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ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~

作者:脳貧
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第二十二話

 
前書き
いつも拙作に目を通していただいてありがとうございます。
お気に入りが150件に届く勢いに驚愕です。 

 
 帰国の後ようやく身の周りが落ち着いてきたので、お役目を申しつけてくれるよう父上に願い出た。
加えて、よく仕えてくれたレンナートさんの騎士身分への推挙ももちろんだ。
それに対する処理はいましばらく時間がかかるだろうということで宙ぶらりんな王宮内での立場の俺は
訓練くらいしかやることは無いが、騎乗しての訓練はやはり不可能なので積極的に参加するのは重騎士団のものを選ぶより他は無かった。
将軍のゼーベイアとは特に親しい訳でも、顔見知りというほど言葉を交わしたことも以前は無かったが己の身分が味方したのであろう、いたく友好的であった。
訓練を終えたあとに将軍に礼を述べると

「いやさ、殿下。ご帰国されたばかりゆえゆっくりご静養されても良いものを、これだけの訓練の身の入りようから察するに復讐戦へ並々ならぬご決意ですな」

「…復讐戦?、とんでもない。トラキアでの日々はわたしには素朴なやすらぎすらあるほどでした。そこに暮らす民は性質穏順にて上への敬意も高く、決して蛮人と呼ばれるようなものではありませんでした………」
その後も続く俺のトラキア寄りの発言が一区切りすると将軍は

「なるほど。民草には罪は無いと仰るわけですか。臣は、殿下の火の出るような勢いの稽古は彼の国への憎しみと思い違いをしておりました。さすれば殿下はなにゆえに個人としての勇を求められる?」

「…男子として生まれ落ちたからには、誰よりも強く…を目指すのというのはわたしの立場上いささか幼稚すぎるでしょうか? 上を見ればキリが無いほどなので時として諦めたくもなりますが、せめて閣下をはじめ、みなの足でまといにはなりたくはないのです」
俺は本音とは違う答えをして苦笑し、ごまかした。

「……臣の目が節穴でなければ、殿下は一人のもののふとしてはもう充分な力量をお持ちゆえ、これよりはより広い目で戦局を見渡せる将としての心構えを持たれてはどうかという差し出がましい申し出を行おうかと思いましてな。ご無礼しました」

「とんでもない!わたしなどまだまだです。しかし、閣下のおっしゃりように多少なりとも自惚れてもよろしいのでしたら、将としての心構えを以後ご伝授いただきたい。構えて、わたしは馬上の身となること叶わぬのが、閣下もなにかで耳にされておられるかもしれません。いままで機会が無かっただけに、閣下からのご指導を仰げればわたしとしても浮かぶ背もあるやもしれません」
兄上や父上はまだお諦めでは無いようだが、俺には馬や飛竜などに騎乗しての騎士は無理だと思う。
アーマーが付くとはいえ騎士と呼ばれるものだ、それに就いたっていいだろう。



 

 訓練場を後にした俺はドリアス伯爵に会いたい旨の書状をしたため、都合のよい日を知らせて欲しいと伝令役に頼んだ。
俺が不在の間の話はターラから戻るまでの道中に多少なりとも兄上から聞かせてもらってはいたが、兄上とて長くグランベルに滞在していたわけだ、抜けおちた情報もあることだろう。
だからこそ伯爵から話を聞かせてもらいたいと思ったのだ。


「伯爵。わざわざお時間をお作りいただいてありがとうございます」

「なんの!殿下のご下命とあればいついかなる時とて馳せ参じましょう。して、如何なご用向きでございましょうや? いや、いきなり用件から伺い申し訳ございませぬ。トシのせいか気がせいてしまうようになり申した」

「何をおっしゃる。まだまだセルフィナ様の弟や妹ごを幾人でも作れそうなほど若々しいではありませんか」

「ははは。殿下もお人がわるぅなられましたかな?後添えでもご紹介いただけるのかと思いましたがそうではありますまい」
伯爵は笑顔をやめて向き直ると

「殿下のこと、わが国の様子に何やら感じるところがおありですな」
俺は伯爵から情報をもらってから判断をしたかったのだが、先に試験されたようだ。

「はい、戻りの道中立ち寄った村々の民の顔には疲れが見え、王都の民には誤った戦意の高揚のような…なんと申しますか、戦に逸っておるかのようなあやうさを感じております」

「ここ連年、トラキアの餓狼どもへの食糧支援に加えて陛下は軍備の増強を掲げており、そのしわよせは弱き立場の者らに向かっているのは間違いありますまい。なれどレンスターはまだいいほうです。
コノートは前の戦の責任として我が国に対し毎年保障費と四国会議での議決の票を差し出しております」

