リリカルなのは~優しき狂王~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三十五話~R2・ゼロレクイエム~
前書き
更新遅れてスイマセン
そして今回の文章のできは正直な話、イマイチだと思います。ですが、これ以上過去編を続けるのは読者の皆様も嫌だと思ったので、詰め込ませていただきました。なので今回は一万字を軽く超えるという馬鹿っぷりです。
マジでごめんなさいm(_ _;)m
そんなワケですが本編どうぞ
目の前に広がるのは半径数キロのクレーター。それはたった一発の兵器によってなされた傷跡。東京決戦の終結の証とも言えるそれをブリタニア軍も黒の騎士団も呆然と眺めていた。
そんな中、ルルーシュはその場にいる黒の騎士団の全員にナナリーの捜索を命じる。その時の彼は狂気に駆られた表情をしていた。その剣幕に圧倒されていた部下たちであったが、そのルルーシュの命令にライはストップをかけた。
「今のゼロの指示を聞く必要はない。全軍、撤退だ」
「ライ、貴様!」
噛み付いてくるルルーシュをジェレミアとロロに任せ、ライは生き残った黒の騎士団を連れてその場を撤退するのであった。
撤退が完了し、ナナリーを失ったショックから抜け殻のようになっているルルーシュに代わりライは部隊の再編成のための指示を出し始める。そしてそれから間もなく、黒の騎士団の旗艦である『斑鳩』にブリタニアの宰相であるシュナイゼルが訪れる。
そして会談の場を要求してきた彼らに対し、今は出席できる状態ではないゼロに代わり、ライが黒の騎士団側の代表として出席することになる。そのことについて反対するものはいなかった。それほどにライという存在は黒の騎士団内で大きくなっていたのである。
会談が始まり、シュナイゼルは自分が用意した手札として、ルルーシュとスザクの2人の密会の際の音声データ。更には斑鳩で再開したコーネリアから聞いたギアスについての情報を開示し、そしてゼロの正体がブリタニアの王子であることを告げる。そしてブリタニア側は東京決戦が始まる際にフレイヤの警告をゼロに行っていたが、それを部下に知らせてはいなかったことも指摘してくる。
会談に出席していたライ以外の黒の騎士団のメンバーは驚愕し、そしてゼロに対する疑念を強くしていた。そんな彼らにシュナイゼルは問いかける。
「彼を……ルルーシュを我々に引き渡していただけますね?」
「断る」
どこか確認するようなその問いにライは無表情で即答した。これには周りの黒の騎士団の幹部も驚く。そんな彼らを見向きもせずにライは言葉を紡ぐ。
「こちらが必要としているのは、“ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという正体を持っているゼロ”ではない。黒の騎士団のトップを務めるだけの能力を持っている彼を必要としている。そんな要求を聞く気はない」
ライのその言葉に一瞬だけシュナイゼルが面白そうなものを見る目でライを見るがその表情はすぐに消える。ライの言葉にブリタニア側ではなく黒の騎士団側が異を唱えたのだ。
その場で恐らく、一番ゼロに対して不満を持っているといっても過言ではない人物である扇要がライに言う。
「待ってくれ!彼は自分の都合で俺たちを利用し、そして行政特区でも!」
ブラックリベリオンの原因となった、ユーフェミアによる日本人の虐殺がルルーシュのギアスが原因であることを告げられていた。しかしライは冷めた目で扇を見ながら反論する。
「指揮官として人を道具のように使うのは当たり前だ。そしてギアスについての証拠も全てブリタニアが用意したものだ。今の技術ならいくらでも偽造できるものばかりの、な」
ライの指摘に一瞬言葉につまるが扇はゼロに対する不満を消せないのか更に言葉を重ねる。
「だが、今回の戦闘でも彼はフレイヤ弾頭のことを!」
「敵がいきなり『新兵器を持っているから降伏しろ』と言われて降伏するのか?」
「それは――」
「僕たちがしているのは喧嘩でもテロでもない。戦争をしているんだ。その覚悟が無いのなら、僕らは日本奪還を目指すべきではなかった」
「「「「………」」」」
ライの言葉に黒の騎士団の幹部の面々は苦い表情を浮かべる。ライはそんな彼らを失望と侮蔑の感情を乗せた視線を向けた。
そんなライに今度はコーネリアが口を開く。
「貴様の言い分はわかった。だがユフィの虐殺について、私は引く気はない。あれは我が妹のしたことではないと断言できる」
強い意志を込めてライを睨むコーネリア。だがそんな彼女の熱意も今のライには届かない。
「それが?」
「な、に?」
