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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第百七十話 世界の中心でアイを叫んだケモノ

              第百七十話 世界の中心でアイを叫んだケモノ
 シンジはだ。彼の前に来ていた。
「来たか」
「うん、父さん」
 こうだ。父に対して応えた。
「ここだったんだね」
「ここにいるとわかったのか」
「目が覚めたらここだったんだ」
 そのだ。今彼等がいるその場所について話した。
「この場所にね」
「そうか」
「父さんはバルマーに来ていたんだね」
「再び補完計画を進める為にな」
 その為だというのだ。
「地球とバルマーの関係は知っているな」
「うん」
 父の言葉にこくりと頷いて返す。
「もうね」
「我々は同じだったのだ」
 そのことも話すゲンドウだった。
「だからこそだ。この星においてだ」
「あの宰相の人に匿われていたんだね」
「結果としてそうなる」
 ゲンドウはそのことも認めた。
「シヴァー=ゴッツォにな」
「御互いに利用し合う為に」
「その通りだ」
「そうだね。それでだけれど」
 ここまで聞いてだった。
 シンジは聞くことを変えてきた。今度は。
「綾波は?」
「あれのことか」
「綾波は何処に」
「私にもわからんよ」
 これが彼の息子への返答だった。
「レイは私の下を去った」
「そうだったんだ」
「自分は人形じゃないと言ってな」
 そしてだ。今度はゲンドウがシンジに尋ねた。
「そしてだ。シンジ」
「僕のことだね」
「御前は何をしにここに来た」
 息子に問うのはこのことだった。
「御前は何の為にここに来た」
「僕は」
「御前を騙した私を倒すつもりか?」
 まずはこう問うたのだった。
「それもいいだろう。だが」
「だが?」
「エヴァはリリスの分身だ」
 この事実をだ。彼は今話した。
「初号機が存在していればだ」
「何度でもだね」
「再度の補完は可能だ」  
 そうだというのだ。
「私はその為に御前を初号機に乗せていたのだからな」
「父さん・・・・・・」
「さあ心の壁を解放しろ」
 こう我が子に告げる。
「御前と私の欠けた心を以てだ」
「それでというんだね」
「人々の補完を」
 彼が目指すもの、それをだというのだ。
「そしてガフの部屋を。世界のはじまりと終わりの扉を開くのだ」
「父さん!」
 だが、だった。シンジはだ。
 ここで言葉を強くしてだ。父に言うのだった。
「それは」
「母さんも待ってるぞ」
「僕はそんなの認めない」
「何っ!?」
「そんなのは逃げてるだけだよ!」
 こう父に言うのだった。
「自分の都合のいい世界に!」
「だがだ」
「だが?」
「この銀河はもうすぐ終局を迎える」
 ゲンドウは我が子にこの事実を話す。
「アポカリュプシスによって」
「だからって」
「だから。何だ」
「それに立ち向かわずに逃げた僕達を」
 シンジが言うのは彼自身だけではなかった。ゲンドウも見てだ。そうしてそのうえで彼に対して強く、彼が今まで出したことのない強さで言うのだった。
「母さんが迎えてくれるものか!」
「そう言うのか」
「何度でも言うよ!僕は嫌だ!」
「そうか」
 ここに至ってだ。ゲンドウは。
 手にしていたスイッチを押した。するとだった。
 初号機が急に出て来た。それを見て言うのだった。
「これは空の器だ」
「空の」
「最後まで魂の宿らなかった廃棄品の一つだ」
「僕の乗るエヴァの他の」
「そうだ。それでもだ」
「まさか。そのエヴァで」
「御前を従わせるだけの力はある」
 我が子に対しての言葉だ。
「だからだ。シンジよ」
「まだ言うんだね」
「私と来い」
 ゲンドウの言葉は変わらない。
「アポカリュプシスを回避するのは不可能だ」
「けれど」
「まだ言うのか」
「それがどんなに無謀な戦いでも」
 それでもだと。彼は言い切る」
「僕は逃げない」
「無駄なことだ」
「それでも」
 シンジはだ。父の言葉を退けた。
 そしてだ。こう、再び言い切ったのだった。
「僕の選んだ生き方だから」
「では御前は」
「僕はロンド=ベルのエヴァンゲリオン初号機パイロット」
 それこそがだった。
「碇シンジです!」
「シンジ・・・・・・」
「僕は最後まで戦う!」
 こう言うのだった。
「そのエヴァとも!」
 十字架にかけられ槍を刺されているアダム、下半身のないそれの前での言葉だった。彼は初号機に乗りだ。その初号機と戦うのだった。 
 その中でだ。彼も来たのだった。
「零号機!?」
