宇宙を駆ける一角獣 無限航路二次小説
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第一章 七話 師弟
前書き
今までずっと遅れてしまってすいません。
学生の拘束時間なめてました。
これからは地獄の試練が終了したので遅れを取り戻すべく頑張って更新をしていきます。
ユニコーン ブリッジ
「頼む!俺に戦い方を教えてくれ!」
「だとよ。どうする、艦長?」
「何故こうなった………」
ユニコーンのブリッジの通信装置には何故か白野に教えを請うギリアスの姿があった。
何故こうなったのかを把握するには、数時間前まで時間を遡る必要がある。
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ユニコーン ブリッジ 数時間前
ユニコーンのブリッジのモニターにはフー・ルートンの正確極まる砲撃で全ての砲門を破壊され、満身創痍の様相を呈しているバウンゼィが映し出されている。
それを見たゲイケットが白野に報告する。
「敵艦、継戦不能の模様。インフラトン反応も低下している。」
艦船のインフラトン反応が低下しているという事はその艦のエンジン出力が低下しているという事だ。
反応が拡散、または消失した場合はインフラトン生成機関であるインフラトンインヴァイダーがぶっ壊れているという事だ。
ギリアスを死なせたく無い白野としては、ルートンの正確極まる砲撃に感謝の一言である。
後はボロボロのバウンゼィを港まで牽引してやるだけだ。
「よし、あの艦を牽引してやれ。」
「いいのか?マゼラニックストリームを越えるんだろう?」
ゲイケットの疑問はもっとである。だが、白野にとって優先順位が高いのは目的のための行動ではなく目的のために必要な【人】なのだ。
作中、主人公のユーリが言ったセリフの中で最もこの世界の理を体現しているのは「最後は結局人」と言う言葉である。
数の多い平均よりも飛び抜けて能力を極めた【個】の方が強いのがこの無限航路の世界である。
宇宙最強と目される帝国の艦隊の3分の1をたった一隻の戦艦で消し飛ばした挙句ゆうゆうと逃げ延びた大海賊ヴァランタインがその好例である。
「構わない。時間はまだある。」
ゲイケットを納得させる理由は考えてあるが、聞かれない限りはめんどくさいから答えるつもりは無い白野である。基本的に彼は面倒臭がりなのだ。
「わかったよ。あんたの言う事なら聞こう。」
ゲイケットは白野の指令を聞きいれ、バウンゼィの回収作業の準備を始めた。
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ユニコーン ブリッジ 三時間前
「アンカーの射出準備だ。頼むぞ、ハル。」
「了解。」
ゲイケットはバウンゼィ回収のため、戦闘中はユニコーンの整備庫で待機していた整備士のハル・バークに連絡して回収用のアンカーの射出準備を始めさせた。
回収用アンカー、この場合は通常のイカリとは形状が違う。イカリは⚓だが、回収用アンカーは見た目は唯の黒い箱である。
だが、回収用アンカー(以下アンカー)は引っ掛ける事が目的では無い。
内蔵型ジェネレーターによって物体を吸い付けるトラクタービームを発生させるのだ。
ゲーム中の描写は無かったが、戦闘後に資金が入手できるのは破壊した艦のジャンクパーツをアンカーや船外活動で回収して港で売っ払って換金しているのだ。
数分後、バークの超人的な運用によりアンカーが迅速に専用の発射装置に装填された。今は発射の時を待っている。
「アンカー、発射。」
白野が号令を下し、アンカーが射出される。
宇宙空間を黒い箱が飛び、ボロボロになったバウンゼィの船腹にくっつく。
内蔵されたジェネレーターが起動し、トラクタービームが発生する。
「トラクタービームの発生を確認。牽引可能です。」
「よし、わかった。180度回頭、上部修正48度。ユニコーン発進。」
ユニコーンの舷側、後部、サブブースターの全てが起動し軌道を修正する。
そして、ユニコーンはブースターをふかして元きた航路を戻って行った。
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カシュケント 宇宙港
バウンゼィを牽引して宇宙港に入港し、バウンゼィを隣のドックに停泊させて自分たちの入港手続きをしていたゲイケットは、バウンゼィから入ってきた通信に答えていた。
「艦長、あんたにあの艦の若いのから通信だ。話がしたい………だとよ。」
「話?なんのために?」
