消えたソウルフード
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第三章
「勿論俺の店でもな」
「そうよね。コンスタントに売れるし」
「だから駄目だよ。それにしても折角上にゴーサイン貰ったのにな」
話をしてみると上も快諾してくれたのだ。彼等にとっても新しいメニューは商品の売り上げや宣伝にもなってだ。都合のいいことだからである。
だがアメリカ料理、ハンバーガー等以外のものを探すと。これが実にだった。
彼はだ。その店の前を去り街を歩きながらだ。難しい顔でキャシーに言った。
「アメリカ料理って意外にないものだな」
「レパートリーはね」
「まだできて日が浅いしな」
アメリカの歴史の話にもなる。
「だからどうしてもな」
「建国して最初は開拓で」
「で、落ち着いて日が浅くてな」
「それじゃあ料理の種類もね」
「あまりなくて当然か」
「そうなるわね」
「色々な国の料理は食えるけれどな」
移民の国の強みだ。
「フランスもイタリアもスペインもな」
「メキシコもね」
彼等のいるロサンゼルスではメキシコ系も多い。だから尚更だった。
そしてそのメキシコ料理についてもだ。彼はまた述べた。
「美味いことは美味いさ」
「けれど、よね」
「アメリカの料理じゃないからな」
だからだと。また言う彼だった。
「あれも駄目だな」
「とにかくアメリカ料理なのね」
「何かないのか?」
かなり真剣にだ。ブライアンは悩みながらキャシーに述べた。
「アメリカ独自の料理な」
「ファーストフード以外の」
「ステーキなあ」
ついだ。ブライアンはこの定番料理の名前も出した。
「ティーボーンステーキな」
「美味しいし人気もあるけれど」
「高いからな」
ファーストフードと比べてだ。そうだというのだ。
「だからあれはな」
「ハンバーガーショップには出せないわよね」
「ちょっとな。無理があるだろ」
「ステーキサンドなら何とかなるけれどね」
「ティーボーンステーキはな」
それはだ。どうしてもだというのだ。
「無理があるな」
「そうよね。じゃあ本当に」
「こうなったら新しく作るか?」
腕を組み真剣な顔でだ。ブライアンは最後の手段を口にした。
「もうな。一からな」
「創作料理ね」
「なければ創る」
ブライアンは言った。実にアメリカ的に。
「だからな。やってみるか」
「創るのね、新しいアメリカ料理を」
「そうしてみるか」
「創るのも手よね」
「そう思うだろ。俺だってアメリカ人だからな」
「フロンティアよね」
「料理もフロンティアだよ」
ブライアンは胸を張って述べた。やはりここでもアメリカ的だ。
「だからだよ。やってみるか」
「ううん、じゃあ私も協力させてもらうわ」
「そうしてくれるか。それにしてもな」
「それにしても?」
「腹減ったな」
不意にだ。彼はロスの街を歩き回っていてだ。空腹を感じたのだ。丁度二人はアフリカ系が多い場所に来ていた。周りには彼等と同じ肌の者が行き来している。
無論ヨーロッパ系やアジア系、ヒスパニックもいるがやはりアフリカ系が半分位いる。その中でだ。
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