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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第百二十三話 父と娘

                第百二十三話 父と娘
 双方の戦いがはじまる中でだ。カララは。
 ソロシップの艦橋に出た。そしてそこで見るのだった。
「あの巨大な戦艦は」
「知っているのか、カララ」
「ええ、あれはバイラル=ジン」
 この名前をベスに話した。
「間違いないわ」
「バイラル=ジン!?」
「私の父トバ=アジバが指揮するバッフクランの旗艦」
 それだというのだ。
「それがあの巨大戦艦なのよ」
「カララの父親の艦」
「あれがか」
「そうなのか」
「はい、そうです」
 カララは他の面々にも話す。
「あの戦艦は」
「そうか、旗艦か」
「やっぱりな」
 皆それを聞いて頷く。
「この陣容じゃな」
「っていうかどれだけいるんだよ」
「バッフクランの主力だよな」
「間違いなくな」
「何ていうのかしら」
 シェリルも言う。
「イデの本心がわからなくなってきたわ」
「イデの本心が」
「ええ、これまで以上にね」
 こう話すシェリルだった。
「私達を試しているのかしら」
「試しているにしては悪質に思えてきたが」
 レイヴンはこう言った。
「私には」
「そうかも知れないわね」
 シェリルもレイブンのその言葉を否定しなかった。
「けれど一つ思い切ったことをすればわかるのかも」
「思い切ったこと!?」
「というと?」
「あっ、何でもないわ」
 ここからは言葉を止めたシェリルだった。
「気にしないで」
「そうか」
「そうなんですね」
「ええ。ただね」
 それでもだと話すシェリルだった。
「バッフクランとの戦いもわからなくなってきたわね」
「少なくともこの戦いはだ」
 ロジャーが言った。
「選択を間違えてはならない戦いなのだろう」
「選択をなの」
「そんな気がする」
 こうドロシーにも話すのだった。
「どうもな」
「そうでしょうね」
 シェリルはロジャーのその言葉にも頷いた。
「この戦いは」
「だからこそ大変なのね」
 ドロシーは言った。
「今度の戦いは」
「ええ。全く訳がわからないわ」
 また言うシェリルだった。
「とりわけね」
「イデか」
 ベスも言う。
「本当に考えがわからないな」
「しかしだ。イデの示した選択に違えばだ」
 ギジェはそのイエデについて話す。
「我々は」
「わかっている」
 ベスもギジェのその言葉に頷く。
「そうなれば我々は終わりだ」
「人類補完計画と同じになる」
「それだけは避けなければならないが」
「けれど本当に一歩間違えたらよ」
 カーシャはそのことを真剣に危惧して言う。
「私達終わりなのよ」
「おそらく戦うことは正しい選択肢ではない」
 また言うギジェだった。
「しかしこのままでは」
「仕方がないのだろうか」
 ハタリも首を捻るばかりだった。その中でだ。
 カララが艦橋から去ろうとする。また腹に痛みを感じてだ。
 それを見たシェリルがだ。彼女に声をかける。
「自分の部屋に戻るのね」
「ええ、ちょっとね」
「わかったわ。それならね」
 シェリルは親切から彼女に言った。
「私が送るわ」
「そうしてくれるのね」
「ええ、それじゃあ」
 このまま部屋に送ろうとした。しかしだった。
 不意にだ。カララが光に包まれたのだった。
「えっ!?今度は何だ!?」
「カララが光に包まれた!?」
「何なんだ、今度は一体」
「一体何が」
「カララ!」
 ジョリバが慌ててだ。カララの手を掴んだ。
 しかし彼もまたそれに包まれてだ。そうしてだった。
「ジョリバとカララが消えたぞ!」
「どういうことだこれは!」
「今度は二人がって」
「もう何が何だか」
「滅茶苦茶じゃないか」
「これもだというのね」
 シェリルはだ。呆然としながらも言った。
「これもイデなのよ」
「イデの力がか」
「こんなことを引き起こしているというのか」
「もう何が何だか」
「滅茶苦茶じゃないか」
「まさか」
 シェリルはだ。心から危惧する顔を浮かべて言うのだった。
「私達は全てイデの手の平にある」
「いや、それは早計だ」
 モエラはシェリルのその考えを消そうとする。
「そう言って全ての可能性を否定すればだ」
「同じだっていうのね」
「そうだ。だから止めるべきだ」
「私が考えを止めても」
 それでもだとだ。カララは言うのだ。
「必ず何かが起こるわよ」
「それならその都度それを何とかしていくんだ」
 これがモエラの考えだった。
「諦めたら。それで終わりじゃないか」
「諦めたら」
「そうだ。今のこの状況も」
 こう言ってだ。シェリルを何とか宥めるのだった。
 そのソロシップの騒ぎを見てだ。コスモが言う。
「ソロシップが騒がしいな」
「何をしているのかしら」
「おかしな感じだよね」
 コスモにカーシャとデクも続く。
「攻撃を受けてもいないのに」
「撃沈された様な感じだけれどね」
「待て」
 ここでだ。またギジェが言う。
