DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章
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一章 王宮の女戦士
1-25上司
王宮の前で、声をかけられる。
「ライアン!やったじゃないかっ!」
「小隊長」
上司だった。
「おおっ、これが例のホイミスライムか。こうして見ると、なかなか可愛いもんだ。喋るってホントか?こんにちは!」
小隊長は、体格の良い王宮戦士たちの中でも、さらに抜きん出て体格が良い。
ホイミンが、ライアンの後ろに隠れる。
「怯えさせないでください」
「すまん。ところで頼みがあるんだが……。子供たちを助けたのはこのオレということにして、手柄を譲ってくれないか?」
「はい」
「ラッ、ライアンさん!?」
ホイミンが飛び出す。
「おっ、喋った喋った。わははっ、冗談だよ!お主はホントに人がいいな!」
それはそうだろう。これだけ連絡が行き届いて、できるわけが無い。
そもそも小隊長は、調査に参加していない。
できる状況ならば、言わない人だ。
「た、たとえ冗談でも手柄をゆずってくれだなんて!あつかましいにも、ほどがあるよ!」
そんな事情が、ホイミンにわかるはずも無い。
これは、ホイミンの手柄でもあるのに。
「すまない、ホイミン」
「なんでライアンさんが謝るの!?」
どこから説明したものか。
「わははっ、元気出たなー。よしよし、ごめんなー、ホイミンちゃん」
小隊長ががしがしと荒っぽくホイミンを撫でる。
「うう……。ライアンさん……。」
そろそろホイミンが泣きそうだ。
「小隊長。ここで報告しても、宜しいですか」
ホイミンは王宮に入りたく無いようであるし。
小隊長がホイミンを離す。
ホイミンは素早くライアンの後ろに戻る。
「宜しいわけあるか」
やはり駄目か。
「国王陛下以下、お歴々が、謁見の間にお揃いだ。陛下に直接、ご報告申し上げろ」
行方不明事件は、蓋を開ければ魔物による誘拐事件だったのだ。
通常なら、攫われた時点で、生存は絶望的である。
それを、『調査に伴うある程度の危険』を見越して組んだ、若手中心の調査隊が、鮮やかに解決したのだ。
王宮戦士団の精強さを示す、快挙である。
と、いう話になる。
大袈裟になるのも、仕方が無い。
「このまま向かいますか」
「うむ。到着次第、先導して来いとの仰せだ。寄り道もできんぞ」
冗談を言っている場合では無かったのではないか。
「では、先にこれを」
後にしては面倒になる。
同僚の遺品を渡す。
「誰だ……いや、いい。見る」
ライアンは人の名を覚えるのが不得手である。
ライアンとて、親しくしていれば、また極端に長い名で無ければ、覚えられるのだが。
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