ライのその素っ気ない反応にコーネリアは思わず聞き返してしまう。
「ユーフェミアの行った虐殺の原因がギアスということが認められたことで、今更何になる?どちらにしても彼女が日本人を虐殺したという事実は変わらない。そんなことを証明するために貴方は総督という責務を放り出し、自分勝手に動いていたのか?」
「貴様ッ!」
「日本人を虐殺してきたブリタニアの皇族が1人増えただけの話だ。更に言わせてもらえば、ユーフェミアはギアスにかかっていたかもしれないがその時のブリタニアの兵士はどうだ?」
「ッ!」
「その時、彼女の命令を疑問に思うこともなく引き金を引いていた兵士がいなかったと?」
ライの言葉に今度こそ、その会談は沈黙を迎えた。自分に全く反論しなくなった彼らに呆れながらライは最後に言葉を残し退室しようとする。
「こんな会議は、する必要も価値もなかった。ゼロをどうにかしたいのならすればいい。僕は黒の騎士団を抜けさせてもらう」
ライの最後の言葉に黒の騎士団の幹部たちは驚く。そして退室しようとするライの肩を掴み扇がライを引き止めようとする。
「ま、待ってくれ!君にはこれから――」
「ゼロの代わりをしろ、と?」
見下すような視線でライは問いかける。ライのその問いかけになんとか頷いて返す扇であったが、それ見たライは目を細めはっきりとした拒絶の意を現す。
「断る。俺が黒の騎士団にいるのはゼロの為だ。そのゼロを信じないお前たちに“駒として利用される”つもりはない」
最大限の皮肉を込めてライは『駒として利用される』という部分を殊更強調して言う。それが気に障ったのか扇は怒りをぶつけるように叫ぶ。
「君こそ!彼にギアスで従わされている被害者じゃないのか!!」
そう言われた瞬間、ライは肩に乗っている彼の手を掴み地面に彼を叩きつけた。その拍子に骨が砕けるような音がしたがライはそんなこと気にする事もなかった。
「……僕がこの組織にいるのもここまでだ」
ライが殺気と敵意を充満させながらそう言うが、その場のほとんどのものがも反応できない。そしてライは退室し、その瞬間ライは黒の騎士団を見限った。
そんなライを見ていた六課メンバーは初めて見たと言ってもいい、ライの冷たい一面を見てショックを受けていた。
ライが会談に出席していた頃、ルルーシュはロロに怒りと本音をぶつけていた。ルルーシュにとって、ロロはナナリーの居場所を奪い、そしてシャーリーを殺した張本人であるためその怒りは激しかった。
ルルーシュの本音を知ったロロは呆然としながらルルーシュの部屋を出て行く。そんなロロの前に会談を終えたライが現れる。呆然とするロロを見て、何があったのか察したライはそれでも会談でルルーシュの正体がバレたことや、黒の騎士団のメンバーがこれからルルーシュをどうするかを説明する。
「そんな事を今更僕に言って何になるんです?僕は兄に……ルルーシュに拒絶されたんですよ?」
「ルルーシュにとって君は偽りの家族だった。だが、君にとってはどうなんだ?」
「……」
最後にそれだけ言い残し、ライは斑鳩から降りていった。
それから数分後、黒の騎士団の幹部一同は総意としてゼロの捕縛を決定し捉えようとする。しかしその現場に蜃気楼に乗るロロが介入。ロロはギアスを多用しルルーシュを脱出させることに成功する。
だがロロの対象の体感時間を止めるギアスの副作用として、ギアスを発動している間は自らの心臓も止めてしまう。その為、ギアスの長時間の使用によりロロは死亡する。最後の彼はルルーシュを守り、助けられたことと、拒絶されたとしても最後まで家族としてのルルーシュを信じた笑顔を浮かべて安らかな死に顔であった。
ルルーシュはそんなロロを最後は自慢の弟であると認め彼を見送った。ロロの遺体を逃げた先にあった海岸沿いの一角に埋葬し、その上に簡素ではあるが墓を立てるルルーシュ。今の彼は全てを失った代わりに、背負った命に報いるために最後まで足掻くことを決意する覚悟が宿っていた。
そんなルルーシュの背後から斑鳩を降りたライが近づいてくる。そしてライはルルーシュに告げる。
「行くのか?」
「ああ」
東京決戦の最中、ブリタニア本国から皇帝シャルルが日本に向かっているという情報を2人は耳にしていた。しかし、皇帝が戦場に訪れることがなかったため、2人は彼が神根島にある遺跡を訪れているという確信に近い予測をしていた。
そして2人は決着をつけるために動き出す。
2人が動き出していた頃、スザクはフレイヤの爆心地跡で壊れたように笑い声を上げていた。そして笑い終えると彼は感情が抜け落ちたような、どこか決意をしたような、そんな危険な表情をしていた。
