| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔笛

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二幕その十三


第二幕その十三

「ここは何とかしないと」
「さもないと大変なことになる」
「だから」
「私はこれで」
 死という言葉が出ようとしていることを悟った。そうしてだった。
 三人はすぐに動いてだった。パミーナの周りを囲んだ。そしてそのうえで優しく声をかけるのだった。
「気を取り直して」
「落ち着いて下さい」
「どうかここは」
「けれど」
 パミーナはその沈んだ顔で少年達に返す。
「そんなことをしても」
「いえ、死ぬことはありません」
「その必要はないんです」
「ですから思い止まって下さい」
「思い止まる」
 パミーナもそれを聞いてふと言葉を止めた。
「けれど私は」
「いえ、それでもです」
「僕達の話を聞いて下さい」
「どうかです」
「話を聞いても」
 ここでだった。遂にパミーナは彼等に顔を向けた。そのうえで何とか気を取り直してそのうえで言葉を出したのだった。
「いえ、そうね」
「はい、そうです」
「王子のことですね」
「それですね」
「ええ」
 少年達の言葉にこくりと頷く。
「どうして話し掛けてくれないのかしら」
「それは御答えできません」
「しかしあの方はです」
「貴女のことを心から想っています」
「だからなのです」
 こうパミーナに話すのだった。
「ですからよければ」
「貴女は王子のところに行かれますか?」
「どうされますか?」
 こう尋ねるのだった。
「今から」
「如何でしょうか」
「そうね」
 その言葉を聞いてであった。パミーナも遂に言うのだった。
「それでは」
「ではこちらに」
「今から参りましょう」
「愛に燃え立つ二つの心はです」
 少年達は決意したパミーナにさらに話すのだった。
「人の力では引き離すことはできません」
「敵が骨を折ってみても無駄というもの」
「神々が御護り下さるのですから」
 こう言ってであった。パミーナを彼の場所に導くのだった。絶望は消えようとしていた。
 奥に様々なものが渦巻いているのが見える入り口がある。その左右に二人の武装した兵士達が立っている。鎧兜に身を包みその手には槍と楯がある。その彼等が前に来たタミーノに対して言ってきたのだった。
「苦難に満たされたこの道を辿り行く者」
「その者は火、水、風、土により清められる」
「そなたが死の恐怖を克服できれば」
「この地上から天上に舞い上がるのだ」
「そなたは光に照らされて」
「イージスの秘儀に一身を捧げることができるようになるのだ」
 こうタミーノに告げる。すると彼はそれに応えて言うのだった。
「死は怖れない、それに行動して徳の道を歩み続けます」
「それがそなたの心だな」
「間違いないな」
「はい」
 まさにその通りだというのだった。
「どうかその先に進ませて下さい。進んで危険な中に入りましょう」
「よし、わかった」
「それではだ」
 兵士達は彼を行かせようとする。しかしだった。
 ここにパミーナが来てだった。そして懇願してきた。
「お待ち下さい!」
「パミーナ!?」
「ええ、私よ」
 パミーナは驚くタミーノの傍に来て答えた。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