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ワルキューレ

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第三幕その一


第三幕その一

                  第三幕  父の告別
「ホヨトーーーホーーーー!」
「ホヨトーーーホーーーー!」
 白い岩山の頂上において乙女達の声が木霊する。見ればブリュンヒルテと同じく羽根のある兜に黒い皮の服を身にまとった女達がいた。やはり右手には槍を持ち左手には透き通った水晶を思わせる楯がある。それを手にそれぞれ楽しそうに叫び合い言葉を交えさせている。
「ヘルムヴィーデ、ここよ!」
「ゲルヒルデね!」
「そうよ、私よ!」
 まずはこの二人がいた。
「ここにいらっしゃい!」
「ホヨトーーーホーーーー!ホヨトーーーホーーーー!」
 ヘルムヴィーデがそのゲルヒルデのところに来た。そのうえで二人でまた言い合う。
「ホヨトーーーホーーーー!」
「ホヨトーーーホーーーー!」
 ワルキューレの叫びだ。それを叫んでいると今度は二人来た。
「ホヨトーーーホーーーー!」
「ホヨトーーーホーーーー!」
「ワルトラウテ!」
「それにシュヴェルトライテも!」
「私もいるわよ」
 すぐにもう一人来た。これで五人だった。
「オルトリンデ!」
「貴女も戻って来たのね!」
「ええ、戻って来たわ」
 オルトリンデはにこりと笑って姉妹達に答えた。
「やっとね」
「それでオルトリンデ」
 ワルトラウテが彼女に声をかけてきた。
「貴女が今日ヴァルハラに送ったのは誰なの?」
「ヘーリングのジントールよ」
 彼だというのである。
「彼よ」
「私はイルミングのヴィティヒよ」
 ワルトラウテは彼だというのだ。
「彼を連れて来たわ」
「あら、だったら」
 ゲルヒルデはワルトラウテの今の言葉を聞いて笑いながら言ってきた。
「離れ離れにしないと」
「そうよね、二人は仇敵同士だったから」
「側にいると喧嘩をしてしまうわ」
「皆そこにいるのね」
 また一人来た。
「今日の仕事は終わったの?」
「ええ、ジークルーネ」
「貴女もなのね」
「そうよ」
 ジークルーネも来た。
「終わったわ、今日も多くの英雄が集まったわ」
「ホヨトーーーホーーーー!」
「ホヨトーーーホーーーー!」
 ワルキューレ達はジークルーネの言葉を喜びまた叫ぶ。その手の槍を高々と掲げて。
「後の二人は?」
「ロスヴァイセとグリムヒルデね」
「そうよ、その二人よ」
 彼女達は後二人だと話をしだした。
「何処にいるのかしら」
「あっ、来たわ」
「今戻って来たわ」
 しかしここで何人かが上を見上げて言った。するとすぐに残る二人も来たのだった。
「ホヨトーーーホーーーー!」
「ホヨトーーーホーーーー!」
「ロスヴァイセ!」
「それにグリムヒルテも」
「貴女達は今日一緒だったの?」
「どうだったの?」
 六人が早速今来た二人に対して問うのだった。
「今日は」
「最初は別々だったわ」
「けれど途中で一緒になってね」
「そうだったの」
「それでなの」
「ええ、そうなの」
「それでなの」
 二人はこう姉妹達に答えた。
「それでここに来たのよ」
「二人でね」
「そうだったの。それじゃあ」
「残るはブリュンヒルテだけね」
「あの娘は?」
 ここで八人のワルキューレ達は言い合うのだった。
 
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