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とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
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出会い
  Trick08_・・ご、ご愁傷様?



「エア・トレックについて調べてきましたよ」

氏神ジュディス2回目の誘拐未遂事件から数日。

初春は風紀委員177支部に来るなり白井へと調べた内容を見せた。

調べた内容は西折信乃の持っているA・T(エア・トレック)について。



A・T(エア・トレック)とは
  西暦2000年頃に使用された超小型モーター付インラインスケート

  一大ブームを起こしスポーツ競技として若者の間で流行

  一方では、犯罪の逃走手段や暴力の道具としても使用されたために
  法律まで作られるほど社会問題となる

  技術としてもエネルギー効率の良さから、ロストエネルギー問題解決の切り札
  として注目された

  しかし、別の分野の科学者が発見したエネルギー精製理論から、大量のエネルギー
  を生成することが可能となる

  新理論を利用すれば、ロストエネルギーは問題なくなるためにA・Tの注目度は
  減り、技術進化は衰退していった

  追い打ちをかけるように、警察のA・T犯罪者の取締が強化されたことから
  使用者が減ったいった



「こんな感じですね。昔のことなのであまり詳しくはわかりませんでした」

「これだけ見ると時代遅れのモーターが付いただけののインラインスケートですの」

調べられた内容だけでは信乃が“魅せた”瞬間移動と火炎能力の説明がつかない。


「あと、もう一つ、これはその当時の都市伝説なんですけど・・

 『すべての道を制する者が空を制す』と言うのがありました」

「なんですの? 道とか空とか・・」

「私も調べられなくてこの都市伝説の一部しか見つからなかったです。
 でも、『道』については少しだけわかりました。

 あのA・Tを使った走り方で、人によってそれぞれ目的や趣旨の違いがあって
 その違いを『道』と言っていたみたいですよ。

 しかも、その道の中で『炎の道』と呼ばれていたのがあって、速く走る人が
 所属してたとかありました。早く走る人がなんで『炎』なのかはわからないですけど
 これって信乃さんの特徴に合ってますよね?」

炎と高速移動。

もし、高速移動が空間移動(テレポート)に見えたのしたら辻褄が合う。

しかし、人間があの程度の装置で目で追い付けない速度の移動が可能だろうか。

白井はそのような考えに没頭していたが、

「もしかしてですけど信乃さんはまだ超能力を使っていないじゃないですか?」

「それはありませんの・・あの動きはたかが機械で出来るものではありませんわ。
 能力を上乗せしたに決まってますの」

「結局、信乃さんの能力の手掛かりにはあまり役に立たなかったですね」





その頃、信乃は2人と同じく風紀委員177支部にいた。

「固法さん、書類はこれで大丈夫ですか?」

「えっと・・うん、いいわよ。飲み込みが早いわね」

奥の部屋で書類整理をしていた。

もともと真面目な性格のため、先日の事件の書類作成がもう少しで終わる。

そんな時に

プルルルルルル!

支部に備えられている電話が鳴った。

「はい、こちら風紀委員177支部です。はい、いますが?
 はい、すぐに代わります。

 西折くん電話よ常盤台の理事長からよ。すぐに代わって欲しいって」

「? そんな人と接点はないはずですが・・はい、代わりました西折です」






「白井さん、信乃さんからの“問題”の答えはどうします?
 結局わからないですし・・降参しますか?」

「何を言ってますの初春! 絶対に答えてみせますの!
 それに想像してみなさい! 降参したら、あの方の性格ですと
 『結局わからなかったのか!残念ですね!!』
 などと言ってまた馬鹿にされますわ!!」

