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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第八十一話 ゲート前での決戦

               第八十一話 ゲート前での決戦
 ロンド=ベルとグラドス連合軍はル=カイン達がいるゲートの前に向かっていた。その時にだった。
 同行しているジュリアがだ。弟であるエイジに言うのだった。
「エイジ、いいかしら」
「姉さん、一体どうしたんだい?」
「彼はわからなかったのね」
 こう悲しい顔で言うのだった。
「そうだったのね」
「ル=カインかい」
「ええ、彼は」
「そうだね。わからなかったんだね」
 エイジも暗い顔で姉の言葉に頷く。
「そのことが」
「地球人もグラドス人もない」
 ジュリアが言うのはこのことだった。
「そのことが」
「けれどそれは」
「ええ」
「僕達も中々わからなかったことなんだ」
 エイジは真剣な顔で話した。
「だからこそお互いに殺し合ってきた」
「そうね。だからこそ」
「僕は今までグラドス人は」
「貴方にある半分は」
「ゴステロみたいな奴ばかりだと思っていた」
 その彼の名前も出すのだった。
「あんな奴ばかりだと思っていたんだ」
「そうだったのね」
「皆同じだった。だから確実に仕留めてきた」
「いつもコクピットを狙い撃ちにしていたそうね」
「確実に殺す為に」
 それがロンド=ベルのグラドスに対する戦い方だった。
「そうしてきたんだ」
「私達も。多くの人達を虐殺して」
 そうしてだというのだ。
「そして文化を破壊してきたわ」
「そうだったね。本当に」
「けれどそれは間違いだった」
「僕達も間違っていた」
 姉と弟はお互いに言い合う。
「彼はそのことがわからない」
「そうなんだね」
「もう無理なのかしら」
 ジュリアは暗い顔のまま述べた。
「あの人はあのまま」
「そうだろうね。死ぬね」
 それは間違いないとだ。エイジは確信していた。
「ル=カインとして」
「彼として」
「死ぬよ。この戦いで」
「わかったわ」
 姉と弟は彼との戦いの前にそのことを話すのだった。そしてだった。
 ゲート前の基地に来た。するとだった。
 そこにはだ。もうグラドスの大軍が集結していた。彼等を見てだった。
「ル=カイン、いるな」
「何だ」
 そのル=カインの愛機が出て来た。そのうえでゲイルの言葉に応えるのだった。
「私に用か」
「最早全ては決している」
 ゲイルはこう彼に告げるのだった。
「それでもか」
「戦うかというのだな」
「そうだ、戦うのか」
 また彼に問うた。
「そうするのか」
「そうだと言えばどうする」
 ル=カインはゲイルのその言葉に平然と返した。
「それは貴様とて同じだろう」
「そうだな。私もその為にここに来た」
「私は戦う」
 それをまた言うル=カインだった。
「最後の最後までな」
「他の者達もか」
「この者達はどれも罪に問われる者達だ」
 そこから逃げてなのだ。今のル=カインの周りにはそうした者も多いのだ。
「それで何故降る」
「大人しく罪に服するつもりはないか」
「罪、何が罪だ」
 ル=カインは今度はこう返すのだった。
「劣った文明や人種を滅ぼして何が罪だ」
「やはりな。そう言うのか」
「何度でも言おう」
 またゲイルに告げる。
「私は貴様等を滅ぼしグラドスを掌握してだ」
「そしてそのうえでか」
「この宇宙をグラドスのものにする」
 これがル=カインの望みだった。
「そしてそのうえでだ」
「その劣った人種や文化とやらをか」
「全て滅ぼす」
 彼はまた言った。
「必ずな」
「愚かな」
「やっぱり何もわかっちゃいないな」
「そうね」
 そんな彼の言葉を聞いてだった。
