リリカルなのは~優しき狂王~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三十六話~手紙~
前書き
前回の文字量がかなり多かったので今回は少なめです。
今更ですが一話分の長さはどのくらいがいいですか?
感想欄にその辺りの希望を書いていただけるとありがたいです。
では本編どうぞm(_ _)m
???
機動六課の一同は辺り一面が暗い中、ライの過去を見ている間は認識できなかった自分の体を確認し、そして視線を自分たちとは少し離れた位置に立っている人物に向ける。
そこに立っている女性はライの過去に度々出てきた女性、そしてルルーシュにギアスを与えた魔女、C.C.である。自分に視線が集まったことに気付いたのか彼女は話し出す。
「お前たちが今のライにとっての守りたい存在か?」
その質問には誰も頷くことができなかった。なぜなら、今の自分たちはライに大切にされる資格があるのか分からなかったからだ。
返事に困る彼女たちを見ていたC.C.は呆れ顔で一つため息をつくと再び口を開く。
「まぁ、それはいいとして、これから見せるのはゼロレクイエムの後にあの世界がどうなったかの記録だ」
C.C.のその一言に全員が反応する。そんな彼女たちを無視し、C.C.は彼女たちにゼロレクイエムによって造られた世界を見せる。
その世界はライが望んでいた平和があり、笑顔があり、皆が明日という未来に向かって歩いていた。
そしてライについての真実を知った一部の人間は彼を想い、涙を流していた。しかしそこで立ち止まることだけはなかった。
その映像を全て見終わるのを確認したC.C.は彼女たちに忠告を送る。
「一つ言っておく。今、見たものは絶対にアイツには伝えるな」
彼女の言う“アイツ”というのが誰であるのかは、そこにいる誰もがすぐにわかった。そしてC.C.はどこか憂いを帯びた表情で彼女たちに最後の言葉を残す。
「アイツを……ライを好きになれとは言わない。だが……せめてアイツを許してやってくれ」
その言葉を聞き終えると同時に彼女たちの視界は再び暗転した。
機動六課・食堂
彼女たちの視界が戻るとそこは、ライの過去を見る前にいた食堂であった。時間を確認すると、過去の記憶を見始めてから十分ほどしか経っていなかった。
そして意識が戻ると同時、彼女たちは様々な反応を見せる。涙を流す者、悲しい表情を浮かべる者、どこかバツの悪い顔をする者。そして、そんな中一番暗い表情をしていたのはライであった。
彼は何かを諦めているようにも、全てを受け入れているようにも見える表情をしていた。ライは未だに感慨に耽っている彼女たちに言葉を投げかける。
「僕をこれからどうしたいのかは、貴方たちで決めてくれて構わない。僕は逃げないし、逆らわない」
そこで一旦言葉を切るとライは食堂から退室しようとする。そして食堂の入り口辺りで立ち止まると再び口を開く。
「僕は屋上にいます。話し合って結果が出たら教えてください」
それだけ言うとライは今度こそ食堂から姿を消した。
ライが退室した後、しばらくは沈黙が続いたが部隊長であるはやてが代表するように言葉を発した。
「みんな、今のを見てライ君に思うところは色々あるかもしれん。せやけど彼の過去を知った上で聞くで?」
そこで一旦言葉を切り、はやてはその場にいる全員に視線を向ける。
「彼のことをこれからも、うちらの仲間として受け入れられる?」
その質問の答えはすぐに出ることとなった。
機動六課・隊舎屋上
ライは食堂を出るときに言った通り屋上に来ていた。
ライは屋上の手すりに手を置き、どこかに焦点を合わせることもなくボンヤリと風景に視線を向けていた。時折吹く風は夜ということもあり少し冷たく、緊張で上がっていた体温を冷ましていく。
海に面した場所にある機動六課の隊舎には、風に磯の香りが混じっている。その香りを感じたとき、ライはどうしても元の世界のダモクレスでの戦闘を思い出してしまう。
「………ダメだな」
自嘲気味にそう呟いた後、頭を振り過去の光景を振り払おうとする。
元の世界で自分たちが人の進む明日を求めておきながら、自分が過去にばかり目を向けていることに内心嫌悪感を覚える。しかしそれは人にとっては当たり前のことであるが今のライはそれに気付くことはできなかった。
何気なく視線を上げるとそこにはミットチルダの月が浮かんでいた。月は今も夜を照らしそして人にその美しさを示している。その存在するだけで夜という闇の中で人を導く光を生み出す存在にほんの少しだけライは羨望を抱いた。
ライはその月を眺めながら、ポケットに入れてある桜の折り紙に触れる。そしてそれと同時に屋上の出入り口が開く音が響く。
ライが振り向くとそこにいたのは、なのは、フェイト、はやての3人。そしてフェイトの手には蒼月とパラディンが乗っていた。
「決めた?」
