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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第八十五話 ベスの選択

               第八十五話 ベスの選択
 黒髪のだ。流麗な顔立ちの男がそこにいた。
「それではここにだな」
「はい、そうです」
「ジュデッカ=ゴッツォ様」
 見ればだ。その男はジュデッカ=ゴッツォ達と全く同じ顔であった。
「ロンド=ベルがいます」
「そしてバッフ=クラン軍もです」
「双方がです」
「好機だ」
 ジュデッカ=ゴッツォはそうした報告を受けて述べた。
「今こそな」
「双方を倒すですね」
「その好機だと」
「そうだ。それではだ」
 彼はだ。あらためて命じてきた。その命令は。
「全軍戦闘用意」
「はい」
「わかりました」
「どちらも一気に叩く。いいな」
「わかりました、それでは」
「今より」
 こすいてだった。彼等はすぐに攻撃にかかった。そして。
 バッフ=クランの戦艦ドロワ=ザンがあった。その艦橋でだ。将校の一人がハルルに報告していた。
「ハルル様」
「どうなったか」
「はっ、できました」
 将校は敬礼してから彼女に述べた。
「時空の歪みを突破できました」
「そうか。それではだ」
「はい、あの星のです」
「いるのだな」
 こう言う彼女だった。
「ロゴ=ダウの異星人と巨神が」
「どちらもです」
 こう答える将校だった。
「先遣隊からの戦闘の報告が入っています」
「わかった」
 また答えるハルルだった。
「それではだ」
「僥倖だ」
(だが)
 ハルルは今心の中でも喋っていた。
「それはな」
(あの巨神のお陰でダラム=ズバと再会できた」
「一度は見失いながらも」
(巨神の力で)
 心の中での言葉は続いていく。
(ダラムは死んだ)
 このことがであった。
(私はダラムの死に顔を見られなかった)
 心の中で悔悟していた。
(再度の言葉を聞くこともできなかった。それが)
 実際に心の中で呟いた。
(悔いだ)
 だがそれは心の中に隠してだった。将校に話すのだった。
「こうして再び発見できたことはだ」
「僥倖ですね」
「その通りだ。この機はだ」
 どうかというのだった。
「逃すわけにはいかぬ」
「それではです」
 ハンニバルもいた。彼の言葉だ。
「ハルル様、ここは」
「攻撃だ」
 ハルルもまた命じた。
「わかったな」
「心得ました」
 すぐに応えるハンニバルであった。
「では全艦で以て」
「うむ」
「攻撃を仕掛けます」
「そうするのだ」
 こう決めたその時にであった。またハルルのところに報告が来た。
「ハルル様!敵です!」
「敵だと」
「はい、こちらに接近中の艦隊があります」
「となるとだ」
 ハルルはその報告を聞いて述べた。
「我々とほぼ同時にこの宙域に来たか」
「それで間違いないかと」
「バルマー帝国だな」
 ハルルはすぐに察しをつけた。
「そこだな」
「そこですか」
「そうだ。それではだ」
 ハンニバルに顔を向けて。それでだった。
「ハンニバル」
「はっ」
「御前は奴等を迎え撃て」
 バルマーにだというのだ。
「私も後で向かう」
「それでは」
 その複数の勢力が集まってだ。ここでも激しい戦いになろうとしていた。
 ルネは今は敵を追っていた。ソール十一遊星主をだ。
 そこで地球で言うパリに来た。そこは。
「モン=サンミッシェル」
 そこに来ていたのだ。
「聖なる城砦。ここで」
 携帯に似た機械を見ながらの言葉だった。
「あの女に取り付けていた発信機の反応が途絶えている」
 それで警戒していた。そこにだった。
 何者かがいた。それは。
「あんたは」
「女か」
「確かソルダートJだったね」
「如何にも」
 彼だった。まさにそのJだった。
「私はJだ」
「あんたも来ていたんだね、ここね」
「そうだ。そういう御前は」
 今度はJが問う番であった。実際に彼はルネに問うた。
「Gストーンのサイボーグだったな」
「ああ、そうさ」
 その通りだと返すルネだった。
「まずは願いがある」
「願い?」
「そこにあるキーをだ」
 見れば彼は動けないでいた。光に縛られていた。その彼が言ってきたのだ。
