魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第14話 STSに向けて
「それじゃあ新人諸君、先ずは自己紹介を」
機動六課のブリーフィングルーム。
ロングアーチ(はやてが隊長を務める後方支援部隊)の主要人物と各隊長副隊長、そして新人達が集まっていた。
はやての視線がギンガに行き、ギンガが頷いて立ち上がった。
「陸士108部隊捜査官、ギンガ・ナカジマ陸曹です。この場での経験を今後に生かしていくためにも頑張りますのでこれからよろしくお願いします」
トップバッターのギンガは皆の手本のような挨拶をし、拍手が巻き起こる。
「陸士隊386部隊から来ましたティアナ・ランスター二等陸士です。私の目指す目標の為にもここで必要な物を得ていこうと思いますのでこれからよろしくお願いします」
あくまでも強気なティアナの発言だったが、メンバー全員が暖かい拍手を送った。
「えっと、スバル・ナカジマ二等陸士です。ギン姉………えっとギンガ陸曹の妹でティア……ティアナ二等陸士と同じ部隊に居ます。えっと………頑張りますのでよろしくお願いします!」
先ほの2人の次だった為に言うはずだった挨拶を急遽見直そうとし、こんがらがってしまった。
それでも拍手をしてくれた皆にスバルは顔を真っ赤にして自分の席に座ったのだった。
「本局武装隊所属、佐藤加奈一等空士です。主にサポートが得意なのでフルバックになると思いますが、しっかりサポート出来るように頑張りますのでよろしくお願いします」
淡々と答える加奈は拍手を受けながら自分の席に座る。
「以上が管理局の魔導師組やな。で次が………」
「バルト・ベルバインだ。目的は金の為。馴れ合いは好きでないんでな、悪いが好きなようにやらせてもらう以上」
その場に座ったまま淡々と言うバルトに当然拍手など沸く筈もなく、むしろシグナムやヴィータなど複数の者が今にも襲いかかろうとしそうな顔で睨んでいる。
「バ~ル~ト~さ~ん………?」
そんな中、なのはも黙ってはおらず、禍々しいオーラを出しながら自分の椅子から立ち上がる。
「何だなのは?そんなに皺寄せてると戻らなくなってフェイトと並んでいるときに歳取っているように見えるぞ」
「誰のせいだと思ってるのー!!」
「な、なのは落ち着いて………!!」
今にも襲いかかろうとするなのはを一生懸命取り押さえるフェイト。
見慣れている者ならただ単に相変わらず仲が良いなぁ~といった感じだが、初めて見るものにとっては呆気にとられるしかなかった。
「ほらほら、痴話喧嘩はそれくらいで、自己紹介の続きをするで。まだまだ話さなきゃいけない事が多いんやから………」
はやてにそう言われ顔を赤くしながら渋々黙って座るなのは。
その目は未だにバルトを睨んでいたが、当の本人は知らん顔だ。
「えっと………エリオ・モルディアルです。まだ管理局に入隊していませんが将来は入隊しようと思っていますよろしくお願いします」
「ルーテシア・アルピーノです。エリオみたいに管理局に入隊を希望している訳では無いですけど、自分の召喚術を磨くのにもこの部隊の経験が役に立つと思い試験を受けましたこれからよろしくお願いします」
「有栖キャロです。私もルーちゃんと同じ理由で、まだまだちゃんと制御出来ていない召喚術を磨くために試験を受けました。これからよろしくお願いします」
「ま、ま、真白雫です………魔法を使えるようになって4年程過ぎましたけど、まだまだ上手く使えません。みんなを守れるようにもっと上手に使うためにも頑張りますのでこれからよろしくお願いします」
エリオ達4人、民間からの合格者は似たような内容ながら淡々とこなしていき残りはエローシュだけになった。
「じゃあ最後のシメ、しっかり頼むで」