「モニターに映像が」
「モニター!?なっ!?」
「な、何これ!」
「何処、ここ!」
「信じられん」
 ギジェもだ。そのモニターの映像を見て唖然となっていた。
「これはバイラル=ジンの艦内だ」
「あのデカブツのかよ!」
「そうだ、間違いない」
 ギジェはコスモに対して述べた。
「私も入ったことがある。だからわかるのだが」
「何でそんな映像が出て来るのよ」
 カーシャはそのことを言う。
「敵艦の中なんかが」
「イデだな」
 神宮寺が言った。
「イデの力がだ」
「イデがだっていうの!?」
「そうだ」
 神宮寺はこうマリにも答えた。
「それしか考えられない」
「!?光の中から」
「誰か出て来ます」
 麗と猿丸がモニターを見ながら話す。
「これは一体」
「あれは」
「カララさん!」
 洸が彼女の姿を見て声をあげた。
「まさか。敵艦の中に移動した!?」
「それも一瞬で!?」
 マリも驚きの声をあげる。
「若しこれがイデの力なら」
「イデは何を考えているんだ」
 最早誰にもわからなくなっていた。この状況にだ。
 不動もだ。腕を組んでこう言うしかなかった。
「最早こうなったらだ」
「どうするってんだよ、おっさん」
「見るしかない」
 こうアポロに述べる。
「我々には見守ることしかできない」
「俺達の手を離れてるってことかよ」
「少なくとも今はそうだ」
 アポロにまた話した。
「少なくとも我々はあの艦橋には行くことができないのだからな」
「その通りだ」
 サンドマンもその通りだと言う。
「今は手出しすることはできない」
「ちっ、どうだってんだよ!」
 エイジは歯噛みして言った。
「これじゃあイデの思うままじゃねえか!」
「いや、それは違う」
「思うままではない」
 不動とサンドマンはエイジのその言葉は否定した。
「むしろ我々は自由に動ける」
「それを見られているのだ」
「動けるのを見られているっていうのかよ」
「そうだ。だから今はだ」
「迂闊に動くべきではないのだ」
 こうエイジに言う二人だった。
「ここは彼女に任せよう」
「全ては」
 そしてカララを見守るのだった。その彼女をだ。
 見ればだ、カララとジョリバはだ。まずは艦橋の中を見回していた。
「ここは」
「わかりません」
 カララはジョリバに答えた。
「しかしここはです」
「ここは?」
「どうやら」
 前置きしてからの言葉だった。
「バッフクラン軍の艦のブリッジです」
「そうか、こうなっていたのか」
「はい、しかもです」
「しかも?」
「バイラル=ジン」
 カララもこの名前を話に出した。
「それです」
「バイラル=ジン!?」
「バッフクラン軍の旗艦です」
 それだとだ。カララはジョリバに説明した。
「その中です」
「何で急にここまで」
「それは」
 全くわからないとだ。カララはジョリバに答えようとする。しかしだった。
 ここでだ。カララはだ。彼等を見たのだった。
「えっ、そんな」
「御前はカララ」
「間違いない」
 ドバとギンドロがそれぞれ言う。
「何故ここに」
「嬢ちゃんだな。間違いなく」
「父上ですか」
 カララはだ。ドバの顔を見てだ。
 意を決した。そのうえで彼にあらためて言うのであった。
「お久し振りです」
「どうしてここに入った」
 ドバは冷静にカララ、己の娘に問うた。
「この艦まで」
「おそらくですが」
 カララは考えた。そしてその結論を父に話した。
「イデの導きによって」
「イデだと」
「はい」
 その通りだというのだ。
「その導きによって」
「何の為にだ」
 ドバは怪訝な顔になってカララに問い返した。
「それは何故だ。何の為にだ」
「おそらくは使者として」
「使者!?」
「はい、そうではないでしょうか」
 毅然として父に話す。
「それで私はここまで」
「イデの使者だというのか」
 ドバは娘の言葉からこう考えた。
「その立場でここに来たというのか」
「おそらくは」
「話は聞こう」
 ドバは冷静にだ。娘に返した。
「しかしだ」
「しかしですね」
「話の内容によってはだ」
 娘を見据えて。そのうえで告げる。
「宇宙に放り出す。いいな」
「おい、待て!」
 ジョリバがドバの今の言葉に抗議する」
「それが親の言葉か!」
「何だ貴様は」
 ドバはジョリバにも顔を向けた。
「見たところロゴ=ダウの者の様だが」
「ジョリバさん」
 ジョリバが言う前にだ。シェリルがだった。彼に対して言った。
「ここは私に」
「カララ、そうするのか」
「はい、お任せ下さい」
 こう言うのである。
「どうか」
「わかった」 
 ジョリバもだ。カララの言葉を受けた。
 そのうえで静かになってだ。こう彼女に言った。
「ならここは任せた」
「有り難うございます」
「では聞こう」
 また娘に言うドバだった。
「だが、だ」
「はい」
「娘一人のお陰で何千もの兵が死んでいるのだ」
 そのだ。現実を話すのだった。
「それで何の用なのだ」
「はい、それですが」
「それで。何だ」
「父上、いえ」
 カララはその言葉を訂正させて話す。
「ドバ総司令」
「その名で呼ぶか」