「Gストーンを使ってだ」
「どうしろっていうんだい?」
「私のこの戒めを解いてくれ」
 こう言うのであった。
「この忌々しい光の縄をな」
「ああ、わかったよ」
 ルネも断るつもりはなかった。それでだ・
 緑の光をキーにかける。それで光が消えてだ。
 Jは自由になった。そのうえでルネに言ってきた。
「礼を言う」
「礼なんていいよ」
「そうなのか」
「ああ、それはね」
 いいという彼女だった。
「気にしないでいいよ」
「そうか。それではだ」
「今度は何だい?」
「青の星の者だったな」
「ああ、そうだよ」
 その通りだというルネだった。
「あたしの名前はね」
「何というのだ?」
「ルネ」
 まずはこう名乗った。
「ルネ=カーディフ=獅子王」
「獅子王だと」
「ああ。覚えておきな」
「そうか。わかった」
「今度はあたしが尋ねるよ」
 ルネは強い声でJに告げた。
「いいね」
「うむ。何をだ」
「ソール十一遊星主は何処だい?」
 問うのはこのことだった。
「一体何処なんだい?」
「知ってどうする」
 まずはこう返すJだった。
「そのことを」
「知ってかい」
「そうだ。奴等は不完全なプログラム」
 Jはルネに対して話す。
「それを止めるのはだ」
「あんただっていうんだね」
「如何にも」
 そうだというのである。
「アベルの戦士である私の役目だ」
「止める?」
「そうだ」
 また答えるJだった。
「どうやってだい?」
「それは」
 言おうとした。しかしだった。
 突如爆発が起こった。それを見てだ。
 ルネはすぐに動いた。変身したのだ。
「イークイップ!」
 そのうえで戦闘態勢に入る。その彼女の前に出て来たのは。
「ソール十一遊星主!」
「うっふふふふふふふ」
 ピルナスだった。妖しい笑みと共にまた出て来たのだ。
 彼女はその妖しい笑みと共にだ。こうルネに言ってきた。
「嬉しいわあ、子猫ちゃん」
「嬉しいだって?」
「そうよ。わざわざ会いに来てくれるなんだ」
「会いたくはなかったがね」
「けれど来てくれたわね」
 それを言うピルナスだった。
「それならよ」
「それなら?」
「もっともっと悪い子にして欲しいのね」
 こうルネに告げるのだった。
「仕様のない子ね」
「ふん、あたしをね」
「子猫ちゃんを?」
 ルネの強い言葉にも余裕で返すピルナスだった。
「あの時倒せなかったのを地獄で後悔しな」
「地獄?」
「そう、地獄だよ」 
 それだとだ。剣を構えながらピルナスに告げる。
「今から送ってやるよ。覚悟しな」
「それでなのね」
 そう言われてもピルナスの余裕は変わらない。
「子猫ちゃんの隣に死神がいるのね」
「死神?」
「よけろ!」
 ここでJが叫んだ。本能的にだ。
 ルネは後ろに飛び退いた。彼女が今までいた場所に鎌が一閃された。
 そしてだ。そこにだ。不気味なフードの者がいたのだった。
「何時の間に!」
「そいつの相手はだ」
 ここでJが出て来た。
「私だ」
「あんたがかい」
「そうだ。ラディアントリッパー!」
 こう言って戦う姿になってだった。その死神に向かうのであった。
 ルネとピルナスも戦闘に入る。その中でだった。ピルナスがこう言ってきた。
「やるじゃないの、子猫ちゃん」
「同じ相手に!」
 剣を繰り出しながらの言葉だった。
「何度もやられてたまるか!」
「いい心掛けよ。けれど」
「何だってんだい!」
「これでお別れね」
 ここでこう言ってきたのである。
「折角のラブコールだけれどね」
「ラブコール!?」
「そうよ。だけれど」
 それでもだというのだ。
「遊んでる時間はもうないみたい」
「どういうことだい?それは」
 その言葉にいぶかしんでいるとだった。
「それはね」
「!!」
 ここでだった。二人の動きが止まった。
 動かそうとしてもだ。どうしてもであった。
「これは」
「動けない・・・・・・!」
「やはり貴方は不良品の様ですね」
 今度はだ。アベルが出て来て言うのだった。
「J0002」
「それはどうかな」
 しかしだった。Jは動けないがそれでもだった。そのアベルに対して言うのだった。
「不良品は貴様だ」
「僕だと」
「そうだ、ソール十一遊星主」
 まずはこう呼んでだった。
「アベルよ」
「アベル!?」
 ルネがその言葉に反応を見せた。
