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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第九十五話 戦士達の危機に

             第九十五話 戦士達の危機に
 遂にだった。彼が出て来た。
「来たか!」
「ハザル=ゴッツォ!」
「遂に!」
 ロンド=ベルの面々はヴァイクランの姿を見て口々に言う。
「アヤ大尉の仇」
「SRXを倒した男」
「絶望の宴の本当のはじまりだ」
 ハザルはその彼等に傲慢そのものの顔で告げた。
「御前達にとってのな」
「残念だがそうはならない」
 サンドマンが彼に告げた。
「ハザル=ゴッツォだったな」
「貴様は確か別の世界の」
「そうだ。サンドマンという」
 サンドマンは自ら名乗った。
「私もこれまで多くの者を見てきたがだ」
「何だというのだ」
「御前の様な男には何もできはしない」
 こうハザルに告げるのだった。
「それを言っておく」
「ふん、何かと言えば負け惜しみか」
 少なくともハザルはそう感じ取った。
「下らんな。別の世界の輩も」
「私は負け惜しみを言う趣味はない」
 既にだ。サンドマンはハザルを圧倒していた。だがハザルはそれに気付かない。
「勝利は我等の手にある」
「ではだ」
 ハザルはその言葉を受けて言った。
「御前達のその勝利を見せてもらうとしよう」
「それではです」
「我々が」
 七隻のヘルモーズがだ。戦場に出て来たのだった。
「また出て来たな」
「バルマー軍のお約束ね、あの戦艦は」
「そうね、あれはね」
 皆最早ヘルモーズを見ても驚かなかった。
「じゃああれを倒してからね」
「あいつとの決戦はそれからね」
「倒せればな」
 ハザルはその彼等に告げてきた。
「俺が相手をしてやろう」
「よし、言ったな!」
「それならだ!」
「待ってなさいよ!」
 また口々に言うロンド=ベルの面々だった。
「この戦い絶対に!」
「勝ってみせる!」
「生き残るのは俺達だ!」
「何があっても!」
 こうしてだった。ロンド=ベルと第六陣の戦いがはじまった。だがハザルはだ。
「さて、それではだ」
「後方に」
「そうだ。俺の出番はまだ先だ」
 こうエイスに言うのだった。
「本陣の戦力を率いてそのうえでだ」
「ヘルモーズが全て沈められたならば」
「その時に出よう」
 そうするというのであった。
「それでいいな」
「御意」
 ここでも頷くだけのエイスであった。仮面の下の顔は見えない。
 ハザルは下がりだ。戦場から姿を消した。
「高みの見物ってことかよ」
「ここでもまたか」
「何処までも嫌な奴ね」
 それを見てまた全員で言う。
「まあそれでも」
「この戦いで最後だから」
「倒してやるからな!」
「いいわね!」
 こうして第六陣との戦いがはじまった。まずはだ。
 七人のジュデッカ=ゴッツォ達がだ。それぞれのへルモーズから言ってきた。
「さて、それではだ」
「汝等とははじめて会うがだ」
「ああ、そうなんだよなあ」
「そういえば」
「そうよね」
 誰もが彼等の言葉にそのことに気付いた。
「あんた達自体と会うのは」
「これがはじめてなんだ」
「あんた達とはな」
「余達のクローンとは会っているな」
「そうだったな」
 ジュデッカ=ゴッツォ達もそのことはわかっていた。
「余達も同じだが」
「それでもだな」
「そうそう、クローンなんだよな」
「それがそれぞれの艦隊の指揮官になってるんだったよな」
「バルマー帝国はな」
「そういうことだ」
 ラオデキアであった。
「余にしてもそうだ」
「あんたと一番よく会ってるけれどな」
「実際のところな」
「バルマー戦役の頃からだったしな」
「そう思うと縁がある」
 ラオデキアは余裕と共に述べてきた。
「つまり余は汝等に数多く敗れてきたことになる」
