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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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騎士の力を得た少年のお話・2

 
前書き
総合評価が200越えたから続きを(謎理論)・・・って言っている間に評価が300近くに。
解せぬ(´・ω・`)
評価増えると嬉しいより先に謎のプレッシャーを感じるんだが。 

 
~見知らぬ神社~

流血のショックからどうにか立ち直った僕は今、近所にあった神社で休んでいる。涙が収まったとはいえ気分はどんよりブルー色、ダンディーさんに少し休んだ方がいいと言われて神社の縁側で横になっていた。木目の感触が気持ちいい。

しかし眠い。ダンディーさんによると建物脱出のために使った”転移の粉”により初めて魔力を使った影響で体が吃驚してしまったせいらしい。元々転移の粉が体力を大きく消耗させることも混ざって相乗効果でとってもだるい。そのうち体が魔力に慣れればここまで眠くはならなくなるのだとか。・・・騎士って魔法使うの?

《少年の力の基になった騎士は使えたのだろう》

そーなのか。僕の力ってどこかの誰かを基にして与えられたようだ。ちなみにダンディーさんの人格は何処から?

《私の人格の基も、君の力の基と同じらしい》

ダンディーさんという呼び方についてはノーリアクションのようだ。名前が無いせいだろうか?だとしたら今度ちゃんとした名前を考えてあげたいところである。・・・そうこう考えてたら、いい加減眠気が耐え難いレベルになってきた。

「ダンディーさん、僕とっても眠いです。寝て良いですか?」
《・・・何か差し迫った事態が起きれば知らせる。それまでは休まれよ》

わーい、ダンディーさんのお許しが出たから寝よーっと。何だかダンディーさんがパパみたいだね。どこかの愚物と替わって欲しかったな、割と本気で。

「くぴー・・・」
《さて、これからどうするか・・・む?あれは・・・》




少年睡眠中・・・・・・・・・




目が覚めたら、またまた知らない天井でした。取り敢えず体を起こすと看護婦さんに見つかり、状況が良く分からないまま身体検査を受けた。特に異常はなかったらしい。寝てる間に何が起きたんだろう。

『何が起きたんですかダンディーさん?』
《すまん。差し迫った状況ではなかったため起こさなかった》

あの後謎の子狐が僕を発見、それを飼い主に知らせて飼い主さんとその友人が様子を見に来たそうだ。で、それだけなら「迷子の子かな?」で済むところを魔法の影響と体質が話をこじらせたらしい。
具体的には魔力に肉体が適応するため仮冬眠していたせいで体温がかなり低下していたそうだ。当然そんな子供が意識不明で寝転がっていたら「倒れている」と勘違いされるのは自然な流れ。これは一大事だという事で僕は病院に運ばれたのだという。

『人間って冬眠できるの?』
《普通は出来ない。だが少年の肉体にはラグズの因子が残っているため出来たのだろう》

らぐずというのは良く分からないけど分かりました。つまり僕の身体は普通の人間とは違うみたいです。
何がどう違うのかは知らないけどそのうちダンディーさんに聞いてみよう。
と、考え事をしていたら目の前に知らないおじさんが現れた。

「やあ、私は君をここに運んだ恭也の父親、高町士郎だ。よろしくね」

僕をここに運んでくれた人の一人のお父さんらしい。何の用だろうか。

《恐らく身の上を聞いたうえで親元に帰そうとしているのだろう》

流石ダンディーさん、僕のパパ代行(勝手に任命した)なだけあって冴えている。しかしどう説明しようか。取れる選択肢は・・・


①正直に言う。

「知らないおじさんにここに連れてこられました」
「拉致事件だー!?」

②もっと具体的に言う

「最強の騎士の力を貰ってこの世界に来ました」
(この子・・・心が?これはもう精神科に連れて行くしかないな)

③知らぬ存ぜぬで通す

「覚えてません」
「覚えてないかぁ・・・じゃあしょうがないね」


よし、③で通そう。それが良さそうだ。


「宜しくお願いします。僕の名前は・・・」

・・・あれ?