「それがこいつの」
「そうだ。所詮はコピーだ」
 それに過ぎないとも話すJだった。
「我が友のな」
「そうか、そうなんだね」
「僕が不良品かどうかは」
 アベルはそう言われてもだ。まだ冷静であった。 
 機械そのものと言ってもいい。その口調でまた言うのだった。
「貴方達もです」
「どうするというのだ」
「アルマの様にしてあげましょう」
「何っ!?」
 アルマと聞いてだ。Jの声の色が変わった。
「アルマに何をした」
「すぐにわかります」
 アベルが二人に迫ろうとする。だがここでまた、だった。
 アベルをだ。緑の光が撃った。
「くっ!?」
「誰だっ!?」
「一体!?」
 ピルナス達がその光を見て声をあげる。するとだ。
「ルネ、助けに来たわ!」
「命っ!?」
「私だけじゃないから!」
 そしてだ。彼も来たのだった。
「はあーーーーーっ!」
 護も来た。彼は既に翼を生やしている。
 そして緑の光をだ。ピルナス達に向かって放つのだった。
「くっ!」
「まだこんな隠し球があったんですね」
 ピルナス達はその光をかわしながら言った。
 そして護はだ。ルネとJにもその光をあてた。するとだ。
「動けるね」
「緑の光の力か」
「うん、これ大丈夫だよね」
 二人はこれで助かった。それを見てだった。ピルナス達はそれぞれ言うのであった。
「これはまた」
「やりますね」
 そしてだった。彼等は姿を消すのであった。
「じゃあ今は」
「これで」
「待て!」
 ルネは去ろうとする彼等を追おうとする。
「逃がさないよ!」
「待って!」
 しかしだった。その彼女を命が呼び止める。
「今は脱出が先よ!」
「それがなんだね」
「ええ、だから」
「Jも急いで!」
 護は彼にも声をかける。
「準備はできてるよ!」
「あれか」
「うん、Jジュエルを持つ者をね」
 そのJを見ながらの言葉だった。
「待ってるよ」
「あの場所でか」
「そう。地下深く隠された白き箱舟がね」
「ジェイアーク!」
 そしてだった。彼等はそこを脱出してだ。
 その舟に乗った。それは。
「ジュエルジェネレーター正常稼働中」
 トモロもいた。
「それではです」
「これがジェイアークかい」
「そうだ」
 Jは共にいるルネに対して答える。
「この箱舟こそがだ」
「敵にやられちまったって聞いたけど」
「この舟が沈めば」
 どうなるか。Jは話すのだった。
「私も生きてはいない」
「だからなんだね」
「そういうことだ」
「僕もね」
 ここでだ。護も言うのだった。
「一緒に敵のES兵器ここに転送されただけなんだ」
「ここにだね」
「うん、この三重連太陽系にね」
 まさにここであった。
「それだけだったんだ」
「どうやら本物みたいだね」
 ルネもここでわかったのだった。
「安心したよ」
「僕の偽物まで」
「今はそのことはいいわ」
 命は落ち込もうとする護を庇った。
「それよりね」
「そうだな。それではだ」
 Jがだ。護に対して問うてきた。
「ラティオよ」
「うん」
 その名で呼んだうえで、であった。
「聞きたいことがある」
「戒道のことだね」
「そうだ。アルマはどうした」
「それは」
 要領を得ない返事だった。
「僕にも」
「そうなのか」
「御免なさい」
「謝ることはない」
 Jはそれはいいとしたのだった。
「御前の責任ではないのだからな」
「大丈夫よ」
 命はここでも護に話す。
「凱も戒道君もきっと何処かで」
「そう簡単にやられる奴等じゃないよ」
 ルネもそれを言う。
「だから絶対にね」
「そうだね。じゃあ」
「今はそれよりもだよ」
「J」 
 そしてだった。ここでトモロが彼に言うのであった。
「急接近する物体を感知」
「何っ!?」
「あれは」
 見ればだ。モニターにであった。
 巨大な、そして禍々しい戦艦があった。色は紫である。
「あの戦艦は」
「間違いない」
 Jとトモロがそれぞれ言う。
「ソール十一遊星主の艦」
「ピア=デケム」
 その艦だというのだ。
 その艦を見てだ。Jはすぐに言った。
「反中間子砲だ」
「それを」
「そうだ。全砲門開け!」
 攻撃に移ろうとする。ところが。
 アベルがだ。ジェイアークのモニターに出て来て言うのであった。
「お待ちなさい」
「またかい!」