「あんた自体とはこれからだけれど」
「結果的にはそうなるよな」
「何ていうか微妙な話だけれど」
「それでも」
「そうだ。しかしだ」
 ラオデキアの言葉がここで強いものになった。そのうえでの言葉だった。
「今度はそうはいかぬ」
「勝つっていうんだな」
「そちらが」
「左様。バルマーの為にだ」
 決してだ。ハザルの為ではなかった。
「汝等にここで引導を渡そう」
「よいな」
「そうするぞ」
 他のジュデッカ=ゴッツォ達も言ってきた。そうしてであった。
 七隻のヘルモーズから艦載機が出てだ。ロンド=ベルに向かうのだった。
 それを見てだ。まずはイーグルが言った。
「はじまりですね」
「ああ、敵の最後の陣との戦いか」
「まあ本陣がまだあるけれどね」
 そのイーグルにジェオとザズが応える。
「それでもこの戦いはな」
「勝たないといけないからね」
「はい、ではNSXもです」
 他ならぬ彼等の乗る艦である。
「前に出しましょう」
「ああ、そうしてな」
「敵を倒していこうね」
 こうしてだった。NSXが前に出るとだ。
 アスカがだ。それを見てシャンアンとサンユンに言った。
「では童夢もじゃ」
「はい、それでは」
「前に出しましょう」
 二人もそれに応える。
「そうしてできるだけです」
「敵を倒していきましょう」
「いつもじゃが今回ものう」
 アスカは不敵な、それでいて子供っぽい笑みで述べた。
「積極的にじゃな」
「そや、そうせなな!」
 タータがアスカに応える形で言った。
「姉様、うち等もや!」
「そうね。ここはね」
 タトラは妹のその言葉に頷いていた。
「やっぱり。前に出ないとね」
「それで敵を倒してや」
「あのハザル=ゴッツォだけれど」
 タトラも彼にはいい顔を見せない。
「私も」
「嫌いやな」
「ええ、好きにはなれないわ」
「うちはあいつ大っ嫌いや」
 タータはここまで言う。
「ああいう奴許しておけるかい」
「そうよね。やっぱりね」
「引き摺りだして謝らせたるわ」
「それだけでいいの?」
「ほなあの頭虎刈りや」
 それで終わるのがタータだった。
「そうしたるわ」
「虎刈りなの」
「そや、虎刈りや」
 まさにそうだというのである。
「そうしたるわ!」
「あらあら、タータも相変わらずねえ」
「相変わらず?」
「それで済ませるところが」
「そうですよね。何かタータさんは」
 遥が二人に言う。
「お優しいから」
「虎刈りって最高にきついやろ」
「いえ、ああした人物にはです」
「もっときついお仕置きでもいいと思うわ」
 遥とタトラはこうタータに話す。
「それを虎刈りだけというのは」
「やっぱり優しいと思うわ」
「そうかなあ。きついと思うけれどな」
 自分ではそのつもりのタータだった。
「そこがちゃうんかな」
「そう思いますけれど」
「何か遥に言われるとそんな気になるな」
 彼女にだというのだ。
「姉様と同じだけな」
「どうしてですか、それは」
「何か似てるからやろな」
 それでだというのである。
「そう思えるんや」
「私もそうですけれどね」
 そしてそれは遥もだった。
「何かそう思えます。タータさんでしたら」
「同じものを感じるからなあ」
「そうですよね。何故か」
「私なんかそれを言ったら」
 タトラはであった。
「テュッティさんにアイナさん達が」
「多いで、姉様は」
「そう思います」
「いいことよね、やっぱり」
「羨ましいと思うわ」
「そうですよね」
 それも言うタータと遥だった。そんな話をしながらだった。
 ロンド=ベルは突撃してだ。バルマーの大軍を正面から倒していく。囲まれてもだ。
「よし、それならだ」
「はい、ここはですね」
「あの陣ですね」
「そうだ、円陣だ」
 クワトロがアポリーとロベルトに述べていた。
「そうすればいい」
「了解です。それでは」
「今は」
「幾ら数が多くともだ」