旗艦アヴァロンに戻ったスザクはその場にいたシュナイゼルに告げる。自分が今まで拘っていた方法論は間違っていた、と。
そして重要なことは結果であると、今までの自分と決別するようにスザクは告げる。
それを見ていた機動六課の面々はショックを受けた。この世界でどんな結果になっても方法を間違えないようにしていたスザクがここに来て、その信念を曲げるような事を言ったのだ。これまでの過去を見て、彼の心が決して弱くないことを知っていた彼女たちには、スザクのような人間がここまで変わらなければならないほど、この世界は追い詰められているのかと感じた。
スザクは告げる。自分がナイトオブワンになり、エリア11を平和にして世界を変える。その目的の為、スザクをナイトオブワンに任命する新しい皇帝が必要であることを。そしてそれにシュナイゼルがなるために、王の責務を果たしていない現皇帝を殺害することを。
時を同じくして、記憶を失くしたC.C.はある人物と再会し記憶を取り戻していた。C.C.が再会した人物とは、ルルーシュの母親であるマリアンヌであった。彼女もギアスを持っており、そのギアスは人の心を渡るという能力であった。そのギアスを使い、彼女はアーニャの精神に潜んでいたのである。
アーニャの肉体を一時的に支配した彼女はそのままC.C.に接触し、彼女の記憶の失う前の意識を引きずり出したのだ。
彼女たちもそのまま神根島に向かい、すべての決着をつけようとしていた。
そして、ルルーシュ、ライ、スザク、シャルル、マリアンヌ、そしてC.C.が神根島の神殿を通しCの世界で邂逅する。その場にライがいることにスザクは驚くが今はそのことに気を割く程の余裕をスザクは持っていなかった。
ルルーシュとライとスザクは知る。シャルルとマリアンヌの2人がCの世界を利用し『嘘のない世界』を作ろうとしていることを。この2人はCの世界に存在する集合無意識を解放し、生きている人間も死んだ人間も関係なく意識を繋げることで相手の真意を知ることができる、そんな世界を2人は作ろうとしていた。
その目的を2人が話し終えると同時にCの世界の集合無意識に思考エレベーターが接続される。しかしそれと同時にライが頭を抑え苦しみ出す。
「ぐ、がああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
その雄叫びのような苦しみ方に動揺したルルーシュはシャルルに叫ぶ。
「一体何をした!?」
ルルーシュの言葉に答えたのはC.C.であった。
「ライはある意味最もCの世界に接続されていた人間だ。だから、この中で一番この世界の影響を受けているんだろう…」
「ッ!つまり、ライは今集合無意識の中に存在する無限とも言える意識が流れ込んでいるということか!」
C.C.の説明に納得したルルーシュは一歩前に踏み出しシャルル達を否定した。その求める世界を否定する、と。その際、スザクは小声でルルーシュに問う。
「ルルーシュ、君はどうして世界を変えようとした?」
「くだらないことを聞くな。俺はナナリーのために――」
「ナナリーを言い訳に使うのか?」
「ッ……そうだな、俺は俺が守りたいと思うすべてのもののために戦ってきた」
その言葉はルルーシュの決意の現れでもあった。誰かの為に行動を起こす。それは確かに美しく聞こえるかもしれない。だが、結局は誰かの為にした行動というのは、その想っている相手にも自分と同じものを背負わせるということなのだから。
それを理解したルルーシュはある意味過去の自分と決別したのだ。自分が望んだ世界を作るために行動を起こしてきた、と。
故にルルーシュは自分の求める世界のためにシャルル達の求めた世界を否定した。自分達にとっての幸せだった昨日を求めることは、明日という未来を、新たなる幸福を求めるための歩みを止めることになるのだと。そして、既に思考エレベーターが接続されている為、ルルーシュには何もできないと思っていたシャルルの余裕も崩れることになる。
『ギアス』
呪いにも似たその力がこの場ではある意味この世界での希望に変わった。
「時の歩みを止めないでくれ!!」
ルルーシュは叫ぶ。そんなルルーシュを止めようとマリアンヌが動こうとするが、そんな彼女をスザクが止める。
「こんなことはユフィも望んではいなかった!」
「貴方にはユーフェミアに会わせてあげようと思っているのに!」
「それを押しつけと言うんだ!!」
スザクもまた、シャルル達の願いを否定する。
そして今も痛み続ける頭に顔を顰めながらライも叫ぶ。
「貴様達の求める世界は確かに幸せがあるのかもしれない。だが、幸せだけでは人は生きることはできない。その場に立ち止まり、先を見なくなった臆病者が押し付けるような理想という名の独り善がりを語るな」