「・・・・・・・・・」
 そしてそれに乗っているのは。
「綾波なの?」
「シンジ君、君は」
 その中からの言葉だった。
「やっぱりここに来たんだね」
「カヲル君!」
「これは彼女から借りているんだ」
 こうだ微笑みシンジに話すのだった。
「君を助ける為にね」
「今の君は」
 シンジはそのカヲルに問うた。
「僕があの時倒したカヲル君なの?」
「その質問は無意味だよ」
「無意味?」
「そうさ。何故なら」
 何故無意味なのか。カヲルはそのこともシンジに話した。
「死と新生は常に繰り返されるのだから」
「だから」
「そうだ。だからね」
 こうシンジに話すカヲルだった。
 ゲンドウはだ。そのカヲルに対して問うた。
「タブリスよ」
「何かな」
「何故調停者の一人である御前がシンジにつく」
「彼は好意に値するからね」
「コウイ?」
「好きだってことさ」
 微笑んでの言葉だった。
「そしてこの言葉だけで」
「どうだというのだ」
「貴方の計画は失敗したも同然だ」
「どういうことだ、それは」
「ヒトは。貴方が思っている程弱くはない」
 こう告げる。それと同時にだ。
 この場にだ。彼等が来たのだった。
「ここか!」
「色々と迷ったけれどな!」
「馬鹿シンジ!」
 アスカが言ってきた。他の皆もいる。
「勝手に飛び出して!」
「アスカ、生きていたんだ」
「あたしは不死身よ!」
 こう言い返すアスカだった。
「弐号機もね!」
「そうだったんだ」
「あのしぶとい量産型は全部やっつけたわよ」
 アスカはシンジにこのことも話した。
「相当てこずったけれどね」
「じゃあ」
「そうよ。ここで最後よ」 
 シンジにこのことも話した。
「バルマーでの戦いもね」
「来たか、ロンド=ベル」
 ゲンドウは彼等にも言った。
「まさかここまで来るとはな」
「御久しぶりです」
 ブライトがそのゲンドウに対して告げる。
「こうした形で御会いするとは」
「そうだな。お互いに複雑な心情になるな」
「司令、これは一体」
 ミサトはそのゲンドウに対して問うた。
「どういうことですか?」
「君も知っての通りだよ」
「私の。では」
「アポカリュプシスに対して人類が完全な滅亡を逃れるには」
 その為にはというのだ。
「一つしかない」
「だからなのですね」
「ヒトという形を捨て無限の力と一つになることだ」
「第六文明人みたいにだな!」
「そうだ」
 コスモに対しても答えた。
「そうなるのだ」
「誰がなるか!」
 コスモはこの言葉で返した。
「そんなものにな!」
「イデに触れながらイデを理解していないか」
「ああ、わかってたまるか!」
 これがコスモの返答だった。
「そんなものな!」
「そうして破滅から逃れられなくなるというのだな」
「破滅からは逃れてやるさ!」
 コスモはまた返答を告げた。
「俺達自身の力でな!」
「それは無理だ」
「ああ、あんたの中では無理だ!」
 しかしだというのだ。
「だが俺達はだ!」
「できるというか」
「ああ、絶対にだ!」
 こう言うのである。
「やってやる!」
「司令、いいですか?」
「加持か」
「話して欲しいんですがね」
 こうゲンドウに問うのだった。
「貴方が知るアポカリュプシスのことを」
「それを全てだな」
「ええ、貴方が知っている全てのことを」
 それをだというのだ。
「話して欲しいんですがね」
「知っていることは君達と変わらんよ」
「そうなんですか」
「そうだ。その宇宙が誕生した時から」
 その時からだというのだ。
「あらゆる場所で発生した死と新生がだ」
「その二つがですか」
「宇宙規模で起こるだけだ」
「それがアルマナ姫の言っていた」
「全てのはじまりと終わり」
「銀河の終焉」
「そういうことか」
「そうだ。そしてそれはだ」
 ゲンドウはさらに話す。
「アポカリュプシスの予兆は既にだ」
「遥か前からか」
「やっぱりあったんだな」
「そうだ。五十万年前にだ」
 その時点でだ。既にだというのだ。
「認められているのだ」
「それがですね」
 ミサトが言う。
「使徒の誕生の契機」
「如何にも」
「先代文明による最初の人類補完計画」
「その通りだ。だが」
「それでもですね」
「それは単なる予兆に過ぎず」 
 それでだというのだ。
「補完から逃れた人類も滅亡することはなかった」
「それでなのですが」
 加持はさらに問う。
「アポカリュプシスとは具体的には何か」
「今度はそのことか」
「誰が何の為に起こすものですか?」
「アポカリュプシスには段階がある」
 そうだと話すゲンドウだった。
「その第一段階はだ」
「それは一体」
「何だ?」
「知的生命体の抹殺にある」
「まさかそれが」