「はい、それでなのですが」
 こうして話すのだった。
「もう貴方にはわかっておられる筈です」
「何をだ」
「戦いがです」
 それがだというのだ。
「イデの力を増大させていることをです」
「イデがか」
「現にです」
 どうかとだ。カララはさらに話していく。
「バッフ星にも流星の落下が増えているのではないですか」
「・・・・・・・・・」
「あの銀河全体で」
「だとしたらどうする」
 ドバは暗にその言葉を認めた。
「そうだったなら」
「それではやはり」
「その流星もだ」
 ドバは娘のその言葉を拒んで話す。
「御前の乗る宇宙船がだ」
「あのソロシップが」
「そうだ。それにあの巨神もだ」
 イデオンもだというのだ。
「発生させているふしがある」
「ソロシップとイデオンが」
「ならばだ」
 それならばだというのだ。
「あの船と巨神は抹殺しなければならん」
「それは違う!」
 ジョリバが叫ぶ。
「イデは自分を守る力を備えはじめただけです!」
「そうです、それはです」
 カララも話す。
「私達のコントロールを拒否しはじめたのです」
「だからといってもだ」
 まだ言うドバだった。
「放ってはおけぬ」
「そうだというのですか」
「そうだ、異星人共がだ」 
 彼等が。彼から見て彼等がどうだというのだ。
「イデの力を以てだ」
「そんなことがあるものか!」
 ジョリバが叫ぶ。
「何度言ってもわからないのか!」
「我等の緑なる母星を襲わぬ!」
 だがドバは言う。
「それを誰が保証するか!」
「それは私が!」
 カララが言うのだった。
「私が保証します!」
「馬鹿なことを!」
 ドバは娘の言葉を一蹴した。
「裏切り者の命なぞだ」
「何だというのだ!」
「クズ同然だ!」
 それだと叫ぶのだった。
「何の保証になる!」
「ロゴ=ダウの異星人であろうともです!」
 しかしカララも引き下がらない。
「我々と同じです!」
「バッフクランとだというのか!」
「はい、全く同じです!」
 こう言って引かないのだった。
「必ず理解し合えます!」
「何を根拠に言う!」
「根拠ですか」
「そうだ。何が根拠だ!」
「私です」
 また言うカララだった。
「この私自身がです」
「またそう言うのなら」
「何故なら」
「何故なら。何だ」
「今私の中で」
 己の腹に手を当てての言葉だった。
「新しい命が育っているのです」
「何っ!?」
「まさか嬢ちゃんは」
 ギンドロも驚きを隠せなかった。
「子を身ごもったというのか」
「カララ、そんな」
「ええ、そうよ」
 カララは父の顔を見据えたままジョリバに答える。
「私は。ベスの子供を」
「そうだったのか」
「だからこそ私は」
 言えるというのだ。しかしだった。
 ドバはだ。怒りを露わにして言うのだった。
「おのれ!」
「総司令!」
「せめてもの親子の情けだ!」
 こう叫んでだった。銃を娘に向けて告げる。
「一思いに殺してやる!」
「何っ!?」
 ジョリバがそれを見てまた言う。
「まさか!」
「動くな!」
「何を考えている!」
 ジョリバはそのドバに対して言う。
「実の父親が子供を殺そうってのか!」
「アジバ家の名誉の為だ!」
「私もです!」
 カララも銃を抜きだ。そしてだ。
 父に銃を向けてだ。言うのだった。
「新しい命の為なら!」
「なっ、カララ!」
「嬢ちゃん!」
「父殺しの汚名も被りましょう!」
「馬鹿な、そんな」
「嬢ちゃんまで」
「カララ・・・・・・」
「この距離なら」
 カララは銃を向けたまま毅然として言う。
「私の持つ銃で間違いなく」
「そうだというのだな」
「はい」
 答えてからだった。
「父上の心臓を射抜くことができます」
「私を撃つのはいい」
 ドバはそれはいいとした。
 しかしだ。同時にこうも言うのだった。
「すぐに兵達に殺されるぞ」
「見るのだ、嬢ちゃん」
 ギンドロも彼女に告げる。既に彼等の周りにはだ。
 バッフクランの兵達が集っていた。そのうえでそれぞれ銃を抜いていた。
 彼等を横目で見ながらだ。ドバは娘に話すのだった。
「それでもいいのだな」
「はい」
 いいとだ。また答えるカララだった。
「お好きに」
「まだそう言うのか」
「しかしその代わりです」
「どうだというのだ?」
「イデの力は」
 そのイデがだ。どうかというのだ。
「私達をここに導いたイデの力はです」
「その巨神の力か」
「私達に何かあれば」
 その瞬間にはというのだ。
「何千もの仲間達、私達の仲間達をです」
「ロゴ=ダウの戦士達か」
「彼等をここに送り込んでくれます」
 そうなるというのだ。
「ここは既に見張られているのです」
「イデの力はコントロール出来ぬ」
 ドバもまた引かない。
「そう言ったのではないのか」
「はい、力を弱める為のです」
 カララはその父に反論する。
「それはできません」
「ならばか」
「より強い使い方なら」
 それならばだというのだ。
「できます」
「総司令」
 ここでギンドロがドバに言った。
「ここはだ」
「どうだというのだ」
「退くのも手だ」
 こう友に言うのだった。
「今はだ」