 ロンド=ベルの面々は冷めた調子で言うのであった。
「こいつはやっぱり」
「死ぬしかない?」
「そうよね」
「こうなったら」
 こう話すのだった。そしてだ。
「じゃあ今から」
「攻める?」
「それじゃあ」
「今から」
「よし」
 こうしてだった。彼等は攻撃態勢に入った。そうしてだった。
「ゲイルさん、それじゃあ」
「今からね」
「攻めましょう」
「最後の戦いよ」
「よし」
 こうしてだった。彼等はそのままル=カインの軍との戦いに入るのだった。
 既にだ。ル=カインは出撃していた。しかしだった。
「まずはこれだけですか」
「援軍は後で」
「そうするのですね」
「予備戦力は温存しておく」
 ル=カインはこう周りの部下達に答える。
「だからこそだ」
「そういうことですか」
「それでは今はですね」
「我々だけで」
「その通りだ。ではいいか」
「はい、わかりました」
「それでは」
 こうしてだった。彼等も迎撃用意に入るのだった。
 両軍は激突に入った。まずはだった。
 ル=カインがだ。自ら銃を放つのだった。
「くっ、前線に自ら出てか!」
「戦うか」
「そう来るか」
「私は退くことはしない」
 こう言うル=カインだった。前線で戦いながら。
「何があろうともだ」
「その心意気だけは褒めてやるぜ!」
 忍がそのル=カインに対して言う。吼える様な声でだ。
「だがな、手前の罪はな!」
「どうだというのだ」
「消せはしねえぜ!」
 次はこう言うのだった。
「それは言っておくからな!」
「面白い。ではだ」
 ル=カインは前線に立ち続ける。そのうえでだった。
 彼もまた自ら戦う。その彼の前にだった。
 エイジが来た。そのうえで向かう。
「ル=カイン!」
「聖女の弟か」
「もうこれで最後だ」
 レイズナーマークツーを駆りながらの言葉であった。
「ブイマックスを使えば」
「それか」
「如何に貴方とて」
 一気に発動させて倒そうとする。しかしだった。
「甘いな」
「何っ!?」
「ブイマックスを持っているのはだ」
 どうかというのである。
「御前だけではない」
「何っ!?」
「私もまた」
 こう言うとであった。何と。
 彼の乗るその黄金のマシンもだった。急に。
 動きが速くなった。そのうえでエイジに向かう。
「くっ、まさか!」
「そう、そのまさかだ」
 こう返すル=カインだった。
「私もまたそれを使えるのだ」
「何てことだ」
「戦いはこれからだ」
 ル=カインも引かない。
「この私の、グラドスの力見せてやろう」
「ああ、見せてもらうぜ!」
 今のル=カインの言葉に応えたのはジュドーだった。
「手前が強いのはわかった」
「それはだというのか」
「ああ、しかしな!」
 ここでさらに言うジュドーだった。
「わかったのはそれだけだ」
「どういうことだ、それは」
「手前は強いだけだ」
 これがジュドーの言葉だった。
「ただそれだけの奴だ」
「どういう意味だ、それは」
「手前は何もわかっちゃいねえ」
 ジュドーはル=カインに対して告げる。
「何一つとしてな」
「わからん」
 これがル=カインの返答だった。
「私の何がわかっていないのだ」
「そう言うこと自体がだよ」
 こう返すジュドーだった。
「手前は全くわかっていねえんだよ、地球のこともグラドスのこともな」
「馬鹿な、地球なぞだ」
 ル=カインもまたジュドーの言葉を全否定して返す。
「所詮は我等とは違う。列島人種ではないか」
「どうやら何を言っても駄目のようね」
 シモーヌも完全に諦めた口調だった。
「この人にはね」
「どれだけマシンの性能が高くても」
 エイジがル=カインに向かいながら突き進む。
「それだけじゃ勝てはしない」
「そうだな。それは同意する」
 ル=カインがまた言ってきた。
「何故ならだ」
「何故なら?」
「グラドス人はバルマーの直系」
 ル=カインの主張の原点はここにあった。
