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とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
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出会い
  Trick01_御坂さんとは・・親戚みたいなものです

「本当に御坂さんはすごいですね!」

時刻は夕方。4人の少女、いや美少女が歩いていた。

その中の一人、きれいな長い黒髪に白梅の花を模した髪飾りをつけている少女が
一緒に歩いている茶髪のショートカットにヘアピンをつけている少女に
憧れのまなざしを向けて言った。

「そんなことないわよ、子供のために自分を盾にした佐天さんの方がすごいって!」

茶髪の少女、"御坂 美琴"(みさか みこと)は照れながら答えた。
言い返された長い黒髪の少女、"佐天 涙子"(さてん るいこ)も同じように照れた。

「佐天さん、すごかったですよ。私なんか今回なんの役にも立たなかったんですから・・」

「落ち込むことはないですわよ、初春。あなたはあなたで一般人の誘導を
 きちんとやっていましたわ」

黒髪ショートカット、というよりも花を活けているようにしか見えない
頭をしている少女、"初春 飾利"(ういはる かざり)が落ち込みながら佐天を誉める。

その初春をフォローした少女、"白井 黒子"(しらい くろこ)は茶髪ツインテールを
かき上げながらそう言った。

4人は先ほど、銀行強盗に遭遇していた。風紀委員(ジャッジメント)に所属している
白井と初春は犯人の確保、周辺の一般人の誘導して事件に対処した。

佐天は初春の親友であり、風紀委員の手伝いで見当たらなくなった男の子を探し、
さらには男の子を強盗の一人から庇って蹴けられてしまった。

その傷を治療したテープが彼女の頬につけられている。

そして御坂美琴。彼女は蹴られた瞬間を目撃し、逃げる犯人に向かい攻撃をした。


彼女の決め技であり異名でもある超電磁砲(レールガン)を使って。


御坂は学園都市に7人しかいないレベル5であり、その力は一人で軍隊と互角に戦える
ほどと言われている。

現に逃げる犯人は車に乗っており、それを正面から超電磁砲をぶつけて車を
空中回転して止めたのだ。もちろん車は二度と使えないスクラップになった。


そんな壮絶な一日を過ごした彼女たちは、警備員(アンチスキル)に通報し、
事情聴取を終えて帰るところだった。


「私も御坂さんみたいに能力が使えたら今回みたいに蹴られる前に
 反撃できたいいのにな~」

「でも、能力よりも子供をかばった勇気の方が大事だと思うよ。私は佐天さんを
 尊敬するよ」

「そうですよ佐天さん!!大事なのは勇気です。私も能力もないし体力もないけど
 頑張って風紀委員になったんです」

「あなたの場合、体力がないのは問題ですわよ? 腕立て1回もまともにできない
 風紀委員なんてわたくしは初めてみましたわ」

そんな4人が雑談して歩いていた。





「おや、御坂さんじゃないですか?」

突然、前方にいた少年が話しかけていた。年齢は御坂達の3つ上ほど。中肉中背で
とくに目立った体格ではなく、顔もいい方だがずば抜けているというわけではない。

急に呼びとめられて4人は立ち止まったが、少年に一番に反応したのは
呼ばれた御坂ではなく白井の方だった。

「あなた、いったいだれなのです?

 まったく、お姉様をナンパするのはいいですが、もう少し周りを見た方がいいですわ。

 4人いる中で一人だけをナンパするなんて、よほど自分に自信があるか
 ただのバカとしか言いようがありませんの」

その白井は警告オーラを出しながら御坂と男の間に入って身構えた。

「ちょ、ちょっと待ってよ黒子! この人は私の知り合いだから!!」

「え?」

慌てて白井の肩を掴んで止める御坂。

「いきなり声をかけてすみません。私は"西折 信乃"(にしおり しの)と言うものです。
 御坂さんとは・・親戚みたいなものです。見かけたので声をかけただけですが
 お邪魔して本当に申し訳ありません」

男の腰の低い物言いを受けて白井は自分が誤解したことに気付いた。

「い、いえ! わたくしこそお姉様のお知り合いの方にナンパなどと失礼なことを
 言って申し訳ありませんわ!!」

「私の方が悪いですよ。かわいいお嬢さんが4人もいて、そこに声をかける男が
 いたら、ナンパと勘違いして当然ですからね」

西折信乃は気にせずに軽く笑い流してくれた。明らかに年上の青年は少女たちに対して
丁寧な口調でしゃべりかけてくる。その事が3人(御坂以外)が持っていた警戒心を
弱めたのだった。

「あ、あの、すみません。もしかしてですけど今日の朝、不良から私を助けてくれた人
 ですよね!?」

そこでいきなり話に入ってきたのは佐天だった。

「不良に絡まれてた?」

「そう! 初春にも言ったじゃん! 学校に来る前に不良に絡まれてさ、
 そこに颯爽と現れて何も言わずに不良をボコボコにして、
 すぐにいなくなった人がいるって!」

その時のことを思い出して興奮気味に話す佐天。だが、

「あ~、佐天さんが言ってましたね! かっこよくて王子s(ガシッ!)う~!!」

「あはは、なんでもないです。気にしないでください(汗)」

しゃべっている途中の初春の口を塞ぎ、興奮から焦りに一気に変わった佐天である。

セリフの続きは「王子様みたいだった」である。

「不良から助けたって良いことしてんじゃん」

御坂がからかうようにそう言った。

「いいえ、私はあなたを助けたのではなくてイラついているときに
 目の前にいた不良を殴っただけです。お礼を言われることはしていません。

 ただ暴力が役に立っただけですから」

((((こわっ!))))

