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魔笛

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第二幕その十四


第二幕その十四

「私が」
「けれど君は」
「いや、いいのだ」
「これでいいのだ」
 しかし兵士達はこうタミーノに言うのだった。
「ザラストロ様はこうなるとわかっておられた」
「二人で乗り越えてこそなのだ」
「二人で」
「そうだ。運命が導いている」
「例え死が定められているにしても」
 こう言ってであった。二人で行くことを許すのだった。そうしてだった。
 タミーノはパミーナを見た。そうして彼女に声をかけるのだった。
「君と一緒に行くことができる」
「はい、二人で」
「例え何があっても行こう」
「二人で」
 こうしてであった。二人で向かおうというのだ。
 兵士達もそれを見てだ。静かに言う。
「行くがいい」
「はい、パミーナ」
「ええ、タミーノ」
 二人で見詰め合っていた。
「二人であの中に」
「進もう」
「私は貴方の手を取って」
 既に自分の両手で彼のその右手を強く握り締めていた。
「そうして」
「そうして?」
「愛の導きに従って」
 そうするというのである。
「先に進みましょう。あらゆる苦難は」
「苦難は?」
「その魔笛を吹いて下さい」
「この笛を」
「そう、吹いて下さい」
 そうするといいというのである。
「その笛が私達を護ってくれます」
「そう。それなら」
「その魔笛はお父様が作られたものです」
「ザラストロ様が」
「そうです」 
 まさにそうだというのだ。
「ある魔法の時間に雷光と雷鳴が鳴り響く嵐の中で千年経ったオーク樹の根を刻んでそのうえで作ったものなのです」
「それがこの魔笛」
「その通りです。ではその魔笛を吹いて」
「うん」
 パミーナのその言葉にこくりと頷く。
「行こう」
「ええ、それでは」
「僕達はこの魔笛の力を頼りに進んで死の暗い中を通り抜けよう」
「行くがいい」
 兵士達も二人に告げる。
「今からだ」
「そなた達の先に」
 こうして二人は中に入った。そこでは火も水も大地も風も荒れ狂っている。しかし魔笛を吹けばであった。
「炎の灼熱の中も」
「あらゆる危険も」
「溢れる水の中も」
 揺れ動く大地も荒れ狂う風もであった。全てがタミーノが吹いたその魔笛の音の前に消えていく。全ては静寂に覆われたのだった。
「これで鎮められ」
「僕達は今から」
「神々の幸福の中に」
「彼等は手に入れた」
 ザラストロはそれを見て言うのだった。
「後はだ」
「はい、他の者達もですね」
「手に入れるのですね」
「その通りだ」
 まさにそうだというのだ。
「幸福と。そして」
「昼と夜が再び一つになる」
「その時もまた」
「来るのだ」
 こう話してだった。彼等はそれぞれ話していく。その目には未来が見えていた。
 
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