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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』

作者:零戦
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第二十一話






「宜しいのですか今村司令官? あのような返答をして……」

 ヤオが退出した後に柳田は今村中将にそう聞いた。

「構わない。我々も炎龍撃滅の命令は来ていたんだ」

「ですが彼女の故郷はエルベ藩王国の……」

「それについては手を打ってある」

「え……?」

「実は第四偵察隊がとある修道院にてエルベ藩王国の重要人物らしい人を保護したらしい。修道女からそう聞いたみたいだ」

「それでは……」

「まだ面会はしていないが近日中に面会する。ところで第三偵察隊は帝都に行っていたな?」

「あ、はい。外交員の菅原達と共に議員のパーティに出席をして日本の事を教えています」

「うむ、デュッシさんには寝床を与えて第三偵察隊が帰るまで待ってもらうしかない」

「……炎龍の戦闘経験ですか?」

「それもあるが伊丹大尉の元にはレレイ君達がいるからな。それなりの戦力として考えているのだよ」

 柳田大尉の言葉に今村中将はそう言った。



 伊丹大尉の第三偵察隊は帝都郊外にある庭園にいた。そこでは捕虜として捕らえた者の親族や議員達が集まってパーティをしていた。

「スガワラ殿、一家一族丸ごと招待するとは中々味のある催しを考えられたな」

「ありがとうございます。フォルマル伯爵からメイド長に来てもらえたのは助かりました」

 ピニャと菅原はそう言いながら庭園を歩き回って異常が無いか見ている。

 なお、子ども達にはアイスクリームが人気であった。ちなみに日本でのアイスクリームは明治からある。しかし、アイスクリームは値段が高いので民衆には手が届かない代物であった。

 このアイスクリームはわざわざ内地から輸送してきたものである。

 そして子ども達が立ち入り禁止の場所では第三偵察隊が四一式山砲と九二式歩兵砲の射撃をしていた。

「撃ェッ!!」

 二門の砲撃に議員や貴族達は腰を抜かした。

「な……何て威力なんだ……」

「帝国軍が負けるわけだ……」

 山砲と歩兵砲の威力を見た議員達はそれらを操る特地派遣部隊に恐怖した。

「アルヌスの丘にはこれを上回る榴弾砲――大砲もあります」

「何とッ!?」

「これより凄い物があるのかッ!?」

 伊丹大尉がそう説明すると議員達は恐怖より呆れてしまった。

「ピニャ殿下が「帝国は鷲獅子(グリフォン)の尾を踏んだ」と言っていた意味が分かったわい」

 老齢の議員がそう呟くのを周りの議員達も頷いた。

 その後、菅原とピニャは議員達と接触をしつつ講和条件を議員に提示した。

 それが一、帝国は戦争責任を認め謝罪し、責任者を処罰せよ。二、帝国はこの戦争によって日本側が被った被害について賠償すること。その額、スワニ貨幣で七億枚である。三、『門』のあるアルヌスを中心に半径五百リーグの円を描く範囲を大日本帝国に割譲すること。更に新規に引かれた国境から十リーグは双方ともに兵を配置しない事。四、通商条約の締結である。

 これには議員達が反対した。特に七億スワニなど払える金額ではない。それに対して菅原は七億スワニは資源に代える事も可能だと伝えた。

 それに地下資源の採掘権等でも大丈夫だと菅原が言うと議員達は漸くホッと溜め息を吐いた。

 その光景を少し離れたところで見ていた樹は苦笑していたりする。

「と、兎に角話し合おう」

「そ、そうだな。きちんと交渉を始めなければならん。特に賠償額については双方の実情を照らし合わせて双方が納得いくようにな」

 議員達は口々にそう呟いてまるで暗示しているかのようである。ちなみに菅原の言葉にピニャは地面に倒れていたりする。

「大丈夫ですか?」

 倒れたピニャに、何かあったのかと勘違いした樹がピニャに近寄る。

「セ、セッツ殿。妾は……妾はもう駄目かもしれぬ。なので此処で言っておきたい。あの時は本当に済まなかった。イタミ殿にも言っておいてほしい。許してたもれ、許してたもれ」

「だ、大丈夫ですから。そんな自殺するような事は言わないで下さいよ」

「いや妾はもう駄目だ。お願いだ、許してたもれ」

「~~よく分からんけど、許しますから許しますから……うぉッ!?」

 樹の言葉を聞いたピニャが樹にしがみついていた。

「許してくれるのか……有りがたい……本当に有りがたい」

 そしてピニャは号泣する始末であり、事情を知らない樹が慌てるのであった。

 その後、皇帝第一子のゾルザル・エル・カエサルがパーティに乱入してくる場面もあったがピニャが適当にあしらって議員達を上手く逃がす事が出来た。

 ゾルザル本人はマルクス伯の間違いかと思いその場を後にしたが、まさかの第一子の登場にピニャは驚いていたが何とかあしらう事が出来て安堵の息を吐いた。

「ふむ、帝国の議員と接触出来たか」

「は、交渉の中身はこれからになるでしょう」

 大日本帝国内閣総理大臣の東條英樹は特地駐留大使の吉田茂の報告に安堵した。

「ですがスワニ貨幣で七億枚はやはり難題のようです」

「構わない、あれは囮だ」

「囮……ですか?」

 吉田の言葉に東條は頷いた。

「聯合艦隊司令長官の山本からの発案でな。賠償金を貰うのが普通だが、今の日本の状況を考えれば必要なのは資源だからな」

「成る程」

 海軍からの提案に陸軍は驚いたが、確かに資源を貰えば例え『何処かの』国と戦争になっても一応は東南アジアを占領しなくても戦争継続は可能である。(それでも戦略上、必要な地域は占領する予定)

「特地は長期的に見ねばならんな……」

 東條が呟いた言葉を吉田は無言で頷いた。






 
 

 
後書き
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