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とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
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幻想御手
  Trick20_ま、何を言っても戯言だけどね



ドン!!


大きな爆発。

御坂と木山は戦闘を開始した。

連続で爆発を攻撃する。


御坂は爆発を避けて木山を睨んだ。

「驚いたわ。本当にいくつも能力が使えるのね。
 デュアルスキルなんて楽しませてくれるじゃない!」

「私の能力は理論上不可能とされるあれとは方式が違う。言うならば、

 多才能力(マルチスキル)だ」

地面を走る衝撃波が御坂に向かう。

御坂は横に飛び

「呼び方なんてどうでもいいわよ! こっちがやる事は変わりないんだから!!」

電撃を飛ばした。


しかし、電撃はバリアーのようなものに逸らされて木山には届かない。

「な!?」

驚く御坂だが木山は能力で足元を破壊した。

戦っている場所は高架橋、2人は下に落ちて行った。


「く!」

御坂は足の裏に電気で磁場を出して、うまく着地した。

木山も能力で衝撃を吸収したようで無事でいる。

(自身を巻き込むのをお構いなしに能力を振るってくる! 何て奴なの)

御坂は木山の捨て身とも思える攻撃に少々動揺していた。

しかし、それを顔に出さずに攻撃を繰り出す。

再び電撃を飛ばすが、同じように逸れていく。

木山の周りを走りながら何度も電撃を飛ばす。

木山は一歩も動かず、すべて電撃が同じように逸れていった。

「能力を使って逸らしている・・なら、これならどう!?」


砂鉄を操り、幾つもの砂鉄の剣を伸ばしての攻撃。

木山は近くにあるガレキ(道路が崩れた際の一部)を能力で動かして砂鉄で防御した。

先程から木山は一歩も動いていない。

道路からここに場所が変わったのも、自身の能力で足元が崩れたからだ。

御坂の能力では一歩も動かすことができていない。


御坂は焦りを感じていた。

どう対処するかを考えていたその時、木山は右手を御坂に向けて振った。

手には何も持っていない。

しかし、手の動きにしたがってゴミ箱が宙をまった。

念動能力(テレキネシス)で飛ばしてゴミ箱の中の無数の空き缶がばら撒かれる。


瞬間、御坂にはあの事件を思い出した。
デパートの中で起きた、アルミを基点にした能力

(あれってグラビトン!?)