そう言ってはやてに軽くプレッシャーをかけられるエローシュだったが、そんな事で簡単に崩れる男では無かった。
ゆらりと立ち上がり、一度ここに居る皆を確認する。
そしてニヤリと微笑んだ。
「俺は江口信也、皆にはエローシュと呼ばれ、ある時にはエロの使者、またある時はエロの伝道師。俺が行くところエロあり、俺が極めるものエロなり。魔法?そんなの二の次だ。全てのエロよ俺の元に集え」
まるでラスボスの様な口調で喋ったエローシュだったが、言っている内容は最悪と言うより訳が分からない。
まさか12歳程の少年がそんな事を言う訳が無いと思っていた皆がポカンと反応できず、いつもエローシュと共にいる4人でさえその場で固まっていた。
「くくく………はははははは!!!全く、その年で面白い事言う奴だ!!」
「ホンマや………何かボケてくれるやろって思ってたんやけど、まさかここまでアホな事言うとは………」
そんな中、バルトは大きく高笑い。はやては一生懸命笑いを堪えていた。
「あれ………?不味い、流石にやりすぎた?」
流石にやりすぎたと感じたのか、周りの反応に慌てるエローシュ。
「エローシュ君は一回死んだほうが良いと思います」
「キャロ!?」
キャロにとっては珍しく、ゴミを見るような目でエローシュに声をかける。
「信也君………」
「あの真白………冗談だからね!本当にそんな事思ってなからね!!」
「大丈夫、私は友達でいるから………だけどなるべく近づかないでね………」
「真白!?それって友達じゃないのと余り変わらないと思うんだけど!?」
「死ね」
「ルーに関しては2文字のみ!?エリオ、お前なら………お前なら分かってくれるよな!!」
そんなエローシュの必死な問いかけをそっぽを向いて無視するエリオ。
「お前!!無視は酷いぞ!!」
「まあこないなアホな子やけど実はかなりの天才やから書類処理なんか大変な時はこき使ってや」
「ちょっ!?はやてさん!?」
そんなやり取りに場が和やかになっていく。
「以上が今回の新人メンバーや。それじゃあ新人の所属する部隊、スターズとライトニングの説明や。先ずスターズ隊長が高町なのは一等空尉」
「よろしくお願いします」
「副隊長が八神ヴィータ三等空尉」
「よろしく」
「次にライトニングやね。ライトニングの隊長はフェイト・T・ハラオウン一等空尉」
「よろくしね」
「副隊長が八神シグナム二等空尉」
「よろしく頼む」
それぞれの隊長、副隊長はその場で立ち上がり、軽く挨拶をした。
「次に新人達の所属部隊やけど………先ずはスターズ部隊や」
そう言ってはやては間を開ける。
少しニヤリと笑みをこぼしたはやては再び話始めた。
「先ずはギンガ・ナカジマ陸曹、次にティアナ・ランスター二等陸士、スバル・ナカジマ二等陸士、佐藤加奈一等空士、そしてバルト・ベルバインの五名や」
「はぁ!?何で俺も部隊に入って………」
思わず立ち上がり叫ぶバルト。
「質問は後で頼むで」
しかしはやては手で、バルトを制し、きっぱりとそう告げる。
渋々自分の椅子に座ったバルトを確認したはやては続きを話始めた。
「次にライトニング部隊や。ライトニングにはエリオ・モルディアル、ルーテシア・アルピーノ、有栖キャロ、真白雫、そしてエローシュ」
「………ってはやてさん!?俺それ本名じゃ無いんですけど!?」
「え?そうやったっけ?まあ後で直すと思うから我慢しといて」
「思うからって直す気無いでしょ………もういいですよ」
諦めたエローシュを見てはやても満足し、話を進める。
「戦闘経験も年齢もまだまだな子達ばかりやから教導は難しいと思うけど、頼むな2人共」
「うん、分かったよ」
「任せて下さい」
フェイトとシグナムの返事に満足するはやて。
「それじゃあ最後にロングアーチの紹介やな」
「リインフォース・ツヴァイです。主にはやてちゃんの輔佐ですが、気軽に質問なんかしちゃってください!」