「その我々に地球人が勝てる筈がない」
「それじゃあ見せてやるぜ!」
 今叫んだのは甲児だった。
「手前の言葉が正しいかどうかな!」
「全軍倒せ!」
「容赦するな!」
 グラドス軍に対して総攻撃を浴びせる。その攻撃の激しさは。
 グラドス軍は秒刻みでその数を減らしていく。そしてだった。
 瞬く間にだ。その数を半数まで減らしていた。その彼等だ。勝平が言う。
「これまで何度も見せてやったよな!」
「ワン!」
 横の千代錦も続く。
「俺達は手前等に劣っちゃいねえんだよ!」
「ワンワン!」
「グラドスがどうとかで人の優劣が決まってたまるかよ!」
 これが勝平の言葉だった。
「決まるのは他のことなんだよ!」
「それは何だというのだ」
「心だ!」
「それが決めるのよ!」
 宇宙太と恵子もル=カインに言う。
「そんなものに優劣を求めるなんてな!」
「あんたは只の馬鹿よ!」
「私を愚弄するのか」
「愚弄ではないぞ」
 グン=ジェムは目の前のグラドスの敵機のコクピットを上から真っ二つにした。そうしてそのうえで彼もまたル=カインに言うのだった。
「それはな」
「おのれ、どの者も」
「あえて言おう」
 ギャブレーもだった。
「貴様は我々ペンタゴナの者をどう思っていた」
「今度は貴様等か」
「そうだ、我々をどう思っていた」
「それを聞きたい」
 ダバも彼に問う。
「俺達はグラドスにとっては何だった」
「そして僕達もだね」
 大介もであった。
「どう思っていたかな、一体」
「知れたこと、地球の者達と同じだ」
 ル=カインの言葉は変わらない。
「我等グラドス以外の者は全てだ」
「結局そうなのね」
 マリアも呆れる他なかった。
「こいつ等ってそうした選民思想と差別思想しかないのね」
「そうだな。偏見の塊だ」
 大介の言葉も厳しい。
「いや、偏見が服を着て歩いているようなものだ」
「そういう奴等なのよね、どう見ても」
「ふざけるな。では言おう」
 ル=カインは顔を歪めさせて言い返す。
「貴様等はお互いに争い殺し合い」
「それかよ」
「何かいつも聞くな」
「そうだよな」
「毎度毎度」
 ロンド=ベルの面々の言葉は冷めていた。
「それで何だよ」
「何だってんだよ」
「それで」
「そして多くの命を奪い種族を滅ぼし文化を破壊してきたな」
 ル=カインの主張だった。
「その愚か者達がだ。何故我等グラドスと同じなのだ」
「そのことだけれどね」
 万丈であった。彼が反論に出た。
「もう僕達はわかってるんだよ、このことも」
「何っ!?」
「同じだってね。もうわかってるんだよ」
「それもだというのか」
「では言おう」
 万丈はだ。ル=カインを全否定しながら言い切った。
「君達グラドス人がしてきたことは何かな」
「何っ!?」
「征伐とか大義名分を立ててそれで侵略を繰り返し」
 そのことをだ。指摘するのだった。
「そのうえで虐殺を行い文化を破壊してきたね」
「愚か者共への裁きだ」
 これもまたル=カインの言い分だった。
「そして劣った文化を破壊し我々の優れた文化を教えてやるのだ」
「ある星じゃ人口の三割を殺したね。市民達を」
「それの何処が悪い!」
「そうだ、愚か者達を!」
「君達邪魔だよ」
 万丈は傍にいるグラドスの者達が喚くとだった。ダイターンハンマーを振った。
 それでコクピットを叩き潰してだ。黙らせたのだった。
「五月蝿いから永遠に黙っていてくれるかな」
「その行動こそがだ」
 ル=カインは万丈の今の行動を批判しようとする。
「貴様等の野蛮な証拠だ」
「へっ、よく言うぜ」
「全く。自分達のことを棚にあげて」
「それでそう言うなんてね」
「何が華麗なんだか」
「薄汚い奴よね」
「本当に」
 全員でだ。そのル=カインを批判し返す。万丈も言う。
「少なくとも僕達は罪のない者や市民には何もしないよ」
