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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第75話 邪悪なる光、打ち砕け!偉大な勇者よ

「やったな! 大介さん」
 ベガ大王親衛隊の襲撃を見事切り抜けた後の甲児がそう告げた。その言葉に大介は笑みを浮かべて返してくれた。
「有り難う。こうしてあいつらに勝てたのも、皆のお陰だよ」
「へへっ、よせやい。改めてそう言われると何かくすぐったいぜ」
 自分の事で褒められたと思っているのか、鼻を擦りながら嬉しそうな甲児であった。
 現在、戦闘を終えた一同は一路宇宙科学研究所に来ていた。戦闘後の修復、及び点検作業を行う為だ。
 幸い、破損したのはスペイザーのみであり、そのスペイザーの修復も間も無く完了する手筈となっている。
「ねぇねぇ甲児。次は何処へ行くつもりなの?」
「ん、そうだなぁ……これと言って特に何も考えてなかったんだけど……ってか、マリアちゃん!」
 今更ながら疑問を投げつけてきたのがマリアだと言うのに気付き甲児は驚いた。
 いきなり親しみを込めてそう呼ばれたものだから意識してなかった為に反応が遅れたのだ。
「どうしたのよ? そんな素っ頓狂な声あげちゃってさぁ」
「い、いや……俺達会って間もないのに結構フレンドリーに話すんだなぁ。って思ってさ」
「良いじゃない。私達はもう仲間なんだしさ」
 どうやら大介の妹であるマリアは結構サバサバした性格のようだ。前向きと言う所だろう。
 悪く言うと無鉄砲と言えるかも知れないが。
「それはそうと、本当に何処へ行くか考えてないんですか?」
「あぁ、何せ大介さんの所に行くだけで頭一杯だったからな」
 以外な落とし穴であった。戦力増強を目的として皆と別行動をしていたのだが、結局のところグレンダイザーを仲間に入れる事しか頭になかったのである。
「えぇい、考えてても仕方ねぇや。次に向う場所は科学要塞研究所! 此処で決まりだ」
「き、急に決めましたね」
 相変わらず思い立ったら即決なようだ。其処は甲児らしいと言えばらしいのだが。
「すまない甲児君。本来なら大介達も同行させたかったんだが、先の戦闘の際に負ったダメージの修復とダブルスペイザーの最終調整を行わなければならないんだ」
「そうですか、だったら僕達だけで先に向います。後で合流しましょう」
 宇門博士がそう言うのならば仕方ない。どの道、これ以上此処でこれ以上時間を潰す訳にはいかない。こうなれば自分達だけで行くしかない。
「それじゃ、俺達は先に行きます。でも、なるだけ早めに頼みますよ」
「あぁ、待っててくれ甲児君。必ず合流する」
 再会の約束を果たし、甲児となのはの二人は宇宙科学研究所を後にした。
 次なる目的地は科学要塞研究所だ。
 二人共行った事はないが一応地理はある。迷う事はない筈だ。
 そして、その科学要塞研究所にはあのグレートマジンガーが居る筈だ。グレートを仲間に出来ればそれは大きな戦力となりえるだろう。
 が、戦力になる期待と同時に一種の不安もまた二人にはあった。
「でも、以前グレートマジンガーと戦っちゃいましたよねぇ。私達が来たら戦いになりませんか?」
「まぁ、その時はその時さ。どの道戦力が不足している現状なんだ。贅沢は言ってられないさ」
 多少問題はあるが、今はそれに目を瞑る他ない。グレートの協力なしで侵略同盟を打ち破る事はまず不可能なのだから。
「それにしても、お前のデバイスは一体何処行っちまったんだろうなぁ?」
「さぁ、私も一生懸命探しているんですけど、全然見つからないんです」
 もう一つ問題があった。それは、なのはの使用しているデバイスであるレイジングハートが忽然と姿を消してしまったのだ。
 魔導師はデバイスを用いる事で戦闘を行う事が出来る。故にデバイスがなければ今のなのはは只の年端も行かない少女に過ぎない。
 だが、甲児は妙な疑念を感じていた。それは、なのはの事に関してだ。
 何故かは知らないが、なのはは他の魔導師とは違い、デバイスが無い時の方が強い力を発揮しているケースが多いのだ。
 先のPS事件の最後の時もそうだった。あの時も突然凄まじい力を発揮し、超獣を一撃の元に葬り去った。
 そして、以前の戦いの時もそうだ。
 敵円盤獣の攻撃から身を守る為に結界を張った時だ。
 一概に魔導師の力で巨大な敵の攻撃を防ぎきるのは困難な面が多い。
 だが、あの結界はそれをまるで苦もなく弾き返してしまった。
 力の差が歴然としているのだ。其処に甲児は疑問を抱いていた。
(俺もミッドチルダに留学してたからある程度の事は知ってるけど、デバイスを用いないであそこまで強い力を発揮できた魔導師は聞いた事がない。フェイトやクロノだって無理な事だ。一体どうなってるんだ?)