「白井さん落ち着いて下さい。信乃さんのこと嫌いになってませんか・・?」

「別にそんなつもりはありません! 事実を言っただけですわ!」

あははは、と乾いた声で初春は笑った。

そんな怒った白井に呆れてると

「ちょっと待って下さい!!!」

奥の部屋から大声が聞こえた。

「! びっくりしました・・信乃さん何があったんですかね?」

「日頃の行いが悪いからですわ」

「白井さん・・」



数分後、信乃が奥の部屋から出て来た。

表情は曇っていて元気がない。

「信乃さん、どうしたんですか? あんな大声を出して」

「ふふふ、面白いことになってるわよ」

応えたのは信乃ではなく、同じく奥の部屋から出てきた固法だった。

「「おもしろいこと(ですの)?」」

「ええ実は「あー、固法さん、私が話します」 そう? じゃよろしく!」

楽しそうな固法に信乃が一度溜め息を吐き、そして話し始めた。

「さっき、電話がありまして、・・・・・・・




*****************************************

「黒子、早く学校に行こう! 今日は朝礼があるわよ!」

「わたくしの準備はできてましてよお姉様? 待たせていたのはお姉様のほうですわ」

「う、うるさいわね! いいから行くわよ!」

次の日の朝。

その日は月曜だったために朝礼があり、御坂と白井はいつもより早く寮を出た。

「いつもなから朝礼はめんどくさいわ。理事長の話は長いし・・」

「そうですわ。あ、でもお姉様、今日の朝礼には面白いことがありますわよ!」

「?面白いことって何よ?」

「それは秘密ですわ。実際に聞いてからのお楽しみですわ」

白井はこの後に起こる御坂の反応を想像して笑みを浮かべた。




「・・ということで常盤台中学の生徒として品位のある行動と誇りを持って・・」

理事長の挨拶。

この理事長は話す事が好きで他の学校にも知れ渡っている。
それを毎週の朝礼の度に聞かされる生徒たちにとって月曜日は憂鬱である。

そんな理事長の話も『常盤台中学の生徒として~』のお決まりの締めの言葉に入った。

いつもならこれで終わりだか今日は違った。

「以上で私の話を終わります。最後にみなさんに連絡があります。

 校舎が所々でひび割れなどの老朽化をしています。そのことで今週から
 しばらくの間、修理の方が1名学校に出入りすることになりました」

校長がマイクスタンドから体をずらし、同時に一人の男がマイクの前に立った。

「初めまして、常盤台中学校のみなさん。修理を請け負うことになりました西折です。
 よろしくお願いします」

ざわざわっ

前に出て来た男が自分達とさほど変わらない歳に驚く生徒達。

ただし、1名は自分の知り合いであることに驚き絶句している。(もちろん御坂)

「皆さんお静かに! 我が校の校舎は、かの有名な建築塗装職人マリオ・サントリオ氏が
 手懸けており、修復には氏の弟子をお呼びしました。
 マリオ氏は特殊な塗装であることは業界では有名です。

 彼は若いながらマリオ氏が認める実力の持ち主です。
 みなさんも西折くんの邪魔にならないように修理の協力をお願いします。

 それでは朝礼を終わります。生徒の皆さんは今週も学業へ勤しんで下さい」

最後の言葉で生徒が教室へと戻って行った。


先程から絶句していた一名は

「御坂さん? 朝礼は終わりましたわよ、御坂さん?」

クラスメイトに声を掛けられたが苦笑いで固まっていた。

*****************************************


昼休み


「黒子! あんた知ってたわね!」

「お姉様の驚く顔を直に拝見したかったですわ」

白井がテラスで昼食を食べているところに御坂が怒鳴りこんできた。

大声を出した周りの生徒の視線が御坂に集中している。

「いいから来なさい!」

「あ~ん! お姉様強引ですわ~!」

視線に居心地の悪さを感じ、白井の手を引き無理矢理(白井はなぜか喜んでいた)に
テラスをあとにした。




「お姉様、どちらに行きますの?」

「信乃にーちゃんのところよ。あんたからでもいいけど、本人に聞いた方がいいわ」

「その信乃さんはどこに?」

「わからないけど、こういう時は信乃にーちゃんは大抵・・」

御坂は階段を上りきり扉を開けた。

そこは

「屋上よ」

予想通り信乃はフェンスに背を預けて空を見ていた。

「あいかわず高い所が好きだね、信乃にーちゃん」

「にーちゃん言わない。いいかげんに直してください。

 高い所が好きでも別にいいじゃないですか。
 『馬鹿とハサミは高い所が好き』って言いますから?」

「「混ざってるよ(ますわよ)」」

「それで何の用です?」

「決まってるでしょ! 修理員って何よ!?」

「修理をする人のことです」

「じゃなくて! 何で信乃にー、じゃなくて信乃さんが修理員なのよ!」

「それはですね・・」




前日 風紀委員支部にいる信乃へ電話が来る数分前のこと前のこと


常盤台中学の理事長が電話を相手に大声で懇願していた。

「お願いします、マリオ氏! あなたにしか頼めないんです!
 我が校の校舎はあなたが作られた芸術品であり、修理するにもあなたか、
 もしくは同じ技術を持った人しかできないんです!
 この技術を持っている人はマリオ氏! あなたしかいません!