はやてのすぐそばにいるリインがそう言ってお辞儀した。
「私は主任医務官の八神シャマルです。怪我や調子が悪かったら気軽に医療局に来てね」
綺麗なおじぎをした後、微笑むシャマル。
「エリオ………シャマルさんいいな………」
「えっ!?………まあ、うん………」
暖かな笑顔にエローシュやエリオは骨抜きにされつつあった。
「………白衣の美人か………やはり良いな………」
「バルトさん、なのはが睨んでるわよ?」
「あん?気にすんな、どうせ今手を出せねえ」
加奈の指摘もバルトには届かず、加奈もそれ以上何も言わなかった。
「ううっ、何で男の人って金髪美人が好きなんだろ………?」
「えっ?そんなこと無いよ」
「………フェイトちゃんがそう言ってもね」
フェイトをじっと見つめ、大きくため息を吐くなのは。
「えっと………元気出してなのは」
「うん、ありがとう………」
そう弱々しく答えるなのはだった………
「俺はヘリパイロットのヴァイス・グランセニックだ。何かあったときはヘリでの移動が主になるから俺に任せろ!」
少々暑苦しく感じながらも兄貴肌を感じさせるような自己紹介のヴァイス。
(ヴァイスさん………あの人とは仲良く出来そうだ)
確証が無いがそんな事を思うエローシュ。
後にエローシュとヴァイスが一緒にいる所をよく見る事になる………
「通信主任兼メカニックのシャリオ・フィニーノです。デバイスのメンテなら私に任せて下さい」
眼鏡をかけ、いかにも機械弄りが好きな様に見える少女。
皆に笑顔でそう言い静かに自分の椅子に座った。
「交替部隊責任者、部隊長補佐のグリフィス・ロウランです。みなさんよろしく」
礼儀正しく淡々と自己紹介をし、静かにその場に座るグリフィス。
「素っ気な~い」
「うるさい」
隣に座るシャリオに少しからかわれたが、そっちを見ることなく、一言で切り捨てる。
「取り敢えず主要人物の紹介はこれくらいやな。後は自分達でロングアーチの人達に挨拶を頼むで」
そう言ってはやては新人達を見る。
「実際部隊が稼働するのは来年の四月から。そこから再来年の3月に機動七課とのエキシビジョンマッチが行われる。それに勝つことが新人達の目標や。皆、頑張ってな。新人の皆が次に集合がかかるのは来年の2月中頃の予定や。詳しくはまた通達があると思うから確認を忘れずに頼むで。それじゃあミーティングは終わりや。皆お疲れ様」
こうしてミーティングは終わった………
「それじゃあ、改めて、私がスターズ隊長高町なのはです」
ミーティングの後、それぞれの部隊で集まる新人達。
スターズではちょうどなのはが改めて挨拶をしていた。
反応は人それぞれでギンガと加奈は微笑ましく聞いており、スバルに関しては目がキラキラしている。
ティアナは真面目な顔で話を聞き、バルトは………
「………あれ、バルトさんは?」
「あれ?そう言えば………」
「いませんね………」
なのはの問いでスバルとギンガが周りを見渡すがバルトの姿は無い。
「全くあの人は………」
そう言ってため息をはくなのはだが、心なしか嫌そうではなかった。
「なのは、良いのかあんな奴部隊に入れて?」
なのはの後ろにいたヴィータが質問する。
「ああ見えて実力は本物だよ。私相手でも全く退かないもん」
「まあなのははバカスカ撃ってくるからウザったいがな」
そう言いながら何事もなかったかのようにちゃっかり自分の席に座るバルト。
「よく言うよ、バルトさん簡単に破るくせに………」
「まあお前みたいな小娘には簡単にやられないさ」
「私ももう大人です」
「フェイトくらいになってから言え」
「フェイトちゃんが例外なんですー!!」
またも痴話喧嘩みたいな言い争いを始めるなのはとバルト。
(はやて………この組み合わせミスじゃないのか………?)