 一抹の不安が甲児を過ぎった。そんな甲児の不安など何処吹く風かの如く、後ろで静かに寝息を立て始めだしたなのはの姿が其処にあった。
 年相応の幼い寝顔が其処にある。とても怪獣や超獣を葬り去った者とは考えられない。
(俺の考え過ぎなら、良いんだけどなぁ)
 頭の中に溜まった不安を拭い去るように、甲児は操縦桿を強く握り締めた。今は只、目的地に急ごう。それだけを念頭に置き、Zは空を飛んだ。




     ***




 ベガ大王親衛隊のコマンダージグラが倒された報告は、即座に此処スカルムーン基地へと報じられた。
「恐るべきはグレンダイザーよ、まさか親衛隊すらも倒してしまうとは」
「だが、彼奴とて無事では済まなかった様だ。その証拠に次なる目的地に向っているのは時代遅れのガラクタ一機のみだ」
 映像を映し出し、其処に映っているマジンガーZを見てバレンドスがそう呟いた。
 グレンダイザーは現在最終調整と修理の為に別行動中である。今の所は奴は放っておいても大丈夫だろう。問題はこのマジンガーZの存在だ。
「奴の目的は恐らく散らばった戦力を結集させる事にある」
「何? そんな事をされたら益々手に追えなくなってしまうぞ」
「そうなる前にこいつを破壊する。何、相手は旧式のロボットだ。訳なく破壊出来る」
 大層な自信がバレンドスにはあった。恐らく何か勝算があるのだろう。
「随分な自信だな。バレンドス」
「当然だ。俺は以前あのグレートマジンガーとゲッターロボGを纏めて倒した実績があるのだ」
「ふむ、例の奴を使うと言うのだな?」
 ガンダルの問いにバレンドスは笑みを浮かべた。不気味なその笑みの裏にはしたたかな自信が見られたのであった。




     ***




 どれだけ寝ていたんだろうか?
