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ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~

作者:脳貧
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第三十一話

 明日は全休で明後日から本格的に講義や訓練が始まるらしい。
少し嗜んでいたワインのためなのかエーディンによるものなのか、髪ほどでは無いが顔が真っ赤になったアゼルが微笑ましい。

「みゅあは君もレックスも居なくなっちゃうんだもん。ボク、どうしたらいいか困っちゃったよ!」

「おかげでエーディン公女を独り占めできたからいいでしょう? 一目ぼれしたようでしたし」

「え、や、その。なんて喋ったらいいかわからなくて、全然おぼえてないや。って一目ぼれとかそんな事言われたってわからないよー」

「お顔が真っ赤ですよ。胸もどきどきしてませんか?」

「…みゅあは君は礼儀正しくてやさしいって思ってたけど、ちょっといじわる!」

「ふっふっふー、ようやく気が付きましたか!でも言いふらしたりはしないので、あとは応援しますよ!」

「もー、知りません!」
…レックスがアゼルを弄るのもよーわかるな、と思った。



 本格的に士官学校生活が始まるとそれなりに忙しくもあったが、予想よりも拘束時間が少なかった。
自主性を重んじ育むという名目らしい、それと宿舎生活は初年度のみだそうで翌年度からは自分で下宿先なりを探さないといけないという事で、兄上の頃と変わってしまっていた。
一応士官学校は給与が出るそうでそれで賄うとしても、いい物件が無ければバイロン卿が構えるバーハラでの屋敷をアテにしてみよう…。
朝は7時起床で講義は9時からになり16時前に終わる日が多く、完全休日が週に1日もある。
なんか高校通ってた頃を思い出すよ…俺は隣の市まで片道1時間ほどかけてバス通だった。
地元にも高校あったけれどガラの悪い連中が通うってことでスルーだったなぁ…。
届け出が認められれば副業(バイト)も認められていて、俺は週に2~3回ほど荷運びをやっている。
国元の仕送りはそりゃ潤沢ですけれど、貧乏性なのでそれはなるべく手をつけたくなかったり。

アゼルもレックスも騎兵科(アゼルは騎兵科の魔道士枠)で、俺は歩兵科なので二人と一緒の講義はそう多くは無い。
やはり騎兵科は花形なようで羨ましいがこればかりは仕方ない。
一人の戦闘者としての実技に於いて俺は誰にも後れを取らなかったが、座学に於いては他の候補生と変わらないか遅れをとるくらいだったので図書室通いもしてみたが、歓迎会のスピーチのせいで弄ったり絡んでくる奴が居て面倒だった。
宿舎の部屋に籠もっての勉強はなかなか気分が乗らなくて、気分転換で剣や槍の訓練を始めてしまうと
ついそればかりになってしまう。
そんな訳で特に休日なんかは本だけ借り出してバーハラ市街のカフェで勉強するようになった。

こ洒落たオープンカフェなんかを初めのうちは利用していたが、街に慣れてきたのとそれぞれの店で頼める軽食などのサービスが変わり映えしないので王宮寄りの方へと足を伸ばしてみた。
特に目を引く何かがあった訳では無く偶然選んだその店に入ると、訪いを告げる鈴の音が耳に心地よい。
一見さんお断りの店の恐れもあったが、まばらな客は俺のほうを見て威圧をするでもなく、それぞれの時間を過ごしていた。
給仕に望みのものを注文し、本を取り出すと読み始める。
頼んだ茶と焼き菓子が届くとそれぞれ一口ずつ味わい、その味を褒めておいた。
昼を告げる鐘が鳴る前に1度茶の代わりを頼み、昼食時間(ランチタイム)から少し外れたあたりで給仕を呼びメニューから軽食を頼むと、その給仕の戻り際に他の客が同じものを注文していた。
しばらくして給仕が俺に届けたのは注文したのとは違い、色んな種類のケーキとティーポットだった。