ライはそれだけ言うとルルーシュと同じくギアスを使う。それはルルーシュと同じ願い。
「集合無意識よ!僕たちは明日を望む!」
ライとルルーシュのギアスは聞き届けられ、思考エレベーターの破壊という結果をもたらした。それに愕然とするシャルルとマリアンヌは更にCの世界に飲み込まれるよう体が崩れていく。2人はそこで、自分達の計画に賛同していたはずのC.C.は影響を受けていないことに気がつき疑問を覚える。その彼らの心底不思議そうな表情が癪に障ったのかライが2人に言い放つ。
「自分達の想いしか優先できず、そして自分が好きなだけの貴様たちと彼女を一緒にするな」
「違うわ、私たちはルルーシュやナナリーのことだって――」
マリアンヌが言葉を続けようとしたがそれを遮るようにルルーシュは問いかける。
「お前たちは知っているのか、ナナリーの笑顔の意味を?」
「笑顔?」
「ナナリーは目も見えず、歩くこともできない。だからこそ、世界には自分ひとりではできないことがあると知っていたんだ。そんな彼女の笑顔はせめてもの他人に対する感謝の気持ちなんだ。」
「そのようなまやかしこそ――」
「それを嘘だとは言わせない!言わせてなるものか!」
「他人を好きになれず、自分の描いた理想しか愛せない貴様たちにはわからない」
ライの最後の言葉を聞き、2人は消滅する。残された4人の内C.C.が問いかける。
「これからどうするんだ?」
その問いかけの答えは一ヶ月後に示されることになる。
一ヶ月後、全世界に向けてある発表がブリタニア帝国の帝都から発せられる。それは皇帝陛下からの発表ということで、その場にはシャルル・ジ・ブリタニアが現れると誰もが予測していた。しかしそこに現れたのは2人の学生服を纏った少年。ライとルルーシュであった。そして全世界に向けライは宣言する。
「第98代シャルル・ジ・ブリタニアは私が殺した。よって次の第99代ブリタニア皇帝は私、ライ・ズィ・ブリタニアが受け継ぐ!」
その放送を見ていた世界の人々は困惑する。一度ブリタニアの皇族が2人を捉えようと兵士が動き出すが、その兵士を新たにその場に現れたスザクがなぎ倒す。そしてその後、スザクはラウンズを超えるラウンズとしてナイトオブゼロの称号を与え、ルルーシュには宰相の地位を与えたことを公言した。
最後に、ルルーシュがギアスを使い言い放つ。
「我らを認めよ!」
その一言で大国であるブリタニア帝国は十代の少年3人のものとなった。
そのいきなりの展開に六課メンバーは唖然とする。自分達と特に年齢の変わらない3人の少年が世界の三分の一を所有する大国を手に入れたのだから。そして現時点で彼女たちはまだ、ライ達の本心を知らなかった。
ライが皇帝になってから、ブリタニアは大きく変えられていく。ナンバーズの解放、貴族制度の廃止、財閥の解体等。これまでのブリタニアのあり方を全て否定するように中から変えられるものは全て変えていく。その行いに世界は皇帝ライを認めようとしていた。
そんなある日、前皇帝シャルルに仕えているナイトオブワンをはじめとする反抗勢力がライに牙を向く。
その勢力にはナイトオブワン以外のラウンズも何名か含まれており、その直属の部下も彼らに従う形でその戦列に参加していた。その精鋭はある意味、東京決戦時のブリタニア側の戦力に負けるとも劣らないものであった。
その精鋭に対し、ライの陣営が迎撃に向かわせたのはたった2機のナイトメアであった。その2機は出撃と同時に敵部隊を圧倒していく。そしてそれはラウンズも例外ではなく、ナイトオブワンを残し全ての敵機を掃討する。
その2機はどちらも背中に光り輝く翼を広げている。それに見覚えのあった六課のフォワード陣の内、フェイトがポツリと呟く。
「……パラディン…」
2機の内の1機である、ランスロット・アルビオンはライが制作したデバイスであるパラディンの展開状態にそっくりであった。
ランスロット・アルビオンに搭乗するのはスザクである。その機体はスザクの能力を十全に発揮するために造られた彼専用の機体である。コンセプトは『最高の機動性』であった。
そしてもう1機の方は、ランスロットに酷似している機体。その機体とランスロット・アルビオンとの違いは背部に装備されているエナジーウイングにある。アルビオンの方に装備されているものは一対六翼に対し、その機体の翼は紅蓮と同じく一対八翼であった。そしてカラーリングは白を基調とし、所々に蒼いパーツが取り付けられていた。