「我等だけだというのか」
「そう、己が優れていると根拠なく妄想し」
 そのル=カイン達への言葉だ。
「そのうえで多くの罪のない人達を殺戮し文化を破壊する愚かな悪人達」
「それが我等だというのか」
「その通り!世の為人の為」
 万丈の名乗りがはじまった。
「悪き者達を滅ぼすダイターン3!」
 そして次の言葉は。
「この日輪の輝きを恐れぬならかかって来い!」
「おのれ、それならばだ」
 ル=カインも彼の名乗りを受けてだ。そしてだった。
「カルラ、ギウラ、ズールの軍を呼べ」
「はい」
「わかりました」
「それでは」
「全ての戦力を投入する」
 彼は言うのだった。
「いいな、そうしてだ」
「決戦ですか」
「遂にですね」
「いよいよ」
「我等の全ての戦力を投入する」
 その通りだとだ。ル=カインは断言した。
「いいな、そしてだ」
「は、はい」
「それでは」
「今から」
「全軍攻撃に移る!」
 ル=カインは援軍を得てさらに指示を出した。
「そしてロンド=ベルもグラドスの裏切り者達をだ」
「はい、わかりました」
「では!」
 こうしてだった。ル=カインは全ての戦力を投入してロンド=ベルに突っ込む。しかしであった。
「よし、今だ!」
「撃て!」
「前面に一斉射撃!」
 この言葉と共にであった。ロンド=ベルは一斉射撃を繰り出しそてでそのグラドス軍の動きを止めた。そしてそのうえで、であった。
「突撃だ!」
「これで終わりだ!」
 その突撃はだ。最早グラドス軍に防げるものではなかった。
 彼等は散々に打ち破られだ。総崩れになった。
「全軍の損害、八割を超えました」
「残る機体も最早です」
「損傷を受けていない機体も艦艇もありません」
「このままでは」
「・・・・・・わかった」
 ル=カインは苦い顔で述べた。
「それではだ」
「はい、それではですね」
「撤退ですか」
「そしてその先は」
「ゲートだ」
 そこだというのであった。
「ゲートにまで撤退するぞ」
「刻印まで」
「そしてですか」
「最後の戦いを」
「私は諦めん」
 彼には意地があった。それは間違いないことだった。
「この程度ではだ」
「では。その為にも」
「今はですか」
「ゲートまで」
「総員撤退する」
 ル=カインはまた残っている者達に告げた。
「いいな」
「了解です」
「それでは」
 こうしてだった。彼等は撤退するのだった。そしてであった。
 残ったロンド=ベルとゲイルの軍はだ。すぐに彼等の撤退先を把握したのだった。
「ゲートか」
「そしてそこでか」
「最後の戦いか」
「奴等と」
「それならばだ」
 ゲイルが厳しい顔で述べた。
「そこまで行こう」
「そうですね。それじゃあ」
「今からゲートに向かい」
「そこで本当に決着をつけましょう」
「いよいよ」
 こうしてだった。彼等は一旦集結しそのうえでだった。彼等が撤退したそのゲートに向かうのだった。そこで決着をつける為に。
 その中でだ。万丈とエイジが話していた。まずエイジが言った。
「それでですけれど」
「さっきの戦いでの話かい?」
「はい、あの時のル=カインとの話ですけれど」
「僕もね。怒ってるんだ」
 万丈はエイジにまずこう述べた。
「正直なところね」
「彼等にですか」
「ゼゼーナンを思い出すよ」
 この男の名前も出した。
「ル=カインはあの男と同じだね」
「偏見の塊ですか」
「そう、無闇に自分達が優れていると思っていて」
「その実は」
「何てことはない。下らない男さ」
 そうだとだ。万丈は言い切ったのだった。
「そうした奴こそが問題なんだよ」
「ではル=カインはやはり」
「うん、倒そう」
 これも既に出ている結論だったがあえて言ったのであった。
「この銀河の為にね」
「そうですね。けれどグラドス人も」
「同じだね」
 万丈はこのことも話した。
「やっぱりね」