 睡魔からようやく逃れる事が出来、目を擦りながら辺りを見る。
 其処は未だに狭いパイルダー内であった。
 そして、前方にはそのパイルダーを操縦する甲児の後姿が見られていた。
「よ、ようやく起きたか?」
「あ、あれ? 私何時の間に寝てたんだろう」
「そんなに寝てないぜ。せいぜい30分位ってところさ。それより、もうそろそろ見えてくる頃だぞ……ん!?」
 ふと、甲児が言葉を止めた。何かを見つけたのだろう。
 丁度真後ろに居るなのはには見えない。
「どうしたんですか?」
「ちっ、どうやら先客が居るみたいだな。ベガ星連合軍の奴等だ!」
 甲児の目の前には科学要塞研所を襲撃する一機の大型円盤と無数の小型円盤の姿があった。
 ベガ星連合軍のマザーバーンとミニフォーの連隊だ。
「どうするんですか?」
「決まってらぁ! 邪魔するんだったら叩きのめすまでだぜ!」
 意気揚々とZは高度を下げた。即座にミニフォー達と同じ高度に舞い降りる。その存在に気付いたミニフォー達の視線が一斉にこちらに向けられる。
「へん、今度は俺が相手してやらぁ!」
 甲児の言葉と同時にZの両腕が噴射された。肘の部分からジェット噴射をあげて、両の腕が空中を自在に飛びまわる。
 その豪腕がミニフォーの連隊を次々に破壊し残骸へと変えていく。
「へん、こんなちっこい円盤相手じゃ物足りないぜ!」
「甲児さん、そんな事言って凄い怪獣が出てきたらどうするつもりなんですかぁ?」
「その時ぁそいつも纏めて叩きのめせば良いだけさ」
 頭が良くなっても其処らへんは変わらないらしい。
 そしてそれは戦い方にも現れていた。
 向ってくる敵に対して鉄拳で応じるその戦い方は正しく甲児そのものとも言えた。
 そして、その戦い振りをマザーバーンに乗っていたバレンドスは静かに眺めていた。
「ふむ、ガラクタと思っていたが中々やってくれる。そろそろ良いだろう。光破獣を出せ!」
 バレンドスの名を受け、兵士達が慌しく駆け回っていく。そんなマザーバーンの艦内のことなど露知らずの如く、外ではマジンガーZが粗方ミニフォーを片付けた後となっている。
「残るはあのでかい円盤だけだな」
 大きさはマジンガーZよりも数倍は大きい。が、所詮はでかいだけだ。
 マジンガーの敵じゃない。
 ふと、マザーバーンの中から何かが飛び出してきた。今度のはミニフォーじゃない。大きさはマジンガーZよりも一回り近く大きいし、そいつには手足が生えている。
 全身がまるで発光体の様に光り輝いており、その顔と言ったらまるで悪魔だった。
 鋭い眼光と耳まで裂けた口からは無数の牙が見えている。
「へっ、ようやく真打のご登場かよ!」
 鼻を擦りながら甲児は呟いた。此処で出したと言うのだから相当自信があっての事なのだろう。或いは只の負け惜しみか。
 後者であれば救いがあるのだが恐らくはないだろう。
「甲児さん、あの怪物は気をつけて下さい! 何か嫌な予感がします」
「お前が言うと本当にそう思えちまうから怖いな。分かったよ」
 頷き、甲児は気を引き締めた。なのはが言わなくても甲児には分かる。あの怪物は今まで戦ってきた中でもとびきりでやばい奴だと言うのがひしひしと伝わってくる。
 しっかりしろ! 此処で尻込みしてられるか!
 自分自身にそう言い聞かせ、甲児は目の前の敵を見据えた。相手が強いのは百も承知の事だ。
 だが、それと同じ位に、いや、それ以上に自分は、マジンガーZは強いのだ。
 もっと自信を持つべきだ。
 意を決し、目の前の怪物に戦いを挑んだ。
「まずはこれでどうだ!」
 手始めに腹部からミサイルを発射した。数発のミサイルが唸りを上げて怪物目掛けて飛んでいく。
 怪物は未だに不気味ににやけたままだ。全く避ける素振りを見せない。
 余裕のつもりだろうか?
 その顔面に向かい放たれたミサイルがぶつかり、爆発を起こした。
 爆発が怪物を覆い隠していく。その爆発はやがて爆煙となり怪物の上半身を覆い隠していく。
 この程度で倒したとは思えない。緊迫した空気が辺りを支配する。
 黒煙に混じって怪物の不気味な眼光が光った。
 甲児の背筋が凍りつく感覚を覚えた。
 殆ど咄嗟にであった。咄嗟に甲児の体は、手足は勝手に操縦をした。
 それに呼応し、マジンガーは右に横飛びに動いた。その直後として、怪物の眼光から黄色い閃光が飛び出した。
 閃光はまるで矢の如く真っ直ぐに飛び、やがて砂浜に漂着していた岩石に命中した。
 一体何を放ったのか?