「何故だ、それは」
「嬢ちゃんが脅しを言っているとは思えん」
「では実際にか」
「目の前の連中がだ」
 そのだ。ロンド=ベルの軍がだというのだ。
「一気にここに来ればどうなる」
「むっ、それは」
「この艦といえどもだ」
「沈められるというのか」
「総攻撃を受ければな」
 そうなるとだ。ギンドロは言う。
「だからだ。今はだ」
「引き下がれというのか」
「そうだ。それも手だ」
「しかし軍はだ」
 それでもだというドバだった。
「退くことはできん」
「しかしあの二人はだ」
 カララとジョリバを指し示しての言葉だ。
「今実際にここにいるのだ」
「しかし私はだ」
「認めないというのか」
「何故話し合いなぞできる。異なる文明の者達と」
 二人の指揮官が言い合う中でだ。カララは。
 隙を見た。それでジョリバに告げた。
「ジョリバさん」
「そうだな」
 ジョリバもカララのその言葉に頷く。
「今だな」
「はい、それでは」
 そしてだった。カララの動きは速かった。
 指揮官達の言い合いに戸惑う兵達にだ。叫んだ。
「道を開けなさい!」
「!」
「な、何だ!」
「何だっていうんだ!」
「さもなければです!」
 どうかとだ。カララは毅然として言う。
「イデの力は発動されます!」
「こんな状況で発動したらそれこそ」
「そ、そうだな」
「どうしようもない」
「それならだ」
「もう」
 兵達も戸惑いながらだ。そうしてだった。
「ここはだ」
「道を開けるんだ」
「さもなければイデが発動されるぞ」
「そうなったらもう」
「どうしようもない」
 こうしてだった。彼等は慌ててだ。
「こうなっては」
「じゃあ仕方ないな」
「ああ、もうな」
「それにこのままじゃ総司令もな」
「撃たれる」
「それならもう」
「ここは」
 こう話してだった。彼等はだ。
 その道を開けたのだった。二人はそれを見てだ。
 カララがだ。ジョリバにすぐに声をかけた。
「今です!」
「ああ!」
 ジョリバもカララのその言葉に応える。
「この場所を出よう!」
「そうしましょう!」
「そして!」
 そのうえでだというのだ。さらにだ。
「帰ろう!」
「道を空けなさい!」
 カララは兵士達に叫ぶ。
「さもなければイデの力は発動します!」
「くっ!」
 ドバが歯噛みしてもどうしようもなかった。道は既に開いていた。
 そしてだった。
 二人は駆けていく。それを見てギンドロは言う。
「まさかな」
「カララ、よくも」
「あの嬢ちゃんがあそこまでのものを見せてくれるとは」
「逃がしはせんぞ!」
 ドバはだ。バッフクランの総司令官として以上にだ。父になっていた。
 その父としてだ。激昂して言うのであった。
「見つけ次第殺せ!」
「それでいいのだな」
「構わん!」
 ギンドロにも言ったのだった。
 そしてだ。二人はバイラル=ジンの格納庫に来てだ。カララはメカを一機前にしてジョリバに言った。
「ではこのメカで」
「脱出を」
「はい、そうしましょう」
「それはわかった。しかし」
「しかし?」
「操縦はできるのかい?」
 ジョリバが言うのはこのことだった。
「君はそれは」
「出来なくてもです」
 それでもだと返すカララだった。
「やるしかありません」
「そうか。そうだな」
「はいですから」
「強くなったな」
 ジョリバはだ。不意に微笑んでカララにこう言うのだった。
「貴女は」
「私が?」
「うん、しかし」
「しかし」
「まずったな」
 今度は苦笑いでの言葉だった。
「これだけの人なら」
「私がですか」
「うん、ベスより先に口説くべきだったよ」
 こう言うのだった。
「君をね」
「有り難う、ジョリバ」
 カララはジョリバのその言葉に微笑んで返した。
「では今は」
「うん、行こう」
「皆の場所に」
 この一連のやり取りはモニターからロンド=ベルの面々も見ていた。カララとジョリバが脱出するのを見てだ。ノインとヒルデが話す。
「今のは」
「ええ、どうやら」
「話し合いは無理か」
「そうみたいね」
 そのことはだ。自然に悟ることができた。
「残念だがな」
「それならまずは」
「あのマシンだ」
 バイラル=ジンから出たそのマシンをだ。ミリアルドは指差して言った。
「あのマシンに二人が乗っている」
「それならですね」
 カラスもその言葉を強くさせる。
「御二人を救い出しましょう」
「そうするべきなのですね」
「トビア君」
 カラスはそのトビアに穏やかに話す。
「私はいつも言っていますね」
「人は強くあるべきですね」
「御二人はそれを見せてくれました」
 その強さをだというのだ。
「それならばです」
「僕達も」
「はい、それに応えるべきです」
 こう教師として話すのだった。
「だからこそです」
「わかりました、それなら」
「どうやら一刻の猶予もなりません」
 二人の周りを見ての言葉だった。既にだ。
 バッフクランの大軍が二人を追っている。そして。
 ドバがだ。命じたのだ。
「逃がすな!撃て!」
「!!」
「来たか!」
 二人の乗るマシンが撃たれた、それでだった。
 撃破された。それを見てだ。
