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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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チートソード物語・四

 
前書き
切れ痔なう。

5/24 ちょい修正 

 
 
「♪~♪~」

記憶の隅にあった歌が何となく今の状況にあっている気がして鼻歌で歌ってみたが、正直歌詞の内容がはっきり思い出せない。まぁ歌の歌詞なんて間違えるのは良くあることだからそれほど気にはしないが。

私は今、(何故か生まれてこの方ずっと住んでいたことになっている)見知らぬ街をぶらぶらうろついている。右手には地図を、左手にはぽんずに繋がれたリードを持って、私は町を探索していた。
何せここは私にとっては初めての町。あの日は父が車で学校まで連れて行ってくれたが、本当は学校がどこにあるかさえ私は全く知らなかった。(今までは隣町の学校に通っていたが引っ越しで転校することになった・・・という事になっているらしい)
流石にそれはまずいので休みを利用してこんな風に探索をしているのだ。おかげで近所の主要な建物と道は覚えてきた。地図片手に街をうろつく小学生ということで、何度か迷子と勘違いされて呼び止められた。学校の自主学習の一環だと言ったらあっさり信じてくれた。ちょろい!

「えっと、あれが槙原動物病院か~・・・あまりお世話にならないことを祈ろうか」
「・・・な~お」

2年間苦楽を共にした相方が病床に伏すなど考えたくないのでチラ見だけしてとっとと通り過ぎる。

うむ、この海鳴市は中々に都会な街並みだ。お店やら何やらも一通りそろっており、商店街も活気に溢れている。少しばかり遠出をすればそれなりの規模のショッピングモールもあるようで、何より道路や歩道が広めで歩きやすい。

「良い街だね、ぽんず」
「なーう」

さっき露店で買ったたい焼きを齧りながらぽつりと呟いた。
活気があるし、人々も明るい。家族もいるし猫もいる。何一つ不自由がないと言っても差し支えない程度に、ここの暮らしはいい物だった。それだけに、時々「こんなに楽してていいのかな?」と考える。まるで自分だけがずるして過ごしているような釈然としない感覚。
自分は一度死んで、そしてまた生きている。世の中にはもっと大きな後悔や苦しみの末に「まだ死にたくない」と願いながら死んでいった人が沢山いるはずだ。それを差し置いて私はのうのうと目的もなく生きていて良いのだろうか?

ふと電気屋のテレビを見ると、丁度昼のニュースが流れていた。


『・・・とのことで、平賀才人君が秋葉原に向かったことは間違いないようです。依然行方知れずの平賀君・・・一体今どこにいるんでしょうか?』
『あまりに不可解ですね。監視カメラには確かに平賀君が電気量販店から出る映像が残っていますが・・・それからの足取りは全く不明です』
『警察は事件に巻き込まれた可能性もあるとみて、捜査を進めています。では、次のニュースです。先日未明、駒王町でまた新たな変死体が―――』


・・・やっぱりここは現実なんだな、と引き戻されたような気分になった。
ローカルニュースに流れる行方不明事件や殺人事件。今日も私が知らないだけで世界中のどこかの誰かが死んでいる。顔も知らなくても、彼彼女たちはしっかりこの世を生きており、やはり世界のどこかでは醜い争いが続いているのだ。それは私の頭に司書さんの”次元世紀末”という言葉を思い出させた。

この町でも、あんなことが起こるというのだろうか?ひょっとしたら私も、明日彼らの仲間入りを果たしているかもしれないのか。そのことを少し不安と思うと同時に、不謹慎だが少しだけほっとしている自分もいる事に気付く。
私は一度死んだらしい。根拠はないけどそれは本当だと思う。だからこそか、自分だけこの世界で仲間はずれなんじゃないかと心の奥底で思い悩んでいたのだ。所詮私には本当にこの世界に馴染めることはなく、何所とも知れない立場をふらふら進んでいくのかもしれないという漠然とした思いがあった。だから、こうして現実を見ると自分もその現実の一つなのだと安心が得られる。
両足が地面についている、とでもいうのか。そんなしっかりした感覚が心に通る。

「あ、そういえば・・・」

上着のポケットから青い宝石のような石を取り出す。この町に来た手に時、犬っころを犬神様に変異させた石を真っ二つにしたものだ。持ち歩きが便利なようにアロン●ルファで断面をくっつけて元の形と同じにしてあるそれを空に翳す。四宝剣によって真っ二つにされて以来光ることのないそれは、太陽の光を通して輝いた。既に役目を終えたか壊れているのだろう、あれ以来この石には何も起きない。