と心の内で思うヴィータだった。
「みんな、私がフェイト・T・ハラオウンです。………ってここにいる皆は何回か会ったことがあったよね」
「はい、金髪巨乳美人は絶対に忘れ無いです!!」
早速セクハラ紛いな発言をするエローシュの頭にエリオとルーテシアが思いっきりぶっ叩いた。
「あはは………これからよろしくね。そしてこちらが副隊長のシグナムさんだよ」
「先程も自己紹介させてもらったがシグナムだ。基本的にハラオウンは執務官の仕事があるので私が見ていくことになる。まだ成長期と言うこともあり、激しい筋力トレーニング等は控えるつもりだが、フルバックが多く、ガードウイングがエリオだけと言ったこの部隊の構成上、先ずは全員クロスレンジに対応出来る様にしていく。………私は厳しいがしっかり付いていくように」
「「「「はい!!」」」」
「うぃ~っす」
エローシュの軽い返事にこめかみを抑えるシグナムだが、ニヤリと笑みを浮かべた事にエリオだけ気がついたのだった………
「いよいよやな………」
「そうだね………」
「こんなに早く叶うことになるなんて思わなかったよ」
ミーティングを終えたその夜。
はやての誘いでなのはとフェイトは部隊長室に集まっていた。
来賓用の椅子に2人が並んで座り、はやては2人に紅茶を入れてあげてからフェイトの隣に座った。
「後は結果を残すだけだね」
「そうやな。………せやけど不安は無いで。皆がいるし、リミッターの制限もない。こんな最強メンバーで負ける方が不思議や」
「確かに加奈やバルトさんは新人離れしてるもんね。ハッキリ言って私達がチームを組んでやっとってレベルだもんね」
フェイトの言葉にウンウンと頷く2人。
「そうや、バルトさんの話で思い出したんやけどなのはちゃんってやっぱりバルトさんの事好きなんか?」
話は全く変わったはやての質問。ちょうど飲もうとした紅茶のカップが口をつける寸前で止まる。
「私も気になるなぁ………なのは教えて教えて!」
フェイトもテンションが上がり、身を乗り出す勢いで聞いてくる。
ほぼ、恋愛話に縁が無い3人だったが、ちゃんと興味はあった。
「好きっていうか………私はヴィヴィオちゃんが好きってだけで………」
「でもなのはちゃんはフェイトちゃんと比べられて悔しがってたやないか」
「ま、まあ何か悔しかったから………」
「でもなのはってバルトさんの話良くするよね?」
「話って言ったって愚痴だよ愚痴!!」
慌てて否定するなのはに2人の笑みは消えない。
「………で、なのはちゃんから見てバルトさんってどうなん?好きとか嫌いとか置いておいて」
「………バルトさんは自が強い人で、とても子供を育てられるような人じゃないんだけど、嫌々ながら言ったことをしてくれたり手伝ってくれたり、ヴィヴィオちゃんにも付き合ってあげるし、だらしない所ばっかりだけど芯はしっかりしてて、意外と優しいし………」
もじもじと指の先をちょんちょんと合わせながらそう呟くなのは。
「何やこの乙女………」
「なのは可愛い………」
「だけどバルトさんの好みって金髪巨乳の大人の美人だから私の事見向きもしてくれないと言うか………もっと私を見てくれても良いんじゃないのかと言うか………」
「駄目や、完全に恋する乙女や」
「なのは大丈夫、なのはも巨乳だし、金髪じゃないけど綺麗な髪だよ!」
「フェイトちゃん………」
抱き締め合うなのはとフェイト。
「私としてはこっちの方がやっぱりしっくりくるなぁ………」
はやては性格上、なのはとフェイトの2人は出来ているとの噂が、今まで彼氏が出来なかった理由でもあった………
「………」
「ドクターどうされました?」
「ああウーノ、ありがとう」
ウーノからお茶を入れてもらい口をつけるスカリエッティ。
彼の家のブームはほうじ茶だ。
「どうしても彼等の目的が分からない。これを見てくれ」
そう言ってスカリエッティはディスプレイに映像を出す。
「これはミッドの地図ですね」
「そうだ、そして今から出す赤い点がバリアアーマーのテロリスト達が起こした事件があった場所だ」
そう言って写りだした地図に赤い点が現れた。
「バラバラですね………」
「そう、彼等の出現場所はミッド全体に出現し、特にそれぞれの地区の人が多い場所に現れる事が多い。それでは簡単に鎮圧されるだろうし、ましてやアーマーは旧型。ハッキリ言って何をしたいのか理解が出来ない」
「確かに不自然過ぎますね………」
「………先ずは彼等の目的………いや、クレイン・アルゲイルの目的を調べなきゃいけないな………ドゥーエから何か報告は?」
「いえ、特には。相変わらずクレイン・アルゲイルは管理局の研究機関に普通に顔を出しているそうです。違法研究所も今ではほぼ検挙され、今日クアットロ達が見つけた場所も既に廃墟となっていました」
「そうか………分かった。とりあえず私達ももう少し詳しく調べてみよう」
「ドクター気を付けて下さい。今の管理局はデータ管理が昔と比べ物にならない程高度になってます」
