IS<インフィニット・ストラトス> ‐Blessed Wings‐
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第一章 『交差』 ‐暴風の竜騎兵と紅の姫君‐
第4話 『触れ合う心』
――『相手の心を理解する、互いに分かり合うというのは非常に難しい』
そんな事が簡単に出来てしまえば、きっと争いは発生しないし人も死なない。
しかし『誰もが分かり合えて、争いもすれ違いも無い世界』そんな世界はきっと――『悪夢』でしかないのだろう。
争い、憎みあう。だけど――分かり合おうともする。そんな世界こそが、世界のあるべき姿ではないだろうか。
一人の暴風の竜を従えた少年と、迷い戸惑い続ける不器用な少女。二人の心が触れ合い、相手を知ろうとする――
そてまた、『太陽の少女』も二人に関わっていくことになる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あれから数日後――俺とアリアは互いの戦闘での傷は完全に回復していた。
そして、自宅でニュースやテレビ、インターネットで情報を見ているが――やはり動きがあった。
ISでの戦闘があった、人が死んでいるのが発見された、『軍用』ISが使用された という直接的なニュースは無かったが
"フランス公害の森で爆発事故、自然発火による山火事か?それとも放火か?"
"郊外の森にできた謎のクレーター 宇宙人との交信"
"行方不明事件――郊外での森で進展か?"
とりあえず、俺とアリアが関わったあの一件について報道されるのは、マスコミがあること無いことを書いているだけだった。
恐らくマスコミに対してはフランス政府や軍部が何かしらの規制を掛けているんだろうが――フランス政府自体や多くの組織は、既に嗅ぎつけている可能性は高いだろう。
インターネットの掲示板サイトや情報を見ても、やはり書かれているのは直接関係無いことばかり――どこにも『ISが使用された』や『男性操縦者』という言葉は無かった。
数日が経過して、俺が安心したことがあった。
それは――アリアの生活能力だ。
アリアは今まで『エージェントとして殺しを生計にしてきた』と言っていたから生活能力や常識に乏しいのでは、と思っていたが…
驚いたのが、アリアの家事スキルだ。俺とエディさんが分業で食事を作ったり家事をしている事を知ると
「私も手伝うよ、ユウとエディさんにはお世話になりっぱなしだから」
と言ってきたのだ。
最初は、嫌な予感がしたのだが――それは見事に外れた。
それどころか、彼女の料理は凄くおいしいし、他の家事だってしっかりできる。
正直…俺は家事や料理スキルについてはそれなりの自信があったのだが――アリアに次元の違いを見せつけられて、半分心が折れそうになった。
また、一般常識についてもアリアはしっかりしており――日常生活レベルではまったく問題にはならなかった。
ここで再認識したのが、『アリアは自分の表現の仕方が不器用だっただけ』という事だ。
そして今日、家には俺とアリア二人だけ。エディさんはフランス空軍の『大佐』という立場なので、軍の仕事に向かった。ちなみに俺は、『負傷した』という理由で仕事は休みになっている。
数日前に話し合った結果、俺とアリアは明日――『ネクスト・インダストリー社』に赴き、社長である『レオン・ハルベルト』と会談――そこで企業への所属書類と手続きをする予定だ。
あの日、俺とアリアが殺し合いをした後すぐにこの予定を組まなかったことには理由がある。
まず、俺達の体調と傷を考えてだ。もし動けないなどの自体が発生した場合、この話はごちゃごちゃになることになる。
そして、アリアの精神状態――最も、問題は無かったが当初は彼女自身の精神状態等が心配されたから。
最後に、これが大きい理由だったらしいが…数日間俺とアリアに休みをやりたかったそうだ。
そして数日間、俺はアリアと過ごす事で幾つか分かってきたことがある。
アリアは確かに『殺人』を生計にしていただけあってか――感情の表現や言葉の表し方、物事に対する考え方や理解が『一般常識』という面から見ると変な部分がある。
例えば――彼女があの時言っていた『殺すことでしか自分を表現できない』というのがそれだ。
自分をどう表現したらいいかわからない、自分の感情や気持ちを、相手にどうやって伝えたらいいかわからない――コミュニケーション能力の欠落ではなく、『歪み』。それが彼女をああしたのだろう。