「…それならば、悪くすると、国として立ち行かなくなり最悪の場合四国の連合から離反する恐れもありますね…  まぁ、わたしが戻ったので援助のほうは有償で手を打つなり、コノートからはもう保障費はいただきませんし票もお返しするとか。そうして、すこし軍縮のほうへ向かえばみなも一息付けるでしょう」

「…陛下がそのように判断していただければよろしいのですが、あれ以来どうも以前にも増してトラキア憎しの態度を強められ、威勢のいい者の意見に耳を傾けがちでしてな……」

「伯爵には御苦労をかけっぱなしで申し訳ないです。そして陛下によく尽くしてくださっていること、お礼を申し上げます」 

「なんともったいなきお言葉、いま以上にこのドリアス、忠勤に励みましょうぞ」
う~ん、父上はこれは一戦しないと納まらないだろうな…だが、そんな無益なことはやるべきじゃないし、仮に益があったとしてもやりたくはないよ……


  
 それからドリアス伯爵は呼び鈴を鳴らした。

「お飲み物と、軽いおつまみをお持ちしました。ご歓談中に申し訳ございません」
涼やかな声と物腰でセルフィナさんがやってきた。
帰国した時の王都以来であるけれど、あのときの俺は感情が昂ぶりすぎて彼女の姿はよく覚えていなかった。
あのとき手を握ってくれた感触は間違いなく彼女のものだとはわかったが…
3年ほどで彼女は可憐でかわいらしい少女と童女の中間から、美しくたおやかな少女へとその趣を変えていた。

「帰国の式典以来だけれど、そんな気がしないくらい久しく感じます、セルフィ。
本日、伯爵にお時間を作っていただいたのもあなたとの再会が叶えばというわたしのあさましい考えからです。
それにしても以前にも増して美しくなられましたね。あの弓は…もう引けますね」
俺は席を立ち、彼女にいつぞやのように丁寧に礼をした。

「で…殿下。よくぞご無事でお戻りあそばされました…本当にご無事でよかった…」
目を潤ませすこし鼻をぐずらせてセルフィナさんはそう言うとすぐに目が赤くなる。
運よく俺は持ち合わせていたハンカチを彼女に差し出すと受け取ってくれた。

「姫を泣かすとは大悪党ですね。懲らしめねばなりますまい」
いつぞやのように俺はそう言うと軽く握った拳で自分の額を叩いた。
強く殴り過ぎて痛かったわけじゃないけれど、涙がこぼれた。

「殿下は相変わらず、あいかわらず…」
言葉が嗚咽に変わったセルフィナさんと俺の様子から、ついと伯爵は目を逸らした…



「セルフィナ、お前も同席し殿下ご不在の間の我が国の様子の報告と、殿下からのみやげ話を聞きなさい」
しばらくの時間が経ち、落ち着いた様子を見てから伯爵は声をかけてくれた。
俺は彼女の座る椅子を引いてあげると、彼女は座る時に軽く俺の手を握った。
トラキアでのみやげ話を俺はしばらく続けた。
レンナートさんの活躍の話や、彼のトラキア城でのおさんどんさんとの関係などはいろいろと突っ込まれながらも少しオーバーに語りました。

「…なるほど。ご領主どのもトラキアの民も殿下によくしてくれたと」

「はい、それだけが理由にはなりませんが彼らとの争いはわたしの望むところではありません」

「それについては否定はいたしませんが、陛下のご意向をとどめるにはいささか説得力に欠けますな」

「ごもっともです。今すぐとは申しませんのでお二人とも智恵を貸していただければと思います」

「それについて否やはございませぬ。さて、では私は急用を思い出したので館を空けます。
帰りは遅くなると思うので、セルフィナ、殿下からみやげ話をゆっくり語っていただきなさい。
では殿下、また近いうちに今日の件を語りましょうぞ」

「はい、伯爵。道中お気をつけて」

「お父様、いってらっしゃいまし」
俺もセルフィナさんも玄関まで伯爵を見送った。
その時セルフィナさんを見る伯爵の視線は見たこともなく冷厳としたものであった。







「お父様はお怒りでした。わたくしが申すべきことを申さなかったからです」

「厳しい目をされていましたが。わたしにはわかりかねます」
セルフィナさんは一つの指輪を取りだすと己の左手の薬指に嵌めました…


「これを嵌めずに殿下の御前に参上したことも」


「そ、それは……」
ぽた…ぽた…とセルフィナさんは頬に涙を伝わせて


「わがままを許してください。すこしだけ、こうさせてください」
セルフィナは俺の胸に顔を埋めた。
震える肩と漏れる嗚咽だけが辺りを支配していた。

俺は彼女の背に手を回すのを耐え続けた。

彼女も、俺の背に手を回さずに耐え続けていた……




 
 

 
後書き
セルフィナさんは3か月前に婚約しました。 
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