(これがなんなのか、今のところ全く分かんないなぁ)

この石が次元世紀末覇者NANOHA(詳しくは知らないけど)の正体を知る手掛かりになったりするのだろうか。それともこれを七つ集めると異界の門を開く凄いアイテムのだろうか。謎が謎を呼ぶ。

「直すことはできるんだけど・・・直したら直したで何が起こるか分からないんじゃあ直すに直せないなぁ・・・」

さて、私は今何回「直す」と言ったでしょうか?正解が一発で分かった貴方はその記憶力を別の所に使おうね。
ふと視線を感じて道横の草むらを見るとブサイクなイタチがこっちを見ていた。いや一般的な尺度から見れば可愛いのかもしれないが、私は何となくそのイタチが間抜け顔に見えたのでブサイクと言わせてもらった。それにしてもあのイタチ(いや、ひょっとしてフェレット?)、見たことのない毛色をしている。これはアレか、外来種という奴か。どうせ無責任な飼い主が飼育が面倒になって捨てたとかだろう。

「全く最近の若い人は・・・(外来種が生態系に与える)周囲への影響とか考えてんのかしら?」
「ぅなーう」

返事をするようにひと鳴きするぽんず。まるで「若造のくせに調子乗りやがってェ~!姉御!一丁絞めてやりましょうや!」とでも言わんばかりの目をしているような気がするので同意しておく。

「そうね、この地であまり調子に乗られるのは良くないわね」
「キュ!?」

外来種は種類にもよるが天敵と呼べる存在がいないとしぶとく生き残ってしまう。もしその間に同種の別性個体と出くわしたり自分と近しい生物と交わって雑種が生まれたりするともう大変。確かフェレットは小型の哺乳類や鳥類を餌にするらしいからその辺りを中心に生態系が崩れていくだろう。怯えるようにこちらを見ながら震えるフェレットを尻目にどうするべきか考える。

「流石に殺すのはかわいそうだけど・・・去勢か不妊位はしておかないといけないねぇ?」
「キュゥゥゥ!?!?」
「な~お・・・」

突然カタカタ震えながら股間を抑えるフェレット。リアクションからしてオスだね。勘のいい彼は自分が迎える恐ろしい結末を悟ったようだ。ふっふっふっ・・・私達女には一生知ることの出来ない恐怖を存分に味わうがいいわ!

「さて、そうと決まれば・・・ぽんず!ゲットレディー・・・ごぉー!!」
「うなーお!」
「キュ、キュゥゥゥゥゥ!!!」

猛然と逃げ出すフェレットを正に獲物を駆る肉食獣の瞳で追いかけるぽんず。ふふふ無駄だよブサイクフェレット君!そいつは”どこまでも追いかけて絶対殺すマン”の異名を持つねこ!(※嘘です)貴様に逃走経路など最初から存在しないのだフハハハハハハハ!!

こうして私はその後日が暮れるまでぽんずと共にフェレットを追いかけ回した。が、あと少しの所で追い付けずに断念することにした。妙に体の調子がいいのは気のせいだろうか?
そして帰り道で・・・

「あれ、四宝剣使えば一発だったんじゃ・・・」

という考えに至ったが、流石にフェレット一匹のために抜いていてはいつまでたっても使いこなせないような気がして自制した。



 = =



それは全くの偶然だった。ジュエルシードがないかと一人で散歩をしていた途中にふと歩道を見た時、僕は心臓が止まるかと思った。大きな猫を連れた道行く少女が、その手にジュエルシードを翳していたからである。僕はどうするか迷った。急いで彼女から無理やりにでもジュエルシードを奪い取るか、なのはに連絡を取るか。だがあの巨大猫の存在が僕の足を止める。今の自分はしがないフェレット・・・猫を出し抜くのは難しい。
それは時間にすれば僅かなものだったと思うが、悩んだ末に僕はなのはに念話を飛ばそうとした。

そしてまさにその時、彼女の目がこちらを捉えた。
その目はまるで養豚場の豚を見下すような冷たい目だった。ひょっとして動物が嫌いなのか、それともフェレットに嫌な思い出でもあるのか。謂れの無い理由でそんな目をされるのは正直ショックだった、が、次の言葉で今度こそ心臓が凍るかと思った。

