魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第13話 試験の後で………
前書き
こんにちはblueoceanです。
時間がかかって申し訳無い………
仕事がかなり忙しかったのと新たなマクロスのゲームに付きっきりでした………
「ごめんな疲れてるところ。私が聞こうと思っとる事については分かっとるね?」
「はい、お兄ちゃんやお姉ちゃん達がどう思っているかですね」
部隊長室。
皆が休んでいる中キャロは1人で来ていた。
用件は言われずとも分かっていた。
「私としてはキャロちゃんみたいな召喚師はなかなかおらへんから居てもらえると嬉しいんやけど………」
「ちゃんと話し合いました。お姉ちゃんもお兄ちゃんとも」
「………流石の超弩級シスコンの零治君でも簡単に引き下がるとは思えへんのやけど?」
「それは………大分……いえかなり苦労しました。………けどお兄ちゃんだけでなく、お姉ちゃん達も分かってくれましたから」
「は?機動六課の入隊試験を受ける?」
「…………はい」
キャロに大事な話があると聞いた有栖家の面々は受験勉強や、高視聴率を得ているドラマを予約し見るのを止め、皆でキャロの話を聞いていた。
内容は簡単『機動六課の入隊試験に受けたい』との事。
当然その場にいる皆が反対した。
「キャロ、あなたも分かっているでしょう?今の管理局がどんなに危険なのかを。それなのにどうしてわざわざ危険な事をしようとしているのです?」
「………友達の為」
「友達?一体友達で誰が管理局と関係がある?確かにエリオは試験に受けると聞いていたが、だから私もなんて甘い考えじゃ俺は許さない」
エリオは零治やゼストから指導を受けており、エリオの希望も零治は聞いていた。
まだ早いとゼストと同意見だった零治だったが、エリオの決意を覆す事は出来なかった。
「エリオ君の為じゃないの」
「ん?だけど試験を受けるのはエリオだけとしか聞いていないけど?」
「ううん、みんな受けるよ。ルーちゃん、真白ちゃん、………そしてエローシュ君」
「真白にエローシュ!?」
よく有栖家に遊びに来る普通の女の子と変態な男の子の名前を聞いて思わず大声を出してしまうライ。
他の皆も声には出さなかったもののそれぞれ驚いている。
「………どういう事?私知らないよ?」
「………ごめん優理」
本当に申し訳なく思っているのか、真っ直ぐ優理の顔を見れないキャロ。
どうやら優理には秘密にしていたことらしい。
「………結局私は仲間外れって事なんだ………」
「優理違う、違うの!!」
「じゃあ何で!!私だって馬鹿じゃないのよ!!少しは感づいてたけどまさかそんな大事な事を………」
「これは優理のためでもあったんだよ!!優理は自分の凄さがまるで分かってない!!」
「………と言うことは危ない事に足を突っ込んだんだな」
夜美に言われ、再び俯くキャロ。
「キャロ、話してくれ。出なければ分からないままだぞ?」
「でも約束が………」
「キャロ………」
「………」
既に泣きそうになるキャロに零治は優しく諭すがどうしても口を開かない。
「レイ、どうしましょうか?」
「でもここまで頑固なキャロも初めてだな」
星とアギトが零治に声をかける。
基本的にキャロは言うことは聞くし我儘も言わない。
それが逆に不安に思っていた零治達。
ここまで頑固なのは初めてだった。
「………キャロ、少しいいか?」
そこに声をかけたのはフェリアだ。
フェリアは高校を卒業した後スカさんのアジトに戻ることに決めている。
最近増えてきているバリアアーマーの傷害事件。
鎮圧されればその使い手は皆自害。
ミッドで何かが起きているのは明らかで、スカさんも独自で調べる事にしたようだ。
徐々に敵のバリアアーマーの性能も上がってきており戦闘要員おろか人手が足りない今のスカさん家の現状では殆ど何も出来ない。
そんなスカさん家の事情を感づいたフェリアが大学への進学を止め、家に戻ると言ったのだ。