今まで『殺すことでしか何かを見れなかった』彼女は、俺に撃墜されて、俺が『生きろ』といった事で――変化があったんじゃないかとも俺は思う。
数日間、俺はアリアと過ごし買い物に出かけたり、話をしたりするが――見ている限りでは本当に普通の女の子だ。
嬉しい時は本当に嬉しそうに笑うし、怒る時は怒る。
彼女は『変わり者』なだけなのだ、俺は少なくとも――そう判断した。
明日、『ネクスト・インダストリー社』への訪問を控えた俺とアリアが今日どうしているかと言えば――
「ユウー、買ってきた食材と飲み物冷蔵庫に入れておくけど、生魚は冷凍庫でいいのー? エディさん別の方法で保存してたと思うんだけど…」
それまで先日の一件についてパソコンで調べていた俺は、キッチンでゴソゴソとしているアリアの方を向くと
「あー…それは置いといてくれ、今俺がやるから」
と、返答するとノートパソコンを閉じて立ち上がる。
前日にして俺達がやっている事。それは――買出しや冷蔵庫の整理、ごく普通の生活でやることだった。
というより、当初の予定が色んな意味でいい方向に傾きすぎて、今このような状態になっているというのがある。
当初はアリアの『俺にトラウマを植えつけたあの発言』等があったせいで、彼女の知識や常識不足を真っ先に俺は疑った。エディさんも俺ほどではないにしても、やはり疑うものはあったようだ――
しかし、俺とエディさんのそんな不安をよそに、『一般常識と生活』という面では問題ないどころか、完璧に近いものをアリアは持っていた。
なので、数日掛けてアリアに『一般常識を教え込むか?』という案は無かった事になり、こうしてごく普通の生活を送っている。
「これでよし――あの魚で全部か?」
「うん、あれで最後かな――それでユウ、今日はどうするの?」
俺は あー… と呟きながら少し迷う。
今日は確かに、予定がある――だけど、お世辞にも彼女を連れて堂々と行けるような予定ではない。
だが、ちゃんとした理由も無いのに彼女を家に一人置き去りにする訳にもいかない――仕方ない
「一応、俺の予定だけど…あるんだ」
「ユウの予定? 私に出来ることだったら手伝うよ?」
純粋な善意を向けてくれるのは嬉しい、だけど…その――
「あ、いや――買出しとか買い物とかじゃないんだ、その――墓参り、でさ」
「…誰かの、お墓参り?」
そう、色々あって忘れそうになっていたが――今日は命日だ。
――俺の、父親である『月代久人』と母親である『アリス・ルノー』が死んだとされる日だ。
命日といっても、正確な命日ではない――あの事件、『白騎士事件』が原因で発生した『海上軍施設壊滅事件』その事件自体がもみ消され、『作られた別の事情』で亡くなったとされる日――それが今日だ
何故自分の両親が死ななければならなかったのか、そして――何よりも事実を隠蔽した篠ノ之 束に対しての憎悪とやりきれない思いは、長い年月が経過しても消えなかった。
だが命日は命日だ――毎年欠かさず、俺は両親の墓参りをしていた。今年はアリアの事や、ISの事、色んな事がありすぎて忘れそうになっていたが…
「あー…うん、そうだな――俺の両親の命日なんだ、今日は…」
俺は誤魔化すように苦笑しながらアリアに言ったが、彼女は複雑そうな表情で
「その…ゴメン、ユウ」
「なんで謝るんだ。まあ――俺の予定があるっていってたのはそれだよ、墓参りって奴だ――なんなら、ウチで待ってるか?来ても楽しいことなんてないし」
「えっと、その――私も一緒に行かせて貰ってもいいかな?」
そんな言葉が出るとは思ってもいなかったので、俺は驚いた。
「ただの墓参りだぞ?――楽しいことなんて本当何一つないぞ」
「うん、分かってる――だけどね、ユウの大事な人、なんでしょ?」
真剣な目で俺を見て、アリアは問いかけてきた。
アリア自身にも、何か考える事があったのか――じっ…と俺の目を見てきた。
「そうだな――俺の両親、だからな――」
「…私も、『あの時』パパもママも死んじゃったから――ユウの気持ちは少しは分かる――だから、その…」
その先の言葉を俺は言わせなかった。わざわざ彼女に――辛い言葉を吐かせる必要なんてないと思ったから 俺は『あー』と言うと
「よし…じゃあ行くか。どうせ墓参りしたら買出しとかあるし、アリアにも手伝ってもらうか」
出来るだけ、辛い表情を見せないように俺は笑顔を作り、アリアに向けた。
ちゃんと笑えていたのか、彼女はそれを見ると
「うん――!」
と笑顔を返してくれた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺とアリアは、家を出る支度をして車庫においてある車に乗り込んだ。
