銀河転生伝説 ~新たなる星々~
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第9話 ルフェールの支配者
――ルフェール共和国――
惑星イストアのとある建物の一室に、十数人の人間が集まっていた。
その人物たちは、いずれもルフェールの財界における重鎮たちである。
彼らは各方面に重大な影響力を持ち、民主共和制を掲げるこの国を陰から牛耳るルフェールの裏の支配者たちである。
その彼らが集うこの会合は、実質的にルフェールの最高意思決定機関とも言えた。
「ロアキアが落ちたか」
「オリアスも案外情けない。せめて銀河帝国をある程度道連れにしてくれればよかったものを」
「しかし……ロアキアがこうもあっさりと滅びるとは予想外でしたな」
「うん? ロアキアはまだ滅びてなかろう。ロムウェへの遷都を宣言していたハズだ。それに、オリアス皇子以下数人の艦隊司令官と2~3個艦隊程度の戦力はまだ健在ではなかったかな」
「それでも尚時間の問題だろう。銀河帝国の足場固めが終わるまでの間でしかない」
「今のまま推移すれば……な」
「では、彼らを援助すると? 私は別に構わんが国民感情が許すかな?」
「オリアスを直接支援するのはあの忌々しいティオジア連星共同体の連中だ。我々は共同体の連中にそれとなく働きかけ、多少の援助をするだけで良い。彼らがオリアスを支援したとなれば銀河帝国と敵対関係に成るのは必然。せいぜい奴等には我々の盾となってもらおう」
「なるほど……それは良案だ。だが、イザという時に備えて軍備の増強は必要だろう」
「無論だ。幸いロアキアの事が市民に対しての良い口実となる。今までの共和国艦隊は10個艦隊しか無かったが、この気に12個艦隊まで増やしたいものだ」
「まだ第五艦隊の再建がようやく成ったというのに気の早いことだ。まあ、世論も軍備増強に傾いているから、予算に関しては問題無く議会を通過するだろう」
「……数年前に第三、第五の2個艦隊を失ったのは痛手でしたな。あれが無ければ少なくとも3個艦隊は増強出来たものを」
第三艦隊はシャムラバート戦役でロアキア軍によって、第五艦隊は惑星エリエント上空戦でティオジア連星共同体によって壊滅させられており、現在の第三、第五艦隊はその後再建されたものである。
特に、第五艦隊は残存艦艇数隻という完全な壊滅であり、再建というよりは新しい艦隊を丸々作ったと言っても良いほどであった。
ルフェールの国力からすれば両艦隊の再建が既に完了していても可笑しくはなかったが、シャムラバート作戦における失敗とティオジア連星共同体の発足、ウェスタディア侵攻作戦での敗北、ルフェール陣営国家の相次ぐ離脱などから連鎖して起こった政治的混乱により十分な予算が付かず、最近になってようやく完了したばかりであった。
「過ぎた事を言っても仕方あるまい。それよりも、これからどうするか……だ」
「ティオジアの連中を支援しつつ地道に戦力を増強するしか無いのでは? 直接的な行動を起こそうにも敵は辺境のそのまた向こうだ」
「ましてや、銀河帝国の位置や規模すら未だ分かってませんからねぇ。こちらの情報はロアキア経由で得ているでしょうし、情報戦で後手に回っていることは否めませんな」
「我々に必要なのは……時間か」
「時間が利するのは向こうもですが……それでも我々には時間が必要ではある」
「退役寸前の艦を先日ロアキアから独立した4星系が建国した国家――エルダテミア共和国に供与しては? どのみち取り壊す予定のものです。それで銀河帝国の戦力を少しでも削ってくれるなら恩の字じゃないですか」
「ふむ……違いない。確かに銀河帝国があの国の独立をすんなり認めるとは思いませんな」
ロアキアの領土を血を流して奪い取ったのは銀河帝国(と辺境軍)である。
その彼らからしてみれば、エルダテミア共和国の成立(それも無血)など認められるわけはない。
「いずれにせよ、打てる手はすべて打っておくべきだろう。後で後悔したくなければな……では、次の案件に移るとしようか」
そう言って、議題は別の案件に移り出す。
ルフェールの実質的なトップとして君臨する彼らには議論すべき案件が多いのであった。
* * *