「分かってるよウーノ。いざと言う時はサポートを頼むよ」
「はい………私はいつでもドクター………いえ、ジェイルの隣にいますよ」
「ああ、ありがとうウーノ………」
暫く2人は手を握りあっているのだった………
「全く甘くてこっちが疲れるわ………」
「いい加減慣れようよクアットロ………」
そんな事を呟いたのは未だに2人の関係に慣れる事が出来ないでいるクアットロとディエチだ。
自分達の家に帰りウーノに報告を終え、一度別れた後、報告し忘れた事を思い出した2人は再びウーノを探しているとスカリエッティのラボで良い雰囲気でいた2人を発見。
少し固まっていた2人は静かにリビングへと移動したのだった………
「で、どうだった?」
「私はさっぱりよ、ディエチは?」
「私の方も空振り。違法研究所のあった場所は既に閉鎖されてて全く使われてなかったよ」
今回は発見した研究所の確認ということもあって別々に行動していた2人。2人は今も違法研究所を潰し歩いていたが、最高評議会が死んでからどんどん摘発されていき、今ではほぼ無い状態になっていた。
「もう無いのかしら………あんなにあったのにいくら調べても出てこないなんていくらなんでもおかしすぎるわ………」
「ドクターもウーノ姉も調べてるのに出てこないのもおかしいよね」
「私達が調べていない所となると………管理局本部」
「でも流石に調べられないわ。前よりも開放的になっているけど、データ管理に関してはかなりしっかりしてるから」
「ドクターもリスクが大きすぎるって言ってたからね………」
そう言って2人は静かになる。
研究事態が無くなった事は自分達にとっても良い事なのだが、かなりの数があったはずなのにいきなり消えてしまい不気味に思えていた。
「良い方向に向かっていれば良いんでしょうけど………」
「クアットロ、ちゃんと準備だけはしておこう。何が起こっても対応出来るように。皆居ない中、戦えるのは私達だけなのだから」
「私は非力だから後方支援だけよ」
「頼りにならないな………」
「その辺りはチンクに頼みなさい」
そう言って互いに笑い合う。
「………頑張りましょう、ここは私達の家なんだから」
「うん、みんなの帰る場所、絶対に無くさせはしない」
今は4人しか住んでいないアジト。だけどここは地球にいる妹達やミッドにいる姉達の帰る家でもある。
そんな家を守る為にも2人は気合を入れ直したのだった。
全ては平穏な日々を過ごす為に………
新暦75年2月………
「はあ!!」
自分の体程のハルバートを体一杯使って横薙ぎに振るう。
「甘い!!」
優理はそれを自身の大きな盾、受け流し、レイピアをリンスを突き返す。
「くっ!?」
ハルバートを中心として絡み合う様にして突きを回避するリンス。
その動きはまだ子供であるのに妖美に見える。
「………まだまだ!!行くよ、ブラストファイヤー!!」
盾を向け、リンスに向かってブラストファイヤーを放つ優理。
「はああ!!」
ハルバートを体の後ろで回転させて向かってきた砲撃魔法を一刀両断した。
「………ハルバートの使い方、随分上手くなったんだなリンス」
「まあ暇さえあれば私も手伝ってたし、ゼストさんが指導してくれたからね」
そんな2人の模擬戦を見ている2人の影。
零治とシャイデだ。
「零治の方はどうなの?」
「何とかギリギリ………って訳にはいかず、完璧じゃないんだよな………」
「あらら。それほどレベル高いの?」
「魔法世界でも最強を名乗れる剣技かも………3年で初歩中の初歩だけしか使えなかったけど、それでも素手で人を殺せる程の威力があるものもあるし」
「何それ………」
「といっても俺じゃそれほどの威力は無いんだけど、恭也さんだったら普通に殺せるとか言ってたっけな………」
笑いながら言う零治に、シャイデは苦笑いしか返せなかった。
「取り敢えずいざというときの準備はOKって感じね」
「ああ。優理もそうだが星達も充分レベルアップ出来た。いざと言う時でも対応出来るだろう」
「そんな事態が無ければ良いんだけどね………」
そう言ってリンスを見るシャイデ。
その姿は娘の成長を見て微笑む母親の姿だった。
「………これは既に話合って決めた事なんだが、今言っとくな」
「何………?」
「俺達有栖家はスカさん達と連携してミッドの裏で暗躍をしているクレイン達の事を調査する事に決めた」
「本気なの………?」
「ああ、星達も話した。キャロが六課にいる以上、俺達も知らん顔するわけにはいかない。………スカさん逹の為にも、キャロが安心して生活出来るようにするためにもクレイン達の行動を阻止しなくちゃいけない。………と言ってもスカさん逹が手詰まりになった場合だけどな」
「でもどうするつもりなの………?」
「黒の亡霊の復活さ………」
心配そうに呟くシャイデに零治は自身満々に呟くのだった………
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