魔法少女リリカルなのは【喜ぶべき死】
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三話目
前書き
どうもあしゅきです
やっと仕上がったので更新しました
こんな風に完全に不定期更新ですので、いつ完結するか全くわかりません
ですが完結はさせるので、ながーい目で見守ってください
※今回からちょっとだけジョジョっぽくしてみました
台詞に「――ぜェ~~!!」とか「――ッ!」のようなものがあります
小説でそれはちょっと抵抗感がある。という方は気を付けてください
それではどうぞ
月が蒼い。この月は、君にも見えているのだろうか
いや、きっと君がいる場所では見えないのだろう。君は月よりも高く、美しい所にいるのだから。それは僕にとってとても寂しいことだ。
ほら、見てごらん。今日も用意したよ、君のための生け贄だよ。
…嬉しそうな顔をしてないね。あぁ分かった、言わないでいいよ。君の言いたいことは心でわかったから。こんな汚い大人じゃダメなんだろう?
もっと穢れを知らない純粋無垢なものがいいに決まってるよね。
大丈夫、不安になることなんて何もないよ。生け贄には心当たりがあるし、それに…
「君は僕が連れ戻す」
蒼い月は光源となり黒髪の少年を照らす。その足元のコンクリートは鮮やかな赤に塗りつぶされていた。
午後十一時。一人の少年と、人型の幽霊が蒼月を見上げていた
「これで今月三件目ですね…」
「あぁ、こりゃひでぇ…。今回は心臓、か…」
ある日の朝。住宅街の十字路に車が数台止まっていた。車の側面は正義を示すような白で濡れられていて、その上から黒く「警察庁」とデカデカと書かれていた
春も中旬に差し掛かり、葉桜が辺りを美しく彩る。麗らかな日差しには初夏を到来を感じさせるような暑さがあった。
しかし訪れたのは初夏だけではなく、事件もまた訪れていた
「しかし…今回はなにがいけなかったのか…。あの台詞は夜通しで考えたから完璧のはずなんだが…」
なにがいけないとかじゃなくて、まずあんたという存在が嫌われてるんでしょうね…。そうバニングスは思ったが、口に出せばケンカになるのは目に見えている。ここはグッと我慢をしよう
その日の帰り道。曹条は悩みつつも自宅へと戻っていた。隣には不機嫌そうな顔のバニングスが曹条と歩幅を合わせつつ歩いていた
「何でお前はそう睨んでくるんだよ。僕が何かしたって言うのか?」
「ふんっ。あんたには一生分からないことよ」
「ふーん。女ってめんどくさいぜ」
「そんなこと言ってるからなのはにあんな扱いされるのよ」
「あれは恥ずかしがってただけだッ!」
「はいはい能天気な頭してて羨ましいわホント」
今日もいつも通りだ。この言い合いも、一触即発のこの空気も
…もう少し素直に対応していたらこうにはならないんでしょうけどね
そしてこの後悔も、本当にいつも通りだ
そんな一触即発の空気をぶち壊す軽快なメロディーがカバンから流れてくる。携帯の着信音だ
携帯を開き見る。液晶画面には曹条の思い人でありバニングスの親友でもある"高町なのは"の名前があった
「もしもしなのは? どうしたの?」
《アリサちゃんッ! 確か動物病院ってアリサちゃんが通ってる塾の途中なんだよね?》
「えっ、そうだけど…」
《説明は来てからするから、とにかく来てッ! 三丁目の公園にいるから!》
「ちょ、ちょっとッ!?」
高町は言いたいことだけを伝え、通話を切った
事情はわからないが、とにかくなにかあったんだろう
「いけよ。僕よりなのはが最優先だ」
「あんたのためにこの道選んだんじゃないっての! 言われなくともそうするわよッ!」
バニングスもまた言いたいことだけを伝え、三丁目の公園を目指してひた走る
「…だから素直じゃないってからかわれるんだぜ」
曹条のそんな呟きを耳にすることなく
アイツだ。そうだ、アイツがいい
電柱に隠れて自分と同い年であろう男子を見つめる少年がいる
人は回りにはいないし、アイツ自身強そうに見えない
なにより"あの子"好みの目をしている。きっとあの子も喜んでくれるだろう
少年は標的を決めると、自分の背後からヌッと幽霊を出した
今までの奴ら同様えぐりだしてやろう。今回はそう…、今回は喉仏にしよう
大人程の大きさの幽霊をゆっくりと男子に近づけていく
幽霊は指の骨を鳴らしながら動かす、そして男子の喉仏をえぐり出す
かのように見えた
『オラァッ!』そんな野太い声と共に男子の肩から出た逞しい腕が、幽霊の腕を殴り飛ばす
驚きのあまり目を見開いた。しかし少年の勘かそれとも幽霊の意思か
幽霊は最初からいなかったかのように姿を消した
「…そこに、誰かいるんだな?」
ゾクリとした。少年はこの力は自身の物だけだと思っていたからだ
しかし違った。実際にはここにもいた
「いるんだろって聞いてるんだぜェ~~!!」
男子は目を見開き、背後から少年と同じように幽霊を飛び出し、こちらを凝視した。目には明らかに怒りの色が浮かんでいた
少年"武道尚伴"は間違いを一つ犯していた。それは、選んだ相手が同じ力を持つ男子"曹条浦保"だと言うことを知らなかったということだ
「場所は限られる…。曲がり角、電柱、塀の後ろ…。だが僕が一番きな臭いと思うのはッ! どうあがいても電柱なんだぜッ!」
『オラァッ!』という声と共に曹条の幽霊が電柱を殴り飛ばす。ビンゴだった。武道は電柱の後ろで立っていた
「…テメェだな? 僕の喉仏をえぐりとろうとしたのはよォ~」
「…」
「黙りを決める気か? だが…。僕はもうテメェを犯人だと思っている。だから、何も言わねぇなら、そうだと決めつけて…テメェをあの電柱と同じようにビキビキに壊してやるよ」
曹条は嘘をついていなかった。何も言わないのなら本当に殴り飛ばそうとしている。武道にもその覚悟は伝わった。言い訳など出来ない性分の武道も覚悟を決めた
「…その感じ、やっぱりテメェか。ならッ!」
「ぶん殴ってビキビキにしてやるよォッ!」
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!』
曹条の幽霊が、凄まじい速さで片腕の拳を繰り出しながら武道に向かっていく。
武道にもそれは予測済みだった。そして自身の幽霊にあのようなラッシュを繰り出すスピードがないのも分かっていた
「こういうときは…!」
ダッとコンクリートを蹴った。武道は突っ込んだのだ
塀を幽霊にぶっ壊させ、すぐ近くにある民家の敷地内に
「逃げるんだよォォ~~!!」
「なッ! 待ちやがれこのヤロォーッ!」
二人の幽霊はまだ、ぶつかり合ったばかりだ
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