 その言葉でだ。ノリコが気付いた。
「あの私達が戦っている」
「その為に生み出されるのが宇宙怪獣だ」
「そうだったの」
「あの宇宙怪獣達はやはり」
「アポカリュプシスの一環だったのね」
 カズミとユングが顔を顰めさせて言う。
「怪しいとは思っていたけれど」
「そういうことだったのね」
「それ以外にも様々な脅威が銀河に発生する」
「プロトデビルンも」
「ソール十一遊星主のプログラム変調も」
「再生した使徒も」
「そしてだ」
 さらにだった。
「別銀河、別次元からの敵もだ」
「じゃあムゲもかよ!」
「俺達もだったのか」
 忍とフォルカが同時に言った。
「あの連中もか」
「アポカリュプシスだったのか」
「そういえば似ているな」
 ロジャーも言う。
「私達の世界とこの世界の破滅は」
「ロジャー=スミスだな」
「如何にも」
「そうだ。君達の世界がこちらの世界とつながったのもだ」
「その一環か」
「それにより互いに崩壊し合う筈だったのな」
「成程な。そうだったのか」
「じゃあ俺が急にここにいたのも」
 トカマクもここでようやくわかった。
「そのアポカリュプシスに巻き込まれてか」
「オーラロード自体がそうですね」
 シーラはそのことに気付いた。
「そしてドレイクのこちらへの侵略も」
「あたし達もだったのね」
「そうだね」
「あの人のお話によると」
 ティス、ラリアー、デスピニスも気付いた。
「それにエリスさん達も」
「同じになるね」
「私達は同じ存在だったのね」
「そうだな」
 エリス自身もそのことを認めて頷く。
「私達の介入にはそうした謎があったのか」
「カヲル君や使徒が新たに現れたのも」
「その通りだよ」
 シンジにはカヲルが話す。
「そういうことだったんだ」
「カヲル君、そうだったんだ」
「その通りだ。そして同時にだ」
 また話すゲンドウだった。
「銀河は生まれ変わる為に」
「その為に!?」
「その為にというと」
「その身をよじりはじめる」
「トカマクの一環はそういう一環か」
「そうよね」
 ショウとチャムが話す。まさにそうだった。
「時間の歪みも」
「それもか」
「俺がショウ=ザマと同じ場所にいるのもか」
 シオンである。
「それが原因だったのか」
「悠久の時を経て」
 それでだというのだ。
「死と再生を繰り返す銀河にとってはだ」
「時間のずれもか」
「かなりのものでも」
「微々たるもの」
「そうだったんだな」
「あるいはだ」
 ゲンドウはそのことについても話す。
「審判の材料を集める為に」
「その為に」
「時間の針は」
「その中で」
「少しだけ調整しただけだろう」
 ここまで話を聞いてだ。ミレーヌが言う。
「そこまでできるなんて」
「神様の天罰みてえだな」
 バサラも言う。
「そこまでとてつもねえとな」
「そうよね。まさにそのものよね」
「それは違う」
 ゲンドウは二人の話は否定した。
「これは無限の力だ」
「無限の力!?」
「それだと」
「そうだ。宇宙に定められた抗うことのできない」
 それだというのだ。
「絶対運命、アカシック=レコードによるものだ」
「絶対の運命」
「抗うことのできない力」
「それがか」
「アポカリュプシス」
「そうなのか」
「あらゆる手段を講じても動かないもの」
 ジェイが言う。
「それこそがだ」
「運命だね」
 ルネが忌々しげに返す。
「それだね」
「そうなる」
「成程」
 トモロはそれを聞いて述べた。
「確かに最大最強の力」
「イデ」
「ゲッター線」
「ビムラー」
「ザ=パワー」
 そうした力が述べられていく。
「その他の力も」
「未知なるエネルギーの多くは」
「それもまた」
「そうだ。無限の力がだ」
 ゲンドウはそのことについても話した。
「無限の力が形を変えてだ」
「その一端を見せている」
「それだけか」
「つまりは」
「その程度のものなのね」
「そういうことだ」
 まさにそうだというのだ。
「全てはだ」
「じゃああらゆることがか」
「俺達にとっては」
「そのアポカリュプシスの中にあるもの」
「絶対の運命によって」
「それによって」
 またゲンドウが話す。
「この宇宙はだ」
「今度は宇宙か」
「この宇宙のことか」
「話がどんどん大きくなるな」
「数ある可能性の中のだ」
 どうかというのだ。
「失敗作だったのだろう」
「失敗作!?」
「この宇宙が」
「そうだってのか!?」
「そう、失敗作だったのだ」
 こう言うのだった。
「この宇宙はだ」
「馬鹿な、そんな」
「じゃあ俺達もか」
「失敗作になる」
「そうなるんだな」
「如何にも」
 語るゲンドウの目は鋭い。
「その通りだ」
「今度は何が根拠なんだ」