その機体のパイロットはライ・ズィ・ブリタニア。そしてその機体の名称はインペリアル。ライがラクシャータに依頼していた機体を回収し、ランスロットを生み出したロイドとセシルによって完成した機体。そしてライのパイロットとしてのスペックを最大限引き出すことができる機体であった。
戦闘はスザクとナイトオブワンの一騎打ちになる。未来を読むギアスを持つナイトオブワンに当初は苦戦するスザクであったが、自分の持つ『生きる』というギアスの効果を逆手に取り、自分の持つ能力を最大限発揮することでスザクはナイトオブワンを討ち取る。
そのギアスを利用できるほどの精神力を持つスザクにはライもルルーシュも驚いていた。
戦闘が終了すると同時にライは再び、世界に向けてあることを発表する。
『ブリタニアの超合集国への参加』
それを聞いた人々は再び驚くことになった。
そしてブリタニアの参加についての会談当日、ライは超合集国側の案内役としてのカレンに言う。
「少し緊張していてね。ちょっと寄り道しても?」
その要求に答えたカレンはライと2人きりなる。そしてそれと同時に彼女は自分の気持ちを語りだす。
自分がルルーシュとライに感謝していること
ルルーシュやギアスの存在が自分を混乱させたこと
今、自分の知らないところでライたちが何をしようとしているのか知りたいという本音
それらを包み隠さずカレンは沈黙を続けるライに語った。そして最後にライに振り返り彼女は言い放つ。
「ライ、貴方は私をどう思っているの?」
「……」
その質問にライは沈黙をもって答えた。カレンは一瞬その反応に悲しみの表情を見せるがライの顔を優しく掴むと自分の顔を近づけ唇を合わせた。
数秒間の口づけ。それを終えるとカレンは弱々しく呟く。
「ライ、私はあなたのことが好きだった………」
その言葉を言い終えるとカレンは案内役としての表情に戻り、歩みを進める。その彼女の背中を見ながらライは彼女に聞こえないように呟いた。
「カレン、さよなら……」
その後、予定通り会議は開かれることになった。始めは大人しい様子のライであったが、超合集国側の要求としてブリタニアの発言権の条件を出した瞬間、ライは誰もが予想しなかった行動をとる。ライはある人物に通信で指示を出す。その人物とはスザクであった。
指示を受けた彼はそのまま会談の会場にランスロットで突入してくる。そしてライを守るようにその場で武装を構える。それをどこか満足そうに見ているライが言葉を発する。
「ブリタニアが超合集国に参加する際、発言権は通常の国と同じ扱いにしてもらおう」
この会談で問題になっていたのは、ブリタニアが超合集国に参加するとブリタニアの議員が超合衆国の政治に参加する議員の過半数を超えてしまう為、実質的にブリタニアの支配になってしまうということであった。
そして今現在、脅しにも似たやり口でそれを合法化しようとするライにその場にいた人々はライに恐怖を覚えた。
六課のメンバーはそんなライに失望と悲しみを感じる。これまでのライの姿を見て来て、彼らの中ではライを疑う感情がほぼ無くなっていた。そんな時にこの光景を見てしまった為、その落胆も大きなものであった。特にライに疑念を抱いて人たちはその感情が強く、最初の頃よりも、ライに対する嫌悪感が増していた。
ライの思惑通りに会議が終わりを迎える思われたとき、ある情報がライの元に届けられる。それは帝都ペンドラゴンの消失。その原因はシュナイゼルが回収したフレイヤ弾頭であった。
うやむやになった会談をあとにしたライは通信でシュナイゼルと対峙する。シュナイゼルはフレイヤ弾頭を脅しにライに降伏を迫る。しかしライはそれを拒み問いかける。
「ならば、誰がブリタニアを統治する?私が相応しくないと言うのなら、自らの方が相応しいと?」
『違うね、間違っているよ。君のように狂った行動をとる狂王でも僕のような人間でもない。皇帝に相応しいのは“彼女”だ』
シュナイゼルのその言葉とともに現れたのはルルーシュの妹にしてライにとっても大事な存在、ナナリー・ヴィ・ブリタニアであった。
東京決戦で死んだと思われた彼女の登場にライは動揺する。そして動揺するライにナナリーは告げる。
『お初にお目にかかります、ライ陛下。そしてお兄様、スザクさん。私は貴方達の敵です』
ハッキリとそう宣言した彼女の言葉に答えたのはライではなくルルーシュであった。ナナリーはルルーシュに自分がゼロのこともギアスのことも知っていると告げ、これまでの行いは全て自分のためにしたのかと問う。ナナリーは今までの兄の行動を知ってなお、自分が知る優しい兄を信じようとした。だがルルーシュはそんな彼女をあざ笑うように一蹴し、自分達の前に立ちはだかるのなら容赦はしないという言葉を最後にルルーシュはその通信を切った。