量子変速(シンクロトロン)の能力を使えば、空き缶全てが大爆発を起こす
爆弾となる。

「さあ、どうする?」

「全部」

御坂は体中から電撃を放ち

「吹っ飛ばす!!」

それを全て空き缶に向けた。

端から端まで、飛び交う電撃の槍。

無数にあった空き缶は全て破壊された。

「すごいな・・だが」

レベル5の実力に木山は驚いたようだったが、右手に持っていた空き缶を消した。

否、空間移動(テレポート)させた。

「どうよ、ざっとこんなもんよ!」

御坂のすぐそばに。

まったく気付いていない。

そして空き缶は能力で急激に収縮して

「これで終わりだ」

木山は目を閉じて微笑した。


大爆発

あのタイミングで御坂自身は防御も回避も確実に間に合わない。

そして爆発の土煙が晴れていく。

そこに攻撃を受けて倒れた御坂の姿が





なかった


「な! どこにいった!?」


「危ない危ない」

声は木山の左の方、少し離れた位置から聞こえた。


そこには御坂をお姫様抱っこをして立っている少年がいた。

「琴ちゃん、間一髪だったな」

「信乃にーちゃん! なんで!」

「白井さんから連絡を受けてね。相手は多重能力者(デュアルスキル)らしいし、
 琴ちゃん一人じゃ大変だからすぐに向かってってね、病院から直行してきた」

「病院からって・・・」

佐天が入院している病院からここまでは、どんなに車を飛ばしても30分はかかる。

“多重能力者”の言葉から、信乃が電話を受けたのは御坂がここに着いた前後だろう。

この短い時間でここまで来たのか? と御坂はかなり混乱していた。


「琴ちゃん、無理し過ぎだ。ほら、足をくじいているんじゃない?」

「え?」

信乃を見ると、片目を閉じて笑っている。

「それに、いくらレベル5でもあれだけの攻撃をしたら疲れたでしょ?
 ここは兄貴分に任せてゆっくり休んでよ」

「私は・・(そうか!)  うん、お願いね信乃にーちゃん」

信乃と考えに気付いて御坂は小さな声で返した。

御坂をゆっくりとおろして、近くの壁に背を預けるようにして座らせる。
御坂は力無く、ぐったりとしていた。



「さて、第2ラウンドだ。ここからは俺が引き継ぐ」

信乃は木山に向かって歩いて行った。

「きみは・・・何者だ?」

「俺の名前は西折信乃。ただのしがない戯言づk、じゃなかった。
 ただのしがない風紀委員(ジャッジメント)だ」

「ただの?  あのタイミングは助けられないだろう? それが“ただの”か・・」

「まあ、とにかく戦闘開始だ」


言い終わる前に信乃は木山に突っ込んでいった。

木山はすぐに衝撃波を飛ばして攻撃、信乃はそれを横に移動してかわす。

その避け方は、近くの壁を走って避けた。一瞬、目で追いつけないほど速く。


そして、信乃の足にあるものが装着されていることに気付く。

「インラインスケートか? まさかとは思うが、その速さで彼女を助けたのか?」

言いながら連続で行撃破を飛ばす。

能力の中には小道具を使って能力が上げる学生もいる。
信乃もその一人と思ったのだろう。さして疑問に思わずに攻撃を続けた。

信乃が全て避けると、今度は水を作りだして飛ばしてきた。

「さっきから質問ばかりだな。あんた科学者なら自分で答えを出してみたら?」

水の攻撃も難なく避けられる。

「でもまあ、フェアじゃないから教えておく。
 あんたの言った通り、このインラインスケートを使って高速移動した。

 だから、“俺から目を離さない”方がいい、と思うぜ」


信乃はさらに速度を上げる。しかし、決して目で追えないというわけではない。

左右に動きまわって攻撃を避け、御坂から反対側の方へと走る。


信乃の動きから“目を離さずに”観察して木山は作戦を練る。

(先程避けた速度を出せるのは一瞬・・その動きに警戒すれば問題はないだろう)

そう考え、信乃が近づいてくるのを警戒しながら遠距離攻撃を繰り返す。

今の信乃の位置では、あの高速移動で近づいてきても防御は間に合う。

攻撃を当てるために木山は今までより集中した。








「つーかまーえたー」

「なっ!?」

その瞬間、御坂に後ろから腰に手をまわした。

集中しすぎて後ろから近づいてきたのに気付かなかった。

正面にいるを見ると笑っている。これは・・・

「嘘だと!? きみは、騙したな!?」

「嘘は言っていないよ。

 足をくじいてるんじゃない? って疑問形だぜ。
 それにあんたとの戦闘で琴ちゃんも“少々”疲れたのも事実。
 けど、限界だと言っていないし、休むかどうかは本人の自由だ。