 ルネがその姿を見て忌々しげに言う。
「出て来たってのかい!」
「そんなことをすればです」
 ここでだ。彼は言うのだった。
「こちらの生体コンピューターが傷つくことになります」
「生体コンピューター!?」
「まさかそれは」
「そうです。それで宜しいのですか?」
 モニターにだ。今度はだ。
 彼の姿が映し出された。十字架にあるが如く両手を鎖で吊り下げられている彼は。
「戒道!」
「何故だ!」
 護とJがそれぞれ驚きの声をあげる。
「まさかソール十一遊星主に」
「捕らえられたのか」
「ジェイアークは無傷で取り戻します」
 ここでまた言ってきたアベルだった。そしてだ。
 ピア=デケムに顔を向けてだ。その名を呼ぶとだ。戦艦が動き。ジェイアークに対して向かってきたのである。
 それを見てだ。ルネがJに問うた。
「どうするんだい、ここは」
「止むを得ない」 
 Jの返答はは無念そのものだった。
「ここはだ」
「下がるんだね」
「離脱するしかない」
 実際にこう言う彼だった。
「それではだ」
「ああ、それじゃあね」
「全速だ」 
 あらためてトモロに告げた。
「あの戦艦を振り切る!」
「了解」
 トモロも応えてだった。今は彼等は戦場を離脱するしかなかった。
 そしてステーション内ではだ。宙が苦い顔になっていた。
「まずいな、頭数がな」
「そうだな。とてもな」
 バサラが彼に応えて言う。
「足りないからな」
「けれどよ、このままじゃよ」
「どうしようもないよ」
「やるしかない」
 オルガにクロト、シャニがその宙に言ってきた。
「俺達もいるからよ」
「やれることなら何でもね」
「する」
「それではです」
 アズラエルが彼等のその言葉を受けて言う。
「寝ていなさい」
「何っ、何もするなっていうのかよ」
「それってあんまりじゃないの!?」
「何かさせろ」
「出番はすぐにきますよ」
 アズラエルは不平を述べる彼等にまた話した。
「そう、すぐにね」
「戦いかよ」
 シンはその出番が何によるものかすぐに察した。
「敵が来るっていうんだな」
「その複数の勢力が」
「それを相手にするにはだ」
 レイヴンが難しい声で述べてきた。
「やはり私達だけではな」
「へっ、何百万でも来いってんだ」
 シンはあくまで強気であった。
「俺がまとめて相手してやるぜ」
「それではだ」
 ここでだ。誰かが来た。それは。
「俺もやらせてもらおう」
「えっ、クォヴレー」
「無事だったのかよ」
「無事ではない」
 それは否定する彼だった。
「まだ意識がはっきりしないところがある」
「けれど出て来たって」
「どういうことだ」
「彼女の話ではだ」
 ここで言うのはパピヨンのことだった。
「今はだ」
「今は?」
「っていうと」
「持ち直してきている」
 そうだというのであった。
「少しずつだがな」
「だからか」
「こうしてあんたも」
「来られたのか」
「俺だけではない」
 ここでまた言うクォヴレーだった。
「他にもだ」
「えっ、じゃあ」
「皆も!?」
「そうだ。しかしだ」
 だが、というのであった。
「万全ではない」
「どちらにしろだ」
 それを聞いてだ。ロジャーが言った。
「今敵に襲われたならばだ」
「ひとたまりもない」
「そういうことね」
 彼の言葉にドロシーも頷く。まさにその通りであった。
 そしてだ。宙がそのクォヴレーに対して言うのだった。
「悪いがだ」
「ああ。何だ」
「この基地のレーダーシステムを動かすのを手伝ってくれ」
「それをか」
「衛星軌道上に複数の組織の艦隊が出て来た」
「ということはだ」
 それを聞いてだ。クォヴレーはすぐに幾つかの勢力を出した。
「バルマーかバッフ=クランか」
「あとはプロトデビルンと宇宙怪獣」
「どれも厄介だな」
 シンとカガリも言う。そしてだ。クォヴレーはすぐに返答を述べてきた。
「わかった」
「そうしてくれるか」
「それじゃあすぐに」
「今からはじめる」
 実際にクォヴレーはすぐにレーダーについた。そうしてだった。
 それを見るとだ。
「艦隊同士が戦っているな」
「それで勢力は」
「どの勢力同士が」
「一つはバッフ=クランだ」
 クォヴレーはすぐに答えた。
「もう一つはバルマーだ」
「あの連中ね」
 フェイがそこまで聞いてこう述べた。