一応――俺は運転免許を持っている。アリアもエージェントとしての活動に必要だったらしく持っているらしいが、今回は俺が運転することにした。
生活スキルは完璧、更に運転免許持ちで他にもまだ色々ありそうで…色々と俺の中のプライドがズタボロになっていく――流石に、アリアにこれだけのスキル見せ付けられると…うん…
そんなどうでもいいような事で俺が心の中でへこたれている事など、アリアは知る余地もないし知らなくてもいいと思った。
さて…俺の両親の墓、といっても――遺骨も何も無くて、ただ形式上の名前があるだけの墓はフランスのある町外れにある。
自然に囲まれた、静かな集合墓地。そこに俺の両親の墓はある。
墓に添えるための花は――『白いアネモネ』にした。
買う時アリアに
「どうして、白のアネモネなの?」
と聞かれた。
理由は単純で――
「アリア、アネモネの花言葉って知ってるか?」
「…ゴメン、花言葉とか私全く知らない」
苦笑して、俺は答えた
「アネモネの花言葉は幾つかあるけど――その中の1つが、『可能性』って言葉なんだ」
そうして、思い出されるのは――過去だった。
――『悠、アネモネの花言葉の1つは『可能性』。例えどんな状況でも、どんな困難や絶望でも可能性が必ず存在する――それを信じる限り、人は決して人ではなくならない。おっと…子供の悠には難しすぎたか?』
――『こら、久人――悠には難しすぎる話よ、それは。そうね…悠、このアネモネはね、お母さんが大好きな花なのよ。お父さんがプロポーズする時に、白いアネモネと指輪を持ってきてくれてね…』
――『ア、アリス!?その話は――』
――『ふふっ、悠――お父さんも言ってたけど絶対に諦めちゃ駄目よ、必ず…可能性というものは存在しているのだから』
幼い頃、まだ小さかった俺に対しての両親の言葉。それを俺は――ハッキリと覚えている。
『可能性』を信じる限り、人は人であり続けられる。未来を切り開ける――だから、俺個人としてもこの花は好きだった。
「それと、うちの母さんが好きだったんだ――アネモネって花」
「…そっか、綺麗な花――だよね」
「ああ、そうだな――」
気を使ってくれたのか、そこで言葉を切ったアリアは無言で俺の左手を握った。
そんな小さな気遣いが、俺には――凄く有難く思えた。きっとこれ以上昔の話をしてしまうと、彼女の前で泣いてしまいそうだったから。
そんなやり取りが、少し前にあった。
車を走らせて暫く目的の集合墓地に着いた。
車を近くの駐車場に停めると、アリアと共に車を降りる。
俺は右手に白のアネモネの花束を持つと、墓地の中へと歩き出した。
そして――少し歩いて、目的の場所に着いた。
「…これが、ユウの両親のお墓?」
「ああ、ここが――そうだよ」
目の前の墓には、自身の両親の名前――月代久人とアリス・ルノーの名前が刻まれていた。
「ただいま、父さん、母さん――今年も来たよ」
墓の前でそう呟くと、俺は持ってきていた花束を添える。
「ごめん、今年は危うく来るの忘れるところだったよ――色んな事があってさ、それで、これからもっと大変なことになって、もしかしたらこれまでみたいに毎年これなくなる可能性もあるんだ」
目の前が――いや、目が熱くなって、視界がぼやけそうになる。
だけど俺は、それを堪えて
「…ユウ」
心配そうにアリアが声を掛けてくるが、「大丈夫」と言って無理にまた笑顔を作る。
「だからさ、来れなくなるかもしれないけど――でも俺、頑張るからさ。エディさんも元気だし、今も『夢』に向かって頑張ってるよ――色々やることはできたけど、でも…俺は元気だから」
辛くて、後悔が押し寄せてきて、泣きそうになるのを堪えて……俺は続けた
「色んな報告があるんだ、ほら、小さい頃によく遊んだアレックスがさ、結婚して、子供ができてさ――メールで子供の写真送付しては自慢して来るんだぜ?まったく、親馬鹿だよなアイツ」
「ユウ…」
「あの気が強かったリニスが、今じゃ保育士だぜ?よく勤務先の前通ると、アイツ――昔の気が強かったリニスじゃなくて、子供達に笑顔で楽しそうに接してるんだ、人って、変わるよな」
「やめて…」
「それからさ、俺は――俺は、何一つ変われてないよ。ハハ――『夢』は諦めてないけど、まるであの時から時間が止まったみたいで――」
「もうやめて、ユウッ!」
後ろに居て、墓前で俺が話すのを見ていたアリアがいきなり大きな声を上げた。
「アリ、ア――?」
いきなり大声を上げた彼女に驚く。どうしたのだろうか?