 最早誰もそのことに焦ることはなかった。
「戦い方はある」
「はい、そうです」
「その通りです」
 アポリーもロベルトもクワトロのその言葉に応えてだった。
 すぐにクワトロと共に動く。ロンド=ベル全体もだ。
「何っ、早い」
「もう陣を組んだというのか」
 ジュデッカ=ゴッツォ達は彼等がすぐに円陣を組んだことに驚きの声をあげた。
「ロンド=ベル伊達にだな」
「これまでの六つの陣を破ってきたわけではないか」
「しかしだ。我等にもだ」
「バルマーの誇りがある」
 それならばというのだ。
「そうしてきてもだ」
「怯むつもりはない」
 こう言ってだった。その軍で包囲を続けてだった。
 全軍で攻撃を仕掛ける。そうするのだった。
 しかしだ。やはりロンド=ベルは強い。数を減らしていくのはバルマー側だった。
「まだだ!」
「この程度で!」
「やられるか!」
 こう言ってだ。さらに攻撃を加えるロンド=ベルだった。
 戦局はここでも彼等に傾いていっていた。そしてだ。
 遂には七隻のヘルモーズと近接の戦力だけになったのだった。
「さてと、後は」
「いつも通りあの巨艦を沈めて」
「それからだよな」
「それもいつも通りね」
 こう話してだ。そうしてであった。
 円陣を解いてだ。ヘルモーズ達に向かうのだった。
 集中攻撃を浴びせる。それによってだ。
 ヘルモーズ達を沈めていく。一隻、また一隻とだ。
「ヘルモーズもか」
「こうも簡単に沈めていくか」
「そうするか」
「だから慣れてるんだよ!」
 カズマが彼等に言い返す。
「あんた達のことはな!」
「ふむ。それではだ」
「我等の切り札もか」
「わかっているのだな」
 ジュデッカ=ゴッツォ達がそれぞれ言う。
「このズフィルード」
「倒せるというのだな」
「これもまた」
 今度は七機のズフィルードだった。ヘルモーズ達から出て来たのである。
 ジュデッカ=ゴッツォ達はだ。その中から問うのであった。
「汝等の戦力を見てその都度強くなるこのマシン」
「それも倒せるというのだな」
「今回も」
「ええ」
 セツコが答えた。
「倒してみせるわ。今回もね」
「ふむ。言うものだ」
「無論余達も油断はしていない」
「しかしそれでもだな」
「倒せるというのか」
「倒す!」
 ゼンガーの言葉だ。
「必ずだ!」
「そして帰らせてもらう」
 レーツェルも友に続く。
「我々の世界にだ」
「ふむ。それならばだ」
「余達にその力見せるがいい」
「存分にな」
 こうしてだった。今度はズフィルード達との戦いだった。だがそれもだ。
 ロンド=ベルはなれた動きで彼等を囲んでだ。一機、また一機と倒していくのだった。
 そうして瞬く間にだ。七機のズフィルードを全て倒したのだった。
「何っ!?ズフィルードがこうも簡単にだと」
「倒されるというのか」
「まさか」
「だから慣れてるって言ってるだろ」
「それはね」
 こう返すカズマとミヒロだった。
「これまで随分戦ってきたんだからな」
「それじゃあわかるわよ」
「ふむ。進化にもだ」
「汝等は勝てるというのだな」
「ああ、そうだ!」
「その通りよ!」
 ラウルとフィオナが言った。
「俺達にはな!」
「進化も意味はないわ!」
「どうやら。地球人はだ」
「我等の予想以上だな」
「そうだな」
 彼等もこのことがだ。今わかったのだった。
「いいだろう。それではだ」
「汝等を認めよう」
 そしてこうも言うのだった。
「その力、見事だ」
「それならばできるな」
「この世界から出ることもだ」
「だが、だ」
 炎に包まれるマシンの中でだ。彼等は言うのだった。
「戦いはこれからだ」
「それはわかっておくことだ」
「つまりあれか?」
 言い返したのはイルムだった。
「ハザルの野郎にはってのかよ」
「ふっ、それは違う」
「それは言っておこう」
 ところがだった。彼等はイルムにこう返すのだった。