 甲児は興味をそそられるかの如くその矢が命中した岩石を見た。
 その岩石には外傷がまるでない。只の目眩ましだったのか?
 そう思っていた直後、その岩石が突如爆発を起こし、細かく砕け散ってしまったのだ。
「岩が……内部から砕けた!!」
 その光景は甲児の脳内に戦慄を覚えさせた。奴の攻撃は装甲など全く無視した攻撃をしてくる。
 あの攻撃には超合金ZもニューZも関係ない。
 内部に入り込んで爆発させる能力を有しているのだ。
 あんな物が命中してしまえばそれこそマジンガーZと言えども只では済まない。如何に外部装甲が超合金ニューZで武装されたとしても内部から破壊されたのでは意味がないのだ。
「くそっ、チマチマ戦ってられねぇ!」
 無駄に時間を長めたらこちらが不利になる。一気に勝負をつけるしかない。
 再度、怪物が光の矢を放ってきた。幸い発射のタイミングはどうにか確認出来る。奴は目や口からそれを発する事が出来るようだ。
 矢の速度こそは早いが発射までに若干タイムラグが発生するようだ。
 避けるのはどうやら容易なようだ。
 怪物の頭上を飛び越えて、そのまま背後に回りこむ。
「化け物め、これでも食らいやがれ!」
 甲児の叫びと共にスイッチを押し込む。Zの両胸の放熱板が発熱し、熱線が放たれる。
 真っ赤な熱線ブレストファイヤーが怪物の背面に直撃する。
 妙だった。
 本来ならブレストファイヤーを食らった敵はドロドロに溶けていく筈だ。なのに、目の前の怪物は全く溶ける素振りが見られないのだ。
 一体どういう事だ?
 甲児の疑念はその後に衝撃に変わった。怪物の背丈がどんどん大きくなっていく。
 最初はマジンガーZより一回り位大きかった程度の怪物が徐々に大きくなり、遂には二回り、三回りほどなまでに大きくなっていったのだ。
「甲児さん! あの怪物、マジンガーのエネルギーを!」
「くそっ!」
 咄嗟に甲児はスイッチを切った。しかし、敵に相当なエネルギーを分け与える結果となってしまった。
 怪物が振り返ってくる。その姿は更に禍々しい姿となっていた。
 悪魔を模した顔はそのままに、胸部には更に八箇所もの丸い吸盤の様な突起が姿を現していた。
 恐らく、其処からも先ほどの矢を発する事が可能なのだろう。
「何てこった。奴の体はバリアの変わりになってるんだ。その上エネルギー系の武器を吸収して成長しやがるなんて」
 どうやら奴に光学系の武器は効果がないようだ。返って敵の成長を促す結果となってしまう。
 かと言ってミサイルなども効果が薄いようだし、殴り合いなど問題外だ。
 奴の光の矢を諸に食らいに行く羽目になってしまう。あんな物を食らえばマジンガーなど一発で粉砕されてしまう。
「どうする、どうすれば奴に勝てるんだ?」
 打つ手がなかった。攻め手を封じられ、対抗する手段がなくなってしまったのだ。
 怪物の大きな手が振り上げられる。Zを叩き落そうと振り上げたのだろう。
 そうは行くか!
 あべこべに腕を切り落とすつもりでジェットスクランダーの翼を怪物の手首に向けてぶつけた。
 Zを大空へと飛ばす翼はそれ単体でも武器となる。鋭い翼を用いれば敵を切断する事が可能なのだ。
 金属音が響いた。
 それと共にスクランダーのぶつかった箇所を軸にしてZが空中でバランスを崩して落下してしまう。
 何て堅いんだ。ぶつかった甲児の感想はそれであった。
 幸いスクランダーは破壊されていない。装甲が多少削れた程度の事だろう。だが、それよりも妙に思ったのは先ほどの金属音だ。
 奴の体は一体何で作られていると言うんだ?
 全身光のバリアで象られていると言うのならぶつかる事なくすり抜けるはずだ。
 もし生物だとしてもあんな金属音は発せられない筈。
 もしかしたらあの怪物の中に何かあるのか?