そのルルーシュの態度にライは驚く。ナナリーはルルーシュにとっての行動の基盤になっていたのだ。ライはそんな彼女に対してルルーシュが彼女を拒絶するような態度をとるとは思えなかったのだ。
驚いた表情のライにルルーシュは言う。
「ライ、お前は前を見て進め。迷うことも振り返ることもしなくていい」
ルルーシュは覚悟を決めた表情でライにそう語った。
ブリタニア本国に戻ったライは自室で、ナナリーと折った桜の折り紙を手に目をつむって何かを想っていた。
そこにC.C.が入ってくる。ベッドに座っているライの背中にもたれる様にC.C.もベッドに座る。しばらく無言が続くが唐突にC.C.が言葉を紡ぐ。
「ナナリーとルルーシュを戦わせるのが辛いか?」
「……」
「この世界の基盤になっているとも言える、かつてのブリタニアを築いた自分が憎いか?」
「……」
「手放さなくてはならない命が悲しいか?」
「……」
C.C.はライの本音を言い当てていく。そしてこれまで背中合わせであったライの正面に回り込み、C.C.はライの頭を優しく包むように抱いた。
「ルルーシュも覚悟を決めたんだ。お前だけが全てを背負おうとするな」
「でも…あの2人は……」
「お前が思っているほどルルーシュもナナリーも弱くはないぞ」
「……」
それでも浮かない表情を浮かべるライにC.C.は問いかける。
「あの時、お前は“最後まで求め続けろ”と言ったな?」
その問いかけにライは頷きで答える。
「なら、お前も私に何かを求めろ」
「ぇ……」
「私になにかを求めろと言ったのはお前だろう。言った本人が何も求めようとしないのは不公平だ」
そのC.C.の不器用ではあるが暖かい優しさを感じたライはC.C.の背中に手を回し、少しの間涙を流した。
それから数日後、世界の今後を左右する最大規模の戦いが始まろうとしていた。
その舞台は日本の富士周辺。そこにはライが率いるブリタニア軍、シュナイゼルが所有する空中要塞ダモクレスと黒の騎士団を筆頭とする超合集国部隊の連合軍の2つの戦力に分かれていた。
この戦いでこの世界の命運が決まる。その場にいる誰もが、そして六課のメンバーもそれを確信していた。
そして先端は開かれる。ブリタニア軍はライとスザクの2人が敵を圧倒し、更にはルルーシュの指揮により戦局も有利に運ぶ。
超合集国側も黒の騎士団を筆頭に善戦するが、この世界での最強の一角とも言えるライが少数規模の戦力で彼らを抑え、その善戦も長くは続かなかった。この大規模な戦闘の全体指揮をとる能力はライよりもルルーシュの方が上である。しかし、中隊や小隊規模の指揮ならばライはルルーシュに負けない能力を持っている。だからこそ、ライは黒の騎士団を抑えきることに成功していた。
ブリタニア軍の攻撃が激化してきた頃、ダモクレスにいるシュナイゼルはフレイヤ弾頭の使用を決める。そしてその発射装置はナナリーが所持し、その引き金は彼女が引いていた。
戦場にフレイヤの光が瞬く。その光が生まれ消える度に多くの命が消えていく。その光景を見ていたはやては恐怖を覚える。なぜなら、規模だけで言えば同じことを自分ができてしまうことに気付いたからだ。もちろん、リミッターを外さなければできないことではあるのだが、それでも非殺傷設定さえ解除してしまえば、自分はこれと同じことが出来ると一度考えてしまうと自分の持つ力の大きさに恐怖した。
状況は進む。フレイヤの存在で既に戦略が意味をなさない戦場でライ、ルルーシュ、スザクは勝利のために行動する。
そして起死回生の一手としてルルーシュはある兵器を使用する。それはフレイヤを無効化する兵器、フレイヤエリミネーターであった。それの使用には約19秒の間に環境データを打ち込み、フレイヤの発動後コンマ04秒の間にそのフレイヤエリミネーターを打ち出されたフレイヤに打ち込まなければならないという、普通に考えれば不可能なものであった。
だが、ルルーシュとスザクはそれを見事に成し遂げ、その一瞬の隙を突きライとルルーシュとスザクはダモクレス内部に突入する。
そのダモクレス内部で、スザクはカレンとの、ルルーシュはシュナイゼルとの決着を付けることになる。
スザクとカレンの一騎打ち。それはこれまで見てきたナイトメアの戦闘の最高峰の戦い。遠目からは光の線にしか見えないような攻防。そして一撃一撃が必殺といっても過言ではない攻撃をお互いに捌き、交わし、さらに打ち込む。それを幾度も繰り返す。そして最後に生き残ったのはカレンであった。紅蓮はボロボロになりながらもパイロットであるカレンだけは守りきり、そしてランスロットは大破し爆散する。