スカさんとウーノさんは当然反対したが、フェリアは頑なに断った。
「ここ数年の間、ドクターでも見たことのない封鎖結界が張られた形跡があったのが確認できた。もしやそれが関係しているのではないか?」
そう言われたキャロは口には出さなかったが、驚いたように体がビクつく。
「気がついたのは最近なので何があったかは調べようが無いが、その封鎖結界が張られた日のキャロはボロボロの格好で帰りもいつもより遅かった」
「えっ、そうだったっけ?」
「私もうる覚えですが覚えてます。確かあの時のキャロはかくれんぼに熱中して遅くなったと。ちゃんと時間を守ってるキャロにしては珍しかったので」
「ああ~そうだったね、そういえば!」
「我も思い出した」
ライの後に星が覚えていたことを言ったお陰でライや夜美も思い出したようだ。
「………でもフェリア姉、それが一体キャロと何が関係あるの?」
来年から高校生となるセッテが呟く。
相変わらず零治に対するスキンシップが凄いのだが、フェリアが一回キレて姉としての強さを見せてからフェリアに対して逆らわなくなった。
「………戦闘があったのだろう。それは恐らく友達が原因で、その秘密を守るために敢えて管理局に入る。それも出来れば信頼でき、なおかつ信頼できる人がいる部隊。今ちょうどそんな部隊が出来る予定だからな………キャロ違うか?」
そんなフェリアの考察にキャロはあんぐりと口をあけて驚いていた。
「どうやら当たりみたいだな。そしてそれを喋らないのは零治の為か?」
「フェリア姉………」
「だが、この超絶ロリコンの零治が大人しくしていると思っているのか?」
そう言われてキャロは返す言葉を無くす。
「おいフェリア、それは違うぞ。流石の俺も大人に………」
「………学芸会」
「うっ………」
星にそう呟かれ、言葉が出なくなる。
キャロ達が3年の時、毎年行われる学芸会があった。
当然毎年欠かさず見に行っていた有栖家だったが、その年は運悪く実力テストがあり、全員強制で学力調査をすることに決まっていたのだ。
だが零治は星達と同じ様に登校し、腹痛でトイレに向かって行ったのだがその後、学校で姿を見たものは誰もいない。
当然翌日先生方からコッテリ絞られたのだが、本人は至って清々しかった。
要するに妹が入ると、見境が無くなるのである。
「僕達の時よりも熱意が強いんだもんね………レイは」
「それを信用しろと言う方が無理な話だ」
「………すいません」
返す言葉が出ず深々と頭を下げる零治。
「………とこんな感じで零治は必ずキャロ達の事に首を突っ込むぞ?………いや、言い方が駄目だなこうじゃない。キャロ、家族1人の問題は家族全体の問題だ。私達全員が首を突っ込むぞ」
言い直したフェリアがハッキリと宣言した。
「そうだな。キャロが事情を言えないとはいえ巻き込まれたなら助けないとな」
「そうですね、何て言ったって師匠の愛妹ですから」
アギトとセッテもフェリアの宣言に同意する。
「みんな………」
「キャロの癖に私に隠し事なんて………」
「優理ごめんなさい………」
「別に良い。だったら私も機動六課に行って………」
「優理は駄目だ」
「レイ………」
零治の言葉に不満げに呟く優理。
「優理と星達マテリアルの3人は管理局にとってかなりの研究材料と見られるだろう。4人ともプログラムの筈が人間として普通に生活しているのだからな」
「………うん、そうだね」
深く頷いた優理。
キツい事を言ったり我儘の様に見えるが根は素直なのだ。
そんな優理の頭を零治は撫で、 キャロに向き直る。
「だけど俺達はそんなこと気にせずキャロの元に行くぞ。それが家族であり有栖家なんだ」
零治がそう言うと皆が頷いた。
「だからキャロ頼む、事情を話してくれ」
両肩をしっかり掴みキャロの目を見て言う零治。
「……………分かりました」
そんな有栖家の面々に負け、キャロは口を開いた………
「新型ベヒモス………」
「うん。真白ちゃんのデバイス、スカイシャインにはそのデータが眠ってるの」