「撃たれたぞ!」
「二人は無事か!?」
「どうなんだ!?」
「まずいですね」
 カラスもだ。この事態には眉を曇らせて言う。
「こうなるとは」
「先生、これは」
「はい、いけません」
 トビアにも危惧する声で返す。
「御二人が無事であればいいのですが」
「ですがこれでは」
「あ、ああ!!」
 そしてだ。コスモはだ。
 完全に取り乱しだ。そして叫ぶのだった。
「うわああああああああああああっ!」
「!?コスモ!」
「どうしたんだ!」
「一体!」
「何故だ、何故殺す!」
 叫び続けるコスモだった。
「何故戦う!何故そっとしておけないんだ!」
「コスモ、落ち着いて!」
「まだ死んだと決まった訳ではない!」
 カーシャとギジェが彼に慌てて言う。
「だから今は」
「落ち着くのだ!」
 しかしコスモは止まらない。それでさらに叫ぶのだった。
「何故カララさんを殺した!?」
 バッフクランへの言葉だ。
「カララさんの理想主義がイデを抑える鍵だったかも知れない!」
「な、何だ!?」
 ドバもだ。驚きの声をあげた。
「ロゴ=ダウの異星人か!?」
「その様だな」
 ギンドロも聞いていた。
「これは」
「異星人の言葉が聞こえるのか!」
「イデの力が解放されたら!」
 コスモの絶叫が続く。
「どうなるか!それは!」
「イデ」
「あの巨神の力がか」
「誰もわかってないんだぞ!」
 こう叫ぶのだ。
「貴様達が責任を取ってくれるのか!貴様達が!」
「まさか」
 ベスはその中で比較的冷静だった。そうしてだった。
 一人だ。こう呟くのだった。
「本当に死んだのか」
「まずは探そう」
 ハタリも言う。
「それが先決だ」
「そうだな、今は」
 二人はこう判断した。しかしだった。
 ここでだ。急にであった。ルウが。
「だあだあ」
「えっ、ルウ!?」
 ロッタがその声を聞いた瞬間に。
「くっ!」
「サイコドライバーが!?」
「発動する!?」
 リュウセイにブリット、クスハが声をあげる。
「まさかここで」
「蔚デじゃない!」
「これは!」
「アヤ!」
 マイがアヤに言う。
「今は!」
「ええ、ティーリンクセンサーを集中して!」
 アヤは咄嗟に言った。
「この波動は」
「あの光は!」
「何だ!?」
 見るとだ。カララとジョリバの乗るマシンが撃墜された場所にだ。
 光が宿ってだ。そこから。
「あっ・・・・・・」
「俺達は」
「生きている!?」
「そうだ、生きているんだ」
「何だよあの光は」
 闘志也も呆然となっている。
「一体」
「イデの仕業か?」
 ジュリイはそれではないかと話す。
「また」
「それで二人を助けたのか?」
 謙作も続く。
「そうなのか?」
「そんなことはどうでもいい!」
 コスモは今度は別の言葉を出した。
「今は二人を!」
「うん、そうだね!」
 デクがすぐに応える。
「今は!」
「誰でもいい!」
 ベスも今は叫ぶ。
「頼む!」
「ああ、二人を!」
「今は!」
「カララとジョリバを救ってくれ!」
 こう叫ぶのだった。
「とにかく、今は!」
「おのれ!」
 ドバはだ。活気付くロンド=ベルとは正反対に激怒していた。
「これもイデの意志だというのか!」
「総司令!」
 その彼にだった。将校の一人が言ってきた。
「この付近に重力異常を察知!」
「何っ!?」
「何者かが来ます!」
「まさか」
 ドバが言うとだった。そこにだ。
 宇宙怪獣の大軍がだ。出て来たのだった。
「宇宙怪獣!?」
「こんなところにまで!?」
「出て来るなんて」
「まさか」
「何かが」
 ギンドロがまた言う。
「この銀河の何かがだ」
「どうだというのだ」
「起ころうとしているのか」
 こうドバにも話す。
「そうではないのか」
「まずいな」
 トッドはその宇宙怪獣の大軍を見て言う。
「あの合体する奴もいるぜ」
「合体型と呼ぶべきか」
 副長はその二つ上下に合わさる型をこう呼んだ。
「あれは」
「あれが最も手強い宇宙怪獣だな」
「そうなのよね」
 ニーとキーンも話す。
「バルマー戦役の頃から」
「てこずってきたけれど」
「けれど宇宙怪獣に対しては」
 リムルは意を決した声だった。
「戦うしかないから」
「その宇宙怪獣ですが」
 シーラはその彼等の動きを見て話す。
「バッフクラン軍を無視して」
「こちらに来ています」
 カワッセも彼等の動きを見ている。
「非常に危険な状況です」
「宇宙怪獣にとって、いえアポカリュプシスにとって」
 アレもだ。宇宙怪獣達を見ている。
「やはり最大の敵は」
「はい、我々でしょう」
 エイブが彼の姫に応える。
「だからこそ今こうして」
「彼等に知能はありませんが」
 シュウがここでその宇宙怪獣のことを話す。
「しかし本能的に察するのですね」
「そうね」
 ユングがシュウその言葉に頷いて答えた。
「だからこそ厄介なのだけれど」
「そしてそれと共に」
「今はですね」
「そうです。おわかりですね」
 シュウはカズミにも話した。
「今するべきことはです」
「カララさんとジョリバさんを何とか」
「では。そうしましょう」
「カララさん!今行きます!」