「そうですよね」
「善人もいれば悪人もいるんだ」
「どちらも」
「そう、どちらも」
 万丈の言葉である。
「いるんだよ」
「ずっと自信が持てませんでした」
「そのことにだね」
「ええ。どうしても」
 これがエイジの言葉である。
「そのことに」
「気持ちはわかるよ」
「わかってくれますか」
「僕だけじゃないさ」
 彼だけではないと。こうも話すのだった。
「それは皆もだよ」
「皆が」
「そう、ロンド=ベルの皆が」
 彼等がだというのだ。
「だからね」
「それはわかっています」
「嫌でもわかるね」
「僕はロンド=ベルにいる時一度でも」
「嫌がらせや侮辱を受けたことはなかったね」
「全くです」
 それはなかったというのであった。
「それは一度も」
「そういうことさ。皆君個人は認めていたんだ」
「僕は」
「グラドス人は違っていたけれどね」
 彼等に対してはだというのだ。
「けれど今は」
「今は違いますね」
「そう、違うよ」
 万丈はこのことを断言してみせた。
「皆グラドス人が変わったからね」
「それで、ですね」
「そうだよ。グラドス人には善人もいれば悪人もある」
 またそのことを話す万丈だった。
「そういうことをね」
「わかりました」
 エイジの言葉がはっきりとしたものになった。
「それじゃあ」
「さて、それでだけれど」
「それで」
「これからはね」
 万丈の話が変わってきた。
「ゲートに向かうけれど」
「はい、ゲートに」
「とりあえず時間は少しあるよ」
「少しですね」
「そう、少しね」
 あるというのである。
「それでだけれど」
「何かあるのですか」
「お酒は飲めないけれどね」
 それは断る万丈だった。
「けれど戦いの前に」
「何かありますか」
「どうかな。ギャリソンの料理でも」
 これが万丈の提案だった。
「今お菓子を作ってるけれどね」
「お菓子ですか」
「ケーキを作ってるんだ」
 万丈は微笑んで話した。
「そう、チョコレートケーキをね」
「あっ、チョコレートですか」
 それを聞いてエイジの顔が晴れやかになった。
「それはいいですね」
「チョコレートケーキは好きかい?」
「実は」
 その通りだというのだった。
「ですから」
「そう。それでね」
「はい、それで」
「チョコレートケーキに」
 他にもあるというのだ。
「コーヒーもあるよ」
「いいですね」
 コーヒーと聞いてだ。エイジはさらに笑顔になった。
「それはさらに」
「コーヒーも好きなんだね」
「実は地球に来て」
 そこからの話だった。
「その二つを最初に食べまして」
「思い出の味ってことかい」
「はい、ですから」
「成程ね」
「グラドスにはない味でした」
 こうまで言うエイジだった。
「いや、本当に」
「グラドスにはケーキはないのかい?」
「残念ですが」
 そうだというのである。
「それはありません」
「そういえばグラドスの食文化は」
 万丈はこんなことも考えるのだった。
「どうなっているのかな」
「一番近いのはです」
「近いのは?」
「イギリスの料理です」
 この話が出た。
「あれが一番近いです」
「それは酷いね」
 それを聞いた万丈の言葉だ。
「とても」
「はい、地球に来てです」
「美味しいものを知ったんだね」
「味は塩とお酢だけで」
 エイジはそのグラドス料理についての話を開始した。
「肉は黒焦げ、何もかもどろどろに煮て」
「そのままイギリス料理だね」
「味がありません」
 そこが問題なのだった。
「本当に」
「あまり食べたくないね」
「はい、それで地球の味を知って」
「それにのめり込んだんだね」
「そこでイギリスの料理を食べました」
 そこからあらためてなのだった。
「懐かしいでした」
「懐かしかったんだね」
「しかし味わいたくはなかったです」 
 このことも言われるのだった。
「残念でした」
