DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
一章 王宮の女戦士
1-22性別
宿屋の女将は、連れがホイミスライムであることに驚き、息を飲むが、ホイミンくんは恩人で友達だ、と主張する息子に警戒を解き、丁寧な謝罪と、改めてホイミンに向けた招待を受ける。
そうまで言ってくれるのであれば否も無い。ありがたく、世話になることにした。
「わーい、ぼく人間のおうちって初めてだよ!」
そう言えば、ホイミンは人間の宿で寛げるのだろうか。
「ここで寝るの?ふかふかで気持ちよさそうっ」
問題無いようだ。
触手で確認した後、ベッドに降りようとするのを捕まえる。
「待ちなさい。ベッドに上がるなら、身体を清めねば。後で風呂に行こう」
「ぼくお風呂って知ってるよ!あったかいお水で洗うんだよね!」
「よく知っているな」
「あっ……。男と女は、別々なんだよ。ライアンさんは女のひとだから、別々なんだよ。ぼくは、男の人間になるんだから」
本当によく知っている。
そして、ホイミスライムにも性別はあるのか。
いや、これは。
「ホイミスライムには、性別は無いのか」
「からだはみんな、おんなじかたちだよ。でもぼくは、きっと男だから」
確信があるようだ。
そう言うのなら、そうなのだろう。
しかし、一緒に入らないとしても、洗ってやるくらいはしないと使い方もわからないだろう、それは男の矜持を傷付けるだろうか。
ホイミンは、困っているようだ。
部屋の扉が叩かれる。
「ホイミンくーん!」
「あっ、ププルくんだっ」
そうか、あの子はププルと言ったか。
ププルを部屋に招き入れる。
「ホイミンくん。いっしょにお風呂にいこう!」
ホイミンはププルをぱっと見る。
乗り気なようだ。
「ププル。ホイミンは、人間の宿屋に泊まるのは初めてで、お風呂も使ったことが無いんだ。使い方を教えてやってくれるか」
「そうなんだ!うん、ぼくがちゃんとおしえてあげる。いこう、ホイミンくん」
ププルは兄のような顔になって、ホイミンの触手を掴む。
「うん、よろしくね。ライアンさん、行ってきます!」
「ああ、行っておいで」
楽しそうに出て行くふたりを見送る。
ライアンは、ププルが来てくれて助かった、最初に使い方を覚えれば後はどうにかなるだろう、しかしホイミンはあの様子では、絶対に私とは風呂に入ってくれないな、などと思いつつ、武具の手入れを始めた。
ページ上へ戻る