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未来を見据える写輪の瞳

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一話

 
前書き
にじふぁんより此方に移転させていただきましたザッフィーです。
よろしくお願いします。 

 
 「もう一度言っていただけますか?」

 「担当上忍をしてもらう。そう言った」

 足を肩幅に開き、所詮休めと言われる体勢で目の前の老人……木の葉隠れの里の長、火影の話を聞いていた男、カカシは自分の頭をボリボリとかきながらそう聞き返していた。

 「お断りします」

 里長からの命だというのにカカシは拒否の意を速攻で返した。それどころか、特Aの任務を終えて疲れている所にそんな話をするんじゃねぇと言わんばかりの不機嫌オーラがにじみ出ている。
 そんなカカシの様子を見て取ったのか、火影は一つ大きくため息をつく。

 「普通に命じても聞かんことは分かっておる。来たのじゃよ、約束の時が」

 「約束の……それではまさか!」

 「うむ。あの子が……ナルトが、アカデミーの卒業試験に合格した」

 木の葉隠れの里では後進の育成プログラムの一環として現役の上忍は必ず一度以上新人下忍の担当を行うことを義務付けられている。その決まりには暗部や特別上忍等の一部を除き例外は無く、カカシにも勿論その義務が課せられる。
 だが、このカカシはその任に就くことを拒否し続けていた。本来ならば拒否した所で回避できるものではないのだが、それはカカシの立場が有利に働いた。『木の葉現役最強』。暗部を辞し、上忍として活動することでその実力が白昼に曝されることになって以来、カカシは里内でそう呼ばれるようになっていた。そして、現在里が保有する最高クラスの戦力、というのは上層部も否定できるものではなかったのだ。
 その当時丁度大規模な高ランク任務があったこともあり、一端はカカシの担当上忍の話は流れることになった。だが、決まりをそのまま放っておくわけにもいかない。火影が直接カカシと話し合った結果。カカシの側から一つの折衷案が出された。それが、『担当する下忍を、此方で指定させて欲しい』というものだった。今まであまり前例のないことだが、それで了承するのなら、と何とかカカシに担当上忍了承の言を取り付けたのだ。

 「ほれ、これが班員の資料じゃ。顔合わせの予定等が書かれたものも一緒にしてある」

 「分かりました。それでは、失礼します」

 踵を返し部屋を後にするカカシを火影は静かに見送った。

 「さて、これが吉と出るといいが……」

 はたけカカシ。現役最強と里内で呼ばれ、他国では写輪眼のカカシ等の異名で恐れられる男だ。その実力は、火影から見てもかなりのものだと言える。

 「ワシも、そろそろ引退したいんじゃがのぅ」

 現在、火影の座についているこの老人は三代目。四代目が若くして亡くなったための急きょ隠居生活から引きずり出された身である。既に一度引退した身であることもさることながら、年であることも相まって早くこの座を譲りたいというのが本音だ。
 だがそれも、譲る相手がいないのでは仕方がない。もし、あえて次の火影候補を上げるとするならば真っ先に上がるのは二人。三代目火影の直弟子である二名だろう。だが、その両名は各々里を離れているうえに要請した所で引き受けるかもあやしい所だ。
 では、他の者でというと考えられる最有力候補は一人。それがはたけカカシだ。

 「忍としての実力も、里を運営するための知能も充分。だが、足りん」

 これまで火影を担ってきたものは皆素晴らしい人であり忍であった。その者達と比べると、カカシは決定的に欠けているものがある。力でもなければ頭脳でもない、上手く言葉にすることはできないが、それでも確信していた。