「おおかた何故助けた〜、とかもう一回戦え〜、とかじゃないか?」
「勘弁してくれ。」
ともかく、白野はこの通信に答える事にした。ギリアスとコネクションを作っておけば、来るべき帝国との戦いを避けらるかもしれない。そう考えたのだ。
「繋いでくれ。」
「了解だ。」
そして、場面は冒頭へと戻る。
通信回線を繋いでバウンゼィと繋がった時、画面に表れたギリアスは開口一番こう言って白野のドギモを抜いた。
「頼む!俺に戦い方を教えてくれ!」
「だとよ。どうする、艦長?」
ニヤニヤしながら白野を眺めるゲイケット。楽しんでいる事は明白である。
「何故こうなった………」
白野はギリアスに貸しを作りたかっただけなのだが、いつの間にか教えを請われている。
白野は考える。
確かに白野がギリアスに艦隊戦のイロハを教えるのは簡単だ。ギリアスほどのセンスがあれば教えをすぐに吸収してどんどん強くなるだろう。
だが、その事で生じる影響がわからない。
もしすると、強くなりすぎたギリアスが本来の流れを変えてしまうかもしれない。ギリアスが帝国の皇太子となるのは確実になるだろうが、帝国の侵攻が進んだ場合こちら側が不利になるかもしれない。
たとえ師とはいえ、戦争の中で手加減をする理由にはならない。
主人公であるユーリを倒してしまう可能性もある。
だが、メリットもある。
将来必ず戦わねばならない帝国などよりよほどヤバイ【奴等】との戦いで心強い戦力になってくれることだ。
少なくとも奴等を潰さないとこちらの命は確実に無いのだ。
ここまで考えて、白野は結論を下した。
「いいだろう。お前に戦いを教えてやる。」
帝国のトップは人間である。話し合いや妥協の余地は極めて少ないがある。だが、奴等のトップはそもそも話が通じるような存在では無い。こちらよりも遥かに高い次元からこの世界を好きに操っているのだ。考えてみればほとんど世界そのものに反逆するようなものである。
とにかく持ちうる好きに全ての戦力を集中してやっとこさなんとかなるかならないかの瀬戸際になるのだ。
少しでも確実性を上げる。
それが白野の出した結論だ。
「ほ、本当か!?すまない。」
ギリアスが画面の向こうで歓喜している。
「俺の名前はギリアス。これからよろしく、白野艦長。」
こうして、宇宙帝国の皇太子候補とランカーという奇妙なコンビによる師弟関係が成立した。
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カシュケント 酒場
白野は入港手続きをゲイケットに押し付けてギリアスと酒場に来ていた。
「ギリアス、だったな。これからお前はどうする?俺たちはマゼラニックストリームを越えようとしていたんだ。お前も来るか?こちらと行動すれば多少は安全なはずだが。」
「ああ、俺もそうしようと思ってた。多分今の俺じゃあそこの単独突破はできない。」
ギリアスは熱血タイプであるが、こういう風に冷静な判断もできる。この事からも彼の高い素質が伺える。
マゼラニックストリームから小マゼラン、ネージリンスジャンクションまでの道すがらには超白色矮星ヴァナージという馬鹿でかい上にクソ暑いガスの塊が浮かんでいる。
艦の冷却機能を軽く上回ってくる上に、そこらの艦では装甲が熱で溶け出すくらい熱いのである。
おまけとばかりにヴァナージの熱圏の付近には熱で弱ったところにトドメを刺すべくマゼラニックストリームのハイエナが待ち構えている。
熟練の0Gドッグでもかなりの無理ゲーである。
今現在、ユニコーンの整備士のバークが空間通商管理局の資材庫から専用の放熱板を引っ張り出して修復中のバウンゼィとユニコーンに搭載作業をしている事だろう。
「ギリアス、俺たちと来るなら一つ教えておいてやる。」
「………」
「いいか。どんなに艦長が優秀でもそれを補佐してくれる人間がいなければ、そいつは大した脅威では無い。艦は大勢の人間が互いに協力して始めてその真の力を発揮する。いいか、強くなりたければ【仲間】を探せ。心の底から信用できる、そんな仲間をな。」
「………覚えとくぜ。」
大事な事である。ユニコーンが何故人手不足なのかの理由はここにある。真に信用できるクルーを厳選しているからなのだ。
………個体値や努力値の事では無い。
「ああ、よく覚えておけ。大事な事だ。」
よく考えれば当たり前の事だ。だが、白野ほどの人間が言えば相当含蓄のある言葉となる。
その時、白野の注文していたウイスキー(安物)が運ばれて来たので話はいったん中断となった。
続く
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