爽やかと言うか、寒気を感じると言うか、そんな笑顔で返す西折だった。

「で、でも、お礼を言わないと私の気が済みません」

「感謝をしているなら私の意見の方を受け入れてください。私は感謝は要りません。
 暴力を振るっただけの悪い人間ですよ」

「う、う~ん。・・わかりました。・・・えーと、
 西折さんの言うとおりに何も言いません・・」

そう、言って佐天はすこし落ち込んだように俯いた。
ちなみに初春はまだ佐天に口を塞がれて「う~う~」と言っている。

「そういうところは素直じゃないのは変わらないみたいね。ちょっと安心した」

「お姉様、この方と親しくありませんの? なんだか久しぶりに会ったような
 言い方ですわよ?」

「再会するのは1カ月ぶりなんですが、その前は4年以上も
 会ってなかったんですよ。そういった意味では久しぶりに
 こうやって話していることになりますね。

 再会以来、私は御坂さんに少し避けられているような感じがしてまともに
 話してませんでしたから」

西折は親戚という御坂に対しても丁寧な口調を崩さずにそういったが、

「そっそんなことよりも、なんでこんな所にいるのよ!?」

御坂が隠していたつもりの気持ちがばれていたのに焦って話題をそらした。
御坂は再会した時に聞いた西折の“過去”の話を聞いて警戒していたのだった。

西折はそんなことを気にした風もなく

「ちょっと知り合いに頼まれまして子供を探しているんですよ。

 10歳くらいの子供です。親とけんかして家出したみたいなのですが、
 先にギブアップしたのが親の方。私に泣きついてきたんですよ。

 『早くうちの子供を探して! 可愛い子だから誘拐されたに決まっているわ!!』

 と言われました。いえ、命令されたというのが正しいですね。
 とにかく、その子供を探しているんですよ。

 皆さんは見ませんでしたか? 特徴は・・赤色のセミミドルの長さの髪ですね」

4人に聞いてみた西折だが返事は残念ながら

「私は見てないわね」

「わたくしも見てませんわ」

「うーん、私も見てないわ。初春はどう?」

「ううう~~うう」

「何言ってるかわかんないわよ」

ガバ!
「だったら口から手を離してください!
 さっきからずっと塞いで苦しかったんですよ!!」

「あはは、ごめんごめん。で、どうなの?」

「私も見ていないですね。あの(銀行前の)公園に子供はたくさんいましたが、
 赤色の髪の子はいなかったと思います」

4人とも否定の返事だった。

警備員(アンチスキル)には通報していませんの?」

風紀委員として白井が質問をした。この場合、複数の人数で探した方が効果的。
この学園都市の治安維持機関である警備員に通報するのは当然のことだろう。

「一応連絡はしたのですが、家出の可能性が高いのでパトロールで注意する程度の
 対応しかしていません。私はこの辺りに目撃情報があったので来てみました。

 もう少し見回ってみます。ご心配ありがとうございます。」

「大変じゃない? 私が手伝おうか?」

そう言って手助けを申し出をした御坂。他の3人も同じ意見のようで頷いている。

「大丈夫ですよ。範囲が広いのは問題ありません。足には自信がありますから」

と4人は西折の足元へと目を向けた。


足に付けられているのは“インラインスケート”。
普通のものとは違い、大きめの車輪が縦に2つ並んだ構造をしている。
デザインに赤を多く使っているために、どこか炎のようなイメージを感じさせた。

この年齢(見た目高校生程度)でインラインスケートを着けている人を見るのは
珍しい。というよりは初めて見た。

4人は少し茫然とし、その後に呆れた気持ちで苦笑いを浮かべてしまった。

「あの、西折さん。少し失礼ですが、そのようなおもちゃよりも自転車で探索した方が
 “多少は”成果が出せるだとわたくしは思いますわ」

白井が皆の意見を代弁して“優しく”言った。
実際はやめたほうがいいと強く思っているだろう。

「ああ、これはですね、インラインスケートではないんですよ。見た目は似てますが
 名前はエ「あれ!?」ック ・・どうしたんですか?」

西折が装着している靴について説明しようとした時に、佐天が大声をあげて遮った。
その声からは佐天の驚きを感じさせた。

「今、路地の奥の角を曲がって見えなくなった人がいるんです! その人が赤髪の
 子供を背負っているようにみえたんですよ!」

5人の中で唯一、路地の見える位置にいた佐天だけが気付いたことだった。
それを聞いて西折は走り出した。

「ありがとうございます! 一応確認のために行ってきます!」

4人を置いていくように走り去った西折を見て御坂が、

「私も追う!」

一番に反応して走り出した。
そして他の3人も続くように、

「お待ちください、お姉様!! これは風紀委員の仕事です!」

「初春! 私達も行くよ! 何か手伝えるかもしれないし!」

「は、はい!」

路地裏へと向かって走り出したのだった。



つづく
 
 

 
後書き
作中で不明、疑問などありましたらご連絡ください。
後書き、または補足話の投稿などでお答えします。

皆様の生温かい感想をお待ちしています。
誤字脱字がありましたら教えて頂くと嬉しいです。 
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