ルルーシュはシュナイゼルの思考を読み、録画した映像を流し、シュナイゼルがそれに気を取られている間に彼にギアスをかける。その内容は「ゼロに仕えろ」というものであった。
それを見ていた機動六課のメンバーはもう幾度目になるのかわからないほどの驚きをみせる。今の自分たちには絶対にできない方法をやってのけるルルーシュと、自分たちでは及びもつかないであろうドッグファイトを繰り広げるスザクとカレン。そして六課メンバーはその3人に追随できる能力を持つライを遠くに感じた。
その頃、ライはナナリーの元に訪れていた。そして対面した彼女は光を取り戻しその水色の瞳に力強い意志を宿し、ライを正面から見つめる。そしてその手にはフレイヤの発射装置であるダモクレスの鍵があった。
「…このダモクレスの鍵が目的ですか?ブリタニア皇帝…いえ、狂王、ライ・ズィ・ブリタニア」
「それが分かっているのなら、それをこちらに渡してもらおう。それは貴方には必要のない物だ」
光を取り戻したナナリーの瞳に冷たい瞳を宿した皇帝としてのライを写す。ライはナナリーが光を取り戻していたことに若干動揺するがそれもすぐになりを潜めていた。
「あなたはこの世界をどのように導くおつもりですか?」
「それは貴方の考えている予想通りだろう……」
「なら、貴方は他人を利用し世界を縛るおつもりですか?…お兄様やスザクさんのように」
ナナリーはこんな状況でも自分の兄や親友のことを信じていた。そして彼女はライがあの2人を自分のために利用しているのだと考えていた。
「私はお兄様やスザクさん達と平和に暮らせれば、それで幸せでした。しかし、お兄様がゼロとして立ち上がり、戦いを起こしてしまいました。そしてそのまま戦い続けていれば、今この場にいたのは貴方ではなくお兄様でしたでしょう。」
「なにが言いたい?」
「貴方はお兄様と同じくギアスを持っているのではないですか?」
「……」
「そして、その力でお兄様達を欺き、今の地位を手に入れた」
「そうだとしたら?」
「私は貴方を許すことができない。その行為は卑劣なのです。人の心を捻じ曲げ、尊厳を踏みにじるギアスは」
「ならその力を行使したルルーシュはどうなる?」
「お兄様の罪は私が背負います」
「……」
「そして、このダモクレスを憎しみの象徴とするのです」
「憎しみをここに集めるのです。皆で明日を迎えるために」
ナナリーは自分の本心を語る。そこには今までの彼女とは違い、全てを背負い切る覚悟があった。ナナリーの考えと覚悟を確認したライはギアスを使う。
「ライ・ズィ・ブリタニアが命じる。ダモクレスの鍵を渡せ!」
そして、ライはナナリーからダモクレスの鍵を受け取る。その際、ライはナナリーの手にダモクレスの鍵と一緒に握られているものに気付く。それはライの記憶を失う前にナナリーがライと一緒に折った、桜の折り紙であった。それを見たとき、ライは一瞬複雑な表情をするがすぐに皇帝としての表情に戻す。
ギアスの効果が切れたナナリーはライに向かって侮蔑の言葉を叩きつける。
「貴方は!世界と人を狂わし!全てを壊そうとする!その先に、何も残らないということも分からずに!」
立ち去ろうとするライにナナリーは罵倒を浴びせ続ける。ナナリーに背を向けるライの表情には悲しみが浮かんでいた。
そしてその場をあとにしたライは通信機を取り出し、部下にルルーシュを捕らえるように指示を出す。
それを聞いた六課メンバーは今度こそ、ライの考えがわからなくなった。
ダモクレスとそこに搭載されたフレイヤを掌握したライは事実上、世界を手に入れたも同然であった。
最後の戦いから2ヶ月後。日本ではあるパレードが行われていた。それは先の戦争での戦勝パレードであり、黒の騎士団を始めとする現皇帝ライに対する反乱分子の処刑パレードでもあった。その反乱分子の中にはルルーシュの姿もあった。そしてライは大きな櫓にも見える車両に座り、その反乱分子を見下ろしている。
そのパレードを観覧する市民は一同負の感情を抱えた表情をしていた。いまやライを認める人間はこの世界にはいなかった。
そのパレードの風景にシグナムは既視感を覚えると同時に胸騒ぎを覚える。
パレードが進む中、道の真ん中にある人物が現れる。それは英雄として、奇跡として、記号として扱われてきた存在、『ゼロ』であった。
ゼロは走り出し、護衛のナイトメアや兵士を掻い潜りライの前にたどり着く。そして腰に指していた剣を構える。
「亡霊が!」
ライは懐から銃を取り出すが、すぐさまゼロに弾かれてしまう。
そしてゼロは剣をライの心臓に向けて突き刺す。しかしその瞬間のライの表情は怒りでも憎しみでもなく、安堵と優しさに満ちた笑顔であった。