「申し訳ありません、食材のほうが足りなかったものでこちらでお許しいただけないでしょうか?」
給仕がそう言うので俺は受け入れて、いったん本や勉強道具を片づけていると、俺のあとに頼んだ客のほうに俺が頼んだものが届いていた…まぁ今日初めて来たわけだし常連さん優先でいいわな。
なんて思っていたのだが…

「あちらの方のほうが私より先に頼んでいたでしょう? お取り換えなさい」

「いや、しかし閣下」

「プライベートで訪れている時まで役職で斟酌しないでほしい」

「申し訳ありません!」
というやりとりの後、俺の頼んだランチセットが届いたのだが…そして店の主が出てきて先程の客に平謝りをしていた、その客は気にせず下がれと言っても恐れ入ってしまった店主は詫びていた。
俺はいたたまれなくなったので

「恐れ入ります、そこな紳士のお方」

「何用かね?貴殿もまさか、注文品を取りかえるようと申し出るつもりではあるまいか?」

「いえ、とんでもない! ご無礼を承知で申し上げますが、わたしの腹具合ではいささか量が多すぎるので、半分ずつ互いの注文品を交換いたしませんか?」

「なるほど。そういう策もありますな。これは愉快」
相好を崩すと痩せて神経質そうなその中年男性は俺の申し出を受け入れてくれた。
店主と給仕は俺とその客に礼を言うと下がり、俺はこの男と相席した。



  「…なるほど、留学僧とはまるで違うと思いましたが士官学校の候補生どのでしたか」

「はい、レンスターという田舎ですがそこからお招きに預かりました。ミュアハと申します」

「私はレ、いえマグニと申す者で王宮勤めをしておりますわい。ふぅむレンスターと言えば我らが今、口にしている多くの食物の産地ですな、感謝いたしましょう」

「いえいえ!とんでもない!購入していただくグランベルあってのものです、こちらこそ感謝申し上げます」

「持ちつ持たれつ、いつまでもそうありたいものですな」


「それにしても、マグニ様のほうがこのお店の常連様のようであり、若輩者のわたしのことなどお気になさらずとも良かったのに…でもおかげでこうしていられてありがたいですけれど」

「ミュアハ殿の言う事も一理あるとはいえ、決まりごとや秩序をないがしろにしては何もかもが立ち行かなくなります。民が安心して暮らして行くために秩序を保ち世を安定させることが第一、
もっとも、時としてそれが世の発展の足かせになることもあるので、先程のあなたのような感覚が大切とも考えさせられましたよ」

「褒められたと思ってもよろしいのでしょうか?」

「それは、もうもちろん」


その後しばらく飲食と共に歓談していたが、マグニさんは

「では、私はそろそろお暇しよう。なかなかに愉しき時を過ごせたこと礼を申しますぞ」
俺のぶんの伝票まで持っていくのでそれを止めようとしたのだが、そうはいかず奢ってもらうことになった。
マグニさんが店から出るのを見ていると懐から片眼鏡を取り出してかけるのを見て俺は正体がわかった。


レプトール卿



「ご店主、あの方は宰相閣下だったのでしょう?」

「それについてはお答えできません。申し訳ないです」

「では、ご常連さまなのですか?」

「それについても…申し訳ございません」

「わたしもそれなりの身分の者なのでご安心ください、レンスターという小国ですが王子です。
お答えしにくい事をお尋ねしてすみませんでした、いずれきちんとお礼を申し上げたいのでまた伺わせていただきますよ」

「は、はいっ、またのお越しをお待ちしております」

「そうだ、余り意味は無いかもしれませんが一応わたしのほうも内密に」
店の帰り際にそう店主とやりとりをし、幾許かの金を握らせて帰路についた。 
 

 
後書き
マグニとは北欧神話の神、トールの息子でラグナロクを生き抜きミョルニルを継ぐ者です。
トールはメギンギョルズという力帯が無ければミョルニルを十全に振るうことは出来ないのですが、
マグニはそれを無しで使うことが出来るので、腕力に秀でていると思われます。

レプトールはトールハンマー使うので、そういう感じで偽名に選びました。 
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