「そういえばお互いに仲悪かったわね」
「これは好都合だな」
 テムジンはこの状況でも冷静であった。
「今はお互いに潰し合ってくれればだ」
「俺達にとってはいい話だな」
 ハッターも言う。とりあえずは彼等にとっていい状況だった。
 しかしだ。ここでクスハも来た。そうして彼女はこう皆に言うのだった。
「ですが」
「ですが?」
「っていうと」
「今の私達の相手はやっぱり」
「そうだな」
 ブリットも来て言う。
「銀河全体を破壊しかねない」
「ソール十一遊星主です」
「その連中を何とかしないといけないな」
 ブリットはクスハのその言葉に頷いた。
「今は」
「じゃああれね」
 レインが二人の話を聞いて述べた。
「それぞれの人達が争っている状況じゃないわね」
「はい、そうです」
「やはり今は」
 クスハとブリットはレインにも述べた。そうした話をしているとだ。
 ノイズが入った。皆それにも反応を見せた。
「今度は何だ!?」
「一体」
「通信だな」
 ライデンがそれを見て述べた。
「この基地から誰かが外へ向かってだ」
「通信を送っている?」
「そうなんだ」
「それってまずいわよ」
 アレンビーがそれを聞いて困った顔になっていた。
「バッフ=クランやバルマーにあたし達のことを知られたら」
「すぐに調べよう」
「ああ」
 そうしてだ。全員で調べにかかるのだった。誰がそれを送っているのか。
 オペレーションルームでだ。二人が話していた。
「姫様」
「ええ」
「付近に我が帝国の部隊が来ていましたので」
「あのぼんぼんの軍ではないわね」
「ジュデッカ=ゴッツォ殿の軍です」
 ルリアがこうアルマナに答えていた。二人がこの部屋にいたのである。
「軍務大臣の」
「そう。あの方ならね」
「帝国に対する忠誠心は絶対です」
 ルリアがそれを言う。
「それにです。私達にもです」
「敬意を払ってくれていましたね」
「ですから無碍には扱われない筈です」
「そうですね。それでは」
「今から」
「けれど」
 しかしだった。ここでアルマナは困ったような顔を見せてだ。ルリアに話すのだった。
「けれど」
「けれどとは」
「よかったのかしら」
 ついつい地の言葉を出してしまっていた。
「こんなに大胆に行動して」
「ご心配なく」
 しかしだ。ルリアは微笑んでアルマナに放すのだった。
「ロンド=ベルですが」
「あの人達ですね」
「この星の大気に混入された物質によって無力化していますから」
「あれが役に立ちましたね」
 ここで微笑むアルマナだった。
「ルリアの用意してくれていたマスクが」
「当然です」
 ここでだ。ルリアも微笑むのだった。
「姫様を危険にさらさない為に」
「私の為にですか」
「そうです。その為に私はです」
 どうしているか。それを話すのであった。
「常に細心の注意を払っていますから」
「有り難うございます」
「礼には及びません」
 そんな話をしていた。そこでだった。
 扉が開いてだ。クスハとブリットが飛び込んできたのだった。
 二人はすぐに銃を構えてだ。彼女達に告げた。
「動かないで下さい!」
「大人しくしてくれ!」
「しまった!」
 ルリアはそれを聞いて苦い声を出した。
「既に身体の自由を取り戻していたか」
「えっ、まさか」
「貴女達が」 
 二人を見てだ。クスハとブリットは思わず声をあげた。
「アルマナさん」
「ルリアさんが」
 いたのは二人だった。そうして。
 戦闘用意も進められていた。その中でだ。イーグルがジェオとザズに尋ねていた。
「状況はどうですか?」
「出撃は何とかできるな」
「それはね」
 二人はそれはいけるというのだった。
「しかしな。俺達もだがな」
「皆吐き気とか頭痛がね」
「そうですか。そうした状況ですか」
「サコンさん達の話だとな」
「普段の八割程度の戦闘力らしいよ」
 三人の話を聞いてだ。アスカが言った。
「それでは負けてもおかしくないぞ」
「はい、それでは」
「敵の数も多いようですし」
 シャンアンとサンユンがそのアスカに述べる。
「状況は芳しくありませんな」
「二つの勢力を戦うとするならば」
「困った話じゃ」
 アスカも腕を組んで困った顔になるしかなかった。しかしだ。ここでタータがこう言うのだった。
「けどうち等の今の相手はそっちの連中やないからな」
