DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章
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一章 王宮の女戦士
1-02のろま
待合室には、女性の夫がいた。
誘導するライアンを熱っぽく見つめる妻の姿に、こちらを睨み付けてくる。
子供が行方不明になり、奥方を道中の魔物から守ってここまで来たのでは、気も張っていて当然。
まずは警戒を解いてもらおうと、ライアンは女性の夫に微笑みかけた。
すると、こちらも真っ赤になった。
興奮は冷めやらぬようだが、睨み付けるのはやめてくれている、どうやら警戒は解けたようだと、ライアンはふたりに話を聞く。
曰く、子供は奥方の目の前で、消えるようにいなくなった。
他にも村の子供が数名、行方不明になっている。
事実としてわかっているのは、この二点のようであった。
これ以上は現地に行って調べるべきであろう。
必死に説明したためか、終始真っ赤であったふたりに、辞去を告げる。
待合室を出ると、声をかけられた。
「よう、ライアン!まだこんなところをうろうろしてるのか。相変わらず、のろまだな!」
同僚の王宮戦士のひとりであった。
特に親しくは無いので名前は覚えていないが、顔を見ると絡んできてはのろま扱いする。
「そんなのろまな女が、いつまで王宮戦士なんてやってるつもりだ。さっさと嫁にでも、行ったらどうだ。」
この男の言うことは、いつもよくわからないので聞き流す。
しかしのろまか、戦士という職の特性上、武闘家のような素早さは望むべくも無いが、同僚の戦士たちと比べてそれほど遅いつもりは無い、むしろ速いほうではなかろうか。
「お前みたいな、女らしくないのろまは、貰い手も無いだろうから、オレがもら」
「ライアン殿!」
考えに耽っていると、今度は後ろから声をかけられたので振り返る。
「今度の事件の調査を命じられたそうですね!?ああ、心配です。貴女に何かあったらと思うと、私は居ても立っても居られません!……どうか、ご無事でお戻りくださいますよう」
文官の男であった。
貴族の生まれらしく、やたら名前が長いので覚えていないが、心配性でよく声をかけてくるため、会話の機会は多い。
微笑んで応じる。
「ご心配かたじけない。しかし私も、王宮戦士の端くれ。魔物ごときに、遅れを取るつもりはありません。どうかお心を安らかに、お待ちくださいますよう」
「!……は、はい!私、いつまでも、お待ち申し上げております!」
顔を真っ赤にして微笑んでいるのは、安心したためであろう、良かったなと思いつつ、すっかり遅くなってしまった、これではのろまと言われるのも道理だと、急いで王宮を出ることにした。
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