 「古き友の二人目が死に、カカシの歩みは遅くなった。そして、師が死にカカシは止まってしまった。ミナト……どうか、見守ってやってくれ」

 今は亡き四代目火影の顔を想い受かべ、火影は静かに祈りをささげた。





 火影の執務室での一件から数日。ついにアカデミー卒業生と担当上忍の顔合わせの日がやってきた。

 「……いくか」

 里に居る時の日課である慰霊碑への参拝を切り上げ、カカシはアカデミーへとその足を向ける。

 「先生、ついにあの時の約束を果たす時が来ましたよ」

 里を救うために若くして逝った師。その忘れ形見を立派な忍びにする。それが今、カカシにある唯一といっていい目標だった。



 所変わってアカデミーの一角。カカシは担当する三人の子供が待つ教室へ向かっていた。頭の中では火影に渡された資料に書かれた情報をもう一度再確認していた。

 一人目、≪うずまきナルト≫
 規制がしかれており今の子等は知らないが、その正体は九尾を封じられた人柱力にして四代目火影の実の息子。アカデミーでの成績ははっきり言って悪い。また、悪戯を頻繁に起こし教師の悩みの種。しかし、ミズキ反乱の際は持ちだした禁術書にかかれていた多重影分身を用いてこれを撃退。内に秘められた才能の片鱗を見せた。

 二人目、≪うちはサスケ≫
 木の葉のエリート一族、うちはの生き残り。アカデミーでの成績はダントツのトップ。現時点で忍術、体術、幻術どれにおいても非常に高いレベルをマークしており将来に期待がかかる。

 三人目、≪春野サクラ≫
 上記二人が特別な立ち位置にいるのにたいして普通の少女である。また、両親も一般人なせいか身体能力、チャクラ量はやや劣る。しかし、それに反して頭脳面では非常に優秀であり、また幻術に関しては高い水準を持っている。チャクラコントロールが得意。

 (ナルトは俺が指名した。サスケは、まぁ写輪眼の開眼を見越してだろう。サクラは、人数合わせって所か)

 まさかうちはの生き残りまでついてくるとは思っていなかったカカシは思わずため息をつく。血継限界を持つ者の重要さは理解している。それもうちはともなればかなりのものだ。面倒を押しつけられたか、とここにはいない里長に悪態をつく。そうしている内に、目的の教室へと辿り着く。

 「さて、行こうかね」

 カカシはドアに手をかけ、ゆっくりとドアを開け放った。





 「さて、とりあえず自己紹介からだ」

 教室のドアに仕掛けられた黒板消しのトラップを華麗に回避したカカシは下忍三人を伴いアカデミーのとある建物の屋上に移動していた。

 「まずは俺が先にしよう。名前ははたけカカシ。お前たちの担当上忍だ。好きなものはとくになく、嫌いなものもとくにない」

 結局名前程度しか分かることがなかった自己紹介に下忍達はいぶかしげな顔をしている。だが、これは言ってしまえば癖のようなものだ。相手に余計な情報を与えない。元暗部であるカカシは無意識にこれを行っているのだ。

 「んじゃ、右から順によろしく」

 「名前はうずまきナルト。好きなものはカップラーメン! 嫌いなものはお湯を入れてからの三分間。将来の夢は火影になること! そんでもって里の奴らを見返してやるんだってばよ」

 カカシの自己紹介に不満を持ちながらも元気に自己紹介を始めるナルトを見て、カカシは師四代目火影を思い返していた。

 (似ている……先生にそっくりだ)

 太陽の輝きを想わせる金の髪に透き通る大空の様な蒼い瞳。疑うまでもない。ナルトは確かに、波風ミナトの血を受け継いでいる。

 「先生?」

 「っと、すまん。それじゃあ次」

 自己紹介が終わったというのに黙りこくったままだったカカシの顔を不思議そうにのぞきこんでくるナルトをあしらいながら、次の子へと促す。

 (先生、この子は必ずこの俺が……)

 長くに渡り冷え切っていたカカシの心に、僅かな熱が、生まれた。





 「よし、全員そろってるな」

 翌日、下忍第七班の面々は里内にある演習場の一つに集まっていた。その目的はサバイバル演習、と言う名の真の下忍認定試験を行うことだ。尤も、その事はナルト達下忍は知らないが。

 「先生、演習すんのはいいけど、一体なにするんだってば?」

 期待に満ちたナルトの目がカカシへと向けられる。恐らく下忍になったことでアカデミーとは違う、更に忍びらしいものを期待しているのだろう。そして、その期待はかなえられる。何背、演習の内容とは……