「今のユウを見てると――辛くなるよ、私も…私もパパとママを失ったから、だからその辛さは分かるよ――でも、今のユウは、私が言える事じゃないのかもしれないけど凄く儚くて、壊れそうで――無理してる」
何言ってるんだ、俺は無理なんてしてない。そうさ――ただ、毎年やってるみたいに、近況を墓の前で話そうとしてるだけで
「何言って…俺は――無理なんてしてないぞ?」
「じゃあ、じゃあなんで今ユウは――『泣いてるの』?」
泣いてる?何を言って――あれ、俺は――ッ…
気がつくと、目の前に居るはずのアリアが霞んで見えていた。
自身の右手で涙腺に触れると、そこには――涙があった
「…ああ、そうか。俺は――」
「ユウ…私も、私も数日前にユウに墜とされるまでは、『殺す』事でしか自分を表現できなかった――でも、そんな私に変わるチャンスと生きる『希望』、可能性をくれたのは――ユウだよ?」
アリアは、そのまま俺の前に歩み寄る。こうすると、かなり身長差があるのがよく分かる。
俺を見上げる形になった彼女は、俺を見ると
「…ユウのお陰で変われた私だから言えるよ、今のユウは――自分で無理して、偽って、自分の心を殺そうとしてる――そうだよ、まるで…ユウに墜とされる前の私みたいに」
あぁ――そうか、俺は無理してたんだな…
彼女の前でみっともない所見せたくないと思って見栄張って。
情けない、彼女に対してあの時あんな大言吐いたのに、俺は――
そして今までも――毎年ここに来ては、『自分を偽ってきた』
そっか、なら――
「…そうだな、偽ってたのは俺の方か――無理して、自分を壊して、サンキュ…アリアの言葉で目、覚めた」
「ユウ…うん、良かった」
俺は今度こそ、純粋な笑みをアリアに向けると涙を拭い
「――父さん、母さん、大事な話があるんだ。俺と――彼女、『アリア・ローレンス』って言うんだけどさ、今度…IS乗りとして企業に所属するよ」
不思議と、紡ぐ言葉に迷いは無くて――気持ちが軽くて――
「変な話だろ?『男』である俺がIS動かして、それでこれから色んなことがあって、きっと大変なことになって、だから――もしかしたら長いことこれなくなるかもしれない、だけど」
今度こそ、俺は迷いなく自分の言葉を――紡いだ
「俺は『空を愛し続けるよ』――『空を護るよ』 だからさ、見てて欲しい――」
きっと、自分じゃ気がつけなかったと思う――今日この場に、アリアが居なければ――もしアリアと自分が出会わなければ、きっと俺は毎年のように自分を偽り続けただろう。
だから、そんな自分に気がついてくれて、それを指摘してくれたアリアに――心の中で感謝した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
墓参りを終えて、俺とアリアは来た道を戻っていた。
「…ゴメン、余計なことしたかな」
ふと、足を止めてアリアが言った
「――いや、そんな事ないさ。きっとアリアが言ってくれなきゃ、俺はずっと…自分に嘘ついたままだったから、だからアリアに感謝することはあっても、アリアが謝ることなんて何も無いよ」
「ん…なら、良かった――それでもう帰る?」
「そうだな、もう夕方過ぎだし――って、あれ?」
ふと、先程まで居た集合墓地、そこに―― 一人の少女の姿が見えた
「…ユウ?」
「いや――アリア、あれ…」
俺は集合墓地の中を歩いていく、一人の女の子を指差して
しかもその女の子は、周りをキョロキョロと見渡している。まるで――何かを警戒するみたいに
「もう夕方過ぎだぞ?そんな時間に―― 一人でこんな場所出歩くか?」
「…最近物騒だからね、ちょっと心配かな?」