「一体」
「何が」
「では聞こう」
 また言うゲンドウだった。
「ヒトの革新と呼ばれたニュータイプ」
「そのことか」
「そうだ。これまでに何をしてきた」
 こうアムロ達に問う。そのニュータイプ達にだ。
「これまでの戦いにおいてだ」
「これまでの戦いで」
「果てしなく続く戦いの環の中で」
 その中でだというのだ。
「君達ニュータイプは戦争の道具として利用されてきたな」
「それは」
「その一面もある」
「しかしそれだけじゃない」
「私達は」
「互いをわかり合えると言われているニュータイプがだ」
 ゲンドウは彼等の話を聞かずにさらに言う。
「傷つけあい憎しみ合う。それはだ」
「違うというのね」
「そうだ。人類の革新、進化ではない」
 こうクェスにも言う。
「ヒトが不完全な群体である以上はだ」
「それならばか」
「俺達ニュータイプは」
「強化人間も」
「そうだ、強化人間も同じだ」
 ゲンドウは強化人間も名指しした。
「ヒトの手による人工的な進化もその袋小路に入っている」
「俺達だな」
「そうだな」
 ディアッカとイザークが気付いた。
「コーディネイターもか」
「そうだというのか」
「コーディネイターは出生率が低下している」
「確かに」
 ニコルもそのことは認めるしかなかった。
「それがコーディネイターの問題にもなっています」
「メガノイドもそうだった」
「言ってくれるね」
 万丈はメガノイドに対して言った。
「彼等も出すんだね」
「先天後天に関わらずその結果はあまりにヒトであり過ぎる」
 そしてだった。
「今度は人が進化を促される立場に回ったのだ」
「一つ言っておこうか」
「どうした、破嵐万丈」
「人の姿と心を捨てたものは」
「何だというのだ」
「もうヒトとは言えないよ」
 こうゲンドウに言うのだった。
「メガノイドだと同じだよ」
「それにな!」
 今度は甲児だった。
「分かり合えるだの分かり合えねえだのな!」
「それがどうしたというのだ」
「人間ってのはぶつかり合って喧嘩してな!」
 こう言うのだ。
「それを乗り越えてお互いを認め合うものじゃねえか!」
「そうだ!」
 ケーンも言う。
「俺達はな!」
「完全に分かり合えなくてもな!」
「生死を共にする仲間がいれば!」
 タップとライトも続く。
「それで生きていけるんだよ!」
「御互いそれでな!」
「十分だと思うんだがね」
「あんたの補完計画はだ」
 鉄也はばっさりと切り捨てた。
「ただの馴れ合いだ」
「そんなものには!」
「一緒になれないよ!」
 勇とヒメも言う。
「それ位なら!」
「一人で生きる方がずっといい!」
「やはりな」
 あくまで人の話を聞かないゲンドウだった。その彼はだ。
 いつものあの考える目でだ。こう言うのだった。
「君達の心の壁」
「ATフィールド」
「それはか」
「強力過ぎる」
 こう言うのだった。
「補完の障害となるものは全て排除するまでだ」
「これは最後の警告です!」
 遂にミサトも言う。
「計画を即刻停止して下さい!」
「それは出来ない」
「あくまでそう仰るのですね」
「そうだ。私はあくまでこの計画を遂行する」
「父さん・・・・・・」
 シンジが思わず父と言った。その横からだ。カヲルが言うのだった。
「どうやら貴方は」
「何だ。タブリス」
「以前のシンジ君と同じだね」
「シンジとだというのか」
「そう、その魂を素直に表現できればもっと違った結果になったかもね」
「そう言うのか」
「言わせてもらうよ。そう」
 その次の言葉は。
「歌を歌う様に」
「そこでそう言うのね」
「歌なんですか」
 シェリルとランカがカヲルの言葉に顔を向けた。
「歌を」
「それを歌えば」
「リリンの生み出した文化の極み」
 それだとだ。ここでも話すカヲルだった。
「そこに答えはあるんだ」
「歌にか」
「そう、プロトカルチャーの中にもそう考えた人達がいたんだ」
「じゃあ渚カヲルは」
「まさか」
「カヲル君、君は」
「シンジ君」
 カヲルはシンジに優しい顔を向けながら彼に語り掛ける。
「もうすぐお別れの時が来る」
「うん・・・・・・」
「それまでだけれど」
「僕の歌をなんだね」
「そう、君の魂の歌を」
 まさにだ。それをだというのだ。
「聴かせてくれないかな」
「僕の歌は。それは」
「難しく考える必要はないんだ」
 カヲルは躊躇を見せたシンジにまた優しく語り掛けた。
「心を燃やせばね」
「それがそのまま」
「歌だから」
「じゃあ僕は」
「君も歌を聴かせてくれ」
 それこそがカヲルの願いだった。
「僕に」
「うん、わかったよ」
「それが君達の進む正しい道なのだから」