キャロが話始めた内容、それはフェリアの言葉通りだった。
そして全ては繋がっていた。
つい最近起きたバリアアーマー事件。チンピラ達も探し物でベヒモスのデータを探していた。
「だが何故真白がそんな事持っているのだ?」
因みに夜美はキャロの友達を全員呼び捨てで呼んでいる。
「真白ちゃんのお父さんがくれた大事な物だったの。多分研究者でたまたま出来てしまった恐ろしい兵器を何とか隠そうとしたんじゃないかって」
「なるほど………でも、データなら消せば良いんじゃない?それかデバイスをぶっ壊しちゃうとか………あ」
「なるほど、だから内緒って事だったんだな」
ライの不意に話した事で何故キャロが頑なに言わなかった理由もハッキリした。
「その宝石が唯一の形見、或いは手掛かりなんだな」
「はい。私達が六課に行くのもそれが1つの理由なんです。真白ちゃんのお父さんの捜索、そして信頼できる人達が居る部隊ならいざというときに頼りになるって」
「全く、よくもそんな事を思い付いたな。………まあ全てエローシュ辺りだろうな」
「はい。………だけど皆が納得しました」
「そうか………」
そう言って俺は考える。
エローシュの言った通り機動六課には優秀と言うより最強と呼べる魔導師が揃いに揃っている。
しかもリミッターも特に無いため皆が本来の力量なのだ。
機動六課が安全でなければ、ミッドチルダはどこも危険地帯だろう。
こっちで生活しているよりはかなり安全だ。
………となれば、
「………分かった。受けてみろ」
「お兄ちゃん!?」
「レイ良いのですか?」
星が俺に問いかけてくるが、他の皆もそう思っているらしく、少々不満げな視線で見てきた。
「キャロの気持ちもそうだが、もしまた襲われた時、安全で言えば六課の方が良い。かなり目立ってしまう部隊だけどそれ以上に安心できる管理局でもトップの魔導師が揃いに揃っている。あっちの方が安全だ」
「確かにそうですけど………」
「本当に良いのレイ?」
星とライは心配そうに俺に話しかける。夜美も何も言わないが気持ちは同じみたいだ。
………そう言えばこうやって長期的に家から家族が離れるのは初めてかも知れない。
今まで何だかんだずっと一緒だった為、3人はかなり心配しているのだろう。
「心配するなって。はやてや加奈達も居るんだし、それでも心配なら見に行けば良いんだ。それにキャロが自分で決めたんだ。理由も分かったんだし尊重してやろう」
「そうですね………」
「分かったよ………」
「我も了解した」
「よし、なら決定!!キャロ、試験頑張れよ!!」
「落ちたら許さないから………」
「うん頑張るよ優理」
こうして有栖家の話し合いは終わったのだった………
「なるほど………いつまでも子供扱いはアカンって事やな」
キャロは重要な所は除いて説明し、はやても納得した。
簡単に言えば、自分の能力をもっと上手く扱える様にするために六課で鍛錬すると言い、何を言われようとも折れずに言い続けて零治達と納得させたと。
「そういうことなので私は大丈夫です」
「了解や。………まあ零治君だったらパッと来そうやけど」
「ですね!」
そう言って互いに笑いあう2人。
「キャロちゃんについてはこれでOK。悪いんやけど、えっと………江口信也君やったな
。彼を呼んでくれへんか?」
「江口信也………?あっ、エローシュ君ですね!分かりました、呼んできます」
そう言ってキャロはお辞儀をして出ていった。
「エローシュ………?まあ面白いし、そっちでええか」
1人残ったらはやてが入り口を見ながら小さく呟いたのだった………
「エローシュ君!!」
「おっ、キャロ!!座ってみろよ、このソファーふかふかだぜ!!」
「ふかふか~!!」
「えっと………そっちの金髪の子って誰かな?」
六課の職員にエローシュの場所を聞いたキャロは談話室へと向かっていた。
キャロ、真白、エローシュの3人以外は個人によるが全員ダメージを受けておりまだ治療中だ。