 その疑念はそのまま甲児の動きを鈍らせた。それが結果として隙を生む事となってしまった。
 四方から突如チェーンが放たれ、Zの手足を拘束していく。
「しまった!」
 完全に失態であった。周囲を見渡すと何時出撃したのか、四体の未確認の怪獣が姿を現していた。
 どうやらベガ獣のようだ。
 四体ともゴリラを連想させる姿をした怪獣だ。その怪獣の太い両腕にはZの手足を拘束させている野太いチェーンが持たれている。
 手足を引っ張ってみたが、思っていた以上にそのチェーンは堅く、引き千切ることが出来ない。完全に動きを封じられてしまった。
「だ、駄目だ! 身動きが取れない!」
「甲児さん、前!」
「!!」
 なのはの言葉に甲児は前を向き、驚愕した。目の前には先ほどの怪物が不気味な笑みを浮かべて目の前に居たのだ。
 悪魔を思わせる輪郭を目一杯に浮かべてこちらを見ている。
 化け物の口が光沢を帯び始めている。Zの頭部へ向けて先ほどの光の矢を放つつもりのようだ。
 身動きが取れない以上避ける手段がない。手詰まり状態であった。
「くそっ、こうなったら――」
「甲児さん、まさか自爆するつもりじゃ?」
「お前は早く此処から脱出しろ! 下は海だから何とか助かるだろ」
「嫌です! 甲児さんを残して私だけ逃げるなんて嫌です!」
 甲児の言い分になのはは頑として首を縦に振らなかった。
 だが、このままでは共倒れだ。目の前には怪物が今にも光の矢を発射しようとしているのだ。
「良いから行け! 俺の事は構うな」
「嫌、絶対に嫌だ!」
「くそっ、頼むから言う事聞いてくれよ! お前まで犬死するこたぁねぇのによぉ!」
 甲児の声が震えていた。悔しさに涙を流していたのだ。
 勢い良く飛び出したは良いが、結局此処で力尽きる事となってしまった事実に悔しさが全身に滲み出てきたのだ。
 もう敵は猶予などない。後2~3秒したら光の矢がパイルダーに直撃し、Zの頭部は粉々にされてしまうだろう。
 刹那、何かが飛んできた。円を描く動きで飛来したそれはZの両手足を拘束していたチェーンを切断してくれた。
 それだけじゃない、回転するそれはすぐ右上に居たベガ獣を下部から突き上げる形で切り裂き、真っ二つに切断してしまった。
「あれは!?」
 チェーンを切り裂き、ベガ獣を一体仕留めた回転するそれは弧を描く動きでそのまま持ち主の下へと戻って行った。
 其処に居たのはマジンガーZと同じ姿をした巨人であった。
 回転していたそれはその巨人の胸に収まる。ブイ字型の放熱板であった。
「あれは、グレートマジンガー!」
「待たせたな、マジンガーZ!」
 拘束を抜け出したマジンガーZの隣に並び立つグレートマジンガー。
 かつて、甲児は一度このグレートマジンガーに助けられた事がある。そして、これで二度目となった。
「ちぇっ、またあんたに助けられたみたいだな」
「何を言うんだ。君がこうして時間を稼いでくれたお陰で研究所を守れたんだ。今回は貸し借りなしさ」
 甲児のその言葉にグレートの操縦者である剣鉄也が笑みを浮かべて返す。
 其処へ再度怪物の体から光の矢が放たれた。
「危ない!」
「おっと!」
 二体の魔神は飛び退きその矢をかわす。その後も間髪入れずに矢を次々と放っていく。
「なぁあんた、あの怪物と戦ったことがあるのか?」
「あぁ、気をつけろ。奴は俺とゲッターチームを先頭不能に追い込んだ強敵だぞ!」
「上等じゃねぇか! こうなりゃダブルマジンガーでリベンジマッチと行こうぜ!」