 「ああ、今からお前達三人にはこれを俺から奪い取ってもらうう」

 カカシの手の中で揺れる一つの鈴。上忍はたけカカシVS下忍三人による鈴取り勝負が始まる。



 「さて、どうくるかな」

 あの後、カカシはルールを説明し、その場を離れた。ルールは少なく1.鈴は基本的に腰の見える位置につける。2.下忍三人は協力してよい。3.カカシは手裏剣、クナイを使わない。と、この程度だ。

 「ま、三人で協力すればそれなりにやれるだろう」

 サクラとサスケで作戦を立案。ナルトの影分身を上手く使えば短時間でもそれなりの策が出来る筈だ。カカシはこのチームに期待していた。ナルトもサスケも負けず嫌いに見えたし、サクラも二人を諌めながらも触発されて伸びる。そう思った。だが、そうは問屋がおろさなかった。

 「さて、お前達何か弁明はあるか?」

 開始からわずか40分。下忍三人は縄で縛られその場に転がされていた。何故こうも早く決着がついたのか。簡単に言うなら、皆子供過ぎたのだ。
 二人は格下、足手まといとしたサスケ。それに反発したナルト。何とか取りまとめようとしたもののドべのナルトが足手まといになりそうなことを否定できず、かと言ってサスケにも相手にされず右往左往していたサクラ。
 こうなってしまえば早々に片がつく。カカシを発見次第真正面から飛びかかってきたナルトを千年殺しで悶絶させ。途方に暮れていたサクラを幻術で気絶させる。下忍が作ったにしてはまぁまぁ、程度の罠に誘い込んだだけで得意げに仕掛けてきたサスケを虫けらの如くあしらった。

 「はっきり言う。お前達、忍びとして最低だ」

 第七班下忍認定試験、結果。最低評価である。

 「お前達、何のためにスリーマンセルを組んでいると思ってる。協力して、任務を達成するためだ。なのにお前たちは……いいか? 忍にとってルールや決まりは最重要だ。それを破る者はクズ呼ばわりされる。だが、仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ!」

 今まで余り威厳の見られなかったカカシの、熱のこもった声にナルト達は眼を見開いて聞き入る。仲間を大切にしない奴はクズ。それは、三人の胸に深く刻まれた。仲間がいなかったナルト、仲間を失ってしまったサスケ、仲間に囲まれていたサクラ。違いはあれど、仲間の重要さ、尊さは理解できる。

 「三十分後にもう一度開始だ。三人で、よく話し合え」

 三人に背を向けると、カカシはゆっくりとその場を立ち去った。
 遠ざかっていく背中を見えなくなるまで見送っていた下忍三人はそろって顔を見合わせ、気まずそうに顔を反らした。

 「時間が無い。策を立てるぞ」

 だが、そのまま動かないのでは無駄に時間を消費するだけ。沈黙を最初に破ったのはサスケだった。そして、サクラもそれに続く。

 「そうね。とりあえず、使える忍術なんかの確認をしましょ。そうでないと策なんて到底立てられないわ」

 「次こそ、カカシ先生から鈴をとるってばよ!」

 まだ少しギクシャクはしているものの、三人はチームとしての第一歩を踏み出した。それを隠れて眺めていたカカシは満足そうに頷いた。

 「お前たちなら、立派な忍になれるさ」

 かつての自分のチームメイトを思いだしながら、カカシは試験再開の時を静かに待った。
 ちなみに、第七班は見事鈴を奪い取った。鈴取り終了後、これが真の下忍認定試験だったと聞かされた三人が安堵の余りその場に座り込んでしまったのは余談である。 
 

 
後書き
とりあえず移転第一号として向こうで連載中だったナルトを掲載させて頂きます。
此方のサイトもまだ開設されたばかりですし、私自身が成れるためにものんびりと投稿させていただこうかと思います。
また、既存の文に関しては2、3話分を統合して更新していく予定です。 
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