 こうシンジに告げる。それを受けてだ。
 シンジはダミープラグと対峙する。その彼にだ。
 ゲンドウは。あらためて問うた。
「来るか、シンジ」
「父さん、僕は」
「どうしたのだ」
「綾波を助け」
 まずはレイのことを父に話す。
「父さんと話をする為にここに来たんだ」
「だからだというのか」
「そう、そして僕は」 
 彼自身はだ。どうかというとだった。
「もう逃げないよ」
「決してか」
「自分の敵から、自分の居場所から」
 そしてであった。最後は。
「父さんの前から」
「決してか」
「そうするよ」
「ではあらためて告げよう」
 ゲンドウは顔にも声にも動揺を見せずに我が子に話した。
「ヒトはアポカリュプシスからは逃れられない」
「それが父さんの考えなんだね」
「その滅びの宿命からはだ」
 決してだというのだ。
「それはアカシックレコードに記された絶対の運命だからだ」
「そうだね」
「人類が戦いを挑むことは無駄なのだ」
 その考えはだ。どうしても変わらない彼だった。
「だからヒトが生きていた証を」
「それを」
「生命の源をどうして次の世界に残すのか」
 まさにだった。
「それこそが重要なのだ」
「そしてその為になんだね」
「ヒトは肉体を捨てて魂を一つにし」
 そしてだった。
「無限の力に融合しなければならない」
「・・・・・・・・・」
 誰も何も聞かない。彼の話を聞いているのだ。
「終焉を超え新しい銀河に転生するのだ」
「そしてそれがか」
「あんたの願いで」
「そうしてなんだな」
「永遠に繰り返される誕生、進化、死、新生の輪廻なのだ」
 ここまで話して。あらためてシンジに告げる。
「もう一度だけ言う」
「これが最後なんだね」
「さあ、来るのだシンジ」
 我が子にだ。語り掛けるのだった。
「母さんが、ユイが御前を待っている」
「答えは変わらないよ」
「そう言うのか」
「だって。同じだから」
「同じ?」
「そう、父さんは同じだよ」
 シンジは父をだ。今完全に理解したのだ。180
「昔の僕とね」
「昔の御前だというのか」
「自分の意志ではどうにもならないものの存在を知って」
 そうしてだというのだ。
「逃げようとしているだけじゃないか」
「それは」
「同じだよ」
 父の弁明を封じて。さらに言うのだった。
「そんな父さんに」
「私は」
「世界の終わりを告げる資格なんてないんだ」
「あんた、似てるな」
 ムウも言った。
「あいつにな」
「あいつ・・・・・・ラウ=ル=クルーゼか」
「誰にもな。世界を終わらせる資格なんてないんだよ」
「私はあの男でもあるのか」
「あいつはこの世を呪ってそれを目指そうとした」
 それがだ。似ているとというのだ。
「あんたもこの世が憎いんだな」
「いや、私は」
「わかるさ。隠さなくてもな」
「・・・・・・・・・」
「その言葉の中身もな」
「まさかそうした言葉が出て来るとはな」
 ゲンドウはもうこう言うしかできなかった。
「シンジ、御前の口からな」
「父さん・・・・・・」
「少しは成長を遂げた様だ」
 ここに至ってだ。父の言葉を出したのだった。遂にだ。
「よもやそうした言葉が出て来るとはな」
「僕は」
「ロンド=ベルに送り込んで正解だった」
 ゲンドウはこうも言った。
「まさにな」
「そう言ってくれるんだね」
「今それを思う」
「シンジは」
 アムロがゲンドウに言ってきた。
「俺達と共に戦い」
「そうしてだな」
「そうだ、見つけたんだ」
 これがアムロのゲンドウへの言葉だたt。
「守るべき存在と帰るべき場所を」
「その二つを」
「そういうことだ」
「そうなのか」
「そしてだ」
 今度はカミーユだった。
「貴方の言う通り人類はだ」
「それはわかるな」
「互いに完全にわかりあえないかも知れない」
「その通りだ」
「だが!」
 それでもだとだ。カミーユは己が言いたいその本題に入った。
「それぞれにある見えない壁によって生じる」
「それこそが問題なのだ」
「その様々な問題や苦難を乗り越える姿こそ」
 それこそがだった、
「人間本来の姿じゃないのか」
「その様に不安定な心を持つヒトがだ」
 ゲンドウは今も反論する。
「何をしてきた」
「何をか」
「それをか」
「同じ歴史、同じ過ちの繰り返しだ」
 彼の言うことはそのことだった。
「そしてその結果が閉じゆく世界だ」
「そう言うんだな」
「あんたはあくまで」
「だからこその補完計画」
「そうだと」
「そうだ」
 まさにその通りだった。
「ヒトの進化も行き詰まり」
「そしてか」
「後は」
「その到達点である死と滅亡を迎えるだけ」
 何処までもだ。彼は終末論だった。
「だが補完はだ」
