鬼の手をもつ男(GS美神の二次)
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第5話 犯罪者に襲い掛かる謎の呪!?下
カチ…カチ…カチ
静かな教会の中で、時計の秒針の音だけが響く。
犯行予定時刻である午前0時まで残り30秒。
緊張のせいか、自然に持っている霊水晶と握っている数珠に力が篭る。
カチ…カチ…
午前0時までのこり3秒。
カチ…カチ
残り、1秒…。
カチ
0!
ピシ!!
「来た!!京介君、頼む!!」
「宇宙天地 與我力量(うちゅうてんち よがりきりょう)
降伏群魔 迎来曙光(こうふくぐんま ごうらいしょこう)
吾人左手 所封百鬼(ごじんさしゅ しょほうひゃっき)
尊我号令 只在此刻(そんがごうれい しざいしこく)!
呪を運ぶ者よ、姿を見せよ!!」
『ギィイイイ!!』
光る霊水晶により、五寸釘を持った下半身のない、痩せこけた老人のような
容姿の呪の精霊が姿を現す。
さすが呪の精霊と呼ばれるだけあって、容姿がとても醜悪だ。
ちなみに呪とは、藁人形などや魔法陣など特殊な道具を使い、召喚した精霊に呪をゆだねて
憎い相手のもとへ運ばせる召喚術の事である。
「京介君!精霊と術者のパスから、犯人の位置を割り出した!!今すぐ向かうよ!」
「はい!!」
術者の位置を割り出し、外へ向かって走り出す先生。
俺も先生の後を追うために走り出す。
☆☆
「見つけたぞ!!」
走る事数十分。
俺と先生は高層ビル屋上で呪を実行している男と離れた所で見学している
見覚えのある少女と一匹を見つけた。
見覚えがあるというか、コンビニで見ていた少女と悪魔じゃん!
俺って本当に変な所で縁があるよな……。
「ふむ…思ったよりも早く来てしまったようだな……。
もう少し掛かると思っていたのだが……帰ったら評価をあらためるとしよう」
「評価を改めてくれるのは嬉しいが……お前をここで逃すわけにはいかない!」
おお!先生が久しぶりにカッコイイぞ!!
もしかして俺、今回は見学でおk?
「京介君!この男は僕が相手をするから、少女の保護を頼む!!」
「はい!」
先生!つまり見学でおkですね?
やる気がみなぎります!
先生のお言葉に元気良く返事をした俺は少女を保護するため、下級悪魔の
様子を窺いながらゆっくりと近づいていく。
「くくく、見習いをベリアルに近づけてくれるとは、ありがたい!
ベリアルよ!冥約条項、第二条!十三項により!!」
『我ニ、十三秒ノ自由ヲ!!』
「へ?」
『キキキキッ!!久しぶりの人間だ!
ぶっ殺した後、じっくり味わってやるから感謝しろよ!!』
男の言葉を聞いた悪魔は本来の姿に戻ったようで、下級悪魔から
かなり強力な悪魔へとクラスチェンジした。
あー……マジですか?
「京介君!」
「おやおや?余所見とは随分と余裕だね。
思わず呪い殺してしまいそうだよ」
「うわっ!?」
先生の声に助けを期待した俺だったが、犯人が邪魔をしたせいで
抱いた期待が無にかえる。
やっぱり俺がやるしかないのか……。
『キキキキキ!!一撃で殺してやるよ、人間!!』
「あーー!!逆に俺がお前を殺ってやんよ、このバケモノめ!!」
やけくそになった俺は自分の顔面に真っ直ぐに飛び込んでくる
悪魔の拳に向かって自分の左手を突き出し、悪魔の拳を捕まえる。
『キキ!?』
「宇宙天地 與我力量(うちゅうてんち よがりきりょう)降伏群魔 迎来曙光(こうふくぐんま ごうらいしょこう)…
我が左手に封じられし鬼よ…今こそ、その力を……示せ!!」
自分の拳を掴まれた事に驚く悪魔を無視して、左手の封印を解く。
すると左手の黒い手袋が吹き飛び、隠されていた左手が姿を現す
『キキキ!?に、人間の手じゃない!!何んだその強烈な霊気は!?』
「はっ!そんな事ぐらい、自分で考えな!!」
グシャァァアアア!!
『キーーーー!!お、俺の手…俺の手がーーー!!』
手が潰された悪魔は自分の潰された右手の手首を左手で掴みながら絶叫し、膝を地に着ける。
今までに感じた事の無い痛みが悪魔を襲っているのだろう、戦いの最中だというのに
奴は隙だらけだ。
俺はそんな悪魔に近づき、鬼の手を悪魔に振りかざし……。
『ま、待って!俺は……もう戦えな…』
「無に……還れ!!!」
『ぎゃ!!?』
命乞いをしようとする悪魔に一切の慈悲も躊躇もなく、俺は奴の頭を
鬼の手で切り裂いた。
鬼の手に切り裂かれ、頭を失った悪魔の体はコンクリートの
地面に倒れた後、砂のような粒子となりこの世から姿を消した。
まるではじめから悪魔なんか居なかったように……。
「そ、そんなバカな!!ベリアルはこの私が一年の歳月を掛けて召喚した上級悪魔
だぞ!!それをあんな簡単に……」
「てい!」
「ぐがっ!!」
「先程の言葉、そっくりそのまま返させてもらうよ」
そして、悪魔がこの世から消滅したところを見て、唖然とした呪術師の後頭部を先生が殴り
気絶させた事により今回の事件は終わりを迎えた……。
☆☆☆
事件が解決して一週間が過ぎた。
呪術師は警察に引き取られ、事件を解決した俺と先生は警察からの感謝と報酬を
もらった。
しかし、一つ問題が発生したのだ。
そう、男の弟子である少女、小笠原エミだ。
彼女自身は事件には一切関与していないことや、まだ幼い少女という事で
取調べと厳重注意ですんだのだが、彼女が家出少女という事が発覚した上に
保護者である叔母の家には帰りたくないと一点張り。
しょうがないと思った警察は叔母に迎えに来るように電話をするが
叔母は少女を迎えに行くことを拒否。
勝手に出て行った子供なんて知らないと言って電話を切ったそうだ。
そしてそんな話を聞いた我等のお人よし先生が黙っているはずもなく……。
彼女を引き取ってしまったのだ!!
別に先生が子供を育てる甲斐性がある人なら俺も問題は無いと思う。
しかし、現実は違う。
先生に甲斐性なんて物はなく俺がいなければ明日のご飯でさえ
食えるかどうか分からない生活をしているのだ。
そんな人間に彼女を預けるわけもなく最終的には……。
「今日からここが君の家になるから、分からない事があったら聞いてね」
「…うん」
俺が引き取る事になりましたとさ……。
後書き
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