「あら、タータもわかってるのね」
「当たり前や、姉様」
 こう姉に返すのだった。
「うち等の今の相手はあのけったいな連中や」
「ソール十一遊星主ね」
「あの連中を何とかせんと」
「こっちの世界が」
「消えるな」
 クリフが深刻な目で述べた。
「宇宙収縮現象だったな」
「はい、そうです」
 その通りだとだ。プレセアが答えた。
「それを止めなければ」
「ですからここはです」
 アルシオーネが話す。
「とりあえず彼等とはです」
「話し合いだよね」
「それしかないで、今は」
 アスコットとカルディナもいた。
「戦うばかりじゃないからね」
「今はそんな状況ちゃうから」
「だからだな」
 ラファーガは彼等を見ていた。
「君達が」
「わかっています」
「それは」
 ベスとカララがラファーガのその言葉に応える。
「バッフ=クラントの交渉は」
「やらせて下さい」
「しかしだ」
 ここで言ったのはコスモだった。
「上手くいくのか?」
「今はやるしかない」
 ギジェがそのコスモに言う。
「銀河の全ての生命の為に」
「バッフ=クランだって」
 シェリルもここで話す。
「私達と同じように理性を持っているわ」
「だからなんだな」
「ええ、そうよ」
 こうコスモにも話すのだった。
「話し合いは無駄ではないと思うわ」
「シェリル、済まない」
「ギジェ」
 シェリルは今度はギジェを見てだ。話すのだった。
「貴方やカララを見ればね」
「私をか」
「そうなのですね」
「信じられるわ。今はね」
「そうね。ずっと胡散臭く思ってたけれど」
 カーシャがだ。意外な言葉を出した。
「今はね」
「あとオペレーションルームのことだけれど」
 今度はその話だった。コウが話してきた。
「あの娘達はクスハとブリットがそのまま監視についたよ」
「そうなのですか」
 ラトゥーニがそれを聞いて述べた。
「ではとりあえずは」
「安心だね」
「しかしそれによってだ」
 ラミアは深刻な顔を見せていた。
「我々の居場所を知られてしまった」
「その見返りが欲しいな」
 アクセルが本音を述べた。
「ここはな」
「殺すとかは仰らないのですね」
「俺も変わった」
 微笑んでだ。シャインに対しても話す。
「そこまでは言わない」
「そうなのですね」
「殺しても何にもならない」
 ラミアもそれはどうかというのだった。
「確かにそれよりもだ」
「あの帝国の情報は少ない」
 リーはこのことを懸念していた。
「今はその方が得策だ」
「しかしよ。それってよ」
 カズマがそのリーに言う。
「この戦いを切り抜けてからだよな、艦長さん」
「忌々しいがその通りだ」
 リーもそれは認めた。
「生き残ってからだ」
「ソール十一遊星に敗れたら」
「銀河が消滅するのよ」
 ゼオラがこうアラドに話す。
「あんたも御飯食べられなくなるわよ」
「げっ、それは勘弁」
「それならわかるわよね」
「ああ、よくな」
 アラドもゼオラに頷いて答える。
「そう言われたらな」
「艦隊こっちに来てます」
 今言ったのはミヒロだった。
「ステーションに」
「ドロワ=ザンね」
 カララがモニターに映るその巨艦を見て言った。
「ハルル姉さんね」
「まずいな」
 ギジェも深刻な顔になる。
「あの方が来られると」
「そうなのですか」
「そのハルルという人物が来ると」
「危険なのですか」
 プラクティーズの三人がそのギジェに問うた。
「というとその者」
「かなりの名将ですか」
「そうだと」
「そうだ。立派な方だ」
 ギジェはその深刻な顔で答えた。
「将として。まさにバッフ=クランの宝だ」
「その名将が来た」
 マイヨも真剣な顔になっている。
「バッフ=クランも本気か」
「しかもだ」
 ギジェはここでさらに話した。
「カルルの姉君だ」
「えっ!?」
「姉妹!?」
「カルルさんの」
 皆このことに唖然となった。
「じゃあ骨肉の争いかよ」
「しょっちゅうだけれどここでなんて」
「何か最悪」
「嫌な戦いになるよな」
「そうよね」
「それだけではない」
 ギジェの話はさらに続くのだった。
「我々がかつて退けたダラム=ズバはだ」
「ああ、あの」
「あの戦いも激しかったけれど」
「あの人と関係者?」
「何かあったんですか?カララさんのお姉さんって」