「それはか」
「そうだ。ヒトをその先の世界に導くのだ」
「そうはならないでしょう」
 リリーナはゲンドウのその主張を一蹴する形になった。
「貴方のお考えには」
「何故そう言える」
「人は一人では生きられないからです」
「一つになっては駄目だ」
 ヒイロも言った。
「それでは何にもならない」
「その通りだ。傷つけ合おうとも」
 ミリアルドも話す。
「答えを探すものだ」
「俺達はそれを探す!」
 凱は言い切った。
「それは生きることそのものだ!」
「アポカリュプシスが何だ!」
 ゴウもだった。
「そんなのに屈するかよ!」
「生命が燃え尽きるその時までだ」
 大介の言葉だ。
「僕達は戦い抜く!」
「これ以上の問答は無意味だな」
「やはりそう仰るのですね」
 リツコもだ。居間はゲンドウと完全に対峙していた。
「貴方は」
「如何にも。それならばだ」
 こう言ってであった。
「君達の力を見せよう」
「いいかい、シンジ君」
「あんなのどうってことないでしょ!」 
 カヲルとアスカがシンジに告げる。
「あのダミープラグも今の君ならね」
「あっという間よね」
「うん、これで」
 出すのはだ。マゴロクだった。
「やってみるよ」
「うん、じゃあ」
「見せてもらうわよ」
「あの槍やなくてもな」
 トウジもいる。
「やれるな」
「あの槍はあえて使わないよ」
 シンジはこうトウジに返す。
「僕の。このエヴァの刀で」
「うん、じゃあ」
「決めなさい!」
「一撃でや!」
「僕には仲間がいるんだ」
 シンジはダミープラグに向かいながら言う。
「こんなに素晴しい仲間ができたんだ」
「その仲間達が何をしてくれる」
 ゲンドウはその我が子にまだ言う。
「結局ヒトは互いに傷つけ、傷つけられることの繰り返しだ」
「そうだろうね」
「互いの欠けた心」
 ゲンドウは言う。
「不安と恐怖を取り除き」
「一つになってだね」
「アポカリュプシスを乗り越えば人は滅亡する」
「今までだって色々な困難を乗り越えてきたんだ!」
 それがシンジの今までの戦いに他ならない。
「逃げちゃ駄目なんだ!」
「なら。やってみることだな」
「やってみる!これで!」
「今日はスペシャルだ!」
 バサラがそのシンジに叫ぶ。
「御前のステージだ!思う存分歌え!」
「はい!」
 シンジは構えてだ。そのうえで。
 一刀両断だった。ダミープラグに攻撃する隙さえ与えなかった。
 そしてだ。ダミープラグが斬られると。
 場が揺れだした。大きく。
「!?まさか補完計画が破綻して」
「もうこの場所が」
「崩れるというのか」
「そうなのか」
「あらかじめ用意しておいたのだ」
 ゲンドウはその揺れ動く場の中で話す。
「若しダミープラグが敗れればだ」
「人類補完計画が破綻したら」
「その時は」
「この場自体が」
「ダミープラグと連結させていた」
 こう話すのだった。
「部屋への爆破装置とな」
「そうか、そういうことか」
「ならもうこれで」
「この場所から」
「この時をひたすら待ち続けた」
 ゲンドウは言う。微笑みながら。
「ようやく会えたな、ユイ」
「!?父さん」
 シンジは確かに聞いた。父の今の言葉を。
「母さんの名前を」
「俺が傍にいるとシンジを傷つけるだけだ」
 今その本心を語るのだった。
「だから何もしない方がよかった」
「シンジ君が怖かったのね」
 不意にあの声がした。
「だからなのね」
「えっ、その声は」
 シンジがだ。その声に最初に問うた。
「綾波!?」
「だからシンジ君との接触を避けていた」
 レイだった。レイもこの場に姿を現し言うのだった。
「そうだったのね」
「自分が人から愛されるとは信じられない」 
 また本心を語るゲンドウだった。
「私にそんな資格はない」
「ただ逃げているだけなんだ」
 カヲルはそのゲンドウに言った。
「自分が傷つく前に世界を拒絶している」
「それが私だったのだな」
「人の間にある形もなく見えないものが怖くて」
 レイもゲンドウに話していく。
「そうして心を閉じるしかなかったのね」
「その報いが今か」
 ゲンドウは今自省に入っていた。
「この有様か」
「駄目だ、もう!」
「この場はもたない!」
「総員退避!」
「急げ!」
「父さん!」
 シンジは無意識のうちに父に声をかけた。しかしだ。
 ゲンドウはその場に立ったままだった。動こうとしない。
 そして我が子を見て微笑みだ。こう告げたのだった。
「すまなかったな、シンジ」
「父さん!逃げて!」
「いいのだ。私はこれでな」
「そんな、それじゃあ!」
「皆のところに帰りなさい」
 その微笑みと共に我が子にまた告げる。
「そして。生きなさい」