 ノリコがガンバスターを前に出す。
「ですから今はそこで」
「あんたを死なせはしない」
 コスモもだ。ガンバスターと共にイデオンを前に出した。
「あんたは死んじゃいけない人なんだ!」
「さて、どうする?」
 ギンドロはロンド=ベルと宇宙怪獣の戦いがはじまったのを見てだ。
 ドバにだ。あらためて問うた。
「ここは」
「宇宙怪獣か」
「考えようによっては巨神以上の脅威だが」
「わかっている」
 ドバは宇宙怪獣達を見据えながらギンドロに答えた、
「宇宙怪獣達を放っておくつもりはない」
「それではか」
「癪に触るが異星人達には攻撃は仕掛けない」
 それよりもだというのだ。
「宇宙怪獣だ。あの連中を倒すとしよう」
「ではこれより我が軍は」
「攻撃目標を変更する!」
 ドバは言った。
「宇宙怪獣だ!いいな」
「了解!」
「わかりました!」
 こうしてだった。彼等もだった。 
 宇宙怪獣に攻撃を仕掛ける。宇宙怪獣達はロンド=ベルとバッフクラン双方から攻撃を受けることになった。しかしそれでもだった。 
 その数はあまりにも多い。とりわけ合体型が多いことが問題だった。
 その挟む攻撃を何とか両手で止めて防ぎながらだ。デクはそのイデオンの中で言うのだった。
「コスモ、このままじゃ俺達」
「死ぬっていうのか?」
「うん、ひょっとしたら」
 こう言うのだった。しかしすぐにだった。 
 カーシャがだ。そのデクに言ってきた。
「そんなこと言わないの!」
「えっ!?」
「情けない!そんなんじゃね!」
 どうかというのだ。
「この連中の相手はできないわよ!」
「カーシャの言う通りだ!」
 そしてだった。コスモも言うのだった。
「怯えている暇はないんだ!」
「そうよ!そんな暇があったらね!」
「周りに一発でも多くミサイルを叩き込め!」
「今のこのデカブツも!」
 そのだ。イデオンが今戦っている合体型もだというのだ。
「さっさと叩き潰すのよ!」
「さもないと死ぬのは俺達だ!」
「それによ!」
「カララさんとジョリバさんを助けるんだ!」
 コスモはデクにもこのことを告げる。
「わかったら今は!」
「早くあの場所に!」
「そ、そうだね」
 ここでだ。ようやく頷くことができたデクだった。
 そのうえでだ。彼も戦いに目を向ける。そうして言うのだった。
「なら今はこの挟み撃ちしてくるのを」
「どうするのよ」
「イデオンソードは使える?」
 カーシャに答えながらコスモに問うた。
「それは」
「ああ、使える」
 コスモはすぐに答えた。
「ならそれでだな」
「うん、この挟み撃ちを斬ろう」
「よし、わかった!」
「不思議だ」
 ギジェはゲージを見ていた。
「今はかなり高い段階で安定している」
「高い段階で?」
「そうだ。それでいてコントロールが可能だ」
 ギジェはこうデクに話すのだった。
「こんなことは滅多にないことだ」
「そうだな。イデは不安定なのが常だからな」
 それはコスモが最もよくわかっていることだった。
「それで安定しているのは」
「珍しいことだ」
「そうよね。確かにね」
 これはカーシャもよくわかることだった。
「イデが。そんな」
「しかしだ」
 ここでギジェは言った。
「これは我々にとってはいいことだ」
「そうだね。考えてみればね」
「宇宙怪獣達を倒しカララ達を救い出そう」
 ギジェはデクに話した。
「そうしよう」
「そうだな。それならだ!」
 コスモはイデオンからイデオンソードを出した。それでだった。
 合体型と周りにいる宇宙怪獣達を切り裂いた。その両腕を振り回すだけでだ。
 宇宙怪獣達を殲滅してだ。カララ達のところに向かうのだった。
 そしてだ。ノリコもイデオンを追う。その中で宇宙怪獣達を拳と蹴りで粉砕しながらカズミに問う。
「ねえ、お姉様」
「どうしたの、ノリコ」
「まさかと思うけれど」
 先に進みながらの言葉だった。
「宇宙怪獣は待っていたのかしら」
「この時をなのね」
「ええ、私達とバッフクランが衝突するその時を」
 ノリコはいぶかしむ顔で言うのだった。
「まさかとは思うけれど」
「そうかも知れないわね」
「奴等にとっては」
「宇宙怪獣にとっては」
「私達も彼等も」
 バッフクランもだというのだ。
「敵であることには変わらないだから」
「そうだというのね」
「ええ。確かに奴等には知能はないわ」
 しかしそれでもなのだった。
「その本能で動いてね」
「生物としてのその本能で」
「動いてのことなのかもね」
「何かあるのかしら」
 ここでふとこんなことも言うノリコだった。
「奴等には」
「何かあるの?まだ」
「本能にしては妙に狡猾な感じがするわ」
 ノリコはこう察していた。
「邪悪な考えがあるというか」
「邪悪ね」
「そう。本能だけじゃなくて」
「けれど宇宙怪獣にはその邪悪を宿す知能自体が」
「そうよね。ではどうしてかしら」
 ノリコは戦いながら眉を顰めさせていた。
「宇宙怪獣にそれを感じるのは」
「何かあるのかしら」
「アカシックレコードが我々を標的としているのか」
 ジェイはこう言った。
「それでなのだろうか」