「ね、ねえ!!もう一回ウノやろウノ!!」
「おう良いぜ!俺とヴィヴィオコンビの実力見せてやるよ!!」
「覚悟してね!!」
「うっ、こ、今度は負けないもん!!」
「ウノで2対1っていじめにしか思えないんだけどな………ってヴィヴィオちゃん!?」
「はい!!………ってあなた誰?」
「初めまして、私有栖キャロって言います。お兄ちゃんから話は聞いてるよ」
「お兄ちゃん………?有栖って………ああ零治だ!!じゃあキャロは零治の妹なの!?」
「はい、そうですよ」
「約束覚えてたんだ………ねえ、私と遊んでくれる?」
「もちろんです。いつもって訳にはいきませんが、遊ぶ時間があったら一杯遊びましょう!」
「うん!!」
嬉しそうに答えるヴィヴィオ。
「よっしゃ!!じゃウノ始めるか!!先ずは真白に人生の厳しさを………」
「あっ、エローシュ君、はやてさんに呼ばれてるよ。何やら気になることがあるらしいみたい」
「何!?くそ………済まないヴィヴィオ隊員、後は頼んだ!!」
「任せてください、エローシュ隊長!!」
互いに敬礼し合う2人。
そしてエローシュは1人出ていった。
(エローシュ君と既に仲良くなったようですけど悪影響にならないでしょうか………?)
「キャロ、2人でウノしててもつまらないから一緒にやらない?」
「あっ、はい是非」
そんな事を思いながらもキャロは真白の誘いに乗り、ウノを始めるのだった………
「さて部隊長室は………何処だ?」
1人部屋を出たエローシュ。試験を始める前に受付で機動六課の案内状を受け取ったエローシュであったが見事に無くしてしまった為、全く地理が分からない。
「ヤバイ、完全に迷った」
偉い人は高い所が好き。そう考えたエローシュは一番上にやって来たのだが、どうしても見つけられない。
エローシュもキャロやエリオ程ではないがミッド語を読む事は出来る。
今、案内板を確認している。だがどうしてもまだ時間がかかってしまうのだ。
「えっと………部隊長室はやっぱりこの階だな………って場所が書いてねえ!!せめて部屋位置ぐらい図で書かれても良いのによ………」
ガックリとうなだれるエローシュ。
「どうしたのだ?」
そんなエローシュにピンクのポニーテールの女性が話しかけてきたのだった………
「遅いなぁ………何してるんやろ?」
「もしかして迷っちゃいました?」
「まさか………でも確かに案内板には詳しい部屋位置は書いておらへんなぁ………」
「私達はともかく新人さん達は迷っちゃいそうですね」
「リインも最初迷子になったもんなぁ」
「は、はやてちゃん!!」
部隊長室、キャロが出ていった後、リインを呼んだはやてはエローシュが来るのを待っていたのだが、待って既に30分過ぎていた。
「リイン、悪いんやけど探してきてくれへんか?」
「分かりましたです」
そう言って管理局の制服姿のリインは小さいまま出口の方へ向かうと、
「主、失礼します」
そう言って部隊長室にシグナムがやって来た。
「あっ、お疲れ様です。………ってあれ?その右手で引きずっているのは………」
「ああ、この階にいた変質者でな。いきなり胸を後ろかた鷲掴みしようとしてきたからこうして連れてきた」
そう言って前に放り投げられた人物。
「あがが………」
戦闘で無傷だった筈のエローシュがボロボロの姿で投げられたのであった………
「いやまさかシグナムにまで手を出そうとするとはなぁ~」
「だってあんな張りがありそうな爆乳天然記念物並みっすよ!!あれほど素晴らしいのを見たのはキャロの姉のライさんくらいです!」
「確かに昔からデカかったからなぁ~そう言えばライちゃんにもチャレンジしたんか?」
「………一回やろうとして近づいたら零治さんに凄い殺気で睨まれました。あのまま決行していたら今俺はいないでしょう」
「つまらへんな………そこは死を覚悟してチャンレンジせな本当のエロにはたどり着けへんで」
「いや、好きでエローシュになった訳じゃ無いですから。ってか知ってるんですね。………まあいいや。ただ単に俺の趣味が周りに認められないだけです」