 場は崩れゲンドウはその中に消えた。そしてロンド=ベルは。
 バルマー上空に出ていた。そこでだった。
「ゼーレも一人残らず死んだ」
「遺体が確認されました」
 こうバランとルリアから話が来た。
「補完計画が収まり人は下の姿に戻った」
「全ては元通りです」
「そうですか」
 シンジがその話を聞いて頷く。
「全ては終わったんですね」
「残念だがお父上はだ」
「あの場で。遺体は確認できませんでした」
「はい、わかりました」
 死んだのはもうわかっていた。ああなっては生きても仕方がない。どちらにしても父は死んだ、シンジはそのことは誰よりもよくわかった。
「それでは」
 そしてだった。シンジは言うのだった。
「父さんは僕と同じだったかも知れない」
「シンジ君」
 ミサトがそのシンジの話を聴く。
「そう思うのね」
「はい、周りの世界から拒絶されるのが怖くて」
 それでだというのだ。
「先に自分から心を閉じた」
「そうなるわね」
「本当は父さんも」
 その彼がだというのだ。
「他人から傷つけられるのが怖くて」
「それでだったわね」
「なのに僕は父さんを」
「貴方のその選択がね」
 ミサトはそのシンジに話す。
「それを決めるのはね」
「僕なんですね」
「ええ、貴方よ」
 他ならぬだ。彼自身だというのだ。
「貴方以外の誰でもないわ」
「そうなんですね」
「そうよ。貴方が決めて」
「そうして」
「あの人はね」
 今度は万丈が話す。
「人類補完計画によってアポカリュプシスを超えて」
「そうしてですね」
「ヒトの魂を存在させようとした」
 それがだ。ゲンドウの願いだったのだ。万丈はそれは理解していた。
「けれど僕達は」
「はい」
「それを否定した」
 シンジにこのことも話したのである。
「そうですね。僕は」
「君自身としてだね」
「はい、僕として生きていくことを選びました」
 これがシンジの答えだった。
「それが例え辛くても悲しいことばかりだとしても」
「それでもだね」
「僕は僕ですから」
「そうだよな」
 シンが彼のその言葉に頷いた。そのうえでの言葉だった。
「俺達も同じなんだよな」
「そうだね」
 キラもシンに続く。
「僕達はやっぱり」
「けれど。あの人もこともね」
 海は俯いて述べた。
「考えていたこともわかるわ」
「そうですわね。人は目指すものは一つでも」
 風も言う。
「そのやり方の違いだけで戦うことができますから」
「だから僕は戦います」
 シンジは顔をあげた。
「父さんとは違うやり方で」
「それでなのね」
「はい、そのうえで」
 ミサトに応えながらの言葉だった。
「父さんの意志を継いで」
「そうしてそのうえで」
「父さんと母さんが僕に遺してくれた」
 そしてだ。シンジはここでだ。
 カヲルを見た。彼の前にいる彼をだ。
 そのうえでだ。彼にこう告げるのだった。
「あのエヴァで」
「そうするんだね。君は」
「それが僕の選んだ未来だよ」
 微笑んでだ。カヲルに話すのだった。
「僕がね」
「わかったよ」
 カヲルは微笑んで彼のその考えを受け入れた。
 そうして。彼にこう告げたのだ。
「僕もね」
「それでいいと言ってくれるんだね」
「僕はもうすぐ消えるけれど」
 それでもだというのだ。
「それでも。君と同じ立場なら」
「それならだね」
「うん、それしかないから」
 だからだというのだ。
「君が君である為にはね」
「僕は僕のままで」
「僕が君を好きな理由は」
 それは。何故かというのだ。
「君が優しさの中に別のものも持っているからだよ」
「それは」
「強さだよ」
 それだというのだ。
「そう、人としての強さをね」
「人としての」
「そう、人としてのね」 
 それがシンジの強さだというのだ。
「それが君にはあるから」
「だから」
「あの人はそれを否定しようとしていた」
 ゲンドウのことに他ならない。
「けれど君は違うからね」
「強さを否定しなかった」
「最初はなかったかも知れない」
 だが、それでもだというのだ。
「けれど君は最初から持っている優しさにそれを加えて」
「そして今に至るんだね」
「君は必死に努力してそれを手に入れた」
「強さを」
「その君を好きになったんだ」
 微笑んでだ。シンジに話すのだった。
「僕はね」
「カヲル君・・・・・・」
「さあ、最後の最後まで戦うんだ」
 こうもシンジに告げてだった。
「優しさの中に強さ、それを」
「それを持って」
「勇気をね」
「勇気?」
「優しさの中にある強さ」
 それこそがだというのだ。
「それが勇気なんだ」
「勇気。それが」
「君はもう勇気を手に入れたから」
「だからこれからも」