――ベトラント星域――
「巡航艦エイファス撃沈」
「戦艦フレッツン大破、駆逐艦ベルラーラ航行不能」
ゴズハット艦隊旗艦ヴィネスフーゼの艦橋に自軍の被害報告が送られてくる。
攻撃を仕掛けてきているのは銀河帝国のケンプ艦隊15000隻。
元戦闘艇のエースパイロットとして名声を馳せたケンプ上級大将の戦闘艇を巧みに使った戦術によりゴズハット艦隊は翻弄されていた。
「敵戦闘艇、退いていきます」
「ようやく退いたか、それにしても巧妙な……こちらの戦闘艇は?」
「敵の艦砲の射程内に誘い込まれ被害甚大です!」
「くっ……」
ここベトラント星域は現在のロアキア勢力圏の中で銀河帝国との最前線にあり、ゴズハット艦隊5000隻はテンボルト要塞に籠りながら防衛戦を展開することでどうにか持ち堪えていた。
「援軍はどうなっているか?」
「ワイルター艦隊とメルボド艦隊がこちらへ向かっています。到着まで後4時間」
「うむ、それまではなんとしても持ち堪えるぞ」
一方、その頃ケンプ艦隊司令部の方でも撤退が検討されていた。
「ふむ、そろそろ敵の援軍が到着しても良い頃合いだな。ここらが潮時か、いったん後退して艦隊の再編後撤収に入る」
「はっ、了解しました」
それに答えたのは参謀長のフーセネガー大将である。
「それにしても、あの要塞群の改造が完成すればこちらでの行動もずいぶん楽になるのだがな」
銀河帝国はロアキアから接収したアルコート要塞、カストヴァール要塞、トリエント要塞、メルフリーゼ要塞を移動要塞へと改造していた。
これらの要塞は収容艦艇10000隻の大型要塞であり、来るべき辺境、ルフェールへの侵攻時に役立つと期待されている。
また、収容艦艇3000~5000隻程の中型要塞を5基ほど移動要塞に改造する計画も立てられているが、こちらはまだ計画の段階であった。
銀河帝国内では、ガイエスブルク級の移動要塞であるオオサカ要塞が完成し、ミズキ要塞が艤装中。
ナルト要塞、ゴリョウカク要塞などの建造も進んでいる。
更にリョジュン要塞やコトウ要塞等の建造も計画されており、これが無理計画でなく実現可能な計画であることが銀河帝国の強大な国力を示していた。
「確かに。そう言えば、帝国本土で新たに艦隊が増設されたそうです」
「ほう?」
「8000隻規模の艦隊が9個艦隊。司令官にアルトリンゲン、ヴァーゲンザイル、カルナップ、グリューネマン、グローテヴォール、ザウケン、トゥルナイゼン、ハルバーシュタット、ブラウヒッチ大将が起用された模様です」
「いよいよ帝国としても本腰を上げるといったところか」
「それと、今年いっぱいで宇宙艦隊司令長官グライフス元帥と副司令長官ゼークト元帥が退役するそうです」
「ん? では新しい司令長官は誰になるのだ?」
「そこはまだ分かっておりませんが、ロイエンタール上級大将かミッターマイヤー上級大将ではと噂されています」
現在の宇宙艦隊司令官の中でも最も能力の高いのがこの2名である。
マリナ・フォン・ハプスブルクという異端の天才もいるが、彼女は階級も大将であるし実戦経験も少ない。
「なるほど、それが妥当なところか。面白くなってきたな」
宇宙暦807年/帝国暦498年 3月25日。
戦火は、未だ続いていた。
==今日のアドルフ==
新帝都フェザーンにある獅子の泉宮殿の一室で、その談合は行われていた。
「同志J、お主も悪よのぉ」
「いえいえ、皇帝陛下ほどではございません」
日本人ならば誰もが(?)知っている越後屋と悪代官の密談である。
もっとも、扱われている物はエロゲにエロ本、エロビデオ(DVD?)等であったが。
バタン!
その時、急に開いた扉から現れたのは、軍人からメイドに再転職したメイド長マリアン・フォン・アントワープである。
「陛下、現行犯です。醜い言い逃れなど為さらぬよう……」
「ね、姉さん……」
「これはすべて没収します。それと、これから折檻です」
「い……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!」
かくして、悪は滅びたのであった。
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