 それに、俺から“目を離して”も接近戦であんたを倒すつもりだった。

 ま、何を言っても戯言だけどね」

「くっ!」

能力を使い、後ろの御坂を攻撃しようとしたが

「遅い!」

零距離での大量の電撃を放った。

「ガッァァァ!」




木山は電撃を受けて気を失い倒れた。

「一応は手加減しておいてけど、これで戦闘不能のはず」

「すごいな、さすがレベル5」

信乃は御坂の近くに来た。手には手錠を持っている。

木山を拘束するつもりだろう。


その瞬間

≪センエー≫

≪木山センセー≫

信乃と御坂の頭の中に直接、ある光景が流れてきた




数年前の木山春生

教授の命令で嫌々ながら教師をした

子供は嫌いだと思いながら いたずらをされながら

それでも楽しいと感じた時間


しかし、子供たちは実験で倒れた

私が参加した実験で

AIM拡散力場制御実験

子供たちは全員病院に運ばれていった

私の実験で子供たちは・・・・・




「今のは・・・」

「木山春見の・・記憶?」

「観られた・・・のか!?」

倒れていた木山はこちらを睨みながら立ち上がろうとする。

しかし、腕に力が入らずに再び倒れた。

それでも、また立ち上がってきた。

何かに取りつかれたみたいに。


「何であんな事・・」

御坂は呟いた。答えてもらうつもりではなく、ただ疑問に思った事が口から出ただけ。

しかし聞こえていた木山はそれに答えた。

「表向きは『AIM拡散力場を制御するため実験』とされていた。

 だが、実際は・・

 『暴走能力の法則解析用誘爆実験』だ。

 AIM拡散力場を刺激して暴走の条件を知るのが本当の目的だったというわけさ」

「じゃ・・」

「暴走は意図的に仕組まれていたのさ。

 もっとも、気付いたのは後になってからだがね」

「人体・・実験・・・・」

「あの子たちは目覚めることなく、今もなお眠り続けている」

ふらつく足で木山はこちらを向いた。
手で頭を抱えながら、しかし目線はしっかりと2人を捕られて。

「私達はあの子たちを使い捨てのモルモットにしたのだ!!」

木山の言葉に御坂は少しひるんだ。

信乃は何も言わずに話を聞いているだけ。
自分も“生前”に身に覚えのある・・・人体実験。


「でも、そんなことがあったら、警備員(アンチスキル)に通報して」

「23回」

「は?」

「23回だ。

 あの子たちの回復手段を探るため、“樹形図の設計者”(ツリーダイアグラム)に
 使用を申請した回数だ。

 そうすればあの子たちを助けられるはずだった。

 だが、却下された!! 23回ともすべて!!!」

一歩、2人に向かって木山は踏み込んできた。
戦えない体で意味はないだろう。

しかし、気迫が、子供たちを救いたいと思う気持ちがそうさせた。

「統括理事会がグルなんだ! 警備員が動くわけがない!!」

「そのための幻想御手(ネットワーク)か・・・」

「そうだ! 子供たちを助けられるのはこれしかない!!」

信乃の言葉に過剰に反応する木山。

「だからって、こんなやり方「きみに何がわかる!!!」  え?」

木山にとっては平和ボケとしか言えない御坂の意見など途中で一蹴する。

「あの子たちを救うためなら私はなんだってする。

 この街の全てを敵に回しても やめるわけにはいかないんだ!!」

木山は叫んだ。空に向けて叫んだ。

御坂ではなく、白井ではなく、学園都市に向けて自分の気持ちを叫んだ。

信乃は何も言えない。
自分は木山の事情を何も知らない側の人間であると同時に、前世では被験者の立場だった人間だ。
木山のやり方は間違っていると思っても、木山の行ない全てを否定はできない。

そして何より、“大きな組織”はそういうことをしていると知っている。
自分が通っている学校でも、以前は似た事をしていたと聞く。
 (幸い、今の理事長がジュディスの母になってからは廃止されたらしい)

信乃が世界を回っていたときも人体実験の現場を何度も見て潰してきた。

御坂も何も言えずに立ち尽くすしかなかった。



次の瞬間

ズグン!

「うっ!?」

木山の頭に激痛が走った。頭を抱えてうずくまる。

「木山さん?」

「木山先生!?」

御坂と信乃はは駆け寄ろうとした

「がッ・・ネットワークの暴走? いや、これは・・」

しかし、それよりも早く木山は倒れ込んだ。


そして、木山の頭の上から白い、光の塊のような何かが出てきた。

光は集まっていき、徐々に形を変えていく。

色も付いてきて、最後に出来上がったのは


「胎児?」

木山の異変に急いで立ち止まった2人。そして出てきたものを見て御坂は呟いた。

たしかに胎児似ている。だが、大きさは3メートル以上。

そして何より、体が不透明で、完全な実物とは思えなかった。

「ギィィィィァァァァアァァアァ」

胎児は耳を刺すような叫び声をあげた。



つづく
 
 

 
後書き
次話、轢き潰します。

作中で不明、疑問などありましたらご連絡ください。
後書き、または補足話の投稿などでお答えします。

皆様の生温かい感想をお待ちしています。一言だけでも私は大喜びします。
誤字脱字がありましたら教えて頂くと嬉しいです。

PS 2013/8/3 誤字修正しました。『詠春』様、ありがとうございます。 
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