「我等が忠誠を誓うのはバルマー帝国だ」
「我が国にだ」
「成程な」
 それを聞いてだ。リンはあることを悟った。
「どうやらあの者達はバルマーには忠誠を誓っていても」
「ああ、そうだな」
 イルムも彼女の言葉に応える。
「ハザルの野郎にはな」
「忠誠を誓っていないな」
「所詮その程度の奴だってことだな」
 イルムはここからハザルの度量も見抜いたのだった。
「人望は全然ないな」
「そうだな、全くな」
 彼等が言葉に出さずともだ。それを悟ったのである。
 そしてそのうえでだ。あらためてジュデッカ=ゴッツォ達の話を聞くのだった。
 彼等はだ。まだ言うのだった。炎に囲まれながらも。
「バルマー本国艦隊はこんなものではない」
「その質と量は我々の比ではない」
「それは言っておく」
 このことを話すのであった。
「本国の戦力こそが我等の切り札だ」
「その戦力には勝てるものではない」
「決してな」
「それは言っておく」
「そうか、話はわかった」
「よくな」
 イルムとリンが彼等に応えて頷いた。
「そうしてか。御前達はこれで」
「去るのだな」
「そうさせてもらおう」
「ではだ」 
 七機のズフィルードが完全に炎に包まれた。その中でだ。
「ゼ=バルマリィ帝国万歳!」
「帝国に栄光あれ!」
 こう叫んでだ。そのうえで炎の中に消えるのだった。
 七個艦隊が全て消え去った。それを見てだ。イルムはまた言った。
「見事な奴等だったな」
「そうだな。あの者達はな」
 リンがイルムの言葉に応える。
「敵ながら見事だ」
「しかしな。次の奴はな」
「最悪だ」
 リンの声が忌々しげなものになった。
「あのハザル=ゴッツォはな」
「そうだな。あいつだけは許せるものがないからな」
 イルムの言葉にも怒気が宿る。
「あいつは武人でも何でもないな」
「その通りだ。言うならばだ」
「何なんだ?あいつは」
 イルムのその言葉がいぶかしむものになった。
「一体何て言えばいいんだろうな」
「人形か」
 リンがふとした感じでこう述べた。
「あの男は。人形か」
「人形!?」
「そんな感じがするがな」
「言われてみればそうか?」
 イルムもリンのその言葉に考える顔になった。
「あいつは。そうした奴か」
「何故かわからないがそうした感覚がある」
 また述べるリンだった。
「妙なな」
「そうだな。あいつは何なんだ?」
 また言うイルムだった。
「何者なんだ、一体」
「?ですから」
 アルマナが怪訝な顔で言ってきた。
「帝国宰相シヴァー=ゴッツォの息子ですが」
「それもただ一人のです」
 ルリアも言ってきた。
「そうした方ですが」
「それはそうなのだが」
「何かおかしな感じがするんだよな」
 その二人にこう返すリンとイルムだった。
「空虚な感じがする」
「言ってることはむかつくことばかりだけれどな」
「しかしだ。その中にはだ」
「自分の意志らしきものが感じられないんだよ」
「そうですか?」
「我々は特に」
 バルマーの二人はそれを感じていなかった。それも全くだ。
「傲慢な男ですが」
「あの方は確かな意志で」
「だといいのだがな」
 マイヨもだ。リンとイルムの言葉に傾いていた。そうして言うのだった。
「あの男は。何かが違う」
「人形ねえ。言い得て妙か」
 ジェリドも鋭い顔になって述べた。
「あんた達強化人間って知ってるか?」
「地球の技術ですね」
「それですね」
 二人はジェリドの言葉にすぐに答えた。
「確か。薬物投与等によって特別な力を引き出す」
「そうしたものでしたね」
「私がそうなのよ」
 フォウが述べてきた。
「実はね」
「私もよ」
 今度はロザミアが述べてきた。
「少し違うけれどステラちゃん達もね」
「それには入るわね」
「昔のこいつ等は感情的にはかなりあれだったんだよ」
 ジェリドがまたここで話す。
