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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章

作者:あさつき
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一章 王宮の女戦士
  1-08仲間

 普段であれば、些細(ささい)な違和感など、気にするどころか気付くことも無く、ただ気配を消して近寄り、速やかに殲滅(せんめつ)するところではある。
 しかし、今ここは、現状で唯一の手掛かりとなる、行方知れずの子供たちの遊び場である。

 子供返りした大人と友達になったなら、悪意の無い魔物とも友達になっていたかも知れない。

 ライアンは敢えて気配を消さず、音を立て、魔物に気付かれるようにして近付いた。


 魔物がこちらに気付いた。

 魔物が目を見開く。

「こんにちは!」

 そして喋った。

 悪意が無く、言葉を話す。
 これは、期待できるかも知れない。

 何と返すか考えていると、魔物が再び口を開いた。

「ぼくホイミン!今はホイミスライムだけど、人間になるのが夢なんだ!ねえ、人間の仲間になったら、人間になれるかな……?そうだ!ぼくを仲間にしてよっ」

 一息に言い切った。
 何かを知っている様子は無い。

 考えてみれば、子供たちがまともに魔物と戦えるわけも無く、隠れて、逃げていたはずである。
 遠くからでは悪意の有無など判断できず、わざわざ近付くはずも無い。

 気を取り直して、魔物の言葉を考える。


 魔物は、ホイミンは――わかりやすく覚えやすい、良い名である――期待を込めてライアンを見つめる。
 ライアンは、見つめ返す。


 魔物が人間の仲間になれば人間になれるとは聞いたことが無いが、人間の仲間になった魔物がいるとも聞いたことは無い。
 それは、ライアンには判断できない。

 なれば、判断すべきは、仲間にするか否かである。

 どこから見ても大人な『アレクス』の子供返りは、信じない者がいた。
 魔物のホイミンが、善良な心を持つと言って、人は信じるだろうか。
 信じぬ者はいるだろう。


 ライアンは、ホイミンを見つめる。
 ホイミンは、ますます期待を込めて見つめ返す。


 王宮戦士とは、王宮を、王国の善良な民を守る者である。
 ならば、善良な魔物はどうか。

 わからない。
 公正な陛下であれば、認めてくださるかも知れない。
 しかし、例え望む形と違っても、王命には従わねばならない。

 王宮戦士として、定められていない範囲の職務など、勝手に判断すべきでは無い。


 ホイミンの期待は最高潮である。
 ライアンは、いよいよ決めねばならないと悟る。


 王宮戦士として判断できないならば、個人としてはどうか。
 王の意に沿わない可能性が、少なくとも有ること。
 それを為そうとするなら、相応の覚悟が要る。

 いざという時、王宮戦士を辞する覚悟。
 或いは、沿わぬものを切り捨てる覚悟。

 出会う場所が違えば既に斬り捨てていたであろう相手を、その覚悟を持って守るのか。

 守りたいのか、自分は。 
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