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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第百二十五話 シェリルの賭け

           第百二十五話 シェリルの賭け
 両軍の戦いがはじまる中でだ。
 シェリルはルウを抱いてだ。何処かに向かうのだった。
「いい子にして頂戴」
「だあ?」
 ルウはわからない。何もだ。
「今こそ貴方の力を示す時だかた」
「だあ?」 
 その何もわからないルウを抱いてだ。彼女は何かをしようとしていた。
 両軍はだ。遂に激突した。グラヴィオンの剣が唸る。 
 それで敵艦を一隻真っ二つにする。その爆発を見ながらエイジが言う。
「あと何分だ!?」
「六分だよ」
 斗牙が答える。
「それだけだよ」
「ちっ、やばいか?」
 さしものエイジもだ。今はだ。
 危ういものを感じていた。それで言うのだった。
「このままだとよ」
「何言ってんのよ、諦めたらそれで終わりよ」
「その通りです」 
 ルナとエイナがそのエイジに言ってきた。
「あと六分もあるじゃない」
「だから頑張りましょう」
「そう、あと六分」
「それだけあるのよ」
 リィルとミズキもこうエイジに話す。
「それだけあれば」
「どうとでもなるわ」
「そうか。そうだよな」
 言われてだ。エイジも頷いた。
「こんな状況。いつもだからな」
「その通りだ。諦めるな!」
 レイヴンもグラヴィゴラスからエイジに言う。
「最後の最後までだ!」
「ああ、わかったぜ!」
 エイジもだ。その言葉を受けた。そしてそのうえでだ。
 斗牙に対してだ。こう叫んだ。
「斗牙!どんどん叩き斬ってくれ!」
「うん、来る敵を次々にだね」
「敵は向こうから幾らでも来るからな!」
 まさにだ。そうした戦いになっていた。
「それならな!」
「何の遠慮もなくだね!」
「休んだら負けだ!戦いの後の牛乳はそれからだ!」
 こう叫んでだった。彼等もだ。 
 目の前に来る敵を次々に斬っていく。戦いは熾烈を極めている。
 激戦の中でだ。遂にバッフクランの数を二割程度まで減らした。しかしだった。
 カガリがだ。アサギ達に問うた。
「あと何分だ!」
「一分です!」
「あとそれだけです」
「残りは」
「辛いか?」
 流石にだ。カガリも言った。
「残り一分で敵を全滅させてか」
「そうですね。ぎりぎりどうなるか」
「そんな状況ですよね」
「今は」
 アサギにマユラ、ジュリも言う。
「この状況はちょっと」
「これは彗星を破壊するか」
「それしかないんじゃ」
「御主人様、どうします?」
 チカがシュウに尋ねる。
「ネオ=グランゾンの縮退砲ならいけるんじゃないですか?」
「確かに。いけますね」
「じゃあここはそれで一気にですね」
「そうしましょうか。それでは」
 シュウがだ。ネオ=グランゾンの縮退砲を出そうとした。だがだった。
 ソロシップの甲板でだ。異変が起こっていた。
「あれは」
「シェリルさん!?」
「どうして!?」
「何で戦闘中に甲板に」
 それを見て誰もが頷く。そしてだ。
 デクがだ。驚いて言うのだった。
「シェリルさんルウを連れてるよ」
「どうしてなんだ!?」
 これはだ、コスモにもわからなかった。
「どうしてシェリルさんがルウを」
「まさか」
 ゴウがそのシェリルを見て言う。
「あの人はルウを使って」
「イデよ、応えて欲しい!」
 シェリルはルウを手にして言う。
「今ここには純粋に守りしか思わぬ子が死を恐れている!」
「イデに呼び掛けている?」
「ああ、そうだな」
「あれは」
 皆それがわかった。
「まさか。本当に」
「イデに呼び掛けて」
「今のこの状況をどうにかしようとしているんだ」
「駄目だ!」
 ここで叫んだのはギジェだった。
「シェリルよ、それはしてはならない!」
「ギジェ、どうしたんだ!」
「今のシェリルは暴走している!」
 ギジェはコスモに対しても言う。
「このままではかえってだ!」
「イデよ!」
 そのシェリルがまたイデに呼び掛ける。
「さあ、今こそ!」