心臓を刺されているのにも関わらずライはゼロにしか聞こえないように言葉を告げる。
「ありが…とう…スザ…ク……後は……君…と……ルルーシュに……任せら…れる…」
「……ライ」
ライはゼロの正体を知っていた。それはライにとって最も信頼できる親友の二人の内の一人。そして彼は仮面の下で泣いていた。
「これで……僕も…やっと眠ることができる……」
その言葉を聞き、ゼロは剣をライの体から引き抜く。その際に軽く勢いをつけ、櫓のナナリーのいる位置にライが転がるようにする。
ライがナナリーの目の前で倒れる中、ルルーシュは必死に涙を堪えていた。なぜなら未だにナナリーの目には憎しみが宿っており、それをライに向けているのだから。
しかしここでナナリーは気付く、ライの口が少し動いていることを。例え憎むべき相手でも最後の言葉は聞き取るべきであるとナナリーは考え、ライの手を握る。
「あっ……!」
その瞬間、ナナリーはライの記憶を知る。そしてそれは機動六課のメンバーにも見えていた。
彼女たちは知る。3人が計画した『ゼロレクイエム』の全貌を。憎しみをライというわかり易い個人に集め、その後、ライがゼロに殺されることで世界が話し合いというテーブルにつくようにすることを。
計画についての記憶の中で、ライは言う。
「……2人共、ギアスとは願いに似ていないか?」
その言葉に2人が頷くのを確認してから、ライは更に言葉を続ける。
「僕はこの世界の人々のギアスに掛かる。だから、僕は君たちにギアスを送る。この世界を頼む」
その願いを口にした時のライの表情はとても穏やかでそして優しい笑顔であった。
そしてナナリーは更にライの記憶を知り、思い出す。
彼と出会ったこと、
彼と話したこと、
彼と折り紙を折ったこと、
その全てを。
「そ…んな……ライさん?」
ナナリーは再びライを見る。
「……」
しかしライは既に事切れていた。それを知ったナナリーは涙を流し絶叫した。
ここまでの一連の記録を見終え、六課メンバーは呆然とする。彼女たちは涙を流す者、悲しみに目を伏せる者、苦い表情を浮かべる者等様々な反応をしていた。しかしそこには先ほどまであったライに対する嫌悪感は全くなかった。
そんな彼らの視界が急に黒く染まる。再び、なにかが見えたと思った時、そこには1人の女性が立っていた。
緑の長髪に白い拘束衣を着た女性、C.C.がその場に立っていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ラ・ス・シ「「「……………………………………………」」」
ス・シ「「まさかほんとにR2終わらせるとは」」
ラ「2人とも、気持ちは分かるけどまずは自己紹介からしようよ」
シ「むっ、そうか。ライトニング分隊副隊長、烈火の将ことシグナムだ」
ス「あっ、ごめん。枢木スザクです」
ラ「司会役のライです。それで、2人は今回の話で何かコメントは?」
ス・シ「「………削りすぎ」」
ラ(あっ、作者が部屋の隅で体育座りして壁に話しかけてる)
シ「細かいところはしょうがないとして、最終決戦の部分があんなに短いとは」
ス「それに僕とライとの絡みも全くと言っていい程ないし、それにナナリーを優遇しすぎじゃないかな?」
ラ(あっ、今度は泣きながら出て行った………その内帰ってくるかな?)
ス「そう言えば……」
ラ「ん?」
ス「最初の方の扇さんの扱いがやけに酷いんだけど、あれはどうしたの?」
ラ「それは作者からコメントもらっているよ。なんでも『あそこで自分の女を傷付けられたことを怒った原因として明言していたらまだマシだったけど、それを隠して都合の悪いことを全部ルルーシュの責任にしたのが気に食わない』だって」
ス「あ~~……」
シ「どういうことだ?」
ス「扇さんはヴィレッタさんをゼロの正体を知るために一度かくまったんだ。その時点で一度、彼はゼロを裏切っているんだけど、彼はヴィレッタに情が移って彼女のことを愛してしまうんだ」
シ「……なるほど、その後に自分たちはゼロに尽くしてきたのにそのゼロが一方的に自分たちを裏切ったと扇要が断言した。それが作者の癪に触ったのか」
ラ「そうらしいよ」
ス「作者がナナリーに肩入れしているように感じるけど、その辺りは?」
ラ「作者的には僕にとって重要な過去と言えば、ナナリーは切っても切れない存在だからそうなったみたいだよ」
ス・シ「「へぇー」」
ラ「では今回はこの辺で次回もお楽しみに」
ス「あっ、作者が海に向かって何か叫んでる」
ラ「…………………そっとしておこう」
後書き
ご意見・ご感想をお待ちしておりますm(_ _)m
ページ上へ戻る