「気持ちはわかるよ」
「あの、イギリスは」
「うん、あの国の料理は駄目だよ」
「やはりそうなんですね」
「その味は覚えておいてもいいけれど」
 しかしだというのであった。
「また味わいたくはないね」
「絶対に」
「そういうことだよ。それじゃあね」
「はい、それでは」
「今はケーキを食べよう」
「コーヒーもですね」
「イギリスで食べていいのは紅茶だけだよ」
 万丈は言い切った。
「正確には飲むんだけれどね」
「それだけですか」
「そう、それだけだよ」
 あくまでその紅茶だけだというのだ。
「後は。そうだね」
「イギリスでは他に何を食べればいいのでしょうか」
「他の国の人間がいるレストランに入るべきだね」
「そういうことですか」
「そう、そういうこと」
 万丈は話すのだった。
「わかったね」
「困った話ですね」
「まあ日本にいればいいよ」
 万丈が話に出すのはその国だった、
「日本ならね」
「日本ですか」
「そう、日本は好きかな」
「はい、好きです」
 エイジはにこりと笑って述べた。
「とても」
「そういうことだね。それじゃあ」
「それではこれから僕がいただくのは」
「日本のケーキだよ」
 まさにそれだというのであった。
「そして日本のね」
「コーヒーですね」
「じゃあ。食べようか」
「わかりました」
 エイジはにこりと笑って頷いた。
「それでは」
「量は多いよ」
「量もですね」
「デコレーション一個分だよ」
「それは凄いですね」
 エイジはその量も聞いて声をあげた。
「食べがいがあります」
「それだけ楽しみになってきたってことでいいかな」
「はい、余計に」
 まさにそうだというのであった。
「それでは」
「じゃあね」
 こんな話をしてだ。リラックスできたエイジだった。そのうえでグラドス軍との最後の戦いに向かうのだった。ゲートにおいての。
 そしてケーキの場ではだ。全員いた。
「よお、エイジ」
「来たか」
「さあ、皆で食おうぜ」
「それじゃあな」
「コーヒーもあるぜ」
「うん」
 笑顔で微笑んで応えるエイジだった。
「それじゃあね」
「このケーキ美味いよな」
「そうですね」
 ミシェルとルカが話す。
「流石ギャリソンさんのケーキだな」
「確かな腕ですね」
「そうね」
 ここにはシェリルもいる。ランカもだ。
「後でダイエットが大変だけれど」
「それでもですね」
 そのランカも言う。
「これは食べないと」
「ケーキは麻薬よ」
 今言ったのはエマである。
「目の前にあったらどうしてもね」
「エマさんってケーキお好きですよね」
「それもかなり」
「ええ、大好きよ」
 ファとフォウにも述べる。
「もうおやつはこれよ」
「とかいいながら他の甘いものも」
「お好きですよね」
「人間あれよ」
 エマは開き直ったかの様に言ってみせるのだった。
「甘いものがあればね」
「甘いものがあれば」
「どうなんでしょうか」
「幸せになれるのよ」
 そうだというのである。
「それだけでね」
「それだけでって」
「それはまた」
「事実よ」 
 エマは強引に中央突破に出た。
「それはね。事実だから」
「えっ、そうきました?」
「強引に」
「強引でも事実よ」
 中央突破したならもうそのままだった。
「それはね」
「甘いものがあればですか」
「幸せですか」
「その通りよ。それじゃあ」
 エマは勢いのまま微笑んで述べた。
「ケーキを。今からね」
「わかりました」
「それじゃあ」
 こうしてだった。エマだけでなく全員でそのケーキを楽しむのであった。そうして彼等は英気を養う。グラドスとの最後の戦いに向けて。


第八十一話   完


                      2010・12・9
 
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