「名前は・・・・・・名前、何だっけ・・・」

頭を捻っても抱えてもちっとも思い出せない。あれ?あれ?何で思い出せないんだろう?他の事は覚えているのに?しきりに首をかしげる僕の様子に高町さんの顔が険しくなる。何だかわからないが正直に言おう。怒られたくないし。

「すみません、覚えてません」
「・・・今までどこにいたかは?」
「・・・分かりません」
「家族や、友達は?」
「・・・・・・多分、居たと思います。良く覚えていません」
「誕生日とか、年齢は覚えてないかい?」
「・・・すみません」

何だか謝ってばかりである。名前はともかく他は一応覚えているのだが、リリカルワールドというのは恐ろしい所だとオジサンが言っていたから迂闊に話すわけにもいかない。何だか騙しているようで心が痛む。

その後、お医者さんがやってきていろいろ聞かれたのでさっきと同じようなことを返答したら、お医者さんも高町さんも困った顔をしていた。それはそうだろう、患者の保護者が分からないのではお金を取れないからね。

《恐らく困っているのはそこではない》
『そうなのかな?』
《そうなのだろう》

どうなのだろう。真相は闇の中である。闇に紛れて生きる妖怪人間さんにでも真相を暴いてもらおう。
それはともかくとして、僕が黙っている間におじさんとお医者さん、それに後から来た人たちの間でいろいろ会話が交わされていた。断片的な情報から察するに、これから警察が僕の身元を調べている間何所で僕の面倒を見るかを話しているらしい。こういうのは詳しくないので僕には待つことしかできない。
暇なので早速ダンディーさんの名前を決めてみる。

『ダンディーさん。ダンディーさんって本当は何ていう名前なの?』
《登録ではゼルギウスとなっている》
『・・・・・・カッコいい名前だね』
《どうかしたか?》
『何でもないよ』

名前あった。せっかくキムタクとかトンヌラとかいろいろ名前考えてたのに・・・



 = = =



「名前は・・・・・・名前、何だっけ・・・」
「・・・!?」

まるで今気付いたかのように首を傾げる少年に、私は正直驚きを隠せなかった。
昨日の晩御飯に何を食べたのかを忘れてしまった程度のことであるかのように喋る彼の姿は、少なくとも私にとっては普通には見えなかった。
やがて自分の名前を思い出そうとしきりに頭を捻り、申し訳なさそうに少年は思い出せないと謝ってきた。その目に嘘は感じられず、本当に自分の名前を忘れているのだと分かった。
まさか、といやな予感が脳裏をよぎる。

「・・・今までどこにいたかは?」
「・・・分かりません」
「家族や、友達は?」
「・・・・・・多分、居たと思います。良く覚えていません」
「誕生日とか、年齢は覚えてないかい?」
「・・・すみません」

謝るのはこっちの方だと叫びたくなった。何という事だろう、彼は自分の事を全く覚えていなかったのだ。

(記憶喪失・・・!)

今日ここに来たのは、恭也に頼まれて助けた少年の様子を見に来たというだけだった。だがここにきて事態は急変した。何が原因かも良く分からない理由で倒れていた少年には、自分の記憶がすっぽり抜けていたのだ。

だが私が何よりも気になったのは、少年の態度だった。
状況は飲み込めているはずなのに、まるで動揺を見せない。普通自分の名前が思い出せないなどという異常事態に陥れば少なからずショックを受けるものである。だが彼は「小テストの回答が思い出せない」程度のリアクションしか起こしていなかった。

そう、まるで―――”思い出さない方がいい事”と考えているかのように見えた。



面会を許可してくれた医師の先生にいましがたの事を伝え、すぐに彼の記憶について検査してもらった。
結果、彼からは思い出を司る『エピソード記憶』と一般常識などを司る『意味記憶』のうちエピソード記憶の方が大きく欠落していることが解った。原因は不明。少なくとも怪我によるものではない事だけは辛うじて解った。