「いかん、ゲージが!」
 ギジェは今度はイデオンのゲージを見て叫んだ。
「上がっていく!」
「まさか」
「シェリルの呼び掛けに応えてイデが」
「それでなのか?」
「まさか」
「間違いなくそうだ」
 ギジェもそれはその通りだと言う。しかしだった。
 彼はだ。危惧する顔で言うのだった。
「このやり方はだ」
「そうだ、許されることじゃない」
 コスモもそのことを言う。
「赤ん坊を使うこんなやり方は!」
「くっ、目障りだ!」
 そしてハルルは。
 そのシェリルとムウを見てだ。忌々しげに命じた。
「あの戦艦に砲撃を集中させよ!」
「ロゴ=ダウの船に」
「あれにですね」
「そうだ。沈められないまでも」
 それでもだというのだ。
「あの甲板にいる奴等をだ」
「子供もいますが」
「赤子も」
「構わん!」
 感情のままだった。今のハルルは。
「所詮異星人だ。撃て!」
「で、ですが」
「それでも」
 流石に赤子を面と向かってはだった。彼等もだ。
 戸惑いを見せる。しかしその彼等にだ。
 ハルルはだ。厳しい声で告げた。
「撃たぬ者は私が撃つ!」
「司令がですか!」
「我々を!」
「命令に従えぬ者はいらぬ!」
 だからだと。理由をつけて言うのだった。
「だからだ。撃て!」
「は、はい!」
「わかりました!」
 実際に砲を向けられては従うしかなかった。こうしてだ。
 ソロシップに攻撃が集中される。辺りはしない。
 だがその攻撃を受けてだ。シェリルとルウが。
「ああっ!」
「あああん!」
「おい、危ないぞ!」
「シェリルさんとルウが!」
「このままじゃ!」
「コスモ!」
 ギジェがまたコスモに叫ぶ。
「ここはだ!」
「二人をだな!」
「そうだ、助けるべきだ!」
 こうコスモに言うのだった。
「さもなければ」
「わかってるさ、それならな!」
 コスモはイデオンを動かした。そうしてだった。
 そのイデオンでだ。二人を何とか受け止めた。攻撃を受けつつあった二人をだ。
「ギジェ!?」
「危ないところだったな」
「私は」
「馬鹿なことをするな」
 こうシェリルに言うギジェだった。
「このまま戦いを続けていても駄目だが」
「ルウを使うことも」
「それは駄目だ。イデも必ずだ」
「必ず?」
「善き発言に辿り着く筈だ」
 こう言うのだった。
「だからだ。軽挙は慎むのだ」
「ええ、それは」
「コスモ、これでいい」
 二人を助け。ソロシップの中に戻るのを見て言った。
「それではだ」
「いい加減にしろ!」
 一矢がハルルに叫ぶ。
「何故カララさんを見ないんだ!」
「あの憎むべき妹をか」
「あの人は星を越えて愛を育んだ!」
 このことをだ。ハルルに叫ぶのだった。
「それなのに姉のあんたは憎しみを広げるのか1」
「だからこそだ!」
「だからこそ!?」
「そうだ、カララを認めてしまってはだ」
 どうかというのだ。
「ダラムに申し訳が立たん!」
「あんた、まさか」
「話は聞いたよ」
 今度は万丈がハララに告げる。
「貴女の言葉はね」
「ではどうするというのだ」
「それでも僕は貴女を認めない」
 これが万丈のハルルへの言葉だった。
「貴女に大義はない」
「それは何故だというのだ」
「私的な憎しみで戦いを拡大させている」
 だからだ。大義はないというのだ。
「それではイデの思う壺だ」
「巨神を使う異星人が何を言う!」
 ハルルは万丈にも感情を露わにさせて言う。
「御前達が巨神を使わなければ!」
「彼は死ななかったんだね」
「そうだ、ダラムも死なずに済んだのだ!」
「もう戦いは無意味な筈だ!」
「そうよ、この分からず屋!」
 コスモとカーシャもだった。
「それで何故戦う!」
「何処までカララさんが憎いのよ!」
「私のダラムを殺して何を言うか!」
 あくまでだ。己の憎しみを露わにするハルルだった。
「怨みを晴らさねばダラムに済まぬ!」
「憎しみか!それならな!」
「何だというのだ!」
「俺も同じだ!」
 これがコスモの叫びだった。心からの。
「父も母も。隣人を殺された!」
「黙れ!異星人が!」
「それならいいのか!星が違うなら!」
「そうだ、何を言う!」
「誰がそうさせた!」
「最早。無駄だ」