「人それを変態と呼ぶ」
「人は自分と違ったものを簡単に認められない………」
うんうんと頷き合う2人。
「それ分かるわ………私もおっぱい揉もうとするたんびに避けられるんよ………出来れば職員全員揉んでランク付けしときたい所やけど………」
「是非私めにそのデータを!!むしろ手伝わせて!!」
「私は構わへんけど肉塊になりたいん?」
そう聞いてゾッとした顔をするエローシュ。
魔法を使い始めて数年のエローシュだったが、六課のメンバーがどれくらい凄いのかはエクスの説明やエリオの紹介もあり分かっていた。
「ち、因みにランクはどういった具合に?」
「大きさ、張り、綺麗さの3項目やな。それぞれ分野別にランク付けし、総合1位を決める。誰もしたことないやろこんな事。だからこそやる価値がある!!」
「何て人だ………世界はまだまだ広い………」
そう言って1人感動に浸るエローシュ。
「あの………主?」
「ん?何やシグナム」
「2人の会話に私とリインが全くついていけないというか………リインには聞かせたく無い話というか………」
「エッチなのはメです!」
そんな2人の会話を近くで聞いていたシグナムとリインは会話に入ることも出来ず、ただ聞いているしか無かった。
「それにそんな事を話すために呼んだのですか?」
「ああ、そうやった。案内ありがとなシグナム」
「はい。私も同席しても良いですか?」
「構わせんで」
「ありがとうございます」
そう言って近くの椅子に座るシグナム。リインは真面目になったはやてにホッと一息ついて、はやての肩に止まった。
「じゃあここからは真面目な話や。君に聞きたいんはデバイスの件や。彼………たしかエクスやったか?あれは何や?」
「何や?って………見ての通りユニゾンデバイスですよ」
「そうやな。だけど普通のユニゾンデバイスとは違う所が多過ぎる。………今彼は何処におるんや?」
「次元空間」
「………本気で言ってるん?」
「だって本人がそう言ってるし、出てきた所を見てましたよね?アイツ、次元を切り裂いて現れたでしょ?あれが次元の狭間」
エローシュの言葉をどうしても理解しきれないはやては次に聞く質問が言葉に出ない。
「俺もハッキリと分かっている訳じゃないんですけど、エクスが言うには世界の境界線の狭間、間に挟まれてる空間だとか。何か一番落ち着くとか言ってたんですけどそれは恐らく嘘でしょうね」
「………駄目や、全然理解できへん………」
「私もですぅ………」
はやてとリインは難しい顔でうなだれ、シグナムは涼しい顔をしていたが、全く理解できなかった。
「信也、今エクスを呼び出すのは可能か?」
「シグナムお姉様!!俺を信也と………」
「あだ名で呼ぶとこっちが穢れそうでな」
「おおう………」
「貶されてその反応………まさに生粋の変態!!」
「えっへん!」
「胸張っちゃ駄目ですぅ!!」
「おほん!!」
大きく咳払いをしたシグナムによって会話はそこで中断された。
「主!」
「すまんなぁ………どうも話が合って脱線してしまうんや………何でやろ」
「似たもの同士だからです」
「私は変態や無いで」
「「「………」」」
「あれ?誰も否定してくれへんの?」
そんなはやての問いに誰も返事をしない。
「………もうええわ。それじゃあ話の続きやけどそのエクス君は今呼び出せる?」
「う~ん………アイツあまり表に出たがらないんですよね………エクス、出てこい」
『めんどい』
「めんどいですって」
「めんどいって………一応マスターなんやろ?」
「まあそうですけど。いざというときはちゃんと助けてくれるし、別に良いと思いますよ」
そんな答えに呆れるはやて。
「せやけど色々と本人に聞きたいことがあるんやけど………」
「だってよ、さっさと起きて美人なお姉さんの所に出てこいや!!」
某元格闘家の様にちゃんと動きも加えて1人叫んだ。
「ネタぶっ込むなぁ………」
「普通に出来ないんでしょうか?」