「ハルル様の想い人だったのだ」
 そうだったというのである。
「しかもハルル様は情念の強い方だ」
「じゃあ俺達を狙うだけじゃなくて」
「敵討ちもあって」
「俺達に来る」
「そうだってのね」
「そうだ。これは実にまずい」
 ギジェもだ。深刻な顔を元に戻せない。
「どうしたものか」
「通信が入ってきました」
 ここで皆に話すヒカリだった。
「モニターに出ます」
「げっ、向こうから!?」
 彼女の横にいるケイスケが思わず声をあげてしまった。
「これって本当に」
「マジやな、あちらさん」
 トウジも覚悟するしかなかった。
「洒落にならんことになりそうやな」
「ふん、来るなら来いよ」
 アスカは次第に持ち前の闘争心を取り戻してきていた。
「誰であろうとね」
「そんなこと言ってマスターアジアさん来たらどうするの?」
 その彼女にシンジが突っ込みを入れる。
「あの人何時何処に出て来るかわからないけれど」
「否定できないのが忌々しいわね」
 アスカは彼のことが実によくわかってきていた。
「世界が違っても平気で来るからね」
「シュバルツさんもね」
「だから変態って嫌いなのよ」
 アスカはまだ二人をそう見ていた。
「常識を無視するから」
「まあ僕はあの人達好きだけれど」
「はいはい、あんたも変態」
「何でそうなるんだよ」
「変態を好きな奴は変態よ」
 だからだというのである。
「あんな変態爺さんと変態忍者の何処がいいのよ」
「本当にあの人達が嫌いなんだね、アスカって」
「幽霊とか妖怪は許せてもあの二人は許せないのよ」
 実際にこう言うのであった。
「全く。素手で使徒を破壊するし」
「最早人間ではありませんね」
 ルリもそれは断言する。
「確かに使徒と人間はDNAは近いですが」
「あの爺さん実は人間じゃないでしょ」
 アスカは本気で言っている。
「光の巨人とかマスクドライダーとかじゃないの?」
「そういえばサイボーグって噂あったよな」
「そうだったな」
 アキトとダイゴウジもそれを話す。
「そんな人だから」
「何がどうなってもな」
「いいか?」
 モニターには何時の間にか赤い髪の如何にも気の強そうな女がいた。
「ロゴ=ダウの異星人達よ」
「あっ、あんたがハルルさん」
「そうなんですね」
「あんたがそのカララさんの」
「そうだ、いいかロゴ=ダウの者達よ」
 ハルルは真剣な顔でロンド=ベルの面々に言ってきた。
「今からだ」
「お待ち下さい、お姉様」
「カララか」
「はい、私です」
 モニターでだ。姉妹は話すのだった。
「お久し振りです」
「恥知らずにもまだ異星人と共にいるのか」
「はい・・・・・・」
「何処までアジバ家の名に泥を塗れば気が済むのだ!」
 ハルルは怒りを露わにさせている。
「この愚か者が!」
「お姉様、いえ」
「いえ、何だ」
「バッフ=クラン艦隊司令ハルル=アジバ」
 姉をあえてこう呼ぶのであった。
「私はカララ=アジバとしてでなくです」
「では何として私の前にいる」
「この銀河に生きる一人の人間として」
 それでだというのだ。
「バッフ=クランに和平を申し込みます」
「何っ!?」
「既にお気付きでしょう」
 眉をぴくりと動かした姉にさらに話していく。
「この宙域、この銀河に不自然な歪みが発生していることを」
「そのことか」
「やはりお気付きでしたね」
「少しな。しかしだ」
 今度はハルルがカララに問う。
「それが御前の言う和平とどう関係があるのだ」
「これはソール十一遊星主による宇宙収縮現象が原因なのです」
「ソール十一遊星だと?」
「はい、彼等は宇宙の暗黒物質により失われた」
 カララは話していく。
「自らの母星を再生させようとしているます」
「そうだというのか」
「そしてその結果としてです」
「この銀河がか」
「はい、消滅の危機を迎えようとしています」
 こう言ったところでだ。バッフ=クラン軍の将校の一人がハルルに言ってきた。
「ハルル様」
「そのことを計算したのだな」
「はい、計算の結果」
 どうだというのである。
「カララ様の仰っていることは嘘ではないようです」
「そうなのか」
 それを聞いてからだ。ハルルはカララに対して言うのであった。
「そのソール十一遊星主を倒す為に手を貸せというのか」
「いえ」
「違うというのか」