 ギジェがそんなハルルを見てだ。無念の声で呟いた。
 そしてコスモにだ。こう告げた。
「コスモ、イデオンガンだ」
「あれが使えるだな」
「そうだ。それでバッフクラン軍を。そして」
「カララの姉さんも」
「最早彼女は憎しみから覚めることがない」
 それがわかっての言葉だった。
「だからだ。そうしてくれ」
「わかった。それじゃあな」
 コスモはギジェに言われるままイデオンガンを構えた。その前にはバッフクラン軍の残り全軍がいた。無論ハルルの旗艦も存在している。
 そこにだ。イデオンガンを放ったのだった。攻撃は一瞬で。全軍を破壊してしまった。
「姉さん、これで」
「ダラム・・・・・・」
 ハルルは沈みゆく旗艦の中で呟いていた。既に周囲は炎で燃え盛っている。
「私は貴女の仇を討つことができなかった」
「最後までダラムのことを」
「けれど」
 それでもだというのだ。
「これで貴方のところへ行ける」
 満足した笑みを浮かべてだ。そのうえで炎の中に消えた。
 爆発が起こりだ。そうして旗艦も沈んだのだった。
「姉さん、貴女は最後まで」
「カララ、今葉」
「ええ、姉さんは最後まで善き力を信じられなかった」
 こうベスに答えるカララだった。
「それがこの結果なのよ」
「一歩間違えれば俺達もか」
 ベスもカララの話を聞いて呟いた。
「同じなんだな」
「そうね。本当に」
 そしてだ。カララは。
 そのシェリルの死んだ場所を見てだ。涙を一筋流して言った。
「さようなら、姉さん」
「敵部隊の全滅を確認!」
「残っている機体及び艦艇はありません」
 サイとミリアリアが報告する。
「では今よりですね」
「私達は」
「ええ、まずは各機帰還して」
 マリューもすぐに指示を出す。
「すぐにこの宙域を脱出するわ」
「!?まさか」
「どうしたんだよ、カズイ」
 トールが不意に声を出したカズイに問う。
「何かあったのか?」
「彗星が速い」
 カズイの顔が見る見るうちに曇っていく。
「予想以上だ!」
「えっ、それじゃあ」
「俺達逃げられないのか!」
「まさか、折角敵を倒したのに!」
「こんなところで死ぬなんて!」
「それではです」
 シュウがだ。出ようとする。
「やはり私のネオ=グランゾンで」
「はい、やっちゃいましょう」
 チカもシュウに対して言う。
「それじゃあ御願いしますね」
「彗星のコアを破壊します」
 具体的にはどうするか。シュウは言った。
「思惑通りにはいかせません」
(無駄な真似を)
 そのシュウにだ。誰かが言った。
(するのか)
「遂に出て来られましたね」
「ああ、あいつですね」
 チカ、シュウと無意識下で同じである彼女だけが。シュウと同じくわかることだった。
「出て来たんですね」
「はい、今しがた」
「じゃあここは余計に」
「やらせてもらいます」
「各機集結だ!」
「俺達もな!」
「コスモ!」
 またギジェが彼に声をかける。
「ここはだ」
「イデオンもだよな」
「イデオンガンだ」
 またそれを使うというのだ。
「もう一度使おう」
「ああ、わかったぜ」
 コスモもギジェのその言葉に頷く。
「それじゃあ今からな」
「あれならいける筈だ」
 ギジェはイデオン、そしてイデオンガンに希望を見出していた。
「必ずな」
「ギジェ、ゲージはどうなの?」
「充分だ」
 ギジェはデクにも答える。
「何時でも撃てる」
「そう、それじゃあ」
「しかしイデオンだけでは駄目だ」
 ここでギジェはこう言うのだった。
「皆の力もだ」
「そうだ、その通りだ」
 ギジェのその言葉にベスが頷いた。
「今はだ。皆の力を合わせてだ」
「ならベス、今葉」
「ああ、そうだ」
 ベスはハタリにも答える。
「全員でだ」
「わかった、それならだ」
「総員攻撃準備!」
 ベスが指示を下した。
「皆の力を合わせてだ!」
「わかったぜ。それならな!」
「想いと力を一つにして!」
「今こそ!」
「コスモ、このパワーは!」
 ギジェがゲージを見てまた言う。
「これまでにない。しかも」
「ああ、これまでとは違う!」
「イデが!遂にか!」
「うおおおおおおおおおおおっ!」
 コスモはイドエンガンを放った。光が彼等を包んだのだった。