しかし何も起こらない。
「おいエクス!!頼む!!この白けたままじゃ俺の心が駄目になる!!」
「もうお前は手遅れだろうが………」
そう言いながら次元の穴からエローシュ程の長い髪の男の子が現れる。
「初めまして夜天の主、そしてヴォルケンリッターの烈火の将、そして君がリインフォース」
「ツヴァイです」
「しかしまさか実現させた人物がいたんだね………俺がふとして思いついた事だったのに………」
「実現させた?どういう事や?」
「どうもこうも俺が思いついた案だからさ。優秀な魔導師のデータを蒐集し、それを研究することで戦争を有利に進める。まあ実現する前に俺は次元の狭間に封印されたけど………」
そんなエクスの発言に全員何も言えなくなる。
一番最初に我に返ったはやてはエクスに対しおそるおそる質問をした。
「君は………何者なん?」
「………俺はエクス・フォン・インヴェルト。史上初のユニゾンデバイス………いや、その為に実験台になり、その初の成功例である大昔のとある名家の息子さ」
あの後エクスは自分の覚えている範囲の歴史を話始めた。
エクスは聖王オリヴィエの敵対していた1国家の領主の息子。
その時の聖王家はベルカを統一しようと動きそれは目前へと迫っていた。そんな中エクスの国は諦めず敵対を続けていた。
そんな中、聖王家で起きた事件。
「聖王家の中でも生粋の使い手だった5人の聖騎士の1人、ベルガント。彼が起こした騎士大虐殺。彼は他の聖騎士達により取り押さえられ、後に処刑。その後だ、聖王オリヴィエがおかしくなったのは。詳しくは知らないんだがオリヴィエはどちらかと言うと好戦的な性格じゃ無かったらしい。しかしそれを許さなかったのは周り。父上はよくオリヴィエは“飾りの王”と呼んでいた」
「飾りの王………」
「にわかに信じられん話だ………」
はやてとシグナムは難しい顔でそう呟く。
今でこそ皆に崇められている聖王がまさかの飾りの王呼ばわり。
カリムが聞いたら卒倒しそうな話である。
「変わったオリヴィエは周りの反対を聞かず他国進行を無理にでも進めていった。そして戦争が更に激化していった中、生まれてからずっと病弱な俺はある実験に手を貸す事にした」
「手を貸す?」
「それがユニゾン。融合により更なる力を得る事を目的とした実験だ。今まで成功例が無かったが既に無い命だと思ってたからね、未来に役に立つならと思い志願したんだ。そして上手くいった」
「エクス君………」
「そんな顔するな夜天の主。そのお陰でそのチビッ子も生まれたんだ。それに俺は今も生きている」
「………そうやな」
「チビじゃないです、リインです!」
「でだ、そこからの記憶は更に曖昧だ。覚えているのは激化していく一方、聖王は保有していたゆりかごを使う事を決めたらしい。そしてそれが俺の封印の原因だったみたいだ」
「みたいだって………」
「仕方がないだろう?俺はいつの間にか封印される事になって封印されたのだから」
「そして現代に封印が解かれた」
「何でこの変態の手元にあったかはまるで分からない。だがコイツのお陰で今普通に会話も出来る。それだけは感謝してるさ」
「親父の外国の土産だって言ってたけど?………ってか感謝してるならもっと誠意を見せろよな………」
「いざというときに手伝ってるだろう。虫みたいな魔力しか持っていないマスターさん」
「ぐっ………」
痛いところを突かれ、何も返せないエローシュ。
「エローシュ君、魔力ランクいくつなのですか?」
そんな話を聞いていたリインが興味本意で聞いてみた。
「D………」
「えっ?」
「Dランクっすよ!!ええ低いですよ、虫並ですよ!!でも良いんです、その辺りはエクスとこの頭脳でカバーしますから!!」
やけくそ気味にそう答えるエローシュ。
「低いってレベルではないな。ユニゾンしなければ何も出来ないではないか」
「まあコイツは単体で戦闘に出すのは瞬殺行為ですが、裏方やデスクワークをやらせれば人一倍働けると思うぞ。マルチタスクだけは常人以上の事を出来る頭を持っているからな」