まあアリアのように自分の身は自分で守れるほど強ければ話は別なんだろうけど…恐らくだが――あの少女はどう見ても、一般人だ。
それに、あの『仕草』も気になるところではある。
「一応俺…これからどうなるかは分からないけどまだフランスの平和を護る空軍パイロットだしなぁ…」
「普通、その台詞は言うにしても警察とか陸軍の人が言う台詞じゃないの?――確かに、不安ではあるけど…それに――あの子、何か警戒してるし」
アリアもそれに気がついたのか、指摘してくる。
俺はそのまま、踵を返すと集合墓地の方向に戻り始める
「声掛けるの?」
「ああ、やっぱり心配だからな――余計なお節介だったらそれはそれで、そのまま帰ればいい」
「ん…了解。じゃあ行こうか」
そのまま集合墓地に戻り、先程の少女を探す――すると、目的の少女はすぐ見つかった。
ある墓石の前で、その彼女はただ、佇んでいた。
――とても悲しそうで、辛そうな表情をして、ただ墓石の前で佇んでいた。
そんな彼女を見て、何かしら思うものはあったが意を決して
「――こんにちわ、こんな時間にお一人ですか?」
俺が歩み寄り声を掛けるとその少女は ビクッ と身体を震わせた
「あ、え――えっと…」
「あー…失礼、俺はフランス空軍所属の『月代悠』って言う者だけど――で、こっちはうちの知り合いの『アリア・ローレンス』」
名乗り終えると、俺は身分証とドッグタグを見せる
「えっと、フランス空軍の方達がどうして私に声を…?」
「いや、俺達は墓参りの帰りだったんだけど…こんな時間に一人で集合墓地を出歩いてたもんだから、どうしたのかと思って――最近色々物騒でしょ?ほら、こないだの郊外の行方不明事件とか――色々あるもんだから」
すると彼女は「なるほど」と言うと
「ああ、それは――」
彼女が何かしらの言葉を放とうとした時だった
「ユウッ!」
「ッ――!」
周りの森の奥と集合墓地の出入り口から全員で3人の黒服の男達がこちらに向かって歩いてきたのだ
――おいおいまさか、俺とアリアの事がもうバレたのか? クソッ…もしそうなら、一般人のこの子も居るしアリアのISも迂闊には使えない…『俺の存在自体知られると不味い』という事もある――不味いぞこれ
「何だよ、あんた等――」
俺とアリアはいつでも動けるようにアイコンタクトをする――とりあえず、こいつ等の目的が俺とアリアなら、何らかの方法でこの場を離脱して逃げる。
だが、俺の心配を他所に、黒服の男の一人は俺に言い放った
「何だお前達は?どこの誰かは知らんが、お前たちには関係ないことだ、さあ―― 一緒にお戻りください、お父上も心配されていますよ?」
そして、黒服の男が言った
「――シャルロットお嬢様?」
――『翼を得た少年』の心に触れて、自身も変わった『紅の姫君』 そして 彼女の優しさに触れて、自分の過ちに気がついた少年。
そうやって、二人は分かり合い、変わっていく。ひたすら足掻き続け、迷い続け――どれだけの絶望や苦難が待ち受けようと、『それでも』と言って変わり続ける。
――そうして二人は出会う…『太陽の少女』と。後に二人に大きく関わることになる少女に、二人はこの時初めて出会った。
『暴風の竜を従えた少年』と『紅の姫君』と出会った事で『太陽の少女』の運命は、どう変わるのか――
二人の運命と、彼女――『シャルロット・デュノア』の運命が、交差した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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