「アカシックレコード」
「その意志なのかしら」
 ノリコとカズミも考える。そうした話をしながらだ。
 ロンド=ベルは宇宙怪獣達を倒しだ。何とかだった。
 イデオンがだ。二人を助け出した。
「コスモがやってくれたぞ」
「そうか、あいつがか」
 ベスはハタリの言葉を聞いて言った。
「やってくれたんだな」
「ああ、カララとジョリバを回収した」
 それを達したというのだ。
「二人共無事だそうだ」
「そうか。それならだ」
 ベスは二人を救出できたと聞いて一つの判断を下した。
「ここは撤退だ」
「撤退だな」
「バッフクランも宇宙怪獣が現れたならだ」
「すぐには追撃できないな」
「そうだ、そうしよう」
「戦うことはしないのだな」
 ここでハタリはベスに問うた。
「それはしないんだな」
「ハタリ、まさかと思うが」
 こうハタリに返すベスだった。
「本気でそう言っているのか?」
「いや」
 ハタリもだ。それは否定した。
「それは止めておくべきだな」
「そうだ、それではだ」
 ここでバッフクランと戦うことはどういうことか。ベスは話した。
「我々はイデの策に乗るだけだ」
「まさにそうだな」
「俺達は人間なんだ」 
 ベスは言った。
「生命ある限りはだ」
「自分の意志でだな」
「道を切り開こう」
「辛い選択ね」
 シェリルは艦橋に戻って来ていた。そのうえで言うのだった。
「けれどね。それしかないわね」
「そういうことだ。だからだ」
「イデ、本当に何を考えているのかしら」
 シェリルは目を顰めさせていた。
「さらにわからなくなってきたけれど」
「少なくとも今戦ってはならない」
 ハタリがそのシェリルに話す。
「それは確かだ」
「そうね、それじゃあ」
「各機は後退してくれ」 
 ベスが指示を出す。
「それぞれの艦艇に戻りだ」
「そのうえで全艦もだな」
「そうだ、下がろう」
 こうしてだった。ロンド=ベルは今は撤退するのだった。宇宙怪獣達もだ。
「あの化け物達も行ったぞ」
「そうだな」
 ドバはギンドロの言葉に頷いていた。
「確かにな」
「ではどうするのだ」
「決まっている」
 すぐにギンドロに答えたのだった。
「追撃だ」
「追うというんだな」
「そうだ、そしてだ」
 カララの顔を思い出し。そのうえでの言葉だった。
「奴等を叩く」
「嬢ちゃんをか?」
「そうだ」
 憮然としてギンドロにも答える。
「バッフクランに弓引いた愚か者をだ」
「だといいのだがな」
「何を言いたい」
「別にない」
 あえて言わないギンドロだった。
「気にするな」
「ふん、ならいいがな」
「しかし。追うか」
「あの巨神をそのままにしてはおけぬ」 
 それが理由であった。
「ロゴ=ダウの異星人達、必ずだ」
「では全軍を集結させよう」
「そのうえでだ」
 こうしてだった。彼等はロンド=ベルを追うことにしたのだった。
 そしてロンド=ベルもだ。話し合っていた。
「宇宙怪獣も来たしな」
「洒落になってないな」
「ああ、バッフ=クランも来るだろうし」
「この状況は」
「それでだが」
 ここでタシロが全員に話す。
「殴り込み艦隊だが」
「もう出撃してますよね」
「主力も」
「そちらにはだ」
 そのだ。殴り込み艦隊の話をするのだった。
「朗報があった」
「朗報!?」
「っていいますと?」
「ゾヴォーク全軍が加わった」
 そうなったというのだ。
「星間連合、バルマーの全軍もだ」
「全ての軍がですか」
「集ってきてるんですか」
「あの艦隊に」
「そうだ。当然ゲストの三将軍もインスペクター四天王もだ」
 彼等もだというのだ。
「参加してくれている」
「それはいいことですね」
 万丈はその話を聞いて述べた。
「これであの艦隊はさらに強くなりました」
「そうだ。まさに銀河が一つになろうとしている」
 それはいいというタシロだった。
「しかしだ」
「僕達はですね」
「この状況だからな」
 今言ったのは京四郎だ。
「まさに前門の虎、後門の狼だ」
「今の宇宙怪獣は」
 レーツェルが顔を曇らせながら言う。
「おそらくはだが」
「そうだな。バルマー戦役の時よりも遥かに上だ」
 ライが言った。
「あの時以上に」
「じゃああの時の戦いは」
 リュウセイが言う。
「アポカリュプシスの予兆に過ぎなかったのかよ」
「そしてだ」
 タシロがまた言う。
「我々はこのままだとだ」
「殴り込み艦隊も含めて」
「あの宇宙怪獣にやられる」
「そうなりますね」
「そうだ、そうなる」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「この状況ではだ」
「問題はバッフクランだ」
 コスモが忌々しげに言った。
「あの分からず屋共はまだ」
「私達との共存を認めないっていうのね」
 カーシャも言う。
「そうだっていうのね」
「残念だが」
 今言ったのはギジェだった。
「今の流れはだ」
「イデの筋書き通りか」
「そう思う」
 こうベスにも話すギジェだった。
「これでは」
「しかし諦めてはならない」
 タシロは確かな声で彼等に話した。
「我々は最後の一人が倒れるまでだ」