 戦いの成り行きはドバにも伝わった。彼はバイラル=ジンの艦橋において話す。
「そうか、ハルルもか」
「巨神の攻撃を受けてだ」
 ギンドロがこうドバに話していた。
「見事な最後だったとのことだ」
「散ったか」
「惜しいことをしたな」
 こう言うギンドロだった。
「あの娘はいずれはだ」
「軍人としてか」
「それ以外にもだ」
 つまりだ。政治家としてもだというのだ。
「貴殿の片腕として働いてもらう筈だっただろうに」
「そうだ」
 それはだ。その通りだと話すドバだった。
「そのつもりだった」
「やはりそうか」
「だがともかく終わった」
 戦いがだ。終わったというのだ。
「イデの巨神もあの船もだな」
「彗星の爆発の中に消えたか」
「後はだ」
 そしてだというのだ。
「最早ここに用はない」
「まずはあの化け物達を振り切るか」
「宇宙怪獣達と戦うつもりはない」
 これがドバの考えだった。
「この銀河のことはな」
「それでは戻るか」
「そうするか」
 こう言い合いだ。帰還について話す中でだ。
 将校の一人が血相を変えて艦橋に来てだ。二人に話すのだった。
「あの」
「?何だ?」
「どうしたのだ?」
「今報告があがったのですが」
 こうだ。将校は二人に話すのだった。
「バッフ星にも隕石雨が降り注ぎです」
「何っ、まさか」
「我等の銀河でもか」
「はい、それによってです」
 どうなったのか。将校は話した。
「我等の本星はです」
「消滅したというのか」
「まさか」
「これを御覧下さい」
 将校は蒼白になった顔でモニターをつけた。するとそこには。
 砕け散る惑星があった。その惑星こそは。
「これは」
「まさか」
「はい、我等の母星を監視するモニターからの映像です」
 それで撮られた映像だというのだ。
「そこから送られてきました」
「馬鹿な、これでは」
「我々は」
「全滅とのことです」
 将校はまた報告した。
「そして多くの星もです」
「では大帝は」
「大帝ズオウは」
「お亡くなりになられました」
 将校の無念の報告が続く。
「隕石雨の直撃を受けられ」
「それでだというのか」
「あの男も死んだのか」
「はい、そうです」
 それを聞いてだ。二人はだ。将校を下がらせそのうえで話すのだった。
「我々に帰る場所はなくなってしまった」
「完全にな」
「ではどうするかだ」
「そのことだが」
「こうなってはだ」
 ドバが言った。
「ここで生きるしかないな」
「この銀河でか」
「そうだ、まずはバケモノ達を倒す」
 宇宙怪獣達をだというのだ。
「そして生きるしかないのだ」
「そうか。それしかないのか」
「まさかと思うが」
 ここでドバはこうも言った。
「我々はイデの手の内で踊らされているのも知れぬな」
「イデのか」
「あまりにも出来過ぎている」
 彼等の母星が破壊されたこと、そのこともだというのだ。
「それではだ」
「そうだというのか。それではだ」
「全軍を動かす」
 ドバはこの状況でも迅速に決断を下した。
「そうするぞ」
「わかった。それではな」
「大変です!」
 また将校が来た。先程とは別の将校だ。
「総司令、大変なことが起こりました!」
「今度は何だ!?」
 ギンドロが思わずその将校に問うた。
「今度は何が起きた!」
「巨神とロゴ=ダウの異星人達がです!」
 ロンド=ベルのことだ。
「全員生き残っていました!」
「何っ、馬鹿な!」
「ではあの彗星をか!」
「はい、完全に破壊しました!」
 そうしたというのだ。
「そしてそのうえで」
「生き残ったというのか」
「何ということだ」
「そしてです」
 報告がさらに続く。
「宇宙怪獣の大群もです!」
「動いたか」
「またしても」
「はい、そうです」
「わかった」
 ドバはまずは彼の報告を受けた。そうして下がらせてからだ。
 ギンドロにだ。こう話すのだった。
「終焉は近いな」
「この宇宙のか」
「そうだ。イデはケリをつけたがっているのだろう」
 イデについての言葉だった。
「知的生命体を全て死に至らしめてだ」
「そうしてか」
「イデは次の時代を生もうとしている」
 イデについて考えて。そうして話すのだった。