「戦えるよ。アポカリュプシスを止められるよ」
「そう言ってくれるんだね」
「そう確信しているから」
 カヲルはだ。シンジへの絶対の信頼も見せた。
「だからね」
「じゃあ僕はこれから皆と一緒に」
「ロンド=ベルの皆と一緒にね」
「戦うよ。それじゃあ」
「さようなら」
 カヲルはこれまで以上の微笑みを見せた。そのうえでの言葉だった。
「君の。君達の未来を信じているよ」
「有り難う、カヲル君。そして」
 シンジもだ。微笑んでだった。
 カヲルにだ。この言葉を贈った。
「さようなら」
 カヲルは霧の様に姿を消した。これで全てが終わった。
 シンジは少年でなくなった。その彼のところにだ。
「一つ終わったで」
「そうだね」 
 トウジとケンスケが出て来て言う。
「人類補完計画がな」
「まさかと思ったけれど」
「ああ、けれどこれでや」
「使徒も。ゼーレもなくなるから」
「そうよ。これでね」
 ヒカリも言う。
「また一つ。戦いが終わったのね」
「そうよ。まだ戦いはあるけれどね」
「それでも一つの戦いが終わったことは」
「確かだよな」
 マヤにマコト、ジゲルも話す。穏やかな顔になって。
「司令が死んだのは思うところがあるけれど」
「あの人も。やっぱり人間だったんだな」
「それも弱い」
「そうね。確かにね」
 ミサトも考える顔で述べる。
「あの人もやっぱり。そうだったのね」
「正直好きじゃなかったよ」
 マサトがこんなことを漏らした。
「冥王計画の時からね」
「そうだったのね」
「けれど。今思えば」
「あの人の心がわかったからなのね」
「うん、嫌いじゃなくなったよ」
 マサトはこう美久に答える。
「本当のことがわかったから」
「そうなのね」
「こうして今皆を見ると」
 マサトは今度は皆を見て述べた。
「無事でよかったよ」
「そうね。本当にね」
「レイも来たし」
「えっ!?」
 今のマサトの言葉にだ。
 シンジは思わず言葉を失いそうしてだ。周りを見た。するとだ。目の前にだった。
 彼女がいた。レイがだ。そのうえで彼に言ってきたのだ。
「碇君」
「綾波・・・・・・」
「帰って来たわ」
 こうだ。微かに笑って言うのである。
「皆の。碇君のところに」
「うん、お帰り」
 シンジもだ。笑顔でレイに応える。
「綾波」
「只今」
「さて、大団円ね」
 ミサトが満面の笑顔で言う。そのうえでだ。
 一同にだ。こう話すのだった。
「これから宇宙怪獣かバッフクランとの決戦になるけれど」
「それでもですね」
「今は」
「ええ。二つの戦いの結末のお祝いにね」
 バルマーとの戦い、そして補完計画のだ。
「派手にやるわよ」
「飲むのかしら」
「いえ、運動会よ」
 それだとだ。リツコに話すのだった。
「たまにはね。健康的にいきましょう」
「そうね。お弁当をたっぷり用意してね」
「楽しくやりましょう」
 こう一同に提案するのだった。それを聞いてだ。誰もがこう言うのだった。
「そうだよな。たまにはいいよな」
「いつも飲んで騒いでだけれどな」
「そうした健康的なのもな」
「いいよな」
「そうよね」
 皆賛成だった。そうしてだ。
 その中でだ。またしても言うシンだった。
「ミサトさんが運動会ねえ」
「そうよ。いいでしょ」
「いや、おばさんの体操服ってどうにもならないだろ」
 ミサト本人を前にしての言葉である。
「もうよ。胸も尻も垂れて腹も出てるんだろ?手もぶよぶよでな」
「シ、シン待てよ」
「御前それ以上言うなよ」
 慌ててだ。スティングとアウルが止めに入る。
 しかしだ。シンはいつも通り続けるのだった。
「それで無理して体操服にブルマか。見ただけで死ぬな」
「そう、死ぬのね」
「おばさんの体操服なんか戦略兵器だよ、戦略兵器」
 ここまで言うのだった。
「そんなの着てよ。正気なのかね」
「そうね。正気よ」
 ミサトは瘴気を身に纏いながら答えた。
「だからシン君いいかしら」
「んっ、何だ?」
「今から死になさい」
 こう言ってだ。漆黒の影になってだ。シンに襲い掛かってだ。
 シンを残骸にしてしまった。それを見て皆は言うのだった。
「こいつの頭は補完してもいいじゃなかったのか?」
「一体何度同じこと繰り返すんだよ」
「本当に馬鹿だよな」
「全く」
「何の進歩もないな」
 こう言って呆れるばかりだった。何はともあれだ。これでまた一つ戦いが終わったのだった。


第百二十話   完


                                        2011・5・11    
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