「私はです」
 カララはこう姉に話す。
「この和平を一時的なものとするつもりはありません」
「ではどうだというのだ」
「この銀河は様々な脅威に満ちています」
 カララが言うのはこのことだった。
「そしてそれはです」
「それは」
「バッフ=クランの銀河とも無関係ではないでしょう」
 こうハルルに話すのである。
「ですからこのことをです」
「私にどうせよというのだ」
「ドバ総司令にお伝え下さい」
 彼にだというのである。
「そして我々と和平を」
「ふざけるな!」
 だが、だった。これまで話を聞いていたハルルの声が荒くなった。
「その様な世迷いごとに付き合うつもりなぞ毛頭ない!」
「お姉様!」
「御前の言う脅威なぞだ」
 どうだというのである。
「バッフ=クランの総力を挙げれば恐れるに足りん!」
「しかしそれは」
「それよりも恐れるべきは」
 何かというのである。
「御前達と巨神の力よ!」
「馬鹿な」
 今度はベスが言ってきた。
「我々が立ち向かわなければならない脅威とは」
「どうだというのだ」
「人知を超えた存在だというのに」
「あいつは」
 コスモが忌々しげに言う。
「自分の星のこと、いや」
「そうね。もっと酷いものよ」
 カーシャはモニターのハララを忌々しげに睨んでいる。
「あいつに今あるのは」
「自分の復讐のことしか頭にないんだよ!」
「へっ、こうしたことも同じかよ」
 ジェリドも忌々しげな口調だ。
「人間のこうした感情ってのはよ」
「エゴか」
 ハマーンも嫌悪を露わにさせている。
「それは消せないな、容易には」
「ベス、どうするんだ!?」
 コスモはベスに問うた。
「向こうは仕掛けてくるぞ!」
「ここは」
「どうするんだ!?」
「応戦しては今までの繰り返しだ」
 ベスは今決断した。
「話し合いを続けるぞ」
「えっ、何言ってるのよ!」
 それを聞いてだ。カーシャが言った。
「このままじゃ的になるだけよ!」
「ぎりぎりまで耐えるんだ!」
 ベスはまた話した。
「いいな、ここはだ!」
「けれど今は!」
「殺し合うのはイデの導きだとしても」
 それでもだというのだ。
「我々はそれに従う訳にはいかない!」
「とか何とか言ってる間に!」
 今叫んだのはカズイだった。
「今度はバルマーが来たよ!」
「それはまずいぞ!」
 勇がそれを聞いて焦った声を出す。
「ここでこれは」
「そうだね、カズイ」
「いや、俺は勇だ」
「あっ、御免」
 ついいつい間違えたカズイだった。
「っていうか今はそんな場合じゃないね」
「そうだね。ちょっとね」
 サイ本人の言葉だ。
「バルマーまで来るなんて」
「どうしよう、ここは」
「両方相手にするしかない?」
「今は」
「地球の者達だな」
 ここでジュデッカ=ゴッツォがモニターに出て来た。
「余はゼ=パルマリィ帝国軍務大臣ジュデッカ=ゴッツォである」
「ジュデッカ=ゴッツォ!?」
「ラオデキア達とそっくりだけれど」
「まさか」
「安心しろ。あの者達には既にオリジナルが存在している」
 ジュデッカがこう話してきた。
「余の弟達だ」
「何っ、そうだったのかよ」
「道理で似ていると思ったら」
「クローンじゃなかったのね」
「如何にも」
 そうだとだ。答えてきたジュデッカであった。
「皆健在だ。ラオデキアのオリジナルは汝等との戦いで死んだがな」
「ああ、あの時にか」
「バルマー戦役の時に」
「あの時で」
「今本国に入るラオデキアはクローンだ」
 そうだというのである。
「そしてだ。余が来たということはだ」
「そのバルマーの本軍かよ」
 イサムが忌々しげに言った。
「それが来たってのかよ」
「覚悟するがいい」
 ジュデッカの声に不敵な笑みが宿る。表情だけではなかった。
「バルマー本軍、これまでとは違うぞ」
「ちっ、こんな時にかよ」
「最悪の事態ね」
 今ロンド=ベルはこれまでにない危機を迎えようとしていた。彼等は果たしてどうなるのか、神でさえもわからない状況になろうとしていた。


第八十五話   完


                                       2010・12・27

 
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