『ワシは今いそがしい! 修理が必要ならもう少し待ってろ!
 わざわざ極東の国に行く暇は・・・ん? おい、確かそこは日本だったな?』

「はい、日本の学園都市です」

『≪ニシオリシノ≫って日本人のガキがそっちの国にいるからを探せ!
 歳は15だ! 見つけたら連絡しろ!』

ガチャッ! プープープー

「マリオ氏!? ・・切れてしまった。この広い日本でどうやってみつけろと・・」

「理事長見つけました」

「はや!」

声を出したのはパソコンを操作していた秘書だった。理事長も思わずツッコミ。

「ちょうど学園都市にいます。しかも風紀委員に所属してます。すぐに連絡も取れます」

「い、今すぐに電話を掛けてくれ!」




電話がかかってきた風紀委員177支部

「はい、代わりました西折です」

『常盤台中学の理事をしてるものだ! 早速で済まないがマリオ氏に電話を繋げる!』

「は?」

『ようシノ、元気にしてるか?』

「え? マリオさん? あの、お久しぶり、です。急にどうしたんですか?」

『実は建物の修理を頼まれたんだが、ワシは忙しくてな。だからお前頼む』

「へ!?」

『お前はワシの手伝いで技術を覚えたじゃろ? なら大丈夫じゃ』

「ちちちょっと!?」

『ワシの代わりじゃしっかりやれよ』

ガチャッ!

「・・・」

『こちらにも電話は繋がっていたのでお話は聞いてましたよ!
 いや~、あのマリオ氏に認められるお弟子さんとはお若いのにすばらしい!
 あなたなら我が伝統ある常盤台の校舎を任せられます!
 明日の8時に来て下さい! そのときに詳しいお話を!』

「ちょっと待って下さい!!!」

ガチャッ

「・・・・」







「というわけです」

「「・・・・」」

「何か言って下さい」

「・・ご、ご愁傷様?」

「疑問形ですか・・」

「昨日も聞きましたけど、何度聞いても不憫ですわね」

「・・・同情ありがとうございます」

西折は笑っていたが目だけは明後日の方向を見ていた。

「それで、その建築家さんとはどんな関係なの?」

「世界を回って、何でも屋みたいなことをしていたんです。
 その何でも屋にきた依頼で、力仕事でマリオさんの手伝いの依頼がしたんですよ。
 その手伝いで私の手際が良いとか勘が良いとかで気に入られて、依頼の期間に
 簡単な技術を教えてもらっただけです。
 私にマリオさんほどの仕事ができるはずないんですがね・・」

「弟子じゃないの? 気に入られただけで名指しするなんて軽い人ですわね
 その建築家」

「いえ、頑固おやじで職人肌の典型的な方でしたよ。弟子というのは理事長が勘違い
 しただけです」

「? それなのになぜ信乃にーちゃんが呼ばれたの?」

「いや、一応弟子入りしないかって誘われたことがあります。
 でも、建築家として生きていくつもりはなかったですし、
 その時に断って以来、連絡していないはずですが覚えられていたんですね」

「あんた世界回って何やってたのよ」

「・・・・いろいろ?」

「疑問形で返さないでくださいですの。まあとにかく、しばらくの間よろしく
 お願いしますわ」

「ええ、こちらこそ改めてよろしくお願いします」

白井は信乃の話で同情したのだろうか、態度が少し柔らかくなっていた。

「あ、それよりも、しばらくの間うちの学校に来るみたいだけど自分の学校は
 どうするの? 一応学生でしょ?」

「ああ、それなら学園都市に来てからの1カ月の間に1年分の単位を全部取りました」

「は!? 1年分全部!?」

「そんなことできますの!?」

「本当は授業に参加しないといけないんですけど、私の高校の理事長である氏神さんに
 ダメ元で頼んでだら、筆記と実技の両方のテストで合格したら
 単位が取れるようにしてもらいました」

「それで合格する信乃にーちゃんもすごいわね・・」

「信乃さんの学校、相当厳しいのではなくて・・?」

御坂も白井も呆れていた。

「難しかったですけど、なんとか合格できましたよ。
 まあ、そんなわけでしばらくといわずに1年間でしたら修理に来ても問題ありません」

「学園都市に来て学校に行く必要のない生徒っているのね・・」





つづく
 
 

 
後書き
主人公が常盤台に出入りする理由を強制的に作ってみました。

ちなみに、建築家の名前は『王様の仕立て屋』の登場人物から
使いました。特に意味はありません。

作中で不明、疑問などありましたらご連絡ください。
後書き、または補足話の投稿などでお答えします。

皆様の生温かい感想をお待ちしています。
誤字脱字がありましたら教えて頂くと嬉しいです。 
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