ライは静かに、無感動にそう尋ねる。その声は感情を感じさせないものであったが、無表情であるはずのライの顔が彼女たち3人には泣くのを我慢している子供のように見えた。
ライの質問に返答を返すことをせずにフェイトがライに近づく。それを見てライは思う。
(……やはり受け入れられなかった、か)
フェイトが執務官であるからこそ、自分を重罪人として拘束するのだとライは予想する。
ライの目の前で立ち止まり、自分の手が掴まれた時点でライは自分の予想が当たっていたと確信する。だがその考えはすぐに否定される。
フェイトは握ったライの手の平に蒼月とパラディンの2機を置く。ライは何故自分にデバイスを渡すのか本当にわからなかった。呆然とした表情で目の前の3人の顔を見るとその表情は笑顔であった。
「………どう…して……」
何に対する質問なのか、それは言った本人にもわからない。だが、3人には特にそんなことも関係なくライのその質問に対する回答を答える。
「これからもよろしく」
それはなのはがライと出会った時と同じ笑顔。しかしあの時とは意味の違う、ライという人間を立場や境遇とは関係なしに受け入れる笑顔。
「あの時、私がライに言った言葉は今も変わらないよ。だから素直に自分の気持ちを言ってもいいんだよ」
その言葉はライを支えようとするためのフェイトの言葉。ライの抱える重荷を軽くするためにフェイトが考えた精一杯の言葉。
「ライは自分を傷つけるやり方しか知らんのやったら、これからは私らが教えたるよ」
そう言ってはやてはライの手を握る。その握手はライを導こうとするもの。ライと同じように自分を犠牲にした家族がいたはやてにとっての誓いにもなる握手。
「でも僕にそんな資格は―――」
「マスター」
ライが言葉を遮るように発言したのは蒼月であった。
「差し出がましいのですが、マスターが持っている折り紙の中身を確認してください」
ライは最初なぜこのタイミングで蒼月がそんなことを言うのかわからなかったが、一旦はやての手を離し、言われた通りに桜の折り紙を分解する。その中を覗くと蒼月の伝えたいことの意味を瞬時に理解する。
桜の折り紙の中には拙い文字で短い文章が書かれていた。
『あなたが幸せになれることを祈ります。
あなたの優しい微笑みが失われない事を願っています。
N・R』
その文章を読み終える頃には、ライの瞳からは止めどない涙が溢れていた。ライはその手紙の送り主をすぐに理解していた。
その送り主である彼女はあえて、ライと出会った時のイニシャルを使っていた。
ポタリとライの涙が折り紙の上に落ち、そのすぐにでも破れてしまいそうな紙を濡らす。しかしライの涙は止まらない。それどころか涙の量は増えていき、とうとうライはその場に膝をつき必死に嗚咽を噛み殺し、涙を止めようとする。
そのライに3人は歩み寄り、優しくライを抱きしめた。3人から伝わってくる温もりを感じ、ライは泣き始める。そんなライを3人はライが泣き止むまで抱きしめていた。
なのはは思う。ライが自分と似ている、と。ライの前で泣く前、自分が泣かないようにしていた頃の自分とライが元の世界にいたときの彼。全てを抱え込み、他人のために自分が行動する。自惚れでもなく、ただ事実として彼女はそう考えた。
そしてそれが他人に対して不安を与えることなのだということも理解できた。何故なら今自分達の腕の中で泣いている、他人の前で泣くことができたライに安心することができたのだから。
(私もまだまだだな~)
これまで教導官として色々な人間を見てきたと思い込んでいた自分に自己嫌悪していたなのはが、ふと顔を上げると自分と同じく何かを考えるような2人の親友の顔が見えた。
その彼女たちの表情が安心したような表情をしていることに気付いた彼女は思った。
(フェイトちゃんとはやてちゃんにも、ちゃんと私の気持ちを伝えないと)
ライの前で泣いたことでそう考えられるようになったのだと気付き、なのはは心の中でライに感謝の言葉を送った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ミ「今回のギアス代表、ミレイ・アッシュフォードです」
は「リリなの代表の八神はやてです」
ミ・は「「いや~~、それにしても――」」
ラ「………………」
ミ「今回のライはなんかかわいいわね~」
は「今回のライはなんやかわえーな~」
ラ「………2人とも今回は勘弁して」(上目遣い&涙目)
ミ・は((なにこの小動物――))
ミ(いじくり倒したい)
は(慰めたりしたげたい)
ミ・は「「……ん?」」
ラ「……今回は特に質問もないので、次回予告です。次回は今回の騒動の発端になったティアナのことが中心になるらしいです。では次回もよろしくお願いします」
ミ「だ・か・ら、いじくる方が私たちも楽しいじゃない!!」
は「それやと旗がたたんやん!ここは年上として慰めるっちゅう選択がベストや!!」
ラ「………帰ろ」
後書き
ご意見・ご感想をお願いします。
ページ上へ戻る