「デスクワーク!?何それ!?魔導師って魔法使って平和を守ってれば良いんじゃないの!?」
「エローシュ君、地球の警察は平和を守るだけやった?」
「………いいえデスクワークもあります」
「そういうことや」
「俺、まだ小学生………」
「ミッドでは働いてる子はバリバリ働いとるな」
「ありえねえ………」
がっくしとうなだれるエローシュ。
「まあ大体は魔力ランクが高い子だけ何やけどな」
「じゃあ俺はやらなくて良いよね?だってDランクだもの」
「マルチタスクどれくらい出来るん?」
「一度に10個の事に対応出来る」
「ちょ、エクス!!」
エクスがそう言うと3人がポカンとした顔でエローシュを見つめた。
「そ、それほどのマルチタスクが出来るのか………?」
「訳が分からないです………」
「まさに変人やな………」
「何で!?そこは天才じゃない!?別に関係無いじゃん!!」
「まあ今に始まった事じゃ無いだろう」
「釈然としないなちくしょう………」
不満げにそう洩らすエローシュ。
「で、どうします主はやて。全て上に説明しますか?」
「これは流石に説明出来へんわ………。下手をしたらエクス君、研究機関に送られていじられるかもしれんしな………」
「確かにそうですね。私もにわかに信じられません………」
「登録はしたんか?」
「登録?何それ?」
「………ええで、私の方でやっとく。取り敢えずエクス君は余計な事を喋らん様にね」
「了解した」
「じゃあ取り敢えず今日は大変やっただろうし、話はこれまで。また明日部隊について詳しい説明をすると思うからそのつもりでな」
「うい~っす。それじゃあ俺はキャロ達とウノの続きを………」
「俺は戻るな。後余計な事で呼ぶなよ」
そう言ってもう一度次元の穴を作り、その中へ消えていくエクス。
「………ありえへん事はありえへん………ここは魔法世界って改めて思い知らされるわな………」
「ってか俺はこの世界自体がまだ信じられないんですけどね」
「まあ来たばっかの時は私もそうやったよ。まあ外国に来たと思えばええねん」
「まあそうですね。それじゃあ俺はこれで………」
「ゆっくり休んでや」
はやての言葉に頷いたエローシュは部隊長室へ出ていったのだった………
「さてシグナム、これから彼をしっかり鍛えておかんとな」
「ええ、みっちりしごくつもりですが彼のポジションは何処なんですか?」
「フルバックやね。フェイトちゃんもそうやけど苦労するで~。彼らのポジショニングはかなり極端やから」
「というと?」
「あの時の戦闘はガードウィング1人、センターガード1人、フルバック3人、そしてエローシュ君はフルバックより更に後方や」
「………確かに極端ですね」
「………まあフロントアタッカーはルーちゃんが出すガリューが務めるから問題無いんやけど、どうしても前線が薄い上、攻められたら弱いって弱点が丸分かりでもあるんや」
「なるほど、1人1人クロスレンジでの戦闘訓練が重要になってきますね」
「そうや、だからこそフェイトちゃんとシグナムは適任と言えるんや」
「そうですね。私はフロントアタッカー、ハラオウンはガードウィングですから」
「頼むな。あの子達をしっかり教導したってや」
「任せてください、主はやて」
シグナムは力強くそう答えたのだった………
「なあ」
『どうした?』
「何でゆりかごの事をもっと詳しく言わなかったんだ?ってかエリオ達にも言ってないよな?」
『俺も詳しくは分からないんだ………封印直前に父上が言っていた事でゆりかごに関係するかも分かってもいない。余計な情報は邪魔と思っただけだ』
「………まあいいけどさ。だけど何だろうな、“エンジェルソング”って」
『“天使の歌”………父上は俺に何を言いたかったんだ………?』
そんな会話をしつつキャロの所に戻る2人だった………
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