「それにな。あいつは似てる感覚がするんだよな」
「だからこその人形」
「そうだというのですか」
「少なくともあいつは自分の意志で動いてないな」
 ジェリドもそれは見抜いていた。
「そうした意味で人形だな」
「そうなのですか」
「あの方は」
「それでだ」
 ジェリドがここでまた言う。
「来るぜ、そのお人形さんがな」
「ああ、そうだね」
「敵の本陣がだな」
 ライラとカクリコンが彼のその言葉に応える。
「それなら次で」
「終わらせるとするか」
「あの男」
 マシュマーの目も鋭くなった。
「私もまた許せぬ」
「やっぱりアヤさんのことですか」
「それだけではない」
 こうゴットンにも返す。
「武器を持たぬ者も平然と手にかけるその行動がだ」
「許せませんか」
「私はそうした輩が最も嫌いだ」
 マシュマーらしい言葉だった。
「許せん。できればこの手でだ」
「そういうことでしたら」
 ゴットンはだ。微笑んでそのマシュマーに言ってきた。
「私もご一緒させて下さい」
「むっ、御前もなのか」
「何か変わりましたよ」
 マシュマーにこうも話すのだった。
「ああいう人間とか見ていたら許せませんよ」
「そうなのだな」
「ええ、それじゃあですね」
「それでは。その言葉を受けよう」
「そうしてくれますか」
「そのうえでいくとしよう」
 マシュマーは前を見据えた。そうしてだった。
 そこから敵が来るのを待った。するとだ。
 その前にだ。彼等が来たのであった。
「大物のお出ましだね」
「そうですね」
 イリアがキャラに応える。
「敵の司令官が」
「出て来るよ、やっとね」
 こうだ。そのハザルと彼の直属軍を見ながら述べるのだった。
 そしてだ。そのハザルが言ってきた。
「さて、それではだ」
「おい、そこの銀髪野郎!」
 忍がハザルに対して言う。
「どういうつもりだ!」
「何がだ」
「手前等は確か俺達の戦力を利用するつもりだったな」
「如何にも」
 平然として答えるハザルだった。
「その通りだ」
「では何故だ」
「そうだね。考えてみればおかしな話だよ」
 沙羅も言った。
「それがこうしてここで殲滅するなんてね」
「方針転換?」
 雅人はそれではないかと考えた。
「それでここで俺達を」
「だとすればその理由は何だ」
 亮も考えていく。
「この男がそうする理由は」
「それだな」
 アランも続けた。
「この男、何を考えている」
「ふん、本来ならばだ」
 ハザルはその傲慢な笑みで言ってきた。
「貴様等の如き下賤の者に言うことではないが」
「ごたくはいいんだよ!」
 忍は彼に敵愾心を露わにさせていた。
「そんなことはな!早く言え!」
「そこにいる裏切り者達は少なくともそうだったな」
「私か」
 マーグが堪えた。
「私のことだな」
「そうだ。生き恥を晒している貴様だ」
 そのマーグだというハザルだった。
「貴様はそう考えていたな」
「少なくとも私はだ」
 マーグはそのハザルを見据えて言い返した。
「御前の様に非道をしたりはしない」
「ふん、甘いな」
「甘いか、私が」
「バルマー人以外の者の命なぞ何の価値があるというのだ」
 こうマーグに言うのだった。
「そうではないのか」
「貴様のその下劣な言葉に頷くものはない」
 マーグの返答は厳しいものだった。
「何一つとしてな」
「裏切り者に相応しい言葉だな」
「少なくとも御前と同志になったつもりはない」
「そう言うのだな」
「何度も言おう。そしてだ」
 マーグの言葉は続く。
「貴様のその答えを聞こう」
「全ては父上の御考えだ」
 それだというのだった。
「宰相である父上。シヴァー=ゴッツォ閣下のな」
「また親父かよ」
 今言ったのは盾人だった。
「何かっていうとそうだな」
「そうだな。これは本当にな」
 弾児はここで確信した。
「この男はな」
「ああ、人形だな」
「その父親のな」
「黙れ!」
 ハザルの声が荒いものになった。