 強気で息巻く甲児。だが、依然として打つ手がないのは変わりない。
 戦力が増えたとしても、決定打がなければ勝ち目がないのも同じだ。
 その上、その周囲にはまだ後3体のベガ獣の姿がある。
 戦力的にもこちらが不利なのには変わりなかった。
「くそぉ、折角リベンジマッチを挑める瞬間が来たってのに、このままじゃまた奴に煮え湯を飲まされる羽目んなっちまう」
「グレートマジンガー、聞こえるか? あの怪物の内部には恐らく機械的な何かで作られてる筈だ!」
「何?」
 甲児のその発言に鉄也は眉をひくつかせた。今までそんな事に気づく事などなかったのだが、もしそうだと言うのならまだ勝機はあるかも知れない。
「よし、物は試しだ! 行くぞ、マジンガーZ」
「おう、こっちは何時でも良いぜ、グレートマジンガー!」
 二体のマジンガーは怪物の周囲を飛行する。怪物は自分の周囲を飛び回る二体の魔神がうざったく感じたのだろう。腕をヒラヒラさせて叩き落とそうとする。
 其処が絶好のチャンスであった。
「今だ! グレートタイフーン!」
「こっちも行くぜ! ルストハリケーン!」
 二体の魔神から猛烈な突風が放たれた。その突風は渦を巻き、怪物の体を纏っていた光の結界をこそげ落としていく。
 その中から飛び出したのは、怪物の体と全く同じ機械の体であった。
「思ったとおりだ。やっぱりあの光の中に奴の本体があったんだ!」
「流石だな。奴のことを瞬時に見抜くなんて」
「へっ、伊達にインテリになった訳じゃないって事だな」
 自信満々に甲児は鼻を擦って見せた。これであの怪物の体に物理ダメージを負わせる事が出来るだろう。
 しかし、そんな怪物の周囲を守るようにベガ獣が陣取っていく。
「くそっ、このままじゃ手の出しようがねぇぜ! このままじゃまた奴が光の体を纏っちまう」
「やるしかないようだな」
「え?」
 意味深な発言をしたグレート。その言葉に甲児は疑念を抱いた。
「所長、グレートブースターの発射をお願いします!」
【うむ、まだテストが済んでいないがこの状況では止むを得んか……だが、心してくれ。まだ調整中の為に使用出来るのは一回限りだ】
「それで充分ですよ! 一回で奴等を仕留めて見せます!」
 通信機越しに鉄也は誰かと会話していた。一体誰と会話しているのだろうか。
 そんな疑念を甲児が抱いていた時、突如科学要塞研究所に異変が生じた。
 なんと、研究所の管制室が上空へと浮上しだしたのだ。
 そして、浮上した管制室の下から飛び出したのは一翼の翼であった。
 Zの紅の翼とは違い白銀の翼であった。
 しかも、先端部は鋭利に尖っている。まるで突撃機だ。
「あ、あれは一体?」
「あれこそグレートマジンガーの新兵器、グレートブースターだ!」
「グレートブースター!?」
 甲児は復唱した。隣に居たグレートが突如そのブースターに向かい飛んで行く。
 ブースターとの高度はほぼ同じ。位置的にはブースターが徐々にグレートへ到達しようとしている位置にある。
(やるぞ、ドッキングチャンスは恐らくこの一回きりだ! これをしくじればもう後がない……一発勝負で決めるんだ!)
 気を引き締める鉄也。徐々にブースターとの距離が縮まっていく。
 その距離は、5メートルから4、3、2、1……
「今だ!」
 グレートが背中に広げていた真っ赤な翼を収納する。翼が収納しきったのとほぼ同時に白銀の翼がグレートの背中にドッキングする。
 成功だ!