「この銀河を中心に全ての宇宙でだ」
「馬鹿な、そこまでか」
「そうだ。考えてみるのだ」
 ギンドロにも思考を促す。
「イデの采配でなければこうはならん」
「ではここで戦うというのか」
「そうするしかあるまい」
「待て、我々の銀河にはまだ我々の同胞達がいる筈だ」
 ギンドロはそのことを足掛かりととしてドバに話した。
「それではだ」
「我々の銀河に戻るというのか」
「そうだ、異星人達もバケモノ達もいる」
「彼等との戦いを避けか」
「戻るべきではないか」
 こうドバに主張するのだ。
「ここは何としてもだ」
「遅いのだ」
「遅いだと?」
「わかった様な気がする」
 ドバの口調が変わった。
「知的生物がなければだ」
「どうだというのだ」
「イデは存在し得ないものだ」
 そのイデがだというのだ。
「しかし何故その知的生命体を殺し合わせる」
「それは」
「それがわかった様な気がするのだ」
 こうギンドロに話すのだった。
「知的生物にはあるものが不足している」
「あるものが?」
「己の業を越えられないのだ」
 それが足りないものだというのだ。
「乗り越えられないのだ」
「それでなのか」
「欲、憎しみ、知恵へのこだわり」
 ドバはその業を挙げていく。
「そんなものを引き摺った生命体が元ではか」
「イデはだというのか」
「そうだ。善き力を発動しないのだ」
「わからん。どういうことだ」
「自ら善き知的生物を創るしかないのだ」
「ではだ!」
 ギンドロがそのドバに反論する。
「貴殿はその為にも戦うというのか!」
「どのみち引けん」
「それは無駄な戦いだ!」
 こう言ってだ。ドバを糾弾する。
「そんな戦いをすればだ!」
「滅びてしまうというのだな」
「そうだ、自ら滅んでどうするのだ!」
 ギンドロの糾弾が続く。
「貴殿は己のその考えだけで全軍を死地に追いやるつもりか!」
「言うな!」
「うっ!」
 ドバは銃を抜きそれでギンドロを撃った。ギンドロは胸を貫かれ。
 そのうえで倒れ息絶えた。そのギンドロを見下ろして彼はまた言った。
「わかるか、友よ」
 ギンドロをこう呼んでの言葉だった。
「私はそれ程傲慢ではない」
 ギンドロの言葉をこう言って否定する。
「だからだ」
 そてによってだというのだ。
「私の恨みと怒りと悲しみ」
 この三つの感情だった。
「それをロゴ=ダウの異星人にぶつけさせてもらう」
 彼の本音だった。偽らざる。
「ハルルが男であれば」
 そうであれば。
「こう思った悔しみ」
 そして次は。
「カララがロゴ=ダウの男に寝取られた悔しみ」
 この二つであった。
「この父親の悔しみを誰がわかってくれるか」
 こう呟いてだった。彼は。
 すぐにだ。艦橋に部下達を呼び伝えた。
「よいか」
「はい」
「どうされますか」
「全軍を集結させる」
 バッフクランのだ。全軍をだというのだ。
「この銀河に展開している全軍をだ」
「そしてですか」
「そのうえで」
「ロゴ=ダウの者達と決戦だ」
 こう言うのだった。
「ガンド=ロワで全ての決着をつける」
「わかりました。それでは」
「今より」
「全てが終わる」
 ドバは強い声で言った。
「全てな。そうだ」
「?総司令、一体」
「今度は」
「ギンドロ氏だ」
 己が撃っただ。彼の亡骸を見て話すのだった。
「自決した」
「自決されたのですか」
「まさか」
「そうだ。本星の壊滅を見てだ」
 こういうことにするのだった。
「同胞の後を追い自決したのだ」
「そうされたのですか」
「本星と同胞に殉されたですか」
「そうだ。見事な最後だった」
 友の名誉を守っての言葉だった。
「丁重に弔ってくれ」
「はっ、それでは」
「その様に」
「さらばだ」
 運び出されるギンドロの亡骸を見てドバは最後に呟いた。そうしてそのうえでだ。彼もまた運命に赴くのだった。この銀河の運命に。


第百二十五話   完


                                    2011・6・1
       
 
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