「俺は人形ではない!」
「ふん、自覚はないってか」
「まあそうだろうな」
「こういう奴ってのは」
「自分で自分のことはわからないからね」
「だよね」
 その彼等にだ。ハザルは怒りを露わにしてきた。
「その言葉、後悔させてやる」
「やるってのか?」
「それじゃあ」
「もう決まってることだけれどね」
「死ぬがいい!」
 彼等の戦いもはじまった。そしてその時。
 地球ではだ。二人の少年達が言っていた。
「早くしないと!」
「あの人達が!」
「わかっている」
 重厚な顔立ちの黒人である。その地球統合政府主席がだ。彼等と会っていた。そのうえでその二人の少年、護と戒道に対して応えていた。二人は地球に戻られたのだ。
「まずはよく帰ってくれた」
「はい」
「僕達は」
「天海護君」
 まずは彼の名前が呼ばれた。
「そして戒道幾己君」
「それでなんですけれど」
「僕達が通ってきたあのルートを」
 二人は必死に主席に訴える。
「あそこを分析すれば!」
「閉鎖空間への入り口も特定できます!」
「御願いします!」
「どうか!」
 二人はさらに訴える。
「凱兄ちゃん達を!」
「ロンド=ベルの人達を!」
「無論だ。彼等は人類の英雄だ」
 主席もだ。二人にすぐに答えた。
「彼等はこの地球と銀河を救う為の希望なのだから」
「主席」
「来てくれたか」
「はい」
 ここで姿を現したのは。彼だった。
「この子達の話を聞いて調べましたが」
「そうか、早いな」
「何、大したことではありません」
 シュウだった。こう主席に対して述べるのだった。
「彼等のことを考えれば」
「そう言ってくれるか」
「ええ。それでなのですが」
 シュウの話は続く。
「閉鎖空間と通常空間の接点はほぼ特定できました」
「そうか、それでは」
「私が行ってもいいのですが」
 シュウはここでこんなことも言った。
「ネオ=グランゾンで」
「ではすぐにそうして」
「いえ」
 しかしだった。主席の言葉はここでは断ったのだった。
「私よりもです」
「閉じられた空間に救援を送り込むことができる者がいるのか」
「その通りです」
 思わせぶりな微笑と共の言葉だった。
「その役目を果たすべきはです」
「そうか、彼等だな」
「はい、彼等であるべきです」
 こう主席に話すのだった。
「是非共。ここは」
「では遂に」
「既にパイロット三名と機体」
 それがだというのだ。
「到着しています」
「ではすぐにだな」
「その通りです」
「あの少女がもたらした一筋の光明」
 主席の言葉も熱さがこもってきている。
「それを活かせるかどうかに」
「人類の命運はかかっています」
「失礼します」
 ライだった。彼が来た。
「主席、只今より」
「うむ、頼めるか」
「はい」
 ライはだ。敬礼しながら主席に応えた。
「かかります」
「彼等を救ってくれ」
「わかっています。私も彼等を何としても」
「ああ、そうだな!」
「私もだ」
 リュウセイとだ。レビも来た。この二人も主席に敬礼してから言う。
「この戦い、絶対に!」
「仲間を救い出す!」
「その意気です。それでは」
 シュウもだ。ここでこう言った。
「私も行かせてもらいましょう」
「シラカワ博士もか」
「あんたもかよ」
「今はそうした時です」
 だからだというのである。
「私もまた行きましょう」
「ああ、それじゃあな」
「頼む」
 リュウセイとレビが彼の言葉に応える。こうしてであった。
 戦士達が救援に向かう。敗れた者達がだ。再び勝利を手にし仲間を助け出す為に。また戦場に赴くのだった。あらたな決意を胸にして。


第九十五話   完


                                     2011・2・3   
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