「考えられる可能性はここに運び込まれたときの症状によって脳への血流が不十分になったこと・・・または心因性、つまり強い心的ストレスから逃れるために思い出さないようにしているのかもしれません」
「これは・・・一先ず警察を頼るしかありませんかね」
「ええ。ですが・・・彼の持ち物に名前などの分かるものは一つもありませんでした。ひょっとしたらこのまま身元が分からない可能性も・・・」

少年は無言でこちらの様子を見ている。その不安の一言も発しない姿が、私にはどうしようもなく心配に思えた。
普通の子供ならこんな状況で落ち着いていられることなどない。しかし、彼からは感情の起伏がほとんど感じられなかった。まるで、心も記憶も欠落して肉体だけが残っている抜け殻のように。
一体この平和な日本のどんな場所で過ごし、どう生きていたらこんな風になるというのだろうか。いっそ痛ましく思えるほどに、彼には何もなかった。
これでは仮に親が見つかったとしても・・・その親はまず間違いなくまともな親じゃない。何せ彼がこうなった原因は親の方にある可能性が高いからだ。いやむしろ―――捨てられた?



士郎の考えが纏まらないまま警察が来た。現在の所彼と思われる子供の捜索願は無いらしい。彼が自分の名前さえ思い出せないと知った警官は困った顔をしている。

「弱りましたね・・・名前も分からないんじゃ探すのは相当な手間ですよ」
「彼は・・・これからどうなるんですか?」
「何せ身元が分かりませんからね・・・規定では市長もしくは当事者のつけた名前を基に家庭裁判所で戸籍を作成します。保護者が居なければそのまま児童養護施設に送られますかね」

無論身元が判明すれば話しは変わりますけど、と警官は付け加えた。

「・・・その保護者というのは、私でもなれますか?」
「え?ええ、裁判所の方で手続きすれば・・・」

士郎は悩んだ。だがしかし、彼にはどうしてもあの少年を放っておくという選択肢を見つけることが出来なかった。
彼は相変わらず空虚な瞳で成り行きをじっと見つめている。自分がこれからどうなるかなど興味がないとでも言うかのように。だが、それは間違っていると士郎は思う。
子供というのはもっと笑ったり、泣いたり、怒ったり、悲しんだり、照れたり・・・そんな風に感情をさらけ出しているべきだ。ましてや感情が分からないなどという事は、子供以前に人間にとってこれ以上なく不幸なことだ。感情を理解できないままでは、あの子の未来の可能性を間違いなく潰すだろう。

彼に何があったのか、私は知らない。彼が何を思ってこちらを見つめているのかも。
或いはひょっとして、記憶がないという嘘をついて自分の殻に閉じこもっているのかもしれない。
だがそれでも、例えそれが自分勝手な願いであろうとも、士郎は彼に笑ってほしいと願った。

ポケットから携帯電話を取り出した士郎は、妻である桃子に電話を掛ける。

「はーい!何かしら、あなた?」
「ああ、桃子。実は―――」



数日後、高町家に新しい家族が迎え入れられる。


名前を、高町黒衣(たかまちくろえ)と言った。


続く・・・? 
 

 
後書き
クロエって本当は女の子の名前なんですけどね。男の名前で何が悪いかよ!
結局オリキャラの名前は自力で決めるしかないのか。ダリィ。あんまり変な名前にするとよく名前の読みを忘れることになるから黒衣はカタカナでクロエって表記するよ。

その2は転生者たちの居場所を決定する話でした。ちなみにこの話、ストーリーとか全然考えてませんのでご容赦を。

転生者の法則その1、肉体年齢は物語性主人公と同じになる。
転生者の法則その2、自分の前世の名前を忘れる。但し苗っちは自分の前世の名前を家の中で発見してます。
転生者の法則その3、まだ考えてない。 
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