 歓喜が湧き上がる瞬間であった。その直後、グレートの飛行速度が飛躍的に増加した。
「は、早い! あれは、グレートマジンガーの飛行速度を補助する為の翼だったのか?」
「それは違うぜ、マジンガーZ。このグレートブースターはそれ単体が強力な武器となっているんだ」
「ぶ、武器だってぇ!?」
 半ば半信半疑と言った受け答えをする甲児。そんな甲児に種明かしをするかの様にグレートが空中を旋回して怪物とベガ獣達の正面に立つ。
「行くぞ化け物共が! グレートブースターを受けてみろ!」
 グレートとブースターが分離し、分離したブースターが猛スピードで敵ロボット軍団の元へと飛んで行く。
 その光景は正しく圧巻であった。
 一瞬。正に一瞬の出来事であった。その一瞬の内に目の前に居た3体のベガ獣は、そして例の怪物は胴体から分断させられてしまったのだ。
「す、凄い……」
「あ、あれがグレートマジンガーの新兵器の威力なのか―――」
「その通りだ。推測だが、このグレートブースターは水爆並の威力があると言うそうだ」
「す、水爆並だってぇ!?」
 それは凄まじい威力であった。
 そして、同時に心強い味方の到来により戦局は一気にこちら側へと傾いた。
 残すは本当に大型円盤のみとなった。
 その大型円盤が突如踵を返して逃げ帰ろうとしている。
「野郎、このまま無事に逃げ帰れると思うなよ!」
「マジンガーZ、グレートのブレードを使え!」
 グレートの手から投げられた両刃の剣をマジンガーZが受け取る。
 マジンガーZの手には少々大振りな剣であった。
「やるぞ! マジンガーZ」
「おう! けど、その前にあんたに一言言っておくぜ」
「ん?」
 甲児に呼び止められた鉄也がふと、Zの方を見た。
「俺は兜甲児ってんだ。んで、この隣に居るちっこいのが高町なのはってんだ」
「よ、宜しくお願いします」
「そうか、俺は剣鉄也だ。さぁ、共に奴を倒そう。甲児君!」
「おう、行くぜぇ、鉄也さん!」
 互いに名を名乗り、そして再度マザーバーンへと狙いを絞った。
 マザーバーン内では大慌てであった。無論、その中心人物であったバレンドスもまた同じ事であり。
「お、おのれ! まさかピクドロンが倒されるとは。撤退だ。急いで撤退しろ! 早くしないと俺の身が―――」
「ば、バレンドス隊長!」
「はっ!」
 バレンドス他一同の視線がモニターへと映し出された。
 其処に映っていたのは、巨大なマジンガーブレードをマザーバーンへ向けて突き刺そうとするダブルマジンガーの姿があった。
 その姿を目撃した時には、既に手遅れであった。ダブルマジンガーの持つ剣が深くマザーバーンへと突き刺さった。
 根元までブレードを突き刺した後、そのブレードを持ったまま二体の魔神は高速で飛行した。
 やたらめったらに飛行し続け、それと同時にマザーバーンが瞬く間にズタズタに切り裂かれていく。
 二体の魔神が離れた頃にはその姿は見るも無残な物となっていた。
「トドメだ! 行くぞ甲児君!」
「おうよ、これでリベンジマッチは俺達の勝ちだ!」
 グレートの胸からブレストバーンが、そして、マジンガーZの胸からブレストファイヤーが発せられた。それらがマザーバーンのボディを焼き焦がし、溶かし尽くしていく。
 中に居るベガ星人は元より、司令官であるバレンドス諸とも跡形も残らずに。
 恐らく、中ではバレンドスやベガ星人達が断末魔の悲鳴を挙げているだろう。だが、その悲鳴すら、マザーバーンが掻き消してしまった。
 爆発が辺りに展開し、その後には何も残らなかった。戦いはダブルマジンガーの勝利に終わったのだ。
 そして、宇宙科学研究所の時と同じように、新たな力を手にした仲間の再会が、甲児となのはの目の前に現れていたのであった。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

グレンに続き、グレートをも味方につけ、残すは早乙女研究所のみとなった。
だが、其処へ迫るは百鬼帝国のヒドラー元帥が駆る無敵のメカ要塞であった。
どの武器も通用しない強敵を相手に、今こそ竜が目を覚ます。

次回【天を駆ける竜の輝き】

お楽しみに 
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