのは、突如として起こったミケロスの爆発であった。
「な、何事だ?」
「外からの攻撃です!」
「外だと!」
 報告を聞いた途端、ゴーゴンは青ざめた。外からこれだけの威力を持つ攻撃を出来るのと言えば奴等しか居ない。
 真相を確かめるべく外の映像を見る。そして、其処にはゴーゴンが半ば予想し、半分当たって欲しくなかった真相が其処にあった。
 ミケロスの周囲を四機のスーパーロボット達が取り囲んでいるのだ。
 マジンガーZ、グレートマジンガー、ゲッターロボG、グレンダイザー。
 地上最強のロボと軍団が今正にミケロスを仕留めんと息巻いている光景が其処にはあった。
「わざわざ俺達の前に出て来たんだ。覚悟は出来るだろうな!」
「ふっ、出来てなかったらご愁傷様って所だな」
「念仏を唱える時間など与えん! この場で地獄へ落ちろ!」
 一斉に四方からの攻撃が開始された。
 ブレストファイヤーが!
 サンダーブレークが!
 ゲッタービームが!
 スペースサンダーが!
 一斉にミケロス目掛けて放たれたのだ。その四方からの攻撃をかわす事など出来る筈もなく、それらを一身に受けてしまう。
 巨大な万能要塞が紅蓮の炎に包まれて大地に落下し、残骸と帰するのにそれほど時間は掛からなかった。
 地面に落ち、炎を撒き散らすその様は、さながら人類の反撃の一旦が成功を告げる狼煙を現しているかの様に燃え上がっていたのであった。




     ***




 スーパーロボット達の集結と同時に無事に警備隊の本部を奪還する事に成功できた。これにより強力な後ろ盾を手に入れた上に無事に戦力を増強出来るに至ったのだ。
 これにて甲児となのはの苦労は実った。
 と、言えるのだろう。
「やれやれ、とんだ苦労の連続だったけど、どうにか無事に事が済ませられたな」
「うん! 後は皆に連絡を入れるだけだよね」
 流石にあれだけの大所帯を何時までもアミーゴに入れてると言うのは返って目立つ危険性がある。
 それに、一市民に化けてると言うのにも限界がある。様々な面を考慮してみてもウルトラ警備隊を拠点にした方が何かと動き易いのは明白な事でもあった。
 ふと、そんな話をしていた際に、なのはは少しだけ心配な気持ちになった。
 甲児と二人で各地を回る事となったのは良かったが、その間、他の仲間達は今頃どうしているのだろうか?
 それが少しだけ気掛かりにはなっている。
(皆、大丈夫かなぁ?)
 少しの不安がなのはの中に残る。この不安が取り越し苦労であれば良いと、幼いながらもそう思うなのはなのであった。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

悪の手先となってしまった仮面ライダーV3。
かつての仲間を取り戻す為、そしてショッカーから続いた悪の組織を壊滅させる為に、今デストロンとの最後の戦いが始まろうとしている。

次回【集結する仮面の戦士達。デストロン最期の日】

おたのしみに 
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