「それまではですね」
「そうだ。その時までだ」
 どうするかというのだ。
「あがくことを止めてはならんのだ」
「その通りですね」
「例えそれがだ」
 タシロはその言葉を続ける。
「アカシックレコードの手の平で踊っていることであってもだ」
「それでもだよな」
「それじゃあ」
「ここはまずはどうするか」
「それですね」
「このまま双方と戦っても」
 その選択肢の結末は。わかっていた。
「イデの思い通り」
「そしてそれは最悪の結果をもたらす」
「それならどうするかっていうと」
「やっぱりバッフクランをどうするか」
「それだよな」
「思えばな」
 ここでベスは嘆息と共に話した。
「イデがソロ星に辿り着いた我々をサンプルに選んだ」
「そして我々もその星に来た」
 ギジェも話す。
「それが全てのはじまりなら」
「我々の手で終わらせることもできる筈」
「ですが」
 二人にだ。ラクスが言ってきた。
「ソロシップとイデオンだけで行っては駄目です」
「しかし」
「それでもです」
 ラクスはベスに言わせなかった。
「今は貴方達だけではないのですから」
「俺達だけじゃない」
「この宇宙に運命というものがあり」
 ラクスは己の言葉を続けていく。
「そしてそれが悲しみや憎しみ、怒り」
「そうしたマイナスの感情を」
「そういったものを引き起こすなら」
 どうかというのだ。
「人の生きる意味とはです」
「それにですね」
「はい、打ち勝つものだと思います」
 これがラクスの考えだった。
「私達が地球という小さな星で」
「そしてこの銀河で」
「宇宙の中の小さな銀河の中で」
「続けてきたことをですね」
「それを無駄にしない為にも」
 どうするか。そうした話だった。
「挑むべきです」
「俺達全てで」
「人の力で運命を越えることに」
「そういうことだ」
 バルトフェルドもベスに穏やかな声で話す。
「今更君達だけで行くとか。あまりにも水臭いじゃないか」
「どうせならもうとことんまで付き合うさ」
 シンも笑って言う。
「少なくとも俺とアズラエルさんとオルガ達は絶対に死なないからな」
「おや、僕もですか」
「何だよ、俺もかよ」
「絶対に死なないって?」
「俺達は不死身だったのか」
「じゃあ死ぬのかよ」
 シンはその四人に問い返した。
「こんなところで死ぬのかよ」
「そのつもりは全くありません」
「当たり前だろ。読んでない本まだ一杯あるんだからな」
「クリアしてないゲームを全部クリアしないと」
「音楽聴く」
「だったら死なないだろうが。まあとにかくだよ」
「皆付き合ってくれるのか」
 コスモはシン達の話から察して言った。
「済まないな」
「礼はいい」
 ブライトがベスに話す。
「我々は自分なりの意志で運命に挑むのだからな」
「ではだ」
 大文字も話す。
「今は全軍でだ」
「バッフクランと何とか決着をつける」」
「ここで」
「そうするとしよう」
 これが彼等の結論だった。
「それから殴り込み艦隊に合流する」
「短期決戦になるか」
 マーグが大文字の話を聞いて述べた。
「今回は」
「そうですね。それでは」
 ロゼも話す。
「彼等との決着をつけそして」
「最後の戦いだ」
 マーグはロゼにも話した。
「宇宙怪獣達とのだ」
「そうですね。遂に」
「バルマーも矛を捨てた」
 マーグはそのことを喜んでもいた。
「それなら次はだ」
「はい、バッフクランと」
「アポカリュプシスを終わらせるとしよう」
「父さんも見ているのかな」
 シンジはこの中でふと呟いた。
「今の僕達を」
「そうだ、見ているぞ」
「そんなの当たり前じゃないの」
 カガリとフレイがそのシンジに話す。
「今のシンジをな」
「ちゃんと見てるわよ」
「そうだね。それじゃあ」
「行こう、皆!」
 光の声はここでも明るい。
「運命を切り開きに!」
「そうだな。それじゃあ」
 洸も続く。
「そしてそのうえで」
「アカシックレコードが何だってんだ!」
 豹馬も強気だった。
「そんなの俺達が叩き潰してやるぜ!」
「そうだな、そんなの糞くらえだ!」
 忍もだった。
「俺達は俺達の手で運命を切り開いてやるぜ!」
「シンジ君もそう言ったしね」
 綾人はそのシンジに言った。
「僕も。そうだったし」
「そうでしたね。綾人さんも」
「ラーゼフォンに乗ったのは運命だったんだ」
 そしてそれからだったというのだ。
「僕は自分で自分の運命を」
「切り開かれましたね」
「僕にもできたんだ」
 それならばだというのだ。
「それなら皆も」
「じゃあバッフクランとの戦いも」
「終わらない筈がないよ」
 綾人は微笑んでシンジに話す。
「無事ね」
「そうですね。それじゃあ」
「希望を持って」
「行きましょう」
 こう話してだった。ロンド=ベルは和解の道を選んだのだった。そのうえでまた道を歩くのであった。


第百十三話   完


                        2011・5・25
   
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