「全く最近の若い人は・・・周囲への影響とか考えてんのかしら?」

若い人・・・周囲への影響・・・まさか!実は彼女は魔導師で、僕の変身魔法が完全に見破られてる!?しかもジュエルシードをこの町に撒いたのが僕だと思っているのか!?確かに今調べてみると彼女にはリンカーコアが存在するようだった。
これはまずい!急いで誤解を解かないと・・・と考えた所で、僕の頭のまだ冷静な部分が疑問を感じた。彼女は何故魔導師なのに管理外世界である地球にいるのだろうか?と。その疑問は次の言葉でさらに膨れ上がる。

「ぅなーう」
「そうね、この地であまり調子に乗られるのは良くないわね」

”この地であまり調子に乗られるのは”・・・だって!?一体どういうことだ!?それに今、あの猫と会話をした・・・?
まさかあの猫、実は使い魔だったのか!?今の今まで気付かないなんていったいどんな隠匿魔法を使ってるんだ・・・!
この地で・・・という事は彼女は事周囲の土地に住んでいる、もしくはここで何かを行おうとしているのか?考えたくはないが、彼女が此処で魔法を悪用してよからぬことをしている可能性もある。うーん、でもまだなのはくらいの年の少女が一人でそんなことをするだろうか・・・?誰か指示を出している人がいるのかも・・・
僕の頭は少なく断片的な情報から真実や仮説を弾きだそうとフル回転した。


だがその頭の回転は、彼女が次に放った言葉によって完全停止する。


「流石に殺すのはかわいそうだけど・・・去勢か不妊位はしておかないといけないねぇ?」


ぞくり、と背中を今までに感じたことのない悪寒が襲った。
去勢。それは雄という個体のとても大事な部分を切除すること。それを行われた雄は自身の性別の象徴たる部分を永遠に失い、身体のホルモンバランスを大きく変える恐ろしすぎる手術だ。無意識に自分の股間を手で押さえる。その股間のこれが、彼女に捕まると永遠に失われる。

(いやだ!唯でさえ一族の間でも「女の子みたい」とか言われてショックだったのに・・・それだけは嫌だぁ!)
「さて、そうと決まれば・・・ぽんず!ゲットレディー・・・」

割と魂の叫びであるが、そんな僕を見下ろす彼女はサディスティックな笑みを浮かべて舌なめずりをする。
人の皮をかぶった悪魔め!!(獣の皮をかぶった男が何を言うか)
そして僕の心の中の魂の叫びを無視した彼女は、無慈悲にも振り上げた手を降ろした。

「ごぉー!!」
「うなーお!」
「キュ、キュゥゥゥゥゥ!!!」

1メートル近くある体躯の猫が目前に迫る。まるで狩りを楽しむように妖艶な笑みを浮かべる少女がその後ろを追いかける。恐らく魔法を使わないのは周囲の目を気にするだけではなく、よりじっくりこちらを痛めつけるために違いない。何と残酷な少女なんだ!鬼畜!悪魔!男の敵ぃー!

僕は逃げた。全力で、脱兎のごとく無様に愉快に尻を振って逃げ続けた。彼女たちはそのあと3時間以上に渡り僕を全力疾走で追いかけてきた。・・・笑顔を絶やさずに。途中なのはから念話が送られてきたが、それに耳を貸す精神的余裕は皆無だった。

日が沈み始め、ようやく飽きたかのように追跡を止めた彼女は、全く息を切らしていなかった。まるで「良い暇つぶしになった」程度の事であるかのように。だがそんなこと気にする余裕などないまま、僕は命からがら何とか玄関に辿り着き、そのまま意識を失った。

結局、彼女の事は何も分からなかった。だが今は、男の子の象徴を守れただけでも良しとせねばらるまい。


つ づ け 
 

 
後書き
ニュースの内容は本編とは関係ありませんよ?

流石なんちゃって天然道士、体力が凄まじくアップしてますね。
いやーこの回は難産でした。何が難しかったかって苗っちはまだ時期的にやるべきことやすることがないんですよ。で、やらせたのが淫獣の駆除という。

どうでもいい自分語りのコーナー

自分は二次創作でキャラ設定とかあると基本読み飛ばします。何で読まないかというと、設定見たからいきなりその小説読みたくなることなんて無いし、たまにネタバレ書いてあるし、オリキャラの性格や癖なら本編を読んで把握すればいいし、本編で語られないのに設定に書いてあることなんて存在しないのと同じだから読む必要ないという考えからです。 
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