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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―ジェネックス Ⅶ―

 ――明日香が目覚めない。

 保健室の鮎川先生のところに連れて行ったが、その結論は全く変わることはなく、医学やオカルトの知識など全く無い俺にはどうしようもなかった。
《思い出のブランコ》を貸してくれた吹雪さんにも、デッキの調整を手伝ってくれた三沢にも、そして何よりも、必ず救うと誓った明日香に申し訳がたたない。

 だからといって打開策があるわけでもなく、「俺のせいだ」という後悔の念に苛まれながらラー・イエローの自室に戻ると、ポケットの中のPDAにメールが届いた。
無視しようかとも思ったが、反射的にそのメールを見てしまうと、俺は足早に自室を飛びだした。

 メールの文面を簡潔に表すと、こういうものだった。

 ――天上院明日香を目覚めさせたければ、デュエルの準備をし、光の鍵を持ってホワイト寮のデュエル場に来い――

 メールの送り主は知らない者からだったものの、内容を見れば何となくは解る……すなわち光の結社の指導者、斎王琢磨。
奴が明日香が負けても気を失って目覚めないように、明日香に何かをしたに違いない……!

 我ながら言いがかりにも程がある推測だったが、斎王ならばそれぐらいはやりかねなく、わざわざホワイト寮のデュエル場に呼び寄せる時点でその説に決まっている。
ほどなく俺はいつも多用していた、オベリスク・ブルー寮のデュエル場……現ホワイト寮のデュエル場へとたどり着き、斎王がどこにいるかを捜した。

「斎王! 来てやったぞ!」

「確かにメールを送ったのは斎王様だが、斎王様はここにはいない」

 万丈目をリスペクトしたような芝居がかった口調がデュエル場から発せられ、俺はイライラしながらデュエル場へと登っていった。

 声の主は思った通り、元・中等部最強のデュエリスト、五階堂宝山であり、その腕にはデュエル・ディスクを取り付けていた。

「……何だ、デュエルでもする気か?」

「当然だ。貴様が勝ったなら、斎王様に会わせてやろう」

 明日香と万丈目を失った今、彼の実力も確実に光の結社の上位に位置するのだが、たとえイライラしていてもコイツに負けるつもりはない。
俺はデュエル・ディスクを構えると、五階堂を挑発的に睨みつけた。

「お前じゃ力不足だ。せめて銀でも呼んでくるんだな」

「早まるなよ黒崎遊矢。貴様の相手は俺でも銀先輩でもない」

 五階堂や【巨大戦艦】を操る銀流星以上の実力者を呼んできたということだろうが、相手が誰であろうと今は負ける気など毛頭無い。
相手が誰かは見当が付かなかったが、さっさと来いという思いが俺を支配する。

 ……そして、五階堂に呼ばれて俺の対戦者がデュエル場へと登ってきた。
白いスーツ姿に日本人離れした容姿、そして、その腕に付いているデュエル・ディスクはアカデミアの物ではなく、旧型のデュエル・ディスクのデザインに近い。

「……エド、か」

「ふん、お前が相手か。遊矢」

 俺は光の結社に入っていたせいで、三沢に聞いた話ではあるが、斎王とエドは親友だということらしい。
豹変した親友を救うため、自らの目的を達するため……その二つの目的を達するために、エドは行動しているらしい。

 そして、これはその斎王の作戦だろう……俺たち二人をデュエルさせる状況を作り出し、片方の鍵と――こちらは斎王にとってはどうでも良いだろうが――ジェネックスのメダルを奪う、という。

「鍵とメダルを賭けてデュエルして、勝った方に斎王様はお会いになさるらしい。せいぜい頑張るんだな!」

 五階堂はそう言ってデュエル場から出て行くが、もはや俺とエドの二人に五階堂など眼中にはない。
俺たちの視界に写っているのは、どちらも譲れない物を持ったデュエリストだけだ。

「遊矢。お前が何を背負っているかは知らないが、僕は斎王を元の斎王に戻す!」

「俺も同じだ、エド。斎王を倒して、明日香を助ける!」

 もう俺たちに話し合いなど無意味であり、この平行線の議論の決着をつけるにはもうデュエルをするしか方法はない。
お互いに譲れないものがあり、どちらもこのデュエル、相手のために負けるなんてことは出来やしない。

『デュエル!』

遊矢LP4000
エドLP4000

 もはや五階堂を前にしていた時のイライラなどとうになく、デュエルに集中しなければ、目の前のプロデュエリストは勝てる相手ではない。

「僕のターン、ドロー!」

 デュエル・ディスクが導きだす先攻は、残念ながらエドに奪われる。

「僕はモンスターとカードを一枚ずつセットし、ターンエンド!」

「俺のターン、ドロー!」

 これまでのエドのデュエルで、トリッキーな《D-HERO》たちの特色は解っているつもりだが、何せ1対1でエドとデュエルをするのはこれが始めてだ。
観てるだけでも、タッグデュエルでも、味方に回しても解らないことがあるはずだ。

「俺は《マックス・ウォリアー》を召喚!」

マックス・ウォリアー
ATK1800
DEF800

 それでも俺たちのやることに変わることはなく、未知のセットモンスターに対してアタッカーは雄々しく攻撃の意志をとる。

「バトル! マックス・ウォリアーで、セットモンスターに攻撃! スイフト・ラッシュ!」

「セットモンスターは《D-ボーイズ》! このカードがリバースした時、デッキから同名モンスターを二体攻撃表示で特殊召喚する!」

D-ボーイズ
ATK100
DEF1000

 姿を表したセットモンスターは予想に反して《D-HERO》ではなく、二体の同名モンスターを特殊召喚するという展開補助モンスター。
だが、十代の《E・HERO》にとっての《ヒーロー・キッズ》のような扱いであろうあのモンスターには、確かデメリットがあったはずだ。

「《D-ボーイズ》には同名モンスターを特殊召喚した数×1000ポイントのダメージを受ける、というデメリットエフェクトがある。だが、僕はこのカードを発動していた! リバースカード《レインボー・ライフ》! 手札を一枚捨てることで、ダメージを回復に還元する!」

エドLP4000→6000

 少々手札は消費したものの、エドのデッキである《D-HERO》には墓地に送った方が都合の良いカードが多く、その上ライフの回復と二体のモンスターの展開までも果たしてきた。

「……マックス・ウォリアーのレベルと攻守は半分になる。カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

「僕のターン、ドロー!」

 プロデュエリストの実力というものを、一ターン目からさまざまと見せつけてくれたエドだったが、二体のモンスターをどう使ってくるか。

「僕は《D-HERO ディパーテッドガイ》を召喚し、フィールドの三体のモンスターをリリースする! カモン、《D-HERO ドグマガイ》!」

D-HERO ドグマガイ
ATK3400
DEF2400

 十代とのタッグデュエルでD-HEROの切り札として特殊召喚された、黒い翼を生やしたダークヒーローが早くも姿を表す。
その効果の特性上、早めに出した方がその効果を有効に使うことが出来るのだが、あまりにも早すぎる。

 エドは本気だと、ドグマガイは改めて俺に感じさせた。

「ドグマガイに装備魔法《大嵐剣》を装備し、バトル! マックス・ウォリアーを攻撃する! デス・クロニクル!」

「《くず鉄のかかし》を発動し、ドグマガイの攻撃を無効にする!」

 マックス・ウォリアーの前に現れた《くず鉄のかかし》がドグマガイの攻撃を止めたものの、ドグマガイの剣から放たれた旋風に破壊されてしまう。

「攻撃する時、《大嵐剣》のエフェクトで《くず鉄のかかし》は破壊させてもらう。これでターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 是非ともスタンバイフェイズを飛ばしたいものだが、ドグマガイがそれを許してはくれず、その恐るべき効果が俺には防げないタイミングで飛来する。

「ドグマガイのエフェクト発動! お前のライフを半分にする! ライフ・アブソリュート!」

遊矢LP4000→2000

 俺のライフはドグマガイによって半分の2000となり、エドの方は《D-ボーイズ》と《レインボー・ライフ》によって6000となる。

「俺はマックス・ウォリアーを守備表示にし、《ガントレット・ウォリアー》を守備表示で召喚する!」
ガントレット・ウォリアー
ATK500
DEF1600

 ドグマガイを倒す手は今の俺にはなく、二体の機械戦士を守備表示で固めて防ぐしか方法はない。
そしてリバースカードを伏せようにも、エドのフィールドには装備魔法《旋風剣》がある。

「ターンエンドだ」

「僕のターン、ドロー! ……モンスターを守備表示にしようと無駄だ、遊矢」

 エドの不吉な宣告と共に、どこからか俺のフィールドへとスーツを着たミイラ男が現れる……もちろん攻撃表示で、だ。

「ディパーテッドガイが僕のスタンバイフェイズにセメタリーにある時、相手のフィールドに特殊召喚される!」

D-HERO ディパーテッドガイ
ATK1000
DEF0

 ドグマガイでフィールドを制圧した後には、こちらが守備を固めるのを読んでそれを無為にするディパーテッドガイ……
エドは《D-ボーイズ》のセットから、フィールドがこの状態になるのを読んでいたのだろう。

「バトル! ドグマガイでディパーテッドガイに攻撃! デス・クロニクル!」

 流石は未来と運命を操るHEROの使い手、と言ったところだろうか……そんな強敵が相手だろうと俺はまだ、負けるわけにはいかない……!

「ガントレット・ウォリアーの効果を発動! このモンスターをリリースすることで、俺の戦士族モンスターの攻撃力・守備力を500ポイントアップさせる! 思いと力を託せ、ガントレット・ウォリアー!」

 ディパーテッドガイは戦士族モンスター……よって、問題なくガントレット・ウォリアーの効果を受けることが出来る。

 ガントレット・ウォリアーがリリースされると共に、マックス・ウォリアーとディパーテッドガイにその特徴であったガントレットが装備される。
それでも焼け石に水にしかならず、貧弱な体躯しか持たないディパーテッドガイは、当然ながらドグマガイに破壊されてしまう。

「ぐあっ……!」

遊矢LP2000→100

 それでもガントレット・ウォリアーのおかげで俺は生き延び、たとえライフが100ポイントだろうと次のターンに望みを繋げることが出来る。

「……カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 ガントレット・ウォリアーに感謝しながらカードを引くと、その思いにデッキも応えてくれたのか、なかなか良いカードを引けた。

「エド、反撃と行かせてもらうぞ! 《チェンジ・シンクロン》を召喚!」

チェンジ・シンクロン
ATK0
DEF0

 小型のロボットのようなチューナーモンスターを召喚すると、早速俺はシンクロ召喚に入ることを命じた。

「俺はレベル4の《マックス・ウォリアー》に、レベル1の《チェンジ・シンクロン》をチューニング!」

 チェンジ・シンクロンがその小さい身体に等しい一筋の光となり、マックス・ウォリアーの外周を回り始めた。

「集いし勇気が、仲間を護る思いとなる。光差す道となれ! 来い! 傷だらけの戦士、《スカー・ウォリアー》!」

スカー・ウォリアー
ATK2100
DEF1000

 傷だらけの機械戦士……そのステータスは外見とレベルの通りあまり高くはないが、重要なのはシンクロ召喚に使用したチェンジ・シンクロンの方だ。

「チェンジ・シンクロンがシンクロ素材となった時、フィールドのモンスターを守備表示にする! 俺が守備表示にするのは、当然ドグマガイ!」

 攻撃力3400という破格の数値を誇るドグマガイだろうと、守備表示になってしまえば2400という上級の基準値程度まで落ち、その程度ならば破壊することは容易かった。

「《スカー・ウォリアー》に《融合武器ムラサメブレード》を装備し、バトル! スカー・ウォリアーでドグマガイを攻撃だ、ブレイブ・ムラサメブレード!」

 普段使用している短剣ではなく、腕に融合したようになっているムラサメブレードを使い、ドグマガイを戦闘破壊することに成功する。

「カードを二枚伏せ、ターンエンドだ!」

「僕のターン、ドロー!」

 ドグマガイを破壊すると共に《旋風剣》も無くなったため、後顧の憂いなくリバースカードを伏せられるが、未だエドが圧倒的に有利な状態ではあった。

「僕は《D-HERO ダンクガイ》を召喚する!」

D-HERO ダンクガイ
ATK1200
DEF1700

 召喚されたダンクガイは確か、手札のD-HEROを一枚捨てることで相手にバーンダメージを与えると共に、墓地にD-HEROを送る役割のカードだったか。
どうやらエドは、ドグマガイとディパーテッドガイの攻撃が耐えられてしまった時のことも考えていたらしい……!

「ダンクガイのエフェクトを発動! 手札を一枚捨て――」

「手札から《エフェクト・ヴェーラー》を発動し、ダンクガイの効果を無効にする!」

 しかし、それぐらいならば防げないことはない。
ダンクガイをその羽衣で包み込むと、エフェクト・ヴェーラーはダンクガイの効果を一時奪って消える。

 手札コストを支払わせるかはエフェクト・ヴェーラーのタイミング次第だったが、俺は払わせることを選択したタイミングでエフェクト・ヴェーラーを発動した。

「……ならば《ドクターD》を発動! セメタリーのD-HEROを除外し、セメタリーのD-HEROを特殊召喚する! カモン、《D-HERO ディスクガイ》!」

D-HERO ディスクガイ
ATK300
DEF300

 早々とバーンによる決着を見切ったエドは、D-HEROたちのドローソースたるディスクガイを特殊召喚し、その効果で二枚のドローに成功する。


「さらに《闇次元の解放》を発動! 除外ゾーンの《D-HERO ダイヤモンドガイ》を特殊召喚する!」

D-HERO ダイヤモンドガイ
ATK1400
DEF1600

 除外ゾーンにいるD-HEROはディパーテッドガイだけだと思ったが、《ドクターD》でダイヤモンドガイを送っていたらしい。
D-HEROたちの主力モンスターといっても過言ではない、ダイヤモンドガイが特殊召喚される。

「ダイヤモンドガイのエフェクト発動! デッキの上のカード……通常魔法カード《デステニー・ドロー》を未来に飛ばす! ハードネス・アイ!」

 D-HEROの未来の運命を操る代表的な効果が発動されたが、どのモンスターも《融合武器ムラサメブレード》を装備したスカー・ウォリアーには適わない。
だが、エドのフィールドにいるモンスターが三体だと考えると、途端に冷や汗が俺から流れた。

「僕は《戦士の生還》を発動し、セメタリーのドグマガイを手札に戻す。そして三体のモンスターをリリースし、再び現れろ、《D-HERO ドグマガイ》!」

 切り札の大盤振る舞いをするエドによって二回目の召喚を果たすドグマガイは、当然スカー・ウォリアーより攻撃力が遥かに上だ。

「バトル! ドグマガイでスカー・ウォリアーに攻撃! デス・クロニクル!」

「リバースカード、《ガード・ブロック》を発動し、戦闘ダメージを0にして一枚ドロー!」

 そしてスカー・ウォリアーは一ターンに一度戦闘破壊されることはなく、ドグマガイの攻撃を何とか凌ぎきる。

「カードを一枚伏せ、ターンを終了する」

「俺のターン、ドロー!」

 ドローした後のスタンバイフェイズ時、再びドグマガイの効果であるライフ・アブソリュートが俺を襲うが、今更ライフが半分になろうと大して変わるものではない。

遊矢LP100→50

「俺はチューナーモンスター《ニトロ・シンクロン》を召喚!」

ニトロ・シンクロン
ATK300
DEF100

 《融合武器ムラサメブレード》を装備しているものの、残念ながらスカー・ウォリアーがドグマガイを相手にするのは荷が重いため、更なるシンクロ召喚に繋げさせてもらおう。

「俺はレベル5の《スカー・ウォリアー》と、レベル2の《ニトロ・シンクロン》をチューニング!」

 ニトロ・シンクロンが、頭上のメーターを振り切らせるとその身体を光の輪とし、スカー・ウォリアーを取り囲む。

「集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《パワー・ツール・ドラゴン》!」

パワー・ツール・ドラゴン
ATK2300
DEF2500

 俺がシンクロ召喚したのは、機械戦士の中でも最も高火力を誇る《ニトロ・ウォリアー》ではなく、エフェクト・ヴェーラーと対を成すラッキーカードたる機械龍。
まずは、その効果を存分に発揮させてもらうとしよう。

「パワー・ツール・ドラゴンの効果を発動! デッキから三枚の装備カードを裏側で見せ、相手が選んだカードを手札に加える! パワー・サーチ!」

 俺がデッキから選択したのは汎用性が高いものを中心とした、《団結の力》・《魔導師の力》・《デーモンの斧》の三種類。

「……右のカードだ」

「右のカードを手札に加える。そして、伏せてあった《リミット・リバース》を発動し、チューナーモンスター《エフェクト・ヴェーラー》を特殊召喚!」

 ニトロ・ウォリアーをシンクロ召喚しなかったのは、ラッキーカードを並べてパワー・ツール・ドラゴンの拘束を解くため。
ライフが50などという数値でデュエルを続行するのは難しく、それを回復するには俺のデッキにはあのカードしかない。

「レベル7の《パワー・ツール・ドラゴン》と、レベル1の《エフェクト・ヴェーラー》をチューニング!」

 またもや行われるシンクロ召喚ではあったが、今までのとは毛並みが違ってエフェクト・ヴェーラーがパワー・ツール・ドラゴンの回りをくるくると回っているのみだった。

「集いし命の奔流が、絆の奇跡を照らしだす。光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》!」

ライフ・ストリーム・ドラゴン
ATK2900
DEF2400

 パワー・ツール・ドラゴンが炎と共にその身に纏っていた装甲を弾き飛ばし、真の姿を表して空中へと飛翔する。

「ライフ・ストリーム・ドラゴンがシンクロ召喚に成功した時、ライフポイントを4000に出来る! ゲイン・ウィータ!」

遊矢LP50→4000

 ライフ・ストリーム・ドラゴンが空中から降り注がせた光に癒やされ、俺がドグマガイに良いようにやられたライフも何とか初期ライフまで回復する。

「そして装備魔法《団結の力》を装備し、バトル! ライフ・ストリーム・ドラゴンで、ドグマガイに攻撃! ライフ・イズ・ビューティーホール!」

 パワー・ツール・ドラゴンの効果によって託された装備魔法、《団結の力》が宿ったライフ・ストリーム・ドラゴンの光弾がドグマガイを襲った。

 ……しかし、ドグマガイは今まで装備していなかった大盾でその光弾を防いでいた。

「伏せてあった《D-シールド》のエフェクト発動! ドグマガイを守備表示にし、戦闘破壊を無効にする!」

 装備することで戦闘破壊を無効にする厄介な大盾、D-シールドによってドグマガイは守られ、ライフ・ストリーム・ドラゴンは攻撃を止める。

「俺はターンエンドだ」

「僕のターン、ドロー!」

 ドグマガイの破壊には失敗したものの、ライフは初期ライフまで回復してフィールドにはライフ・ストリーム・ドラゴンと、デュエルを仕切り直すことは成功したと言っても良いだろう。

「セメタリーの《デステニー・ドロー》のエフェクトで二枚ドロー! そして、僕は《D-HERO デビルガイ》を召喚する!」

D-HERO デビルガイ
ATK600
DEF800

「デビルガイ……!」

 悪魔の格好をしたダークヒーローの登場に、俺は内心で若干……いや、かなり毒づいた。
あのモンスターの前では、ライフ・ストリーム・ドラゴンの破壊耐性であろうと何の意味も成しはしない。

「デビルガイのエフェクト発動! 相手モンスターを除外し、二ターン先の未来に飛ばす! ディスティニー・ロード!」

 デビルガイが空中に開けた、時空の穴のようなものにライフ・ストリーム・ドラゴンは吸い込まれ、エド曰わく未来へと飛ばされてしまう。

「ドグマガイを攻撃表示に変更し、アタック……と、言いたいところだが、デビルガイのデメリットエフェクトで攻撃は出来ない。カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 ライフ・ストリーム・ドラゴンを二ターン失うのは痛いものの、デビルガイは効果の影響で攻撃表示のままだ。

「俺は速攻魔法《手札断殺》を発動! お互いに二枚捨てて二枚ドロー! ……そして、《ターボ・シンクロン》を召喚!」

ターボ・シンクロン
ATK100
DEF500

 手札交換の後に召喚される緑色のF1カーのようなチューナーモンスターが、果敢にもドグマガイの前に立つ。

「更に《アイアンコール》を発動し、墓地から《チューニング・サポーター》を特殊召喚する! そして《機械複製術》を発動し、更に二体特殊召喚!」

 もはや三体特殊召喚するのがデフォルトとなったチューニング・サポーターだったが、数が何体であろうと彼らがやるべきことは何も変わりはしない。

「レベル1の《チューニング・サポーター》と、効果によりレベル2にした《チューニング・サポーター》二体に、レベル1の《ターボ・シンクロン》をチューニング!」

 シンクロ素材の四体合わせても、ドグマガイどころかデビルガイにすら及ばない程度の小ささしかないが、こうすることによってD-HEROたちとも戦える力を手に入れられる。

「集いし絆が更なる力を紡ぎだす。光さす道となれ! シンクロ召喚! 轟け、《ターボ・ウォリアー》!」

ターボ・ウォリアー
ATK2500
DEF1500

 深紅のボディに刺突用の腕部を持ち、ターボ・シンクロンを巨大化させたような姿の機械戦士がそのモーターを轟かした。

「ターボ・ウォリアーに《デーモンの斧》を装備し、バトル! ターボ・ウォリアーで、デビルガイに攻撃! アクセル・スラッシュ!」

「《攻撃の無力化》を発動し、攻撃を無効にする!」

 低攻撃力をわざわざ晒すのみにするエドではなく、ターボ・ウォリアーの攻撃は残念ながら時空の穴に吸い込まれてしまう。
大ダメージのチャンスだっただけになおさら残念だが、考えていても仕方がない。

「ターンエンドだ」

「僕のターン、ドロー! デビルガイのエフェクト発動! ターボ・ウォリアーを未来に飛ばす! ディスティニー・ロード!」

 《デーモンの斧》を装備したターボ・ウォリアーはドグマガイの攻撃力を超えており、またもやデビルガイの効果に頼らざるを得なかったエドだったが、ターボ・ウォリアーにその効果は通用しない。

「ターボ・ウォリアーは、レベル6以下のモンスター効果の対象にならない!」

 これこそが先程シンクロ召喚する時にターボ・ウォリアーを選んだ理由であり、このモンスターの強みでもあった。

「チッ……二体を守備表示にし、速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動! ライフ・ストリーム・ドラゴンをセメタリーに戻し、ターンを終了する」

 しかしエドもただでは転ぶデュエリストではなく、ライフ・ストリーム・ドラゴンを墓地に送ることで完全除去を果たす。

「俺のターン、ドロー!」

 ドローしたカードは速攻魔法《サイクロン》であり、エドのフィールドのドグマガイに装備されているD-シールドを、ひいてはドグマガイを破壊出来るようになった。

 さて、ドグマガイとデビルガイのどちらを攻撃するか。

「俺は速攻魔法《サイクロン》を発動し、《D-シールド》を破壊する! そしてバトル! ターボ・ウォリアーでドグマガイに攻撃! アクセル・スラッシュ!」

 答えはもちろん効果を受け付けないデビルガイではなく、ステータスの高いドグマガイの方だ。
D-シールドを竜巻により吹き飛ばされて失ったドグマガイは、ターボ・ウォリアーの深紅の一閃により破壊された。

「良し、カードを一枚伏せてターンエンド!」

「僕のターン、ドロー!」

 D-HEROの切り札の二回目の戦闘破壊に成功したが、俺はまだエドにダメージを与えられていない。
この展開もエドの想定内なのだろうか、と一瞬不安に思ってしまうが、そんな弱気な思いは頭から消しておく。

「僕は《D-HERO ディバインガイ》を召喚!」

D-HERO ディバインガイ
ATK1600
DEF1400

 今までのデュエルでは見たことがない、俺にとっては初見となったD-HEROの登場に、デビルガイのような一発逆転を狙えるカードなのかと警戒する。
背後に銀色の剣のようなものを背負っている、黒いダークヒーローは、俺の警戒を知ってか知らずか不敵に笑っていた。

「ディバインガイに同じく《デーモンの斧》を装備し、バトル! ディバインガイで、ターボ・ウォリアーに攻撃!」

 やはり何か作戦があるらしく、《デーモンの斧》を装備したとはいえ攻撃力が劣るディバインガイでのターボ・ウォリアーへの攻撃宣言。
エドからどんなコンバットトリックが来るか見逃すまいとするが、効果があるのはエドの手札ではなく、ディバインガイそのものだった。

「ディバインガイのエフェクト発動! このカードが攻撃する時、相手フィールド場の装備魔法を破壊し、その数×500ポイントダメージを与える!」

 ディバインガイの背中に背負われた銀色の剣が発射され、ターボ・ウォリアーが持っていたデーモンの斧を破壊し、その破片が俺を襲う。
破片からの衝撃に耐えていた時には、既にターボ・ウォリアーはディバインガイによって切り裂かれていた。

遊矢LP4000→3400

「ターボ・ウォリアー……!」

「メインフェイズ2、フィールド魔法《幽獄の時計塔》を発動し、ターンエンドだ」

 アカデミアのデュエル場が、あるD-HEROが囚われている時計塔がある町へと変わっていき、エドはターンを終了した。

「俺のターン、ドロー!」

 《幽獄の時計塔》が使用された今、そんなのんびりとデュエルを進行していく暇はないが、俺の手札にフィールド魔法を破壊出来るカードはない。

「お前のスタンバイフェイズ時、幽獄の時計塔は時を刻む!」

 大きな音をたてながら時計塔が12時から3時へと移行し、囚われのD-HEROが目覚めるまで後9時間となる。

「ならばこちらは、《ミラクルシンクロフュージョン》を発動! 墓地の《ライフ・ストリーム・ドラゴン》と、《スピード・ウォリアー》の力を一つに! 《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》!」

波動竜騎士 ドラゴエクィテス
ATK3200
DEF2100

 結果的にデビルガイによって墓地に送られたライフ・ストリーム・ドラゴンと、《手札断殺》で墓地に送っていたマイフェイバリットカードが力を併せて召喚された竜騎士が、早々とフィールドを支配する。

「バトル! ドラゴエクィテスで、デビルガイを攻撃! スパイラル・ジャベリン!」

 《デーモンの斧》を装備しているディバインガイから破壊したかったものの、やはりデビルガイの効果で《幽獄の時計塔》完成までの時間稼ぎをされれば厄介で、攻撃目標をデビルガイとした。
下級モンスターのデビルガイに防げる攻撃ではなく、放たれた槍にデビルガイの身体は消し飛び、その槍はドラゴエクィテスの元へ戻ってくる。

「ターンエンドだ」

「僕のターン、ドロー!」

 エドはドローしたカードを見て薄く笑うと、またもや俺が見たことがないD-HEROを召喚した。

「僕は《D-HERO ドレッドサーヴァント》を守備表示で召喚し、エフェクト発動! 《幽獄の時計塔》に新たな時を刻む!」

D-HERO ドレッドサーヴァント
ATK400
DEF700

 ドレッドヘアの新たなD-HEROは、その名とその効果の通り《幽獄の時計塔》……あるいはそこに囚われているD-HEROのサポートカードなのだろう。

「僕はカードを一枚伏せ、ターンを終了する」

「俺のターン、ドロー!」

 俺がドローした後のスタンバイフェイズ時、再び《幽獄の時計塔》のカウンターが進んでいき、俺にとってもう後がない時刻となる。

「俺は《スピード・ウォリアー》を召喚する!」

『トアアアアッ!』

スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400

 マイフェイバリットカードが雄々しい叫びと共に登場し、更にその手に双刃がもたらされた。

「スピード・ウォリアーに装備魔法《ダブル・バスターソード》を装備し、バトルフェイズに入る!」

 攻撃表示のままのディバインガイと、守備表示のドレッドサーヴァントをどちらから攻撃するか……《ダブル・バスターソード》は自壊を条件に二回攻撃と貫通効果を与えるため、ドレッドサーヴァントから攻撃しても良いのだが……

「ドラゴエクィテスで、ディバインガイに攻撃! スパイラル・ジャベリン!」

 どちらでも変わらないと判断した俺は、【装備ビート】も取り入れている【機械戦士】にとって、厄介な効果を持ったディバインガイから攻撃することにした。

「リバースカード、オープン! 《エターナル・ドレッド》! 進め、運命の針よ!」

 《幽獄の時計塔》の針を進めることが出来る罠カード《エターナル・ドレッド》により、《幽獄の時計塔》はまた12時を回ってこちらの攻撃を受けつけなくなった。

「そして、スピード・ウォリアーでドレッドサーヴァントを攻撃! ソニック・エッジ!」

 ディバインガイは破壊できたのだから良しと考え、気を取り直してスピード・ウォリアーでドレッドサーヴァントを攻撃すると、《幽獄の時計塔》の効果でダメージはないものの、あっさりとバスターソードでドレッドサーヴァントを切り裂いた。

 ……だがドレッドサーヴァントは墓地には行かず、何故か幽獄の時計塔の頂上へと登っていった。

「ドレッドサーヴァントが破壊された時、僕のフィールドの魔法・罠カードを破壊出来る! 僕は当然、《幽獄の時計塔》を破壊する!」

 墓地に送られる運命にあるドレッドサーヴァントの最期の一撃が、《幽獄の時計塔》を破壊していき……ドグマガイと並ぶD-HEROの切り札が瓦礫の中から姿を表した。

「再び12時を指した《幽獄の時計塔》が破壊された時、デッキから《D-HERO ドレッドガイ》を特殊召喚出来る! カモン、ドレッドガイ!」

D-HERO ドレッドガイ
ATK?
DEF?

 時計塔に封印されていた、鉄仮面をつけたD-HEROがその解放を祝うように吠えると、背後から二つの時空の穴が出現していく。

「ドレッドガイがこのエフェクトで特殊召喚に成功した時、セメタリーのD-HEROを二体特殊召喚する! ドレッド・ウォール! カモン、ディスクガイ! ディバインガイ!」

 先程ドラゴエクィテスが破壊したディバインガイと、墓地から召喚した時に二枚ドローするディスクガイが時空の穴から出現する。
よってドレッドガイの攻撃力は1900……ディバインガイとディスクガイならば、スピード・ウォリアーの二撃目で破壊が可能だが、それもドレッドガイの効果で適わない。

「ディスクガイのエフェクトで二枚ドロー……攻撃しても無駄だと解っているようだな」

 エドの余裕たっぷりなニュアンスを含んだ台詞には答えないでおく。
ドレッドガイには《ドレッド・バリア》と呼ばれる効果があり、《幽獄の時計塔》の効果で特殊召喚したターン、エドのD-HEROたちを傷つけることは出来ない。

「バトルフェイズ終了時、《ダブル・バスターソード》の効果により、スピード・ウォリアーは自壊し……ターンを終了する」

「僕のターン、ドロー!」

 俺のフィールドはドラゴエクィテスのみであり、エドのフィールドはドレッドガイ、ディバインガイにディスクガイが控えている。
フィールドのD-HEROの合計値で攻撃力・守備力が決定するドレッドガイが、ドラゴエクィテスの攻撃力を超えなければ良いのだが、それは望み薄であろう。

「僕はディスクガイをリリースし、《D-HERO ダッシュガイ》をアドバンス召喚する!」

D-HERO ダッシュガイ
ATK2100
DEF1000

 ダイヤモンドガイに並ぶD-HEROの主力モンスターの登場により、ドレッドガイの攻撃力は3700――ドラゴエクィテスの攻撃力を超えた。

「バトル! ドレッドガイでドラゴエクティスを攻撃! プレデター・オブ・ドレッドノート!」

 ドレッドガイの鎖がついた剛腕にドラゴエクィテスは捕まり、そのまま抵抗も空しく握りつぶされてしまう。

遊矢LP3400→2900

「そして、ディバインガイでダイレクトアタック!」

「手札から《速攻のかかし》を捨てることで、バトルフェイズを終了させる!」

 ディバインガイの攻撃を、速攻のかかしが代わりに受けてくれたおかげで俺はなんとか無事に済んだが、ドラゴエクィテスが破壊されてしまったのはとても痛い。

「カードを二枚伏せ、ターンを終了する」
「俺のターン、ドロー! ……通常魔法《発掘作業》を発動し、一枚捨てて一枚ドロー! よし、《貪欲な壷》を発動して二枚ドロー!」

 なんとか二枚のドローソースによって戦術の目処がたち、ここからエドへの反撃を開始させてもらおう。

「カードを一枚セット! そして魔法カード《ブラスティック・ヴェイン》を発動し、今セットしたカードを破壊して更に二枚ドロー!」

 ドローはおまけ……とまではいかないものの、やはりこのデッキのコンボの基点になるのは、マイフェイバリットカードの存在だった。

「破壊したのは《リミッター・ブレイク》! よって、デッキ・手札・墓地から《スピード・ウォリアー》を特殊召喚出来る! デッキから現れろ、マイフェイバリットカード!」

『トアアアアッ!』

 二回目――《ミラクルシンクロフュージョン》に使ったことも数えるならば三回目の登場となったマイフェイバリットカードだが、今回は他の機械戦士への繋ぎ役としての出番だ。

「そしてスピード・ウォリアーをリリースし、《サルベージ・ウォリアー》をアドバンス召喚する!」

サルベージ・ウォリアー
ATK1900
DEF1500

 俺のデッキではかなり珍しいアドバンス召喚時に効果を発揮する機械戦士が、その効果で墓地に向かって網を巻く。

「サルベージ・ウォリアーがアドバンス召喚に成功した時、墓地からチューナーモンスターを特殊召喚出来る! 来い、《ニトロ・シンクロン》!」

 《ニトロ・シンクロン》を網で墓地から引き上げる……シンクロ召喚をサポートするためにあるこの効果を、シンクロ召喚に使わない理由はない。

「レベル5の《サルベージ・ウォリアー》と、レベル2の《ニトロ・シンクロン》をチューニング!」

 ニトロ・シンクロンをサルベージした網ごと光の輪になると、サルベージ・ウォリアーがそこに飛び込んでいく。

「集いし刃が、光をも切り裂く剣となる。光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《セブン・ソード・ウォリアー》!」

セブン・ソード・ウォリアー
ATK2300
DEF1800

 七つの剣を持った金色の機械戦士が登場し、エドのフィールドのダークヒーローたちと立ち向かう。
機械戦士たちの中でも、特にヒーロー然としているセブン・ソード・ウォリアーだからこそ、なんだか妙に様になっていた。

「セブン・ソード・ウォリアーに装備魔法《神剣-フェニックスブレード》を装備し、効果発動! 相手ライフに800ダメージを与える! イクイップ・ショット!」

 セブン・ソード・ウォリアーが投げた投げナイフがエドにかすり、ようやくエドに初ダメージを与えることに成功した。

エドLP6000→5200

「バトル! セブン・ソード・ウォリアーで、ダッシュガイに攻撃! セブン・ソード・スラッシュ!」

 七つの剣をフルに活用したセブン・ソード・ウォリアーの剣戟に、たまらずダッシュガイは切り裂かれていた。

エドLP5200→4700

 ようやくまともにダメージを与えられたものの、まだまだ微々たるダメージにしか過ぎず、エドのライフは初期ライフにすら届いていない。

「メインフェイズ2、セブン・ソード・ウォリアーの第二の効果を発動! 装備カードを墓地に送り、相手モンスターを破壊する! 俺は《神剣-フェニックスブレード》を墓地に送り、ドレッドガイを破壊する!」

 ダッシュガイがやられて力を失っていたドレッドガイに、セブン・ソード・ウォリアーからフェニックスブレードが投げられ、その身体を貫いた。

 ダッシュガイとドレッドガイを倒すことが出来たのだから、このターンはこれで上出来だろうか。
……ドレッドガイの巨体が倒れた後に、無傷のドレッドガイとダッシュガイがいなければ、の話だが。

「伏せてあった《デステニー・ミラージュ》を発動した。D-HEROが効果破壊された時、このターンに破壊されたD-HEROを全てセメタリーから特殊召喚する!」

 ……エドは全て俺の一歩先を行っているのか、俺はエドに勝つことは出来ないのか。
このデュエルの今までのターンを振り返ると、自然とそういう結論が出て来てしまう。

「こちらもカードを二枚伏せて、ターンを終了する!」

 それでもまだ、明日香を助けるためならば、エドにギリギリまで食らいついてみせる。

「僕のターン、ドロー! 《D-HERO ダイハードガイ》を召喚!」

D-HERO ダイハードガイ
ATK800
DEF800

 確かD-HEROが破壊された時に、次のスタンバイフェイズ時にその破壊されたD-HEROを特殊召喚するD-HERO、だったか。
そのダイハードガイの召喚によって、ドレッドガイの攻撃力は4300にまで上昇する。

「ダッシュガイのエフェクト発動! ダイハードガイをリリースし、攻撃力を1000ポイントアップさせ、バトル! ドレッドガイでセブン・ソード・ウォリアーに攻撃! プレデター・オブ・ドレッドノート!」

 ――だが、その攻撃力が狙い目だ。

「リバースカード、《パワー・フレーム》を発動! お前の攻撃を無効にする! そしてセブン・ソード・ウォリアーに装備され、攻撃力をドレッドガイと同じにする!」

 ドレッドガイの剛腕を、セブン・ソード・ウォリアーが三つのフレームが付いた剣によって受け止めると、その剣がドレッドガイのパワーを吸い込んでいく。

「セブン・ソード・ウォリアーに装備カードが装備されたため、相手ライフに800ダメージを与える! イクイップ・ショット!」

エドLP4700→3900

 その上装備カードとなるので、セブン・ソード・ウォリアーのバーン効果も発動する。
だがそれは裏を返せば、エドのディバインガイの効果の対象となるということだ。

 ディバインガイの効果の発動には攻撃宣言が必要のため、《パワー・フレーム》を破壊しようとしては自爆特攻をせざるを得ないが……

「……ならば、ディバインガイでセブン・ソード・ウォリアーに攻撃!」

 破壊されても次のスタンバイフェイズで特殊召喚出来るダイハードガイがいるからか、エドはディバインガイによる攻撃を行ってきた。

「攻撃宣言時、ディバインガイの効果発動! お前のフィールドの装備カードとなっている《パワー・フレーム》を破壊し、500ダメージを与える!」

 ディバインガイの背後から放たれる二本の剣に、装備カードとなっているパワー・フレームは破壊されてしまうが、セブン・ソード・ウォリアーは気にせず迎撃の構えをとった。

遊矢LP2900→2400

「迎撃しろ、セブン・ソード・スラッシュ!」

 その七つの剣で応戦したセブン・ソード・ウォリアーだったが、突如としてディバインガイの攻撃力が上がり、七つの剣を突破されてしまう。

「セメタリーから《スキル・サクセサー》を発動! ディバインガイの攻撃力を800ポイントアップさせる!」

 ディバインガイの攻撃力は1600であり、墓地から発動された《スキル・サクセサー》を入れれば攻撃力は2400……対するセブン・ソード・ウォリアーの攻撃力は2300と、まるで何者かに仕組まれたかのようだった。

「こちらも墓地から《シールド・ウォリアー》の効果を発動! セブン・ソード・ウォリアーの破壊を無効にする!」

 しかし、セブン・ソード・ウォリアーの前に盾を持った機械戦士がなんとか割り込み、セブン・ソード・ウォリアーは破壊されずに済んだ。

遊矢LP2400→2300

 互いの墓地まで巻き込んだディバインガイとセブン・ソード・ウォリアーの戦いは、引き分けのようなもので終わったものの、《シールド・ウォリアー》ではその場しのぎにしかならないのは解っていた。

「ダッシュガイでセブン・ソード・ウォリアーに攻撃! ライトニング・ストライク!」

 ダッシュガイの高速の一突きにセブン・ソード・ウォリアーは左胸を突かれ、そのままセブン・ソード・ウォリアーは墓地に送られる。

遊矢LP2300→1500

「僕はこれで、ターンを終了する」

「俺のターン、ドロー!」

 俺はデュエルの結果において、斎王の良く言っている未来だの運命が関わっていることは信じていない。
そんな陳腐な言葉でデュエルの結果すら支配されることなど、絶対に認められやしない。

「俺は《愚かな埋葬》を発動! デッキから《シンクロン・キーパー》を墓地に送る!」

 そんな俺の思いがデッキに伝わったのかどうかは解らないが、今引いた魔法カードをデュエル・ディスクに差し込み、盛大な一撃を入れるための下準備とした。

「そして、墓地の《シンクロン・キーパー》の効果を発動! このカードとチューナーモンスターを除外することで、シンクロモンスターを特殊召喚出来る!」

 盛大な一撃を与えるというのだから、もちろんシンクロ召喚……いや、特殊召喚するのは悪魔のような形相をした機械戦士。
シンクロ召喚の口上はないものの、俺のエクストラデッキから《ニトロ・ウォリアー》がこのフィールドに君臨した。

ニトロ・ウォリアー
ATK2800
DEF1400

 俺の手札はもう残り二枚しかなく、そのカードも魔法カードではないのでニトロ・ウォリアーの攻撃力アップは……出来る。

「墓地の《神剣-フェニックスブレード》の効果を発動! 戦士族モンスター二体を除外し、このカードを手札に加える。そして、ニトロ・ウォリアーに装備する!」

 神剣-フェニックスブレードの真髄とも言えるサルベージ効果を使用し、ニトロ・ウォリアーに神剣-フェニックスブレードを装備するとともに、これでニトロ・ウォリアーは最大火力が出せる。

 そして魔法カードではない俺の手札は、やはりこのカード……!

「俺は《スピード・ウォリアー》を召喚! 来てくれ、マイフェイバリットカード!」

『トアアアアッ!』

 俺のフィールドにはニトロ・ウォリアーとスピード・ウォリアー、エドのフィールドにはドレッドガイとディバインガイ、守備表示のダッシュガイにリバースカードが一枚。

「行くぞエド! ニトロ・ウォリアーで、ディバインガイに攻撃! ダイナマイト・ナックル!」

 神剣-フェニックスブレードと自身の効果による最大火力により、今のニトロ・ウォリアーの攻撃力は4100という脅威の数値。

「手札から《D-HERO ダガーガイ》を捨てることで、攻撃力が800ポイントアップする!」

 フィールドにいるD-HEROたち全員に、ダガーガイが持っている短剣が託され――若干《ガントレット・ウォリアー》に似ていなくもない――攻撃力を800ポイントずつ上げるが、ニトロ・ウォリアーは意に介せずにディバインガイを破壊した。

「ぐあっ……!」

エドLP3900→2200

 エドのライフに初のクリーンヒットが入るが、ニトロ・ウォリアーの攻撃はまだ終わらない。

「ニトロ・ウォリアーは、相手モンスターを戦闘破壊した時、相手の守備モンスターを攻撃表示にして再び戦闘出来る! ダイナマイト・インパクト!」

 標的が破壊したディバインガイから、そのデメリット効果で守備表示になっていたダッシュガイに移り、攻撃表示にした後にラッシュによる攻撃で破壊した。

エドLP2200→1900

 ニトロ・ウォリアーの攻撃力上昇は一度のみで、二回目の攻撃の際には上昇しないのが少し悔やまれた。

「そして、スピード・ウォリアーは召喚したターン、攻撃力が倍になる! ドレッドガイに攻撃しろ、ソニック・エッジ!」

「《ガード・ブロック》を発動し、戦闘ダメージを0にしてカードを一枚ドローする」

 ダガーガイとガード・ブロックに阻まれ、エドのライフを0にすることは出来なかったものの、これでエドのフィールドはがら空きとなった。

「ターンエンドだ……!」

「僕のターン、ドロー!」

 一体だけ守備表示ではスピード・ウォリアーとニトロ・ウォリアーは容易く突破し、二体壁にすればダイナマイト・インパクトを発動し、スピード・ウォリアーを攻撃してもニトロ・ウォリアーには適わない……エドは何をするのだろうか。

「セメタリーのダッシュガイのエフェクトを発動! ドローしたモンスターを特殊召喚出来る! カモン、《D-HERO ダークエンジェル》!」

D-HERO ダークエンジェル
ATK0
DEF0

 純白の翼とダークヒーロー然としたボディという、矛盾した姿をしたD-HEROが特殊召喚されたが……攻撃力・守備力は0。

 エドがまだ出していない上級モンスターは、《D-HERO ダブルガイ》のみだが、リリース要因であろうか?
確かに、ダブルガイの被破壊時のトークン精製機能ならば、スピード・ウォリアーとニトロ・ウォリアーに対する壁にはなるだろうが。

「さらにセメタリーの《D-HERO ディアボリックガイ》のエフェクト発動! このカードを除外し、デッキからディアボリックガイを特殊召喚する!」

D-HERO ディアボリックガイ
ATK800
DEF800

 エドはやはり最上級モンスターの召喚を狙っているのか、通常召喚権を使わずに二体のモンスターの特殊召喚を成功させる。

「さらに《D-HERO ドゥームガイ》を召喚」

D-HERO ドゥームガイ
ATK1000
DEF1000

 まだ見ぬD-HEROの最上級モンスターの登場かとも思ったが、通常召喚権を使用して召喚されたのは下級モンスターのドゥームガイ……だが、嫌な予感がする。

 そう、エドが狙っている切り札が墓地に眠るドグマガイと同じ召喚条件ならば、この状況からでも特殊召喚が可能なのだから……!

「行くぞ遊矢、ファイナルターンだ! 三体のD-HEROをリリースし、現れろ究極のD! 《D-HERO BlooD》!」

 三体のD-HEROがリリースされた場所から召喚されたのは、最初は真っ赤な血の塊のようなものだった。
それが徐々に徐々に人型へと近づいていき……最終的には、どこか蒼みがかった化物のようなダークヒーローが姿を現していた。

D-HERO BlooD
ATK1900
DEF800

「究極のD……!?」

「そうだ。僕はこのカードで斎王を元に戻す! BlooDのエフェクト発動! 相手モンスターを一体装備カードとしてBlooDに装備し、そのモンスターの攻撃力の半分攻撃力を上昇させる! ニトロ・ウォリアーを装備しろ、クラプティー・ブラッド!」

 ニトロ・ウォリアーがどこかから現れた血液に捕まると、かの《サクリファイス》のようにBlooDへと囚われてしまう。
究極と呼ばれる割にはそのステータスはあまりにも低かったが、なるほどそういうことか……!

「バトル! BlooDでスピード・ウォリアーに攻撃! ブラッディ・フィアーズ!」

 BlooDの血で創られたかぎづめがスピード・ウォリアーに襲いかかるが、それより一瞬速く俺のリバースカードが発動した。

「リバースカード、オープン! 《エクサス・サモン》! 自分フィールドのモンスターが攻撃された時、そのカードを手札に戻すことで、戻したモンスターより攻撃力が低いモンスターを攻撃表示で特殊召喚する!」

 ただ闇雲に使っただけではただの自滅になってしまうが、スピード・ウォリアーを手札に戻して召喚されたモンスターは、この状況を託すに相応しいカードだった。

「スピード・ウォリアーを手札に戻し、来い! 《マッシブ・ウォリアー》!」

マッシブ・ウォリアー
ATK500
DEF1200

 一度だけ戦闘では破壊されず、戦闘ダメージも0にしてくれる要塞の機械戦士がマイフェイバリットに代わりBlooDの前に立つ。
いくら攻撃力が高かろうと、俺にダメージを与えられないのでは意味がない。

「……ファイナルターンと言った筈だ、遊矢。運命は変わらない」

 エドの無慈悲な宣告と共に、マッシブ・ウォリアーが大地に沈んでいく……俺フィールドの大地全てが、BlooDの発した血によって沈められていく……!

「BlooDは、相手モンスターのエフェクトを全て無効にする……終わりだ! ブラッディ・フィアーズ!」

「うっ……うわああああっ!」

遊矢LP1500→0

 ――デュエルは決着した。
俺の敗北という最悪の形で、だが。

「……悪いが、これは僕の役目だ」

 エドはうなだれている俺から、ジェネックス参加資格のメダルと斎王から託された光の鍵を持っていく。

「僕のデュエルは、父さんの作ったD-HEROが最強だと証明するのが目的だ。……お前の目的は何なんだ、遊矢」

 最後にエドはそれだけ言ってデュエル場から出て行くと、後はこちらを一瞥もせずに五階堂と共にホワイト寮へと向かっていく……斎王に、会いに行くのだろう。

 そして俺は幾多の友人との約束であったジェネックスのメダルと、明日香を助けるための手がかりを失うこととなった……

 
 

 
後書き
VS、エド戦。
ちょっとした都合上、彼は原作より早くDDにたどり着いていますので、BlooDを持